借金を相続税対策に活用する方法!難しいケースや注意点を解説
Tweet「相続税対策には借金が有効」と耳にする機会もあるかもしれませんが、これには当てはまるケースと当てはまらないケースがあります。この記事では、具体的な借金の活用方法や相続税対策として効果が上がりにくいケース、借金を活用する際の注意点などについて解説しています。
目次
借金を相続税対策に活用する方法
相続税は、亡くなった方(被相続人という)から子や配偶者などの相続人へ財産が引き継がれた際、相続した財産額に対してかかる税金です。相続税の対象となる財産額は、プラスの財産(資産)からマイナスの財産(負債)を差し引いた額です。
相続税は「超過累進課税方式」を採用しており、財産額が多いほど税率が高くなりますが、借金があった場合は相続税の計算対象となる財産から差し引けるため、しばしば相続税対策のひとつとして活用されることがあります。
ただし、ただ借金をすれば相続税が安くなるというのは間違いです。相続税対策として考えるべきは「いかに現金を別の財産(不動産など)に替えるか」という点です。活用できる主な方法としては、以下のような例があります。
- 不動産を購入する
- アパートなどの収益物件を建築する
- 生命保険に加入する
1.不動産を購入する
借金を使って不動産を購入することで節税できる可能性があります。
例えば5,000万円の現金があり、負債がまったくない場合を例に挙げて考えてみましょう。このままの状態で遺産相続が発生すると、遺産を引き継いだ相続人は5,000万円に対する相続税を支払う必要があります。
仮に被相続人が生前に5,000万円を借り入れ、それを使って不動産を購入していたとします。相続税の対象となる不動産の金額は時価ではなく「相続税評価額」として判断されますが、多くの場合、評価額は時価より低くなります。
例えばマンションの相続税評価額は、およそ時価の6~7割程度です。仮に時価の6割の場合、相続税評価額は5,000万円分の現金と3,000万円の不動産、そして負債は5,000万円と算出され、【5,000万+3,000万-5,000万=3,000万円】ということになります。
もちろん、資産として現金が十分にある場合は、その現金を使って不動産を購入することも相続税対策としては有効です。借金をして不動産購入することは、まとまった現金が手元にない場合の節税対策と考えておきましょう。
2.アパートなどの賃貸物件を建築する
所有している土地がある場合などは、借金をしてそこに賃貸用のアパートやマンションを建てるのも、相続税対策には効果的です。
賃貸物件の相続税評価額は、時価の6割程度とされています。また物件をすでに賃貸として運用している場合、好きなタイミングで利用したり売却したりできないことから、さらに低く評価される可能性があります。
毎月の家賃収入を得られるのも、収益物件を建てるメリットのひとつです。ただし不動産を所有するということはそれなりのリスクがあることも覚えておいてください。
3.生命保険に加入する
借金をして得た現金で生命保険に加入することも、相続税対策になることがあります。
生命保険の死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」までの金額に対しては、相続税が非課税になるという規定があります。法定相続人とは被相続人の財産を引き継ぐ法的権利を有した人のことです。具体的には被相続人の配偶者・子ども・父母・祖父母・兄弟姉妹などが該当します。
例えば配偶者と子ども2人が相続する場合、500万円×3=1,500万円までは課税の対象になりません。そのため、たとえ借金をしてでも生命保険に加入したほうが節税になる可能性があります。
ただし加入の際は保険金を一括で支払う「一時払終身保険」を選ぶようにしましょう。月払いや年払いを選んでしまうと、相続のタイミングによっては支払った代金よりも受け取る保険金のほうが大幅に高くなる可能性があります。これでは、財産が増えてしまい、相続税対策になりません。
借金を相続税対策として活用するのが難しいケース
上記で解説した活用法は、効果的な相続税対策です。しかし場合によっては、相続税対策としてあまり効果を発揮しないこともあります。
ここでは、その具体的なケースについて紹介します。
購入した不動産の収益性が低い
不動産を購入し賃貸物件として運用する場合、収益性の程度によっては節税どころか、財産を減らすことになりかねないので注意しましょう。例えば、地方や郊外に物件を建てた場合、人口減少や同じような賃貸物件の乱立などが原因で、将来的には思ったように収益が上がらなくなる可能性もあります。
また、物件を長期に亘って安定的に運用していくためには、借金の返済額に加え、経年劣化・自然災害などが原因の修繕費や税金などの維持費も必要です。もしも、これらの支払額が家賃収入を超えると、資産の目減りにもつながりかねません。借金をして収益物件を建築・運用する際には、将来的な見通しを加味して検討するようにしましょう。
借金の返済が進んでいる
