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相続の知識

遺言執行者とは?誰がなれるのか、任務の内容や選任が必要なケースを解説

遺言執行者は「いごんしっこうしゃ」と読み、遺言を実行する人のことです。未成年者と破産者以外の誰でもなることができ、遺言者の代理人として働きます。必ずしも選任する必要はありませんが、「相続人廃除」や「認知」についての記載がある場合には、遺言執行者が必要です。ここでは遺言執行者について詳しく解説をします。

遺言執行者(遺言執行人)とは?

遺言執行者とは遺言を実行する人のことをいいます。財産目録の作成や遺産の管理、相続登記・名義変更などを行い、遺言等で指定された人が遺言執行者となります。

民法 第1012条1項に「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」とある通り、遺言執行者は遺言の内容を実現する権利および義務があります。

遺言は遺言者が亡くなった時に効力を生じます。したがって遺言者は自分の遺言の内容を自ら実現することはできません。遺言者の代わりに遺言内容の実現をするのが「遺言執行者」です。遺言執行者は遺言者の代理人となります。

相続に関する手続きは相続人が多いほど集める書類も増え、署名捺印を行う書類の数も多くなってしまいます。遺言執行者を選任すると、相続に関わる手続きを遺言執行者が単独で行うことが可能となり、手続きがスムーズに進みます。

遺言執行者には誰がなれる?

遺言執行者になるには特別な資格などは必要ないので、誰でもなることができます。ただし、民法 第1009条により、未成年者と破産者はなることができません。

就任してもとくに相続人の利害に関係しないため、遺言者の配偶者や子供など相続人の中から選任することも可能ですし、弁護士や司法書士など専門家に依頼することもできます。遺言執行者に指名されたとしても断ることも可能です。

遺言執行者は必ず選ばないといけない?

遺言執行者を選任するかの判断は遺言者の自由であり、遺言執行者を決めない選択ももちろん可能です。ただし、遺言の内容に「相続人廃除」や「認知」についての記載がある場合は、遺言執行者が必要となります。そうした場合、遺言執行者を選任しておくことで相続に関わる手続きをスムーズに行うことができます。

とくに財産が多い方やご家族同士の交流が疎遠な方、もめそうな方などは、弁護士など専門家にお願いしておくのが無難でしょう。

選任が必要なケース

遺言に「認知」「相続人の廃除」についての記載がある場合は、遺言執行者が必要です。

認知

「認知」とは婚姻関係ではない男女の間に生まれた子である「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」を自分の子であると認める行為のことです。遺言者によって認知されると、その認められた子は相続人として遺産を受け取ることができるようになります。遺言による認知は、遺言執行者が認知届けなどの手続きを行う必要があるため、遺言執行者の選任が必要です。

相続人の排除

「相続廃除」とは推定相続人(相続する権利を有する人)の中に、遺言者に対し虐待・暴行や侮辱、非行などを行った人がいた場合に遺言者の意思で、該当する人物に対して遺産を渡さないように相続人としての権利をはく奪することをいいます。

遺言によって相続廃除を行うには、その手続きを家庭裁判所で行わねばならないため、遺言執行者の選任が必要になります。

選任が不要なケース

遺言に遺言執行者の選任の記載がない場合、また相続廃除や認知に関する記載がなければ、遺言の執行に遺言執行者が必ずしも必要なわけではありません。下記のようなケースのみの記載は、相続人だけで遺言の内容を実行することができます。

遺産分割の方法

遺産分割は誰に何を相続(遺贈)するなどの指定です。ただし、相続人が遺留分の権利をもっている場合、遺留分を侵害するような遺産分割を記載してしまうと、その侵害した分について、金銭での返還を請求される場合がありますので注意が必要です。

寄与分

被相続人に対して同居や介護など何かしらの形で奉仕していた相続人がいる場合、その相続人の相続分を増やすことができます。増やした相続分を寄与分といい、寄与分を受け取ることができる行為を寄与行為といいます。

遺贈

「遺贈」とは、相続人ではない人が財産を受け取ることをいいます。例えば、実際の相続人は配偶者と子ですが、孫にも財産を遺したいと思い遺言に記載していた場合、孫に渡る財産は相続ではなく「遺贈」となります。

