相続の知識

相続対策として生命保険を活用する方法|メリットや注意点も解説

相続対策として生命保険を活用する方法がよくわからないと感じる方もいるかもしれません。本記事では、相続に伴い発生する税金を少しでも節税したいと考えている方に向けて、生命保険を活用する際のメリットやデメリット、そして生命保険を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。

相続対策として生命保険を活用する方法

相続対策の一環として、生命保険を活用することは非常に効果的です。そこで、生命保険の基本的な仕組みと、保険金と税金の関係、そして具体的な応用方法について詳しく解説します。

生命保険の仕組み

生命保険の基本的な仕組みとして、「契約者」「被保険者」「保険金受取人」の3者が登場します。

契約者とは、保険会社と生命保険契約を結び、保険料を負担する人です。この際、相続対策を検討している契約者が保険料を支払うことで、相続財産を減らせます。

被保険者とは保険金がかけられる人、保険金受取人とは被保険者に万が一のことがあった際に保険金を受け取る人です。被保険者に満期や死亡などの支払い事由が発生した際、保険会社から契約時に定められた保険金受取人に対して保険金が支払われます。

なお、この3者が別々である必要はありません。例えば、契約者と被保険者が同一人物の場合もあります。

保険金と税金の関係

生命保険金を受け取る際の税金について、契約者と被保険者が同一の場合では、家族などが受け取る保険金は「相続税」の対象となります。例えば、夫が自身に生命保険をかけ、受取人が妻の場合などです。ただし、生命保険の本旨は「残された家族の生活資金」という側面が強いため、相続税には「非課税枠」が設けられています。この非課税枠を相続対策として活用することが可能です。

また、契約者と被保険者が異なり、契約者と受取人が同一の場合、受け取れる保険金は「一時所得」として扱われ、「所得税」および「住民税」の対象となります。例えば、夫が妻に生命保険をかけ、受取人が夫の場合などです。

さらに、契約者と被保険者が異なり、受取人が契約者以外の場合、受け取れる保険金は「贈与」として扱われ、「贈与税」の対象となります。例えば、父が契約者で、子供を被保険者および受取人とした学資保険などが該当します。

相続対策として生命保険を活用する6つのメリット

生命保険を活用することで、以下の6つのメリットが享受できます。

  • 相続人は保険金の非課税枠を利用できる
  • 受取人を指定できるため資産分割がスムーズに進む
  • 保険金を代償分割に活用できる
  • 保険金を相続税の納税用資金として使用できる
  • 保険金は相続放棄の対象とならない
  • 子供を契約者にすることで生前贈与としても使用できる

それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

1. 相続人は保険金の非課税枠を利用できる

生命保険には、法定相続人の人数に応じて「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠が設けられています。また、相続放棄をした人も、法定相続人の数に含めることが可能です。

No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

例えば、死亡保険金が2,000万円で、契約者・被保険者が夫、受取人が妻、子供が3人いる家族の場合、500万円×4人=2,000万円が非課税枠となり、2,000万円はすべて相続税の対象外となります。

非課税枠を超えた保険金に関しては、その超えた金額とほかの相続財産の合計金額から基礎控除額を差し引き、各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額に税率を掛けて相続税の総額を計算します。基礎控除額の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」です。

No.4152 相続税の計算

2. 受取人を指定できるため資産分割がスムーズに進む

通常、相続財産は相続人全員による遺産分割協議が必要で、全員の意見が一致することが求められます。一般的に、相続財産は法定相続分を基準に協議されます。

しかし、生命保険金は受取人固有の財産と見なされるため、遺産分割協議を経ることなく、指定された人が契約通りに保険金を受け取れます。これにより、相続人間の資産分割がスムーズに進み、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

3. 保険金を代償分割に活用できる

相続財産の中に、不動産など分割が難しい財産が含まれている場合、相続のバランスを取るために代償分割が行われることがあります。代償分割とは、一部の相続人が不動産などを相続する代わりに、ほかの相続人に対して代償金を支払う方法です。

例えば、相続財産が1,000万円の土地のみで、相続人として子供2人がいる場合を想定しましょう。1人が土地を相続し、もう1人に対して代償金として500万円を支払うことが求められるとします。通常であれば500万円の大金をすぐに用意するのは困難です。しかし、生命保険金を活用すれば、この代償金をすばやく用意できます。

このように生命保険金を代償金に充てることで、相続人間の公平を保ちながら、不動産などの分割が難しい財産を円滑に処理することが可能です。

4. 保険金を相続税の納税用資金として使用できる

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に支払わなければなりません。相続人はそれまでに納税資金を用意しなければならず、大きな負担となる場合があります。

No.4205 相続税の申告と納税

生命保険の保険金は、保険会社に申告することで迅速に振り込まれるため、現金としてすぐに受け取れます。これにより、納税用の資金として活用することが可能です。

一方、預貯金の場合、一般的には被相続人が死亡すると口座が凍結され、相続手続きが完了するまで資金を引き出せません。そのため、納税期限が迫っている場合や、早急に現金が必要な場合には、生命保険金が非常に有効な手段となります。

