相続の知識

2040年問題とは? 2025年問題との違いや社会への影響、対策を解説

2040年問題は、日本社会が直面する深刻な課題であり、労働力の不足や社会保障費の増加などが予測されています。本記事では、2040年問題の概要や2025年問題との違い、社会への影響、企業や経営者の方ができる具体的な対策などについて解説します。これらの課題や対策に対する理解を深められ、経営者の方々が今後の展望を考える上で役立つ内容となっているのでぜひ確認してみてください。

2040年問題とは

2040年問題とは、少子高齢化が進むことで発生する社会的・経済的な諸問題を指します。2040年には、1971年から1974年生まれの「団塊ジュニア世代」が65歳以上を迎え、総人口に占める高齢者の割合が大幅に増加します。日本は超高齢社会に突入し、労働力の不足や経済停滞、社会保障費の増大や医療・介護サービスの需要の急増が予想されています。

2040年問題と2025年問題の違い

いずれも日本社会が直面する深刻な課題ですが、それぞれ異なる側面があります。

2025年問題では、主に社会保障費の不足が懸念されています。2025年には、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障サービスの需要が急増します。社会保障費が膨れ上がり、財政の圧迫が避けられません。現役世代人口の減少と相まって、社会保障費の負担が重くなり、適切なサービス提供が困難になる可能性が指摘されています。

一方、2040年問題は超高齢化社会の到来で、社会保障制度の継続が極めて困難になるだけでなく、社会インフラや公共施設の老朽化が進みます。これらを維持・運営するための人材不足や、必要な財源の確保も大きな課題となります。具体的には、道路や橋、学校などの公共施設の維持管理に必要な労働力や予算が不足し、社会機能が低下する可能性があります。

2040年問題が社会に与える影響

2040年問題が社会に与える影響としては、次のようなことが考えられます。

  • 労働人口が減り、経済が縮小する
  • 社会保障制度の維持が困難になる
  • 社会インフラの老朽化が進む
  • 地方の過疎化・自治体の消滅が進む

労働人口が減り、経済が縮小する

労働力人口とは、満15歳以上の就業者と完全失業者の合計で、働く意思や能力を持っている人の数を指します。

厚生労働省が2023年5月に公表した「将来推計人口(令和5年推計)の概要」によれば、日本の総人口は2020年の1億2,615万人から、2040年には1億1,284万人に減少する一方、65歳以上の高齢者の割合は28.6%から34.8%に上昇すると予測されています。

高齢者率が増えたとしても、労働力人口や労働力率が大きく減少しなければ、問題はさほど深刻ではありません。しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構が2024年3月に公表した「2023年度版 労働力需給の推計 労働力需給モデルによるシミュレーション」によれば、労働力人口は2022年の6,902万人から、最悪の場合、2040年には6,002万人と減少すると見込まれており、労働力率も62.5%から59.2%へと低下します。

わずか18年の間に労働力人口が900万人も減少する予測であり、企業の生産性は低下し、経済成長がさらに鈍化する可能性があります。

社会保障制度の維持が困難になる

厚生労働省が2019年2月に公表した「今後の社会保障改革について-2040年を見据えて-」によれば、社会保障給付費は2018年度の121兆3,000億円から、2025年度には約140兆円、さらに2040年度には約190兆円まで膨れ上がる見通しです。

内訳を2018年度と2040年度とで比較すると、医療費は56兆7,000億円が約68兆円に、介護費は10兆7,000億円が25兆8,000億円に、年金は56兆7,000億円が73兆2,000億円にそれぞれ増えると予測されています。

医療費は、高齢化に伴う慢性疾患の増加や医療技術の進歩により、急激に増加する見込みです。介護費も同様に、高齢者人口の増加により、介護サービスの需要が増大し、その結果として介護費も大幅に増加することが予想されます。年金も、高齢化による受給者数の増加と平均寿命の延伸により、年金支給額が増加することが見込まれており、2040年問題によって、社会保障制度の維持がますます困難になると考えられています。

厚生労働省「今後の社会保障改革について-2040年を見据えて-」

社会インフラの老朽化が進む

道路、橋梁、公共施設などの社会インフラの劣化が進み、これらを維持することがますます困難になります。これにより、安全性や利便性が低下することが懸念されています。

例えば、路や橋梁の劣化が進むことで、交通事故のリスクが高まり、安全性が低下する可能性があります。あるいは高齢者が増えることで、公共交通機関の利用者が増加し、バリアフリー化の必要性が高まりますが、設備の整備が十分に進まないことも2040年問題の影響の1つです。

