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相続の知識

遺言書の検認が必要なケースは?検認手続きの流れや期限、注意点を解説

親族が亡くなった際の遺言書が自筆証書遺言だった場合、家庭裁判所による検認という手続きを経なければなりません。
ここでは検認について、どのようなケースで必要なのか、手続きを行なわなければどういった問題が生じるのかを見た上で、手続きの流れや必要書類、費用など、必要な情報を詳しく解説します。

遺言書の検認とは?

検認の目的は、大きく2つあります。

  • 遺言書があることとその内容を相続人へ知らせる
  • 遺言書の偽造や変造を防止する

こうした目的から、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、父母などの死亡を知ってから直ちに検認請求をしなければなりません。
ただ遺言書には種類があり、検認が必要でないケースもあります。

遺言書の検認が必要になるケース

前提として、まず遺言書の種類について押さえておきましょう。遺言書の方式には大きく分けて次の2つがあります。

  • 普通方式遺言
  • 特別方式遺言

普通方式遺言は、『自筆証書遺言』・『公正証書遺言』・『秘密証書遺言』の形式で遺される遺言書で、聞いたことがある方も多いと思います。一方、特別方式遺言とは、『危急時遺言(病気で余命わずかな場合などに口述で内容を伝え、代理人がそれを書きとめて残す遺言)』・『隔絶地遺言(伝染病や船舶で隔離されている状況で残す遺言)』などを指します。こちらは緊急時以外あまり使われない形式なので、なじみのない方がほとんどでしょう。

今回取り上げる家庭裁判所の検認が関わるケースは前者の「普通方式遺言」です。普通方式遺言のうち、検認が必要となる遺言書は次の2つです。

①遺言書情報証明書のない自筆証書遺言

1つ目は、遺言書情報証明書のない自筆証書遺言の場合。これは簡単にいえば、遺言者自身が1人で作成していて、かつ法務局で保管されていない遺言書です。
自筆証書遺言について詳しくは、以下の記事もご覧ください。

②秘密証書遺言

2つ目は秘密証書遺言の場合。これは遺言書に記載した内容を秘密にした状態で、遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらっている遺言書です。自分で用意した遺言書に封をして公証役場に持参するので中身は秘匿されており、保管は自分で行ないます。

なお、検認が不要なケースは、自筆証書遺言のうち遺言書情報証明書がある場合と、公正証書遺言による遺言書の場合です。公正証書遺言については、下記の記事もご覧ください。

自筆証書遺言における遺言書情報の証明については、法務局において自筆証書遺言が保管される「自筆証書遺言書保管制度」によって叶えることができます。この制度は2020年7月10日に始まりました。手続きには所定のステップが必要ですが、これから遺言書を書くことを考えている人は知っておくとよいでしょう。

遺言書を検認しないとどうなる?

本来検認を要する場合に、もし検認をしなかったらどのようなリスクが発生するのでしょうか?
検認が必要な遺言書に対し検認を行なわないと、5万円以下の過料が科せられる可能性が出てきます(※民法第1005条より)。遺言書と思われるものが自宅などから発見された場合は決して勝手に開封することなく、家庭裁判所での検認をしましょう。

また、検認は遺言者が死亡したことを知った後に家庭裁判所に対し速やかに請求をするよう定められています。検認の申立てが遅れた場合、相続人のリスクとしては相続放棄や限定承認の期限が過ぎてしまう可能性が出てきます。
さらに、検認をせず放置した場合は遺言書を隠匿したとみなされ相続資格を失う場合もあるので、検認が必要なケースでは速やかに検認を請求しましょう。

誰が、どこへ、いつまでに? 遺言書検認の申立て方法

ここからは実際に遺言書の検認が必要になった場合の流れを解説していきます。

申立人の条件と申立て先

遺言書の検認は誰でも申立てられるわけではありません。まずは検認の申立人の条件と申立て先を確認しましょう。
申し立てができるのは以下の人です。

  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人

遺言書の保管者については、親族以外の場合も考えられます。たとえば遺言者の身寄りが遠方にいれば、介護者や友人が遺言書を保管しているケースもあるでしょう。こうした場合は保管をしていた人が速やかに検認の申立てを行なってください。
他方、遺言書を発見した相続人は、遺言書を見つけた子などです。相続がどのようになるかは遺言書の内容に左右されますが、一般的に相続人といえる人が遺言書を見つけた場合は、その人が申立てを行なってください。
検認の申立て先は、遺言者にとって最後の住所地の家庭裁判所です。基本的には「現住所=住民票登録地」なので、遺言者の住民票が登録されているエリアを管轄する家庭裁判所に申立てをします。

