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相続の知識

親が認知症になったら | 財産管理や相続でやるべきこと

もし親が認知症になったらやるべきことを知りたい方に、家族が認知症患者に対してどのように対応すればよいかを解説します。認知症に関する知識、親が認知症になったら、どこに相談したらよいかなどの基本情報だけでなく、財産管理や相続についての法的制度についても紹介します。

認知症とは

認知症とは、脳の神経の動きが悪くなったり、神経細胞が減ったりすることによって認知機能が低下し、日常生活に6か月以上支障をきたしている状態を指します。わが国では、高齢者の増加にともなって認知症の患者数が増えており、2012年に65歳以上の高齢者7人に1人(約462万人)が認知症患者であったものが、2025年には高齢者の5人に1人(約650万~700万人)まで増加する※ と推測されています。

認知症の主な初期症状としては、

  • もの忘れがひどくなる
  • 通い慣れた道で迷子になったり、突然行方不明になったりする
  • 今日の日付や自分の年齢などがわからなくなる
  • 金銭管理ができなくなり、お金が盗まれたと騒ぎ出す
  • 失禁するようになる
  • 怒りっぽくなる

といったものがあります。

※出典:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター『こころの情報サイト:認知症』

親が認知症になった場合の4つのリスク

親が認知症になった場合には、主に以下の4つのリスクを伴います。

  1. 事故に遭う・行方不明になるリスク
  2. 偏食による生活習慣病のリスク
  3. 財産管理ができなくなるリスク
  4. 家族も資産の管理をできなくなるリスク

1. 事故に遭う・行方不明になるリスク

認知症によって交通のルールがわからない状態になると、信号を無視したり、横断歩道ではない車道を横断したりしてしまい、事故に遭うおそれがあります。運転中に事故を起こした場合には、自分がケガを負ったり、死亡したりするだけでなく、加害者になって被害者を作り、補償の問題なども発生してしまいます。

また通い慣れた道や知っている道でもわからなくなってしまい、迷子になって家に帰れなくなってしまうことや、徘徊を続けて行方不明になってしまうこともあります。行方不明になって屋外に長時間いると、低体温症を発症したり、脱水症状を起こしたりすることもあり、命に関わる事態になることもあり得ます。

2. 偏食による生活習慣病のリスク

認知症になると、食事面では以下のような問題が生じます。

  • 食事したことを忘れてしまい、また食べてしまう
  • 目の前にあるものを全部食べてしまう
  • 好きなものだけをひたすら食べ続ける
  • 栄養バランスを配慮できずに、食事内容が偏ってしまう

最も大きな問題は偏食であり、カロリーの過剰摂取や栄養素の偏りが起き、糖尿病・高血圧・心疾患・脂質異常症といった生活習慣病になるリスクがあります。

3. 財産管理ができなくなるリスク

認知症になると、物事の理解力や判断能力が低下してしまうため、財産管理面では、以下に挙げるようなトラブルが起こりがちです。

  • 必要のないものを大量に買ってしまう
  • 高齢者を狙った悪徳業者と契約してしまう
  • 振り込め詐欺などの詐欺に遭いやすくなる
  • 財布をなくす
  • お金や宝石などが盗まれたと思い込んでしまう
  • 銀行で出入金や振込ができなくなる

親が財産管理できなくなったのなら、家族が代行すればよいと思うかもしれませんが、家族による財産管理にもリスクが伴います。

4. 家族も資産の管理をできなくなるリスク

認知症が進行して、親の判断能力を失ったとみなされると、遺産分割協議などを行っても民法上、有効とはみなされません。さらに、銀行口座が凍結されたり、親名義の不動産を売却できなくなったりといった事態も発生します。
家族でも親の財産管理ができなくなってしまうため、親の資産を介護費用や施設入居費用などに活用しようにも、できなくなる可能性があります。親の判断能力がないとみなされたあとの財産管理については、後述する「成年後見制度」を利用します。