また遺言がそもそもない場合には、遺言執行者を選任する必要はありません。その場合は、遺言がないので遺産の分割は相続人同士での話し合い(遺産分割協議)によって決定します。

遺言執行者を選任する方法

遺言執行者の選任には3つのパターンがあります。

(1)遺言による遺言執行者の指定

最も手っ取り早い方法は、遺言者が遺言書のなかで遺言執行者を指定する方法でしょう。遺言書内に「○○を遺言執行者に指定する」と記載しておけば、指定された人が遺言執行者になります。

もちろん、遺言執行者に指定する人には事前に知らせておく必要があります。遺言発表まで知らされず、突然遺言執行者に選任されたら大変驚かれてしまいます。遺言で指定する際にはしっかりと遺言執行者となる人にあらかじめお願いして、了承を取っておいてください。

(2)第三者による遺言執行者の指定

遺言内で遺言執行者自体は指定せずに「遺言執行者を決めてもらう人」を指定するやり方です。ちょっと遠まわりな方法になりますが、なぜこのような遠まわりな方法を取るのでしょうか。これは、遺言者が遺言をつくっている時と実際の相続開始時で状況などが変わっている可能性があるためです。

遺言では遺言執行者を決めてもらう人だけを指定しておき、相続が発生した時にふさわしい人に遺言執行者になってもらいたい場合に取る方法だと考えておけばOKです。

(3)家庭裁判所による遺言執行者の選任

遺言に遺言執行者の指定や遺言執行者を指定する人に関して記載がない場合や、遺言執行者に指定された人が断った場合、遺言執行者に指定されている人が死亡している場合などには、家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てを行う必要があります。
家庭裁判所に申し立てを行うには事前に遺言執行者の候補者を決めておかねばなりません。
未成年者、破産者以外であれば遺言執行者の候補者として申し立てることができます。

①申し立て

相続人や遺言者の債権者など利害関係のある人が遺言者の住所地の家庭裁判所に申し立てをします。

②必要書類

遺言執行者選任申立書の様式については裁判所のホームページからダウンロードできます。
ただし、家庭裁判所によって書式が異なる場合や、上記のほかに申立人の身分証明書などの提出を求められる場合もあります。申し立てを行う家庭裁判所に事前に問い合わせた方が無難でしょう。

③申し立てにかかる費用

  • 収入印紙/800円(遺言1通につき)
  • 連絡用の郵便切手

遺言執行者になったらすべきこと

遺言執行者に選任された人の仕事内容を順を追って解説します。

(1)就任通知書を作成・交付

遺言執行者に指定された場合、遺言執行者を承諾するかしないかを判断します。承認する場合は、就任通知書を作成し相続人に送付します。

(2)相続財産を調べる

まずは、被相続人の財産を調査します。相続財産は預貯金や不動産などのプラスの財産以外にも、負債や買掛金などマイナスの財産も含まれますので綿密に調査する必要があります。

(3)相続人を調べる

財産の調査と同様に、誰が相続人なのかを調べないといけません。相続人が誰になるか調べるために、相続人の戸籍等を収集します。

(4)財産目録の作成・交付

財産の調査と相続人の調査が終了したら、財産目録を作成しましょう。財産目録は財産の一覧表のようなものです。被相続人の財産の内容を相続人にお知らせする必要がありますので、作成した財産目録は遺言書の写しと一緒に相続人に交付します。

(5)遺言内容を実行する

遺言の内容に記載されたとおりに相続人に財産を引き渡します。遺言書の内容を実行するため遺産の名義を自分に変更する必要がある場合などには相続人・受遺者へ手続き協力を依頼しましょう。

(6)任務完了後に文書で報告をする

遺言に記載されていた内容をすべて実行したら、任務完了報告を行います。文書によって任務が完了した旨を相続人に報告します。

遺言執行者を辞任・解任することもできる

遺言執行者は解任することができます。解任の手続きは選任の手続きと同じように家庭裁判所で行います。
遺言執行者を解任するパターンは遺言執行者本人の意思による場合と相続人など利害関係者からの申し立てによる場合が想定されます。それぞれ詳しく解説していきます。

