DD(デューデリジェンス)とは?実施の目的や費用、注意点を解説
TweetM&Aや事業承継を検討するうえで欠かせないのが「DD(デューデリジェンス)」です。買収や出資の対象企業に対して、財務・法務・税務など多角的な調査を行い、企業の実態や潜在リスクを明らかにします。本記事では、DD(デューデリジェンス)の実施目的や種類、費用、注意点など幅広く解説します。
目次
DD(デューデリジェンス)とは
「DD(デューデリジェンス)」は、M&A(企業の合併・買収)や事業投資を行うにあたり、買収や出資の対象企業に対して実施される調査です。基礎知識として、以下の3つのポイントを押さえましょう。
| 意味 | 単なる財務評価ではなく、企業全体を対象とした詳細な調査 |
| 目的 | リスクを洗い出し、合理的な買収判断に活かす |
| 実施のタイミング | 基本合意後〜契約締結前に実施され、期間は数週間〜数か月程度 |
意味
DD(デューデリジェンス)の本来の意味は「当然払うべき注意義務」という法的概念に由来します。単なる調査ではなく、投資家や買収者が合理的な意思決定を行うための根拠となる情報を収集・精査する作業です。企業の財務状態・法的リスク・事業の持続性・潜在債務などを洗い出して、投資に伴うリスクを減らすために役立てます。そのため、単なる企業価値評価にとどまらず、「隠れた負債や訴訟リスク」や「不適切な会計処理」、「従業員の労務トラブル」なども念入りに調べます。
目的
DD(デューデリジェンス)の実施目的は、主に以下の3つに集約されます。
①対象企業の実態把握
②潜在リスクの事前察知と回避
③投資判断の合理性向上
重要なのは、財務内容・事業構造・契約状況・税務処理など多面的に調査し、企業の実像を正確に把握することです。企業の良い面はもちろん、不正会計や訴訟リスクといった負の側面も徹底的に洗い出します。
詳しくは後述しますが、DD(デューデリジェンス)には、いくつかの種類があります。例えば財務デューデリジェンスでは、実際の収益構造や過去の赤字要因を確認し、将来的な収益性を正しく評価できます。調査結果をもとに、妥当な買収金額の算出や条件交渉に反映し、M&A成功の可能性を高めるのが最終的な目的です。
実施のタイミング・期間
DD(デューデリジェンス)は、M&Aプロセスのうち、「基本合意書の締結後から最終契約の締結前の期間」に実施されるのが一般的です。
| 基本合意前 | 簡易的な情報収集 |
| 基本合意締結後 | 本格的なDD(デューデリジェンス)の開始 |
| 最終契約前 | 調査結果をもとに最終的な意思決定を実施 |
上記のタイミングで実施すれば、万一重大なリスクが発見された場合に、契約条件の変更や交渉打ち切りができます。調査にかかる期間は、企業の規模や業種、必要な調査範囲などさまざまな要素で変わります。中小企業を対象とする場合でも、2週間〜2か月程度を要するのが一般的です。一方、大規模なM&Aが対象になる場合、3か月以上かかるケースもあります。
DD(デューデリジェンス)の種類・対象

DD(デューデリジェンス)の調査対象はさまざまです。企業の価値やリスクを総合的に把握するには、事業そのものの将来性はもちろん、財務の信頼性や法務・人事・ITなどそれぞれの分野に応じた専門的な分析が必要です。
事業デューデリジェンス
事業デューデリジェンスは、M&Aの対象企業が展開する事業の実態や、将来性を把握するための調査です。単に売上や利益の数字を見るのではなく、その背後にあるビジネスモデルや市場環境に着目します。例えば、企業が属する業界の成長トレンドや競合他社の動向を調べれば、その企業がどのような立ち位置にあるのかが分かります。特定の顧客に依存していないか、契約条件に偏りがないかといったリスクの調査も重要です。
財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、企業の財務状況を正確に把握し、M&Aの判断材料としての信頼性を確保するために行われる調査です。過去の決算書をもとに、収益性や安定性、成長性といった観点で、企業の経営実態を分析します。特に重視されるのは、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった財務三表の整合性です。過去の業績に不自然な動きがないか、不明確な取引や簿外債務、偶発債務の存在がないかを検証します。
中小企業の場合、経理体制が未整備であったり、オーナー経営による私的な支出が含まれていたりするケースもあります。そのため、表面上の数字だけで判断するのは危険です。こうした財務デューデリジェンスを通じて、数字の裏にある経営の実態を可視化します。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスは、対象企業の税務処理が適正に行われているかを確認する調査です。税務申告内容の整合性はもちろん、税務上のリスクが潜在していないかどうかに関しても、細かい調査が行われます。