申立てに必要な書類

申立てには主に5種類の書類が必要です。

①遺言書:法務局に保管されていない自筆証書遺言、または秘密証書遺言の場合
②申立書(家庭裁判申立書):裁判所のホームページからダウンロード可能
③遺言者の戸籍謄本・除籍謄本:遺言者の本籍地であった市町村役場から取得(窓口、郵送どちらでもOK)
④相続人全員の戸籍謄本:相続人の本籍地がある市町村役場から取得(相続人各自に揃えてもらう)
⑤連絡用郵便切手:家庭裁判所からの返送用

このうち、特に③の遺言者の戸籍謄本・除籍謄本と④の相続人全員の戸籍謄本については注意すべき点があります。
まず、遺言者の戸籍謄本・除籍謄本は遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本です。死亡時だけのものではないので注意しましょう。

次に、相続人全員の戸籍謄本についてですが、相続人は状況次第で変わり得るので、相続人になった人は連絡を受けたら戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を用意し申立人に託しましょう。また相続の権利があったもののすでに死亡している方がいる場合は、その方の除籍、改製原戸籍謄本も必要です。

なお、本来は必要であるところ申立て前に入手することが難しい戸籍などがある場合、その書類は申立て後に追加で提出することもできます。ただし戸籍謄本などを代理人が取得する場合は、委任状・代理人の本人確認書類などが必要です。

※戸籍法の一部改正により、2024年3月1日以降、戸籍謄本等の広域交付(最寄りの市区町村窓口での請求)が可能になります。(2024/2/19更新)

●戸籍証明書等の広域交付制度

今まで戸籍謄本等の証明書を取得するためには、本籍地の市区町村の役所窓口へ申請をする必要がありましたが、2024年3月1日以降、戸籍情報連携システム導入により、全国各地にある戸籍情報を最寄りの役所窓口で請求できるようになります。

【申請できる人】
・本人
・配偶者
・直系尊属(父母、祖父母など)
・直系卑属(子、孫など)
※兄弟姉妹はできません

【申請できる場所】
役所窓口のみ
※郵送、代理人申請はできません

【必要書類】
申請者の顔写真付き身分証明書
・運転免許証
・マイナンバーカード
・パスポート
など

出典:法務省『戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

申立てに必要な費用・手数料

まずは申立てに必要な書類を揃える時点で一定の費用が発生します。書類を準備する際に必要な費用は以下の3項目です。

  • 遺言者の戸籍謄本・除籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 連絡用郵便切手

いずれも数百円程度ですが、家庭裁判所からの連絡に必要な切手代は家庭裁判所ごとに異なるので確認をしましょう。

申立てに必要な費用は、遺言書1通に対し800円(収入印紙)です。遺言書が封書の場合は封書1通につき800円となります。
検認後に必要な費用は、検認済証明の申請後に検認済証明書を貼り付けた遺言書原本を返還してもらう手数料で、遺言書1通につき150円かかります。
ポイントとしては、申立て準備から検認完了までに必要な費用のトータルを最低でも3,000円ほど見積もっておくことです。ただし、取得すべき戸籍謄本の件数によって異なるのであくまで目安となります。

検認申立ての期限と手続きにかかる期間の目安

検認の申立ておよび検認を終えるまでの期間ですが、実は法的な期限はありません。検認に関しては、相続の開始を知った後か相続人が遺言書を発見した後に遅滞なく行なうと定められているだけです。ただし、万が一「すみやかに」検認を行なわないと過料が発生する可能性もあります。

また遺産相続に関しては、それぞれに期限があります。たとえば、相続放棄の申述期限は「相続の開始があったことを知った時から3か月」、相続税の申告は「遺言者が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」などです。したがって検認の申立てはできるだけ早急に行なうのがベストでしょう。検認手続きにかかる期間は「申立てから数週間〜1か月程度」というのが一般的ですので、その期間も考慮して手続きをしましょう。

遺言書の検認手続きの流れ

ここからは実際に検認を要する際の具体的な流れを追っていきます。遺言書発見から検認が完了するまでの間には次の5つのステップがあります。

  1. 準備:申し立ての必要書類を揃える
  2. 申立て:家庭裁判所へ検認を申立てる
  3. 通知:家庭裁判所から検認期日について通知が届く
  4. 検認当日:家庭裁判所での検認に出席する
  5. 検認済証明書の申請:検認済証明書の申請と遺言書の返還

この5つのステップについて詳しく見ていきましょう。

① 申立ての必要書類を揃える

必要書類を用意します。本籍が遠方である場合や、相続人それぞれの戸籍謄本を集めるのに時間がかかりそうな場合は、早めに準備・連絡へ取りかかりましょう。
遺言者と相続人の関係によっては一度書類を提出した後、追加で用意しなければならない書類が出てくることもあります。気になる時は家庭裁判所に必要書類について尋ねてみるのがおすすめです。