遺言執行者を辞任する場合

遺言執行者は指定された時点で断ることも可能です。しかし、承諾した場合には遺言執行者としてのお仕事を速やかに開始する必要があります。一度承諾した遺言執行者を辞任する場合には、家庭裁判所で許可を得る必要があります。
承諾後に遺言執行者を辞めるには正当な理由が必要となります。

遺言執行者を解任する場合

遺言執行者が任務を行ってくれない場合や、遺言内容の一部しか実施してくれないなど、遺言執行者としての義務を果たさない場合には義務違反として解任することができます。
この場合にも、家庭裁判所で解任の手続きを行い、審理を受ける必要があります。
どちらの場合でも、選任の手続きと同様に遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申し立てを行います。

遺言執行者解任の手続き方法

(1)遺言執行者解任の審判

遺言執行者を解任するには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺言執行者解任の審判」を申し立てます。申立人になれるのは利害関係人で、具体的には相続人や受遺者、相続債権者などが該当します。

申し立ての際には、申立書と解任を必要とすることを証明する資料のほか、以下の書類の提出を求められます。

【必要書類】

  • 遺言者の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)
  • 申立人の戸籍謄本(申立人が親族の場合)
  • 遺言執行者の住民票または戸籍附票
  • 遺言書写し、または遺言書の検認調書謄本の写し
    ※申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の記録が保存されている場合は、戸籍謄本、遺言書写し・遺言書の検認調書謄本写しの添付は不要です。
  • 利害関係を証する資料(申立人が親族以外の場合)

また、連絡用の郵便切手や収入印紙なども必要です。必要書類については、申立先の家庭裁判所に確認をしながら準備を行いましょう。

家庭裁判所の審理の結果、解任の審判が確定した時は、遺言執行者の任務は終了することになります。

(2)遺言執行者の職務執行停止の審判・職務代行者選任の審判

遺言執行者解任の審判を申し立てても、審判が確定するまでには時間を要します。しかし、対象の遺言執行者は、審判確定まで権限を有します。

そのため、すぐに遺言執行者の職務を止めさせる必要がある時には、「遺言執行者の職務執行停止の審判」を解任の審判と合わせて申し立てましょう。

また、解任の審判が確定するまでの期間、遺言を執行する代行者が必要であれば「職務代行者選任の審判」の申し立てが必要です。職務代行者は、解任の審判が確定するまでの期間、遺言執行者の職務を代行する権限を有しますが、解任の審判が確定すれば権限は消失するので注意しましょう。

2019年民法改正による遺言執行者の権利の変化

2019年に民法改正が行われ、遺言執行者の権利に関する内容も大きく変更されました。

例えば、遺言執行者は相続手続きなどの任務を第三者に依頼することができるようになりました。今まで別の人に任せるためには、病気などのやむを得ない理由や遺言での記載が必要でしたが、原則的にはこれが自由になったということになります。

出典:改正後民法 1016条1項より
「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」

その他にも、各相続人か遺言執行者か、どちらが行うのが良いか見解が分かれていた「預貯金の解約・払い戻し」についても、改めて遺言執行者が行えるということが提示されました。

出典:改正後民法 1014条3項より
「前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る」

このように、2019年の民法改正によって遺言執行者の権限が大幅に拡大、明確化されました。遺言執行者には強い権限が認められているので、被相続人の方が遺言書で適切な遺言執行者を指定しておくことは大切です。
管理能力や適性のみならず、相続人との関係性も考慮して選ばないと、のちのち相続人と対立し、トラブルに発展する恐れがあります。

また、権限が大きいだけに遺言執行者の仕事は多く、親族など一般の人が務めるのは難しい場合が少なくありません。信用できて、かつ相続に強い弁護士や税理士、司法書士などといった専門家を選んでおくと、トラブルを避けてスムーズに相続の手続きを終えることができるかもしれません。

おわりに:遺言執行者になったら手順通りに対応すればOK!

遺言執行者として一番大事な仕事は、遺言の内容を忠実に実現することです。
手順通りに進めていけば大丈夫ですが、なかなか大変なこともまた事実です。仕事のあるなかで、平日に役所や金融機関に行って手続きしたり、関係者から署名捺印を集めたり、かなりの時間と手間がかかります。いったん引き受けた遺言執行者の職務について、自分には荷が重い、手に余る、とお感じになるようであれば、専門家に相談しましょう。

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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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