遺言執行者の報酬相場はいくら?報酬額が決まる仕組みを解説!
Tweet遺言の内容を遺言者の思ったように実現してくれるのが、遺言執行者です。遺言執行者として相続人に依頼する選択はもちろんあると思いますが、一般の方では心配ということであれば弁護士や税理士、司法書士、信託銀行など専門家に頼む方法も考えられます。
とはいえ、遺言執行者の報酬相場は決まった額があるわけではないので、わかりにくく誰に頼んでいいか迷うこともあるのではないでしょうか。
そこで、当記事では遺言執行者の報酬について、あらゆる角度から深掘りして解説します。
目次
遺言執行者の報酬相場
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。たとえば、財産目録を作成したり、各金融機関で預金の解約手続きをしたり、法務局で不動産の名義変更手続きをするなど、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為の権限をもっています。通常は、相続人の代表者が遺言執行者として遺言内容を執行していきます。
遺言で遺言執行者の指定がされていない場合で、遺言執行者を選任した方が良いケースとしては、第三者に相続不動産を遺贈する場合(遺贈登記)があります。この遺贈登記をするためには相続人全員が登記義務者となり名義変更手続きを行う必要がありますが、遺言執行者が選任されていればこの遺言執行者だけが義務者となることで足りるため、相続人以外の第三者への遺贈の際に多く利用されています。
遺言執行者の報酬相場は、遺言に定めがある場合にはそれに従うことになります。遺言書に記載がない場合には、「弁護士」「税理士」「司法書士」「信託銀行」などそれぞれの専門家によって異なります。
専門家のなかでも司法書士が最も安く、報酬相場は20〜75万円前後です。次いで税理士、弁護士、信託銀行と報酬相場が高くなっていきます。
弁護士の場合:30~100万円前後
弁護士に遺言執行を依頼した場合の報酬は、弁護士によってさまざまです。ただし、日本弁護士連合会が平成16(2004)年3月まで定めていた「旧弁護士会報酬基準規程」を参考にすれば、金額の予想ができます。
この基準規定は現在は廃止されましたが、今でもほとんどの弁護士がこの規定に近い報酬を採用しています。経済的利益額(負の財産を差し引いた遺産の総額)によって報酬額が変わります。
この規定に従っているほとんどの弁護士事務所では、財産が300万円以下の場合には30万円が報酬です。それが、300万円以上だと24〜204万円+財産の価額×0.5〜2%となります。
弁護士に遺言執行者を依頼するメリットは、何といっても万一争いが起きた時に法的に解決する方法を熟知していることに尽きます。争いが起きたら、遺言執行人である弁護士とともに解決していくことになります。
税理士の場合:50万円前後
昔は税理士報酬に最高限度額を定めた規定がありましたが、平成14(2002)年3月に規定が廃止されました。今は設定が自由化されているため、事務所により報酬額が大きく異なります。また相続財産や案件の難易度によっても報酬額は変わりますので、参考価格で検討することになります。
業界での相場は基本料金を50万円程度に設定しているところが多く、プラスとして財産総額×0.5~2%程度の報酬が発生しています。
税理士に遺言執行者の依頼をするなら、相続税の節税対策を見据えた遺言の作成や相続税申告と併せて依頼するとメリットが大きいでしょう。
司法書士の場合:20~75万円前後
司法書士業界には遺言執行報酬の規定がありません。各事務所ごとに報酬設定がかなり異なります。一番多いプランが「30万円~」か「相続財産価額の1%」という事務所が多いようです。
ホームページに掲載されている料金プランについては、何の作業が報酬に含まれているのかなど詳細をメールや電話などで必ず確認しましょう。
司法書士に依頼する最大のメリットは、不動産登記が絡む相続財産がある場合には、遺言執行がスムーズに進むことです。司法書士は登記の専門家なので、相続財産に不動産が多い場合には候補として検討してみるのがいいでしょう。
銀行の場合:30~300万円前後
信託銀行でも「遺言信託」などのサービス名称で、おもに信託銀行に資産を預けている人を対象に遺言執行サービスを提供しています。
遺言信託の手数料は各信託銀行によって細かい違いがありますが、①基本料金、②遺言書保管料金(年額)、③遺言書の書き換え手数料、④遺言執行報酬といったように、手数料の基本的な枠組みは同じです。最終的に遺言執行を行った時の手数料(遺言執行報酬)は、相続財産の評価額に一定割合を掛けた金額です。
そして各銀行とも、最初の「基本手数料が低額なプラン」と、最初の基本手数料は高めに設定されているが最終的な「支払総額が低額となるブラン」の2種類を用意しています。前者は遺言者の負担が軽く、後者は相続人の負担が軽くなります。
銀行での遺言執行報酬が高めに設定されているのは、銀行員には遺言執行などをする権限がなく弁護士・税理士などに執行を委託するため、その費用が含まれているからです。とはいえ、窓口として身近な存在である銀行に全てを任せられることがメリットとなります。
遺言執行者の報酬が決まる要因・仕組み
