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相続の知識

夫婦間の口座移動で贈与税はかかる?ケース別に解説

夫婦同士であっても、口座間で資金をやり取りした場合や、不動産や車、ジュエリーなどの高額なプレゼントを受け渡しした場合には、贈与税が発生する可能性があります。ただし、すべてのケースで贈与税がかかるわけではありません。

本記事では、夫婦間の贈与で贈与税がかかるケース・かからないケースを解説します。あわせて、夫婦間の贈与の節税対策も確認しましょう。

原則として夫婦間でも贈与税がかかる

個人間で何らかの財産がやり取りされた場合には、贈与税が課されます。親子間・兄弟間、他の親族間、そして夫婦間でも同様です。
条件によっては贈与税の基礎控除によって支払税額がなくなるケースや、そもそも課税されないケースもありますが、基本的には夫婦間での財産のやり取りには贈与税がかかります。
また申告・納税義務は、贈与された側(受贈者)に生じます。

事実婚の場合はどうなる?

夫婦間での贈与は「夫婦間贈与」と呼ばれます。この場合の夫婦とは「民法の規定により効力が生じた婚姻に基づく配偶者」を指します。
いわゆる内縁の妻・夫など婚姻届を出していない事実婚も、基本的には民法の規定が準用されるため、一定の法的保護を受けます。たとえば夫婦間の同居・協力・扶助の義務(民法752条)や婚姻費用の分担(同760条)などの婚姻の規定が準用されます。そのため、事実婚でも通常必要とされる生活費などのやり取りについては、法律婚と同様に贈与税がかかりません。

また、贈与税の対象となる財産についても、ほかの贈与と同様に基礎控除の110万円は利用できます。1年間の総贈与額が110万円以下であれば、事実婚の配偶者に贈与税は発生しません。

ただし、事実婚の場合は税法上の優遇措置が受けられません。
たとえば、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用財産の名義を移動させた場合に2,000万円まで非課税となる特例(贈与税の配偶者控除)は、事実婚には適用されません。
また、相続時に1億6,000万円または法定相続分まで非課税となる配偶者控除(配偶者の税額軽減)も、事実婚は対象外です。

夫婦間で贈与税がかかるケース

夫婦間で贈与税がかかるケース実際に、夫婦間贈与に課税される代表的事例を挙げていきます。どういった条件で、何が理由となって贈与とみなされるのかを確認しましょう。

高額な資金の口座移動

高額な資金を夫婦の口座間で移動させた場合には贈与とみなされる可能性があります。贈与にあたるのは、配偶者の口座へ、自分の財産を分けること自体が目的とみなされた場合です。

生活費・教育費・交通費といった、日常的に消費される金銭を口座間で移動させても贈与にはあたりません。ただし受け取った側が、その金銭をそのまま貯金用の口座にまわしたり、投資・不動産購入費用として使用したりした場合は、贈与とみなされるケースがあります。

高額なプレゼント

生活に必要な現金や物品ではなく、嗜好品や不動産などをやり取りした場合は、夫婦間でも贈与とみなされます。例えば、結婚記念日に、110万円を超える高価なアクセサリーを贈ったケースなどは、贈られた側に贈与税がかかります。

配偶者に車を購入してプレゼントするケースも、贈与税が発生しやすい事例です。配偶者が生活していく上での必需品として車両を購入した場合は、贈与税の対象にはなりません。しかし高級車などは嗜好品とみなされるため、配偶者のために購入してあげた場合は贈与税が発生する可能性が高いでしょう。

車の贈与が成立するタイミングは「名義が変わったとき」です。例えば夫が自分名義で購入した車を、購入後に妻名義にしたら、その時点で夫から妻への贈与が成立し、妻に対して贈与税の申告・納税義務が発生します。
新車の状態で贈与された場合は、購入額が車の財産としての価値とみなされます。他方、夫が長年使用してきていた車を妻に贈与したなら、その贈与を行う時点での車の査定額が車の財産価値と判定されます。