借金をしてから時間が経過し返済が進んでいる場合は、節税効果があまり期待できません。なぜなら相続税対策として借金をしたとしても、借金を完済するまでに相続が発生するとは限らないからです。仮に相続発生前に借金をすべて返し終わると、負債がなくなり、純粋に資産のみを遺すことになります。これでは相続税対策にならないばかりか、借金をしたことでただ利息分を余分に支払っただけという形で終わってしまいます。
また賃貸物件を使った相続税対策であれば家賃収入などでさらに財産が増えることもあるため、逆に相続税が上がってしまう可能性もあります。もっとも、資産が増え借金が減ることは必ずしも悪いことではありません。あくまで相続税対策としての有効性は低くなるということは覚えておきましょう。
生命保険の受取人が法定相続人以外である
生命保険の死亡保険金を法定相続人以外が受け取った場合、非課税限度額は適用されません。
例えば受取人に孫を指定する場合、多くの生命保険の約款では、配偶者や2親等内の血族であれば保険金の受取人になることは可能であり、孫はこの範囲に該当します。しかし、孫は基本的に法定相続人にはなれないので、受け取った保険金は全額相続税の課税対象になってしまいます。このように、相続税対策として生命保険に加入するのであれば、保険金の受取人には注意が必要です。
なお、本来なら法定相続人となる子どもがすでに亡くなっており、その子どもである孫が代襲相続を行う場合や、孫と養子縁組をしている場合などは非課税限度額の適用が可能です。ただしケースによって孫養子は相続税の2割加算の対象となるため、非課税限度額を超えて孫養子が取得してしまうと、相続税が高くなることもありますので注意が必要です。
借金を相続税対策に活用する場合の注意点
借金を相続税対策に活用する際は、以下の3点には注意しておきましょう。
すべての借金が相続税対策になるわけではない
相続税対策として借金の活用を考えているのであれば、まず「借金をして得た現金をそのまま持っていては相続税対策にはならない」ということを理解する必要があります。
借金をすると負債は増えますが、その分手元の資産も増えてしまいます。5,000万円の資産を持っていて新たに5,000万円の借金をし、現金のまま所有していた場合、手元の資産の合計額は5,000万円(もともと持っていた資産)+5,000万円(借金をして得た現金)=1億円となります。そこから負債額の5,000万円を差し引いても残りは5,000万円なので、財産の価値を減らしたことにはなりません。それどころか、借金の利息がかかり、結果的に損をしてしまう可能性もあります。
節税効果を上げるためには、ここまでに紹介したような方法で借金を活用しなければ意味がないことには注意が必要です。
金利の変動に注意する
借金をして購入した収益物件を運用していく場合、将来的な金利変動のリスクにも注意が必要です。
借金にかかる金利には、完済まで変動のない「固定金利」と市場金利に伴い上下する「変動金利」があります。現在は超低金利時代と言われており、金利が非常に低い状態が長らく続いています。ただし、この状態がどのように変化していくかはわかりません。万が一金利が大幅に上昇すれば、節税額以上に金利負担が増えてしまう恐れもあります。特に借入金が高額の場合は、数パーセントの変化が大きな負担になることもあるので要注意です。
収益物件の購入を考えているのであれば、事前に金利や賃金収支のシミュレーションを行い、慎重に選択するようにしましょう。
財産を目減りさせないようにする
借金をして得た不動産を運用する場合は、財産の目減りをなるべく少なくするように工夫しなければなりません。
例えばアパートを経営する場合、新築時には満室になるほど入居者が集まったとしても、時間の経過とともに空室が増えてくるというのはよくある話です。また築年数が長くなるとその分修繕費用もかさんでくるため、無計画な投資は将来的な財産の減少につながる恐れもあります。
こうした事態を防ぐためには、物件の立地や周辺の環境、長期間の資金計画など、相続税対策には直接関係ない部分に関してもあらかじめ熟考しておく必要があります。
おわりに:相続税対策としての借金は慎重に
借金をして手にした現金を上手く活用すれば、相続税を減額できる可能性があります。ただし、直接的には節税につながらなかったり、場合によっては将来的な財産の減少につながったりすることもあるので、注意しなければなりません。結果的に相続人の負担になる事態を防ぐためにも、借金による相続税対策をお考えの方は、まずは専門家への相談をおすすめします。
「税理士法人レガシィ」は50年以上の歴史がある相続専門の税理士法人です。相続税申告実績は累計で1万5,000件を超えており、相続税対策に関して知識豊富な税理士が多数在籍しています。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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