相続の知識

エンディングノート(終活ノート)の書き方|書くべき項目や内容、注意点

エンディングノート(終活ノート)は、自分の希望や重要な情報を記録するための大切なツールです。これを用意することで、万が一の事態が発生した際に、遺された家族や関係者がスムーズに手続きを進められます。本記事では、エンディングノートの書き方について、書くべき項目や内容、そして注意点を詳しく解説します。

エンディングノート (終活ノート)とは

エンディングノートは、自身が終末期を迎えるにあたり、希望や考えをまとめて記しておくためのノートです。このノートを作成することで、医療や介護の内容、葬儀の形式、さらには遺産の分配などについて、自分の望みを明確に伝えられます。終活の一環として書かれるため、「終活ノート」とも呼ばれています。主な目的は、自分の死後に遺された家族が困らないように、必要な情報を整理しておくことにあります。

エンディングノートには、各種手続きや葬儀に関する希望を具体的に記すのが一般的です。このノートに記載されることが多い内容としては、介護や葬儀、相続に対する考え方、家族や友人へのメッセージ、契約中のサービスに関する情報などがあります。これらの情報を事前にまとめておくことで、遺族がさまざまな手続きをスムーズに進められるようになります。

遺言書との違い

エンディングノートと遺言書の大きな違いは、法的効力の有無です。前者には法的拘束力がないため、記載された内容はあくまで本人の希望や意思を示すものであり、法的な効力はありません。一方、遺言書は適切に作成されていれば、法的拘束力を持ちます。そのため、財産の分配などに関して絶対にかなえてほしい強い希望がある場合は、遺言書を作成する必要があります。両方作成した場合には、エンディングノートに遺言書が存在することも含めておけば安心です。

また、遺言書とエンディングノートには書ける内容の範囲にも違いがあります。遺言書は主に財産分与や死後の手続きに関する内容を記載するもので、生前の希望や日常的な事項については法的効力が生じません。これに対し、エンディングノートは生前の希望から死後の手続きに至るまで、幅広い情報を含められます。
遺言書に関する詳細な情報や、種類ごとのメリット・デメリットについてさらに知りたい場合は、以下の記事をご参照ください。

エンディングノートの必要性

エンディングノートは、自身に万が一のことがあった場合に遺された家族が混乱せず、安心できるようにするために残すのが基本です。突然の不幸が訪れた際、家族はさまざまな手続きや意思決定を迫られることが多く、その中で故人の希望や意図を理解することが難しくなる場合があります。エンディングノートに、葬儀の方法や財産の分配、医療や介護の希望など、個々の意思を具体的に記載することで、家族がスムーズに対応できるようにします。

また、本人が亡くならずとも、認知症や要介護状態となり意思の疎通が難しくなってしまった場合の備えとして活用できます。高齢化が進む現代では、突然の病気や事故で意思表示が困難になるケースも増えています。元気に生活できているタイミングでエンディングノートを準備しておくことで、家族も事前に本人の希望や意思を直接やり取りしながら確認でき、万が一のことがあっても冷静な対応を取る手助けとなります。

エンディングノートの書き方

エンディングノートの形式や内容に決まりはなく、自分の好きなように書いて差し支えありません。また、書く時期についても特に決まってはいませんが、終活を始める時期にあわせて作成するのが一般的です。ただし、人生はいつ何が起きるかわからないため、年齢に関わらず早めに準備しておくことをおすすめします。

エンディングノートの書き方に迷う人であれば、市販のエンディングノートが便利です。これらのノートは、必要な項目があらかじめ設定されており、順に埋めていくだけで最低限の情報を残すことができます。市販のノートには、多様なデザインや項目が揃っているため、自分に合ったものを探してみましょう。

一方で、自分なりのノートを作りたい人には、白紙のノートを購入して自由に書き込む方法もあります。オリジナルのノートは、自分のライフスタイルや価値観にあわせて、項目を自由に設定したり、レイアウトやデザインをしたりできるのが特徴です。例えば、家族や友人へのメッセージ、遺言の補足、葬儀の希望などの自分にとって大切な情報を自由に盛り込めます。

最近では、パソコンやスマートフォンを用いてデジタルデータでエンディングノートを作成する方法も定着してきています。デジタルエンディングノートの利点は、簡単に更新や修正ができる点です。また、クラウドサービスを利用することで、安全にデータを保管し、どこからでもアクセスすることが可能です。ただし、デジタルデータで作成する場合は、家族や信頼できる人にアクセス方法を伝えておく必要があります。

よろしければこちらもご参考ください。(外部リンク)

親子でつくるエンディングノート 税理士法人レガシィ (著)

エンディングノートで書くべき項目・内容

エンディングノートには、自分の基本情報から家族や友人へのメッセージまで、幅広い情報を記載しておくことが大切です。以下に、エンディングノートで特に書いておくべき項目について具体的に解説します。

1. 自身の基本情報

自分に何かあったとき、遺された家族がスムーズに各種手続きを行えるようにするためには、基本情報をしっかりとまとめておくことが大切です。また、要介護状態になった際に介護士などに必要な情報を伝えられるようにしておくことで、適切なケアが受けられるようになります。以下に、基本情報として記載すべき項目をまとめました。