5. 保険金は相続放棄の対象とならない

相続放棄とは、相続人が自分の相続権を放棄する手続きを指します。通常、相続放棄をすると、相続財産を一切受け取れません。しかし、例外として、生命保険金に関しては受取人固有の財産と見なされるため、相続放棄をしていても受け取れます。ただし、上述の生命保険の非課税枠は、相続人としての権利を前提としているため、相続放棄をした場合には適用されません。相続放棄については以下の記事をご参考ください。

6. 子供を契約者にすることで生前贈与としても使用できる

生命保険を活用するもうひとつの方法は、契約者と受取人を子供に設定し、被保険者を親とする保険契約を結ぶことです。この方法を用いることで、親から子供への生前贈与として生命保険を活用できます。

具体的には、贈与税の対象とならないように年額110万円以下を親が子供に贈与し、子供はその全額を生命保険の保険料として支払います。親が死亡した際に、子供は保険金を受け取ります。契約者と受取人が同一であることから、保険金は相続財産ではなく一時所得(または雑所得)として扱われ、所得税と住民税の対象となります。

この方法を選択する際は、相続税と所得税・住民税のどちらの負担が少ないかを入念にシミュレーションしてください。

贈与税の非課税枠については以下の記事をご参考ください。

相続対策として生命保険を活用する3つのデメリット

生命保険は相続対策として多くのメリットがありますが、その一方で以下の注意すべき3つのデメリットも存在します。

  • 保険の加入年齢によっては保険料が高くなる
  • 失効すると効力を失う
  • 非課税枠を利用できるのは相続人のみ

それぞれ詳しく解説します。

1. 保険の加入年齢によっては保険料が高くなる

生命保険は、被保険者の年齢が高いほど保険料が高くなる仕組みです。相続対策を目的として生命保険を活用する際、被相続人を被保険者とする場合が多いため、高齢での加入となるケースが増えます。これにより、保険料が非常に高額になる可能性があるため、加入時に保険料の負担をしっかりと計算することが必要です。

2. 失効すると効力を失う

保険料が高額になるなどの理由で支払いが滞ると、生命保険は「失効」し、契約の効力を失うリスクがあります。通常、払込猶予期間が設けられているものの、猶予期間を過ぎても支払いがない場合、保険契約は失効します。失効した保険を再び有効にするためには、「復活」の手続きを行う必要がありますが、その際には失効期間中の保険料や利息の払い込みなどが求められ、手続きのハードルが高くなる点に注意が必要です。

3. 非課税枠を利用できるのは相続人のみ

生命保険の非課税枠は、法定相続人に限って適用される制度です。法定相続人以外が保険金を受け取った場合、その金額は非課税枠の対象外となります。そのため、相続対策として生命保険を利用する際には、受取人の選定を慎重に行い、非課税枠を最大限に活用できるようにすることが重要です。

相続対策として生命保険を活用する時の注意点

生命保険は相続対策に有効なツールですが、適切に活用するためには、以下の2つの注意点を押さえる必要があります。

  • 生命保険の特約に注意する
  • 相続開始後に受取人の変更はできない

それぞれ詳しく解説します。

生命保険の特約に注意する

生命保険にはさまざまな種類や特約があり、その中には三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)などが発覚した場合に、生前に死亡保険金と同額が給付される生前給付型の保険も存在します。これらの特約は治療費などに充てられるため、本来ならプラスに見えるかもしれません。しかし、相続対策を目的として生命保険を活用する場合、生前に資産を増やすような保険は避けるべきです。相続対策には、死亡後に保険金が支払われるタイプの保険を選ぶことが求められます。

相続開始後に受取人の変更はできない

生命保険の受取人の変更は、契約者かつ被保険者が存命中でなければできません。また、契約者であり被保険者が認知症などを患い、契約内容を理解する認知力がなくなった場合も、受取人の変更は難しくなります。このため、受取人を変更する可能性がある場合は、早めに対応しておくことが重要です。

相続対策としておすすめの生命保険は「一時払い終身保険」

相続対策において、特におすすめの生命保険は「一時払い終身保険」です。一時払いとは、保険料を一括で支払う方式のことです。一般的に高齢になると健康リスクが高まるため保険に加入しにくくなりますが、この方式は一括払いなので比較的容易に加入できます。また、保険料の支払いを一度で済ませるため、その後の支払いに悩まされることもありません。したがって、相続対策として計画的に資産を移転する際にも有効です。

ただし、注意が必要なのはドル建ての一時払い終身保険です。このタイプの保険は、保険料も保険金も為替変動の影響を受けやすく、為替リスクが伴います。そのため、為替相場の動向を注視し、リスクを理解した上で契約することが重要です。

相続でのお困り事・ご相談は「レガシィ」まで

生命保険は、相続対策において非常に有効なツールです。非課税枠を活用することで相続税の負担を軽減できるほか、さまざまなメリットがあります。一方で、保険料の負担や保険の特約について慎重に検討する必要があります。これらのポイントを理解し、適切な生命保険を選ぶことが有効な相続対策につながります。

もし相続税対策にお悩みであれば、「税理士法人レガシィ」にお任せください。レガシィは、創業60周年を迎えた相続専門の税理士法人です。相続税の節税対策や事前の準備、そして相続に関するあらゆるご相談を承っております。ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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