また必須の書類である「申立書」は裁判所のホームページでダウンロード可能ですので、直接窓口に赴かなくても大丈夫です。記載例も裁判所のホームページにあります。

参考:最高裁判所ホームページ『遺言書の検認の申立書』

② 検認を申立てる

必要書類が揃ったら、検認の申立て先を確認し書類を提出して申立てを行ないます。書類は該当の裁判所に直接持参することも、郵送することもできます。
ただ、郵送をする場合にはいくつかの注意点があります。

郵送する書類は重々チェック

不備があると何度もやり取りすることになります。郵送の場合は事前に裁判所へ電話し不安点を解消しておきましょう。

追跡可能な郵送方法を選択する

戸籍謄本などのプライバシー情報が記載された書類の郵送です。追跡可能な郵送方法を選びましょう。

戸籍謄本はコピーをとっておく

原本はコピーと一緒に提出しなければ検認申立て後に返却されません。取得した戸籍謄本などは提出前にコピーをとっておきましょう。戸籍謄本は相続に関する金融機関での手続きなどに必要です。改めて取得するのも大変なので、検認で使った原本を返却してもらうのが一番よいでしょう。

③ 家庭裁判所から検認期日について通知が届く

家庭裁判所での検認がなされるのは、申立て後の数週間〜1か月程度後、実施日の調整連絡以降です。検認を待っている間も遺言書は開封しないように気をつけましょう。

④ 当日、家庭裁判所での検認に出席する

検認期日(実際に行なう日)は時間に遅れないよう出席しましょう。
遺言書や印鑑、本人が確認できるものなど、詳しい持ち物については家庭裁判所から事前に指示があります。
検認では相続人と裁判所の職員が立ち会い、遺言書を開封し、日付・筆跡・遺言者の署名・本文を確認します。かかる時間は10分〜15分程度が一般的です。

⑤ 遺言書の返還を受け、検認済証明書を申請する

検認が完了したら、すぐに検認済証明書の申請をしましょう。遺言書に検認済証明書がないと金融機関での手続きなどもできません。
検認後は、検認期日に欠席した相続人などに対し「検認済通知」が届きます。これは検認が完了したことを知らせる通知です。ただこの検認済通知書には、検認期日に確認した遺言書のコピーが添付されるわけではありません。
また検認済の遺言書は裁判所から申立人へは返還されますが、申立人以外の出席者・欠席者にコピーなどが送付されることはありません。検認期日の出席者がコピーを希望する場合は、その場で申立人に依頼しましょう。

遺言書の検認前に知っておきたい3つの注意点

検認については、事前に知っておきたいポイントが3点あります。

検認は遺言書の効力を判断するものではない

検認は相続人全員に対し遺言書があることを示し、内容を確認するためのものです。検認された内容が「法的に」効力をもつと証明されるわけではありません。
内容に関して議論したい・異議を唱えたい、遺言書の効力について争いたい場合は、別途「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」を起こす必要があります。

申立人は検認を欠席できない

検認期日に相続人全員が集まらなくてはならないことはなく、欠席によって相続に関し不利益を被ることもありません。しかし申立人は必ず出席する必要があります。このため申立人には検認期日に必ず出席できる人を選びましょう。

遺言書が複数ある場合、すべての検認が必要

遺言書が複数見つかった場合、すべての遺言書について検認が必要です。検認とは遺言の有効性を判断するものではなく、遺言書の存在と内容を確認するための手続きだからです。
遺言書が複数ある場合、どの遺言書が効力をもつのかなどについては、検認後、最終的には裁判で決着をつける問題であり、効力については争えません。

おわりに:遺言書の種類によっては検認が必要。手続き期限はないが、すみやかに

遺言書の検認について詳しくお伝えしてきました。遺言を遺す側は、相続でのトラブルを未然に防ぎたい、また相続税をかしこく節税したいなどの想いがあり、作成される方も多いです。検認手続き自体に期限はありませんが、その他の相続手続きにも影響がありますので、すみやかに行うようにしましょう。
もし節税を考慮した内容での遺言書作成を希望される場合は、相続専門の税理士法人に相談するのが最適です。相続専門の税理士法人であれば、生前贈与の金額や遺産分割方法によってどのように節税できるかなどをシミュレーションしながら、遺言書作成の支援をしてくれることでしょう。
税理士法人レガシィでも、遺言書作成支援サービスを行なっています。疑問や不安がある場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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