基本的なプロフィール情報 これには氏名、生年月日、本籍地、血液型などが含まれます。これらの情報は、医療機関での取り扱いや行政手続きにおいて基本となる情報ですので、正確に記載しておきましょう。
緊急時の連絡先一覧 自分が死亡したときや緊急事態が発生した際に、連絡を取ってほしい相手の連絡先をリストアップしておきます。家族、親友、仕事関係者など、必要に応じて連絡を取るべき人々の情報を明記します。

2. 遺言書の有無

遺言書の存在について明記しておくことで、自身の死亡後に家族内で相続に関する混乱を避けることができます。遺言書を用意している場合は、その保管場所や遺言書の種類(自筆証書遺言、公正証書遺言など)も記載しておくと、手続きがよりスムーズになりやすいためおすすめです。

3. 保有している財産情報

自身の保有する財産・資産の情報を記載することで、遺された家族が遺産分割協議などをスムーズに進められます。財産・資産として認められる一般的な項目は以下の通りです。

預貯金 銀行口座の詳細情報(銀行名、支店名、口座番号など)を記載し、通帳やキャッシュカードの保管場所も明確にしておきます。
電子マネー 例えばPayPayや楽天Edyなど、チャージ型電子マネーのアカウント情報や残高、利用しているサービスの一覧をまとめます。
デジタル資産・暗号資産 ビットコインなどの仮想通貨、NFT(非代替性トークン)などのデジタル資産についても、ウォレットの情報や取引所のアカウント情報を記載します。
生命保険 加入している生命保険の契約内容、保険会社名、契約者番号などを明記し、保険証券の保管場所も記載しておくのが望ましいところです。
不動産 所有している不動産の所在地、登記情報、購入時の契約書類の保管場所などを詳細に記載します。
有価証券 株式や債券などの有価証券の詳細情報(証券会社名、銘柄、数量など)をまとめ、証券口座の情報もあわせて記載します。
その他の財産 自動車、宝石、美術品など、その他価値のある財産についてもリストアップし、それらの詳細情報と保管場所を記載します。
負債 住宅ローンや自動車ローン、その他の借入金の詳細情報(借入先、残高、返済条件など)を明記し、負債に関する契約書類の保管場所も記載します。

これらの各種金融機関に関する情報や通帳、証券の保管場所などもあわせて記載しておくことが重要です。但し、金額や数量は変動する可能性があるため記載する必要はありません。なおエンディングノートを書くことにより自身で現状を把握することもでき、生前に口座数を整理するなどの見直しにも役立ちます。

また、最近では仮想通過やNFTなどのデジタル資産を持つ人が多くなっており、相続もますます複雑化しています。デジタル資産の相続についてさらに詳しく知りたい方は、以下の関連記事もご覧ください。

4. 介護に関する希望

万が一、自身が倒れ、寝たきりなどの状態になった場合に備えて、自分の希望を書きとめておけば、家族や介護者が迷わずに適切な対応を取ることができます。具体的な例は以下の通りです。

治療方針 積極的な治療を望むか、尊厳を保ちながら自然な経過をたどることを希望するか。自宅での介護を望むか、専門の介護施設を希望するかも明確にしておきましょう。
かかりつけ医の情報 かかりつけ医の名前、連絡先、診察券の保管場所などを記載しておくと、急な対応が必要な際にスムーズに連絡が取れます。
介護施設の希望 特定の介護施設があれば、その名前や連絡先、施設の特徴なども記載しておくとわかりやすくなります。
アレルギーや持病の情報 アレルギーや持病がある場合、それらの詳細や対処法を明記しておくことで、緊急時に適切な医療が受けられます。
常備薬や投薬情報 お薬手帳があれば、その保管場所を記載し、常用している薬のリストも添えておくと安心です。
終末治療・延命治療の希望 延命措置を望むか否か、どのような治療を希望するかを具体的に書いておくことで、家族が迷わずに決断できます。
臓器提供の意思 臓器提供に対する意思やドナー登録の有無も明確にしておきましょう。

5. 葬儀に関する希望

自身が死亡した際の葬儀について、事前に形式を決めておいて希望を明記しておけば、自身の意向が反映された葬儀になるだけでなく、遺族の負担軽減にもつながります。最低限決めておきたい項目は以下の通りです。