ほかには、有価証券や骨董品の所有権の移譲なども、贈与税が発生しやすい代表例です。

不動産の名義変更

住宅・土地といった不動産についても、所有者の名義を配偶者へ変更すると贈与とみなされます。
夫婦の年齢によっては、不動産の生前贈与によって相続税の支払いを回避したいと考えるかもしれませんが、贈与税がかかります。婚姻期間が20年以上の夫婦なら、居住目的での不動産贈与に関しては、最大2,000万円の控除が利用できます。生前贈与を行うなら、こうした控除を受けるとよいでしょう。

また、新規に不動産を購入する際、夫婦が共同名義で登記する場合には注意を要します。購入額を負担した割合と登記の持分割合が異なる場合、差額分が贈与税の対象となります。例えば、夫婦のどちらか一方だけが購入資金をすべて支払ったにもかかわらず、両者の持分割合を1/2ずつと登記してしまうと、資金を支払っていない側に不動産購入額の半額分が贈与されたとみなされます。
もちろん、夫婦が実際に購入資金を1/2ずつ負担したうえで、1/2ずつの持分割合で登記を行っていれば、贈与税は課されません。

住宅ローンの返済

どちらか一方の名義で契約した住宅ローンを、名義人でないほうが返済している場合も、贈与税が発生します。これは、ローン返済額として支払われた金額分が、名義人へ贈与されたとみなされるからです。
月額数万円~数十万円のローン返済額が、数ヶ月から1年間積み重なると、基礎控除の110万円をオーバーすることは少なくありません。その結果、110万円を超えた分に対する贈与税が、ローン返済の事実がない名義人へ課されます。

退職金などを利用して、住宅ローンを繰り上げ返済することもあるでしょう。この際も、名義人でないほうが自分の資産からローンを支払ってしまうと、その分は名義人への贈与とみなされます。

また、ローン契約時の頭金を、名義人でないほうが支払った場合も、同様に贈与とみなされます。
このように、住宅ローンについてはさまざまなタイミングで贈与税が課される可能性があるため、あらかじめ銀行担当者や税理士とよく相談してください。

死亡保険金の受け取り

死亡保険金の受け取り時にも贈与税が発生する場合があります。死亡保険金の受取時には、「契約者・被保険者・保険金受取人」を誰にするかによって、さまざまな税金がかかります。

契約者(保険料を納める人)と被保険者(保険の対象)とが異なり、かつそのどちらでもない人が受取人となっている場合、受取人には贈与税が課されます。つまり、契約者・被保険者・受取人がすべて別人の場合です。

具体例として、「夫が亡くなった場合に、その死亡保険金を子どもが受け取れるよう、妻が夫に保険をかけ、保険料を支払っていた」というケースが該当します。妻が契約者、夫が被保険者、子どもが受取人です。このケースで夫が実際に死亡して保険金が子どもに下りる際には、子どもに贈与税が課されます。妻から子どもへの贈与が発生したとみなされるからです。

こうした家族間で発生する思わぬ贈与税を回避するためには、契約者と被保険者を同一人物にしておく方法が知られています。これにより受取人は、贈与税よりも控除額が大きく優遇されている相続税を課せられるからです。

夫婦間で贈与税がかからないケース

夫婦間で何らかの財産のやり取りを行っても、贈与税がかからないケースもあります。ここでは、非課税で済む事例を紹介します。

もらった財産が110万円以下であればかからない

贈与税は1月1日~12月31日までの1年間の総贈与額に対して課税されますが、110万円の基礎控除があります。したがって、夫婦が1年間に110万円以下の財産をやり取りしても基本的に贈与税は発生しません。

ただし、個々の贈与分が110万円以下でも、合計額が110万円を超えていれば、その超過分は贈与税の対象となる点に注意してください。

生活費・教育費

配偶者が生活するために必要な範囲での金銭・物品などについては、「扶養義務を全うするための受け渡し」とみなされ、贈与税の対象にはなりません。たとえ車(高級車以外)のように高価なものでも、それがなければ配偶者の日常生活における移動が困難になってしまう状況なら、非課税で所有者の名義変更が可能です。また子どもの教育費として夫婦間で金銭をやり取りしている場合も、同様に課税対象から外れます。