例えば、以下のような内容です。
- 過去の法人税や消費税の申告内容に不備がないか
- 源泉所得税の納付漏れがないか
- 繰越欠損金が発生しているか、買収後に利用する可能性はあるか
- 会計・税務体制と内部管理体制がどのように関係しているか
上記の点に問題がある場合、買収後に過去の税務リスクが顕在化し、多額の追徴課税が発生するおそれもあります。税務上の問題は、契約条件にも大きく影響するため、財務デューデリジェンスと並んでとても重要な領域です。
法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスは、対象企業が抱える法的リスクを洗い出し、M&A後のトラブルを未然に防ぐための調査です。契約書や社内規程の内容確認はもちろん、訴訟・係争の有無や行政処分の履歴、許認可の取得状況など幅広く検証します。
とりわけ注目されるのが、主要取引先との契約内容です。契約期間、解除条件、独占条項などがM&A後に不利に働く可能性はないかをチェックします。知的財産権の保有状況も重要な確認ポイントです。商標、特許、著作権などが誰に帰属しているのか、また正しく登記・登録されているかを確認します。従業員との労働契約や社内規程も法的適正性を確認し、未払残業代や違法な就業慣行が潜在的リスクとならないよう精査されます。
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスでは、企業における人的資本の実態と、労務環境の健全性が評価されます。具体的には、人員数や給与水準といった数値的な面から、人事制度の設計内容、退職金制度の有無などを見ます。
特に注目すべきは、企業の中核を担うキーパーソンの存在と、その離脱リスクです。仮に経営者や重要な技術者がM&A後に離脱する見込みがある場合、企業価値そのものが大きく損なわれるおそれがあります。
従業員のモチベーションや企業文化の特性も調査対象です。買収する側の組織風土と大きく異なる場合、M&A後の統合作業がスムーズに進まず、離職者の増加や生産性の低下につながるおそれがあります。
ITデューデリジェンス
現代の企業活動において、ITシステムは中枢神経ともいえる存在です。ITデューデリジェンスは、単なる技術面の評価ではなく、「事業運営の安定性」「将来の成長性」を担保するための調査です。
調査では、対象企業が使用している基幹システムや業務アプリケーション、サーバー環境、ネットワーク構成などの技術基盤を確認します。システムの老朽化やサポート切れ、非効率な運用などが見つかれば、M&A後に多額の追加投資が必要となるリスクが生じます。情報セキュリティの体制も重要な確認事項です。また、M&A後のシステム統合が、現実的に可能かどうかも評価対象です。ITインフラが整えられなければ、M&Aによるスケールメリットを活かせないどころか、逆に足かせとなることすらあります。
人権デューデリジェンス
人権デューデリジェンスは、企業活動が社会や人権に及ぼす影響を評価し、必要に応じて是正措置を講じるための調査です。欧州を中心に、国際的な潮流として広がりつつあるESG(環境・社会・ガバナンス)投資の文脈でも強く注目されています。
調査の対象となるのは、強制労働や児童労働、職場における差別やハラスメントの有無といった基本的な人権侵害のリスクです。対象企業だけでなく、その取引先や下請け企業、海外の製造拠点などを含むサプライチェーン全体において、国際的な人権基準に照らして問題がないかを確認します。
仮に問題が見つかった場合、M&Aの買収側としては、法的責任を負う可能性などを考慮しなければなりません。単なる倫理的判断にとどまらず、買収後の経営リスクを予測・制御する意味でも、人権デューデリジェンスは重要です。
セルサイドデューデリジェンス
セルサイドデューデリジェンスは、通常とは異なり、M&Aにおける「売却側」の企業が主体となって行う調査活動です。買い手が企業の価値やリスクを判断するための資料を整える前段階として、自社の経営実態やリスク要因をあらかじめ洗い出すのが目的です。自社の財務状況や契約関係、法務・税務の整備状況などを第三者の専門家に依頼して客観的に点検します。その結果をもとに、必要であれば、情報開示前にリスクの修正や対策を講じます。
DD(デューデリジェンス)を専門家に依頼する場合の相場