親に認知症の疑いが出たらやるべきこと

親が認知症かな?と思ったら、認知症とはどのような病気なのかを知り、認知症に対する理解を深めることと、地域の関係機関を把握し、親に受診してもらうようにすることが重要です。
ただし、認知症がある程度進行してしまうと、先述のようなリスクが伴うため、親が認知症になる前に準備しておくことをおすすめします。

認知症についての理解を深める

認知症になると、些細なことに対しても怒ってしまうことがあります。認知症の症状であることを知らずに、家族が親をわずらわしいと思うようになったり、冷たくしたり、関わらなくなったりしてしまうと、親の認知症はさらに進行するという悪循環に陥ってしまいます。普段から家族で認知症について話し合ったり、本を読んで知識や対応を身に付けたりしておくことが重要です。

地域の関係機関を把握・受診する

親が認知症かなと思ったら、認知症患者本人や患者家族に対するサービスや支援にはどういうものがあるのかを把握し、認知症の治療をすぐ受けられるようにしておくことが重要です。

地域包括支援センターへ相談する

地域包括支援センターは、地域の高齢者に関する相談や支援を行う機関で、認知症患者・家族への支援内容やサービスに関する情報を提供しています。社会福祉士・保健師・主任ケアマネージャーによる相談やサポート体制が整っており、家族に対して介護のアドバイスをしてくれるなど、包括的なケアマネジメントを実施しています。医療機関・介護サービス事業所などの支援機関や利用できる制度なども紹介してくれるため、親が認知症かなと思ったら、まずは地域包括支援センターに相談することをおすすめします。

早期の受診が大切

親が認知症かなと思ったら、すぐにかかりつけ医や、地域包括支援センターから紹介された医療機関で受診するようにすすめてください。なるべく早く治療を開始すると、認知症の進行の緩和が期待できます。しかし、認知症患者本人が、医療機関での受診を拒否することもあります。そのような場合には「念のため病院に行こう」「健康診断を受けてみよう」など、親の気持ちに寄り添って声をかけるように配慮することを忘れてはいけません。

財産管理や相続について取り決める

親の認知症がどの程度進行しているかによって多少、異なるかもしれませんが、財産管理に関しては早めに適切な対応を取るようにします。親の判断能力がないとみなされると、家族は親名義の預貯金や不動産などの財産管理ができなくなります。相続の取り決めをしても、親の判断能力や意思が認められない場合には有効であるとはみなされません。親の判断能力がなくなる前に、親本人の意思で財産管理や相続について決められるよう、家族で話し合っておくことが重要です。

親に認知症の疑いがあるときに行うべき相続対策

相続対策で行ったり、利用したりできることには、主に以下の6種類があります

  • 遺言書
  • 生前贈与
  • 家族信託
  • 委任契約
  • 成年後見制度(法定後見)
  • 任意後見制度

遺言書

認知症になってしまう前に、親があらかじめ相続に関する内容を盛り込んだ遺言書を作成しておきます。遺言書では、財産を相続させたい人や相続の内容、相続額の割合などを指定できます。しかし、遺言書を作成する際には、必ず以下の条件を守る必要があります。

  • 作成者の判断能力がある状態で作成する
  • 自筆の場合は遺言書の形式(日付の記載、自書、捺印)を守る

これらの条件で作成されていない遺言書は無効です。有効ではない遺言書を作成してしまうと、のちに家族が困るだけではなく、相続トラブルにも発展しかねません。そのため遺言書の作成は、プロの力を借りて作成できると安心です。またトラブル防止のため、遺留分を侵害しない内容とする、公正証書遺言にする、などが更に安心です。