共通口座での資金管理

夫婦でひとつの共通口座を作っている場合、そこで生活費や教育費が入出金されたり管理されたりしている限りは、贈与税はかかりません。この場合は、年間で基礎控除額の110万円を超える入出金が行われていても課税されません。

ただし明らかに生活費以上の高額な金額が出し入れされていると、贈与税が課税されることもあります。例えば、夫婦それぞれの口座から、共通口座へと高額な資金移動を行った場合には、贈与税が発生する可能性が高くなります。

夫婦が離婚後に財産をあげる場合

離婚した元夫婦同士での財産の分与に関しては、贈与税の対象外です。また慰謝料の支払いなども同様に非課税です。110万円を超える財産のやり取りがあっても基本的には贈与税がかかりません。

注意すべきは、非課税になるのはあくまでも「離婚成立後」という点です。これは、離婚後の財産分与は、財産関係の清算や元配偶者の生活を保障する義務(財産分与義務)に即した、財産の受け渡しであるからです。したがって、離婚することが2人の間では決まっている夫婦間でも、「離婚成立前」に贈与が行われると、贈与税が課されます。

夫婦間の贈与の節税対策

夫婦間で財産を移動すると基本的には贈与税がかかりますが、夫婦間の資産税(贈与税・相続税)については特例として控除が用意されています。大きな金額を贈与・相続する際にも有効な控除制度なので上手に活用しましょう。

贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合、2,000万円の控除を受けられます。おしどり贈与とも呼ばれる制度です。居住用の不動産を購入する資金が贈与される場合や、ローン支払時などでも利用できます。この特例は基礎控除の110万円との併用が可能なので、最大で2,110万円まで贈与税はかかりません。

なお、この特例を利用して贈与された側は、基本的に、該当不動産に住み続けることが条件です。また、特例を利用した結果、贈与税がかからない場合でも、贈与税の申告手続きが求められます。

相続税の配偶者の税額軽減

相続税にも配偶者が利用できる控除があります。夫婦どちらか一方が亡くなった場合に、1億6,000万円もしくは配偶者の法定相続分のどちらか多いほうまでが控除される仕組みです。

居住用不動産を生前に贈与する際は2,000万円までしか控除されませんが、相続税の配偶者控除の控除額は1億6,000万円または法定相続分です。したがって状況によっては、該当不動産を生前贈与するよりも、名義人の死後に相続させるほうが有利な場合があります。

もっとも、贈与や相続は関わる金額が大きく、その他の控除も考慮したうえで慎重に行う必要性も高いため、相続に詳しい税理士へ相談したうえで判断することをおすすめします。

夫婦間贈与の無申告は税務署にバレる?

1年間の贈与で得た財産に贈与税が発生する場合は、翌年の2月1日から3月15日までに管轄の税務署へ申告する必要があります。申告・納税は贈与された側の義務であり、夫婦間であっても変わりません。

現実的には、各夫婦間でのあらゆる金銭・物品のやり取りを税務署がすべて把握することは困難ですが、夫婦どちらかが亡くなり、相続が発生した際には、過去の贈与税の無申告が高い確率でバレます。相続時には、過去10年程度までさかのぼって口座情報が詳しく確認されるからです。この際、無申告分の贈与税が発覚すると、無申告加算税や延滞税などが課されることになります。税金対策をしても、こうしたペナルティで帳消しになってしまう恐れは十分に考えられるため、毎年きちんと確認し、申告するようにしてください。

おわりに:夫婦間の贈与税は口座移動でもかかるケースがある

夫婦の口座間での資金移動には原則として贈与税がかかりますが、生活に必要な範囲であれば贈与税がかかりません。また、年間の総贈与額が110万円以下なら、全額非課税です。一方、高額な預金の口座移動や名義変更、住宅ローンの返済など思いがけず贈与税がかかるケースがあるため注意が必要です。特に不動産関係の贈与を行うなら、将来の相続と比較してどちらが節税になるか、よく確認する必要があります。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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