DD(デューデリジェンス)は、高度な知識・経験が要求される調査であるため、外部の専門家に依頼するのが一般的です。中小企業を対象とする場合、財務・法務・税務などを含めた一通りの調査を実施するには、おおよそ数十万円〜数百万円程度が必要です。なお、上場企業やグループ会社を含むような大企業を対象とした調査では、数百万円〜数千万円に及ぶケースもめずらしくありません。海外拠点が絡む場合や、IT・人権・環境といった分野まで調査対象を広げる場合は、コストがさらに上乗せされます。
DD(デューデリジェンス)実施の流れ

DD(デューデリジェンス)は、一般的に次の3つのステップで進められます。それぞれの段階について解説します。
1. 調査チームの編成
DD(デューデリジェンス)は、信頼できる調査チームを形作るところから始まります。M&Aの目的や対象企業の特性に応じて、弁護士、公認会計士、税理士、M&Aコンサルタントなど、各分野の専門家が招集されます。プロジェクト全体の進行を管理するためには、プロジェクトマネージャー(PM)を選任するのが一般的です。調査の進捗状況や課題を把握し、チーム内での情報共有を行える体制を整えます。
2. ヒアリング・資料などから調査を実施
チーム編成が完了したら、実際の調査活動に移ります。対象企業の経営陣や実務担当者に対するヒアリングが出発点です。事業内容、業務プロセス、組織体制、業界でのポジションなどを調査し、表面的な資料だけでは見えない「現場の実態」を把握します。同時に、財務諸表や契約書、登記簿謄本、社内の規程や手続き書類などの内部資料の収集・精査も行われます。実際の事業所・店舗などへの現地訪問が行われたり、主要な顧客や取引先へのインタビューが設定されたりするケースもめずらしくありません。
3. 調査結果の報告と買収の検討
調査活動が終了したら、収集・分析した情報をもとに調査報告書を作成します。報告書には、対象企業の事業や財務の全体像だけでなく、リスク要因や潜在的な問題点も明記されます。DD(デューデリジェンス)の結果は、M&A全体の成否を左右する重要な資料です。最終的に、報告書をもとにM&Aの実行可否を含めた重要な意思決定が行われます。必要に応じて、専門家から調査結果に対するアドバイスを受けます。
DD(デューデリジェンス)実施時の注意点

DD(デューデリジェンス)の実施には、注意すべき点がいくつかあります。特に中小企業を対象としたM&Aでは、調査の範囲や深さを見誤ると、費用対効果が悪化したり重要なリスクを見落としたりするため注意が必要です。以下、それぞれの注意点を解説します。
M&Aの規模に応じて適切な範囲で実施すること
DD(デューデリジェンス)の実施時は、すべてを網羅しようとすると時間も費用も大きくかかります。しかし、すべてのM&Aが大規模とは限りません。中小企業間の比較的スモールスケールな取引では、あらゆる分野での調査は必要ないケースもあります。
例えば純粋な事業譲渡や小規模な株式取得などでは、財務・法務・税務の基本的な確認にとどめ、ITや人権などの領域を省略するのもよいでしょう。専門家と相談のうえで、過不足のないデューデリジェンス計画を立ててください。
優先順位をつけ計画的に実行すること
DD(デューデリジェンス)の実務は、限られた期間と人的リソースの中で進められるのが一般的です。調査項目の優先順位を明確にし、最も重要な領域から順に着手する、つまり「計画的な実行」が欠かせません。初期段階では、調査項目ごとにリスクの大きさや業務上の重要度を評価し、スケジュールを段階的に組み立てます。調査の進捗状況を定期的にレビューしながら、必要に応じて対応の順序や内容を柔軟に見直す体制を整えましょう。
情報管理を徹底すること
調査を行う関係者には厳格な守秘義務を課し、情報の取り扱いや保管方法に関する明確なガイドラインを設けます。DD(デューデリジェンス)の過程では、対象企業から多くの内部資料や機密情報が提供されます。特に注意したいのが、「現在、買収交渉中である」という事実そのものの漏洩です。買収の噂が外部に漏れることで、従業員の不安が高まるなど、想定外の混乱を招くおそれがあります。物理的・技術的両面でのセキュリティ対策が欠かせません。
事業承継・M&Aのご相談はレガシィまでお寄せください
DD(デューデリジェンス)は、企業の価値を正しく見極め、将来的なリスクを最小限に抑えるための調査です。経営者にとっては、「どこまで調査をすべきか」「専門家に依頼する際にかかる費用感は」といった現実的な課題に直面するケースが多いかもしれません。不安や疑問を解消し、安心して事業承継やM&Aを進めるためには、信頼できる専門家のサポートを受けるのが何より重要です。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