生前贈与

親が健康なうち、または認知症が軽度で判断能力があるうちに、財産を家族などにあらかじめ贈与しておく方法です。例えば、自宅を子どもに譲っておくことで、親が施設へ入所する際にお金が必要になったときなどに、生前贈与された子どもは、自由なタイミングで自宅を売却して現金化することが可能です。ただし、年間110万円以上の贈与に対しては贈与税が課せられます。贈与税は控除や特例で節税もできますが、自分で調べて適切に申請することは容易ではありません。コスト面も考慮した有利不利を確認するため、資産税に強い税理士に相談すると良いでしょう。

家族信託

親の判断能力があるうちに、信託契約を結ぶものです。信託契約とは、委任者(親)が受託者(子どもなど)に財産管理を任せる契約です。管理を任された財産は信託財産と呼ばれ、親の認知症が進行してからでも受託者によって管理や処分ができます。そのため、子どもが親の預貯金や不動産を管理したい場合には、家族信託契約が向いています。信託契約の契約後、すぐに財産管理を子どもに任せてもよいですが、親の認知症が軽度のうちは、親自身が自分のお金として信託財産を使う契約も可能です。

委任契約

主に財産管理を家族などに代行してもらう契約です。委任契約を結べば、家族が親の預貯金を引き出したいときなど、本人確認・委任状・印鑑証明書の提出などの手続きなしで、家族が親を代行して財産管理を行えます。委任契約は例えば「所有するアパートAの家賃管理をB(子どもなど)に任せる」など委任したい内容を委任状に書くもので、公正証書の作成をおすすめします。ただし、親の判断能力がなくなってから締結した委任契約は有効とはみなされません。委任契約は、例えば以下のような内容で結ばれます。

  • 預貯金の管理
  • 親の税金や保険の支払い
  • 親名義の不動産売買契約
  • 介護サービスを受ける手続き
  • 介護施設への入退所手続き
  • 病院の入退院手続き

委任契約の場合は、財産管理以外の内容も委任できることが特徴です。

成年後見制度(法定後見)

認知症などで判断能力がない状態の人の不利益を防ぐために成年後見人を専任し、成年後見人が財産管理や契約を行う制度です。成年後見制度では、判断能力がないとみなされた人には「法定後見制度」が適用され、判断能力がある人には「任意後見制度」が適用されます(任意後見制度については、次項でくわしく解説します)。

法定後見制度の場合、成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、必ずしも家族や親戚である必要はありません。例えば、

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 介護福祉士
  • 社会福祉士
  • 法律や福祉関係の法人

などが成年後見人を担うことも可能です。さらに成年後見人は1名だけでなく、複数名を選任することが可能です。

任意後見制度

認知症でも、軽度であれば判断能力があります。判断能力があるうちは任意後見制度を利用できます。任意後見制度では、親本人が財産管理を任せたい成年後見人(任意後見人)を選び、将来判断能力がなくなったときに備えて契約を結べます。
任意後見制度の特徴は、法定後見制度よりも自由度が高いことです。法定後見制度は、本人の判断能力に応じて、役割が以下の3つに限られています。

  • 後見(本人の代理で契約などをする)
  • 保佐(本人の法律行為に同意をする)
  • 補助(本人の法律行為に同意・取消・代理する権利が与えられる)

一方、任意後見制度は、財産管理の方法や、どこまで権限を与えるかなど、親本人が任意後見人に依頼したい内容を契約で決めることが可能です。そのため、親本人の判断能力が無くなったあとも自分の希望通りにしてもらいたい場合には、任意後見制度を利用することをおすすめします。

任意後見制度を利用したい場合は、公正証書で契約書を作成することが法律で定められているため、その作成も含めプロの税理士に一度相談できると安心です。

おわりに:認知症かな?と思ったら早期の対策を

親が認知症になったらやるべきことは、地域包括支援センターへの相談や、医療機関でのなるべく早い診断と、できるだけ認知症の進行を緩和させることです。また親の認知症が進行し判断能力がなくなる前に、財産管理や相続について家族で話し合い、法的手続きをすることをおすすめします。
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この記事を監修した⼈

陽⽥ 賢⼀

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

武田 利之(税理士)

武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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