遺言執行者の報酬の決め方には、次の3つがあります。
- 遺言書の記載内容に従う
- 遺言執行者と相続人が相談して決める
- 家庭裁判所で決める
以下、それぞれについて詳しく解説していきます。
遺言書の記載内容に従う場合
遺言で遺言執行者を指定した場合、併せて遺言執行者の報酬についても定めることができます。遺言で遺言執行者に指定された人は遺言執行者の就任を拒否することができます。したがって、遺言者は、指定した人に遺言執行者を引き受けてくれるかどうか、報酬額を併せて確認したうえで遺言書を作成しましょう。
遺言執行者と相続人が相談して決める場合
遺言に遺言執行者が指定されているのに報酬が記載されていない場合には、遺言執行者と相続人との協議によって報酬額を決めます。
家庭裁判所で決める場合
遺言執行者と相続人との間で遺言執行報酬を相談しても決まらない場合、遺言者の最期の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺言執行者に対する報酬付与申立」をして、家庭裁判所に報酬額を決めてもらうという方法をとります。
また、遺言で遺言執行者が指定されていない場合や遺言で指定された遺言執行者が就任を拒否した場合、さらに指定された遺言執行者がすでに亡くなっていた場合には、家庭裁判所に「遺言執行者選任申立」をして、遺言執行者を選任してもらうことができます。
家庭裁判所によって選任された遺言執行者の報酬も、家庭裁判所に「遺言執行者に対する報酬付与申立」をして、報酬額を決めてもらいます。
遺言執行者の仕事内容
遺言執行者の仕事内容について見ていきましょう。
まず遺言者が死亡したと同時に相続が開始します。相続が開始すると、遺言執行者は、選任されたことについて承諾するか拒否するかの回答をします。拒否する場合に理由は必要ありません。
遺言執行者の仕事の流れは、
- 遺言者死亡と同時に相続開始
- 遺言執行者を承諾
- 就任承諾をしたことを相続人全員に通知
- 遺言内容に向けての手続きを開始する
- 戸籍などの証明書集め
- 相続財産の調査
- 法務局に対する登記申請手続き
- 各金融機関に対する解約手続き
- 株式などの名義変更手続き
- 換価手続き
- 遺言内容に従い執行していく
- 相続人全員に完了の業務報告
- 業務完了
遺言執行は予想以上に大変で複雑な業務です。すべてを親族間で済ませるのではなく、難しいことは専門家に相談しましょう。
遺言執行者の報酬についてのポイント
遺言執行者の報酬についてこれまで見てきましたが、正直まだピンと来ていないことも多いと思われます。そこで、遺言執行者の報酬に関するポイントをまとめてみました。遺言執行者を選ぶ際の参考にしてください。
遺言執行者は誰に頼んでも良い
遺言執行者の職務内容は、専門家に依頼しても相続人が行う場合でも内容は変わりません。つまり誰に頼んでもいいのです。
ただし、専門家に依頼する場合には、それぞれの専門家が得意とする分野があるので、報酬額だけでなく、付帯サービスも確認しながら判断していくといいでしょう。
遺言執行者の報酬は遺言執行費用とは別
遺言執行費用と報酬は別のものです。
遺言執行費用はいわゆる経費で、①相続財産の管理費用、②不動産名義変更などの移転登記費用、③預貯金の解約手続きに要する費用、④相続財産目録の作成費用などが挙げられます。
ただし、支払う場合には、合わせて支払いをします。支払い方法は遺言執行者と協議して、前金などを支払うケースが多いようです。
遺言執行者の報酬は相続財産から支払われる
遺言執行に関した費用負担は民法に規定されており、相続財産から負担をすることになります。したがって、遺言執行者は遺言執行の内容が完了してからでないと報酬を受けとれません。また、途中で放棄した場合も、報酬は受け取れません。
遺言執行者の報酬は、遺言執行者が遺産から取得します。遺言の内容にもよりますが、遺言執行者は遺言者の遺産から自分の報酬を取得して、残りの財産を遺言に基づき相続人や受遺者に引き渡します。
おわりに:遺言執行者は依頼する人によって費用の差もある。自分に合った依頼先を見つけることが重要
遺言執行者の報酬について解説してきました。だいたいの相場はおわかりになったと思います。遺言執行者は相続人のうちの一人はもちろん、法律の専門家や銀行などさまざまな人に依頼することができます。依頼する人によってかかってくる費用の差も大きいですが、報酬額だけを見て判断したのでは、思ったように遺言を執行してもらえないこともあります。
特に専門家はそれぞれが得意分野をもっているので、遺言者は自分の財産に何が多いのかを考えたほうがいいでしょう。たとえば不動産が多いなら司法書士、家族間で紛争が予測される場合には弁護士、相続税の節税などを鑑みて頼みたい場合には税理士といったように、自分にとって何が大事で何を重視して依頼したいのかなどを踏まえ、最適な遺言執行者を見つけることが重要となります。
それでも依頼先が決まらない場合には、まずは相談から始めてみるといいでしょう。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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