葬儀内容 伝統的な宗教儀式、無宗教のセレモニー、家族だけの小規模な葬儀など、希望する葬儀のスタイルを具体的に記載しておくと、遺族の検討事項が減るというメリットがあります。
寺やお墓の情報 すでに墓地を購入している場合や特定の寺院に縁がある場合、その情報を明記しておくことが大切です。最近では、納骨堂や樹木葬など、お墓以外への埋葬文化も広がっています。
喪主の希望 誰に喪主を務めてほしいかを明記することで、家族間での混乱を避けられます。
遺影に使ってほしい写真 生前に気に入っている写真があれば、それを指定しておくと、遺族が困らずに済みます。
訃報の連絡先 親しい友人や家族、知らせてほしい人のリストを作成し、連絡先を記載しておきます。
葬儀に呼んでほしい人 葬儀に参列してほしい人をリストアップし、連絡先を添えておくと親切です。
希望する葬儀屋や火葬場 特定の葬儀社や火葬場があれば、その情報も記載します。
納骨方法 納骨方法や場所、例えば海洋散骨や樹木葬など、希望があれば明記しておきます。
仏壇の要・不要 仏壇を設置するかどうかについても希望を書いておくと、遺族が迷わずに済みます。

6. 身の回りに関する情報

エンディングノートには、自身が所有するPCやスマホなどのデバイス情報、日常生活で利用しているサブスクリプション契約などの情報も記載しておくと親切です。これらの情報を記載しておくことで、必要なときに処分や解約などの手続きを迅速に進められるようになります。

デバイス情報 PCやスマホのロック解除のヒントや、契約している通信会社の情報を記載しておきます。これにより、家族がアクセスできるようになります。
サブスクリプションの契約情報 利用しているサブスクリプションサービスの契約情報と、退会手続きの方法を記載しておくと、後々の手続きがスムーズです。
SNSアカウント情報 ログイン情報やアカウント削除方法も明記しておくことで、必要に応じて遺族がアカウントの整理を行えます。
ペットの情報 ペットを飼っている場合は、好きな餌や散歩コース、病歴、かかりつけの獣医などの情報も記載しておきましょう。

7. 家族や友人などへのメッセージ

家族や友人への感謝の気持ちをメッセージとして残しておくことは、非常に心温まるものです。普段なかなか伝えられない感謝の気持ちを文章にして残しておくと、家族や友人にとって大きな慰めとなります。文章で伝えるのが難しい場合は、動画メッセージを作成し、その保管場所を記載しておく方法もおすすめです。

8. 連絡先一覧

訃報の連絡先や葬儀に呼んでほしい人のリストを、一覧としてまとめておくと便利です。

訃報の連絡先 葬儀の際に連絡してほしい人のリストを作成し、連絡先を明記しておきます。
葬儀に呼んでほしい人 葬儀に参列してほしい人のリストを作成し、連絡先を添えておくことで、連絡漏れを防げます。

これらの情報を事前に準備し、書きとめておくことで、家族や友人が迷わず対応できるようになります。自分の希望を明確に伝え、安心して未来を迎えるためにも、こうした作業を丁寧に行いましょう。

エンディングノートを書くときの注意点

エンディングノートは自分の考えを書きとめておけるため、自分自身の安心につながりますが、家族や友人への思いやりの形として、実際に渡してこそ真価を発揮します。ここからは、エンディングノートを作成する際に気をつけるべきポイントを詳しく解説します。

悪用を防ぐため暗証番号・パスワードなどは書かない

エンディングノートには、銀行口座の暗証番号や電子マネーアプリのパスワードなど、重要なセキュリティ情報を記載しないようにしましょう。これは、ノートを紛失したり盗難されたりした場合に、これらの情報が悪用されるリスクを防ぐためです。また、通帳やキャッシュカードなどの重要書類をエンディングノートと一緒に保管することも避けるべきです。これらは別の安全な場所に保管し、必要なときに家族が確認できるようにしてください。

遺された人が読めるよう、紛失に注意して管理する

エンディングノートには個人情報が含まれているため、確実に管理し、紛失しないようにすることが大切です。しかし、重要なことは、遺された家族がこのノートを見つけて読めるようにすることです。したがって、盗難されにくく、かつ家族が簡単に見つけられる場所に保管する工夫が必要です。具体的には、仏壇の引き出しや家族が日常的にアクセスする場所に保管することが求められます。また、貸金庫は本人以外が開けるのが難しいため、避けましょう。

遺言書のような法的拘束力はない

エンディングノートは遺言書とは異なり、法的拘束力を持ちません。そのため、相続や財産分与について具体的な指示を出したい場合は、別途遺言書を作成する必要があります。遺言書は法律的な手続きに則った正式な文書であり、正しい形式で作成すればエンディングノートにはない法的な効力を持たせることができます。エンディングノートはあくまで自分の意思や希望を伝えるための補助的なツールとして位置付け、重要な指示や願いは遺言書に記載するようにしましょう。

エンディングノートとあわせて遺言書の作成も検討しましょう

エンディングノートは、自分の万が一のことが起こった際、遺された人々がスムーズに対応できるようサポートするための思いやりの形です。エンディングノートを書く際には、家族や関係者に自分の思いがしっかりと伝わるように心がけましょう。事務的な手続き内容から感謝のメッセージまで、内容の充実を図ることで、効果を最大限に発揮できます。

相続など、法的な効力を持たせたいメッセージがある場合は、エンディングノートとは別に遺言書も用意しましょう。内容や書き方に迷うのであれば、経験豊富な相続のプロが多数在籍している税理士法人レガシィへぜひ一度ご相談ください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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