地方の過疎化・自治体の消滅が進む

少子高齢化が進む中で、若年層の減少と高齢化の加速により、地方の人口が大幅に減少しています。この現象は、地域経済の活力を失わせ、社会インフラの老朽化を一層深刻な問題にしています。

社会インフラの老朽化は、地方の過疎化をさらに加速させます。例えば、道路や橋梁の維持・管理が困難になり、公共交通機関の運行本数の減少やサービスの質の低下が進みます。住民の生活環境は悪化し、さらなる人口流出を引き起こします。また、公共施設の老朽化により、教育や医療サービスの提供が困難になることで、地域の魅力が低下し、若年層の定住もより難しくなります。

結果として、一部の自治体は住民数の減少により、自治体としての機能を維持することが難しくなり、場合によっては自治体が消滅してしまうおそれがあります。

2040年問題に向けた4つの対策

さまざまな2040年問題に向けて対策として考えられるのは、次の4つです。

  • 多様な働き方の導入
  • IT・デジタルの導入と活用
  • 事業承継の準備
  • ウェルビーイング経営の推進

1. 多様な働き方の導入

2040年問題に対処するための対策の1つに、多様な働き方の導入が挙げられます。従業員が働きやすい環境を構築し、労働生産性の向上やワークライフバランスの実現を図ります。

例えば、フレックス制の導入は、従業員が自分のライフスタイルに合わせて労働時間を調整できるようにする制度ですが、通勤時間の短縮や家庭と仕事の両立がしやすくなり、ストレスの軽減につながります。

リモートワークの導入も、場所にとらわれずに業務を行えるようになり、通勤による時間と労力の削減が期待できます。特に地方に住む従業員や、育児・介護と両立したい従業員にとって、リモートワークは大きなメリットをもたらします。

副業や時短勤務の導入も、働き方の柔軟性を高めるために有効です。副業を許可することで、従業員は自身のスキルを多方面で活用し、収入を増やす機会が得られます。時短勤務は、特に育児や介護など家庭の事情に合わせて労働時間を短縮でき、仕事と家庭のバランスを取るのに役立ちます。

2. IT・デジタルの導入と活用

IT・デジタルの導入と活用も欠かせません。まず、ITの導入によって、データ駆動型の意思決定が可能となります。これにより、リアルタイムでの情報収集と分析が行え、迅速かつ的確に対応できるようになります。また、DXの推進により、業務プロセスの自動化やデジタル化が進み、人的リソースの効率的な活用が図れます。

さらに、人材不足の問題に対してもデジタル技術の活用で、労働力の不足を補えます。例えば、AIやロボット技術を導入することで、重労働や単純作業を自動化し、人間の労働力をより高度な仕事に集中させることができます。

3. 事業承継の準備

2040年問題において、事業継続が困難になることは避けられない課題です。特に少子高齢化の進行により、中小企業の経営者が高齢化し、後継者不足が深刻化しています。これは2025年問題と同様であり、早めに事業承継の準備を行うことが求められます。

まず、事業承継の準備には、現状の経営状況の把握と後継者の選定が必要です。現経営者は、自身のリタイアを見据え、早期に後継者を育成し、引き継ぎに向けた計画を立案することが重要です。
財務面の整理や法的手続きを整えることも欠かせません。

さらに、ITの導入やDXの推進は、事業承継の一環としても有効です。業務の効率化や情報のデジタル化が進み、後継者への引き継ぎがスムーズに行えるようになるからです。

4. ウェルビーイング経営の推進

ウェルビーイング経営を実践することによって、組織の活性化と社員の幸福度向上を目指し、離職防止や定着率アップ、ひいては組織の長期的な安定を図ります。具体的には例えば、従業員が働きやすい環境を整えるための健康促進プログラムの導入やストレス管理支援、社内コミュニケーションの活性化などが挙げられます。

ただし、ウェルビーイング経営は多様な働き方の導入に比べて、組織文化として浸透するまでに時間がかかるため、早めに対策することが求められます。組織の一体感や従業員のエンゲージメントを高めるためには、経営層からの積極的な支援が不可欠です。

将来的には、ウェルビーイング経営の取り組みが評価されることで、企業価値が向上し、求人市場でも優位に立つことが期待され、採用率の向上や優秀な人材の確保につながります。

事業承継のお悩みは、レガシィまでご相談ください

2040年問題とは、少子高齢化が進むことで発生する社会的・経済的な諸問題を指します。2025年問題よりも広範囲にわたり、社会保障制度の維持、インフラの老朽化、地方の過疎化といった課題に取り組む必要があります。対策としては、多様な働き方の導入やIT・デジタルの活用、事業承継の準備、ウェルビーイング経営の推進といったことが挙げられます。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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