相続の知識

船舶の相続税評価とは?評価方法と名義変更の必要書類を解説

親や親族から船舶を相続した場合、評価方法の確認と名義変更の手続きが必要ですが、預金や不動産と異なり、その進め方は一般にはあまり知られていません。この記事では、財産評価基本通達に基づく船舶の相続税評価の考え方を整理し、評価後の名義変更に必要な書類・手続き先・放置した場合のリスクまでを解説します。

【この記事でわかること】

  • 船舶の相続税評価は財産評価基本通達136に基づき、売買実例価額・精通者意見価格を原則とすること
  • 売買実例価額等が不明な場合は新造価額から定率法による償却費を控除する方法によること
  • 名義変更の手続き先が船舶の総トン数・種類によって異なること
  • 相続による移転登録に必要な書類の基本的な構成

【こんな方におすすめ】

  • 親などから船舶を相続した方、または相続する予定がある方
  • 船舶の相続税評価額の算定方法を知りたい方
  • 船舶の名義変更の手続き先や必要書類を確認したい方

船舶の相続税評価の方法

船舶は相続財産に含まれ、相続税の申告には評価額の算定が必要です。財産評価基本通達136では、船舶について一般動産(通達129)とは別の個別規定が設けられています。

  • 原則:売買実例価額や精通者意見価格をもとに評価する
  • 例外:売買実例価額等が明らかでない場合は新造価額から減価分を控除する

売買実例価額や精通者意見価格をもとに評価する

財産評価基本通達136は、船舶の評価について「原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する」と定めています。売買実例価額とは課税時期(相続開始日)における実際の取引価格で、マリーナや仲介業者の中古艇取引事例が参考になります。精通者意見価格とは、船舶の評価に精通した専門業者(日本海事検定協会等)が査定した価格を指します。

実例価額がない場合は新造価額から減価分を控除する

売買実例価額や精通者意見価格が「明らかでない」場合は、通達136の但書に定める方法で評価します。課税時期における同種同型の船舶の新造価額から、建造時から課税時期までの期間の償却費の合計額を控除した価額が評価額となります。

評価にあたっては、次の点をおさえます。

  • 償却方法:定率法(残存価額に毎年一定の償却率を乗じる方法)
  • 耐用年数:耐用年数省令に定める年数を適用
  • 控除期間:建造時から課税時期までの年数(1年未満の端数は1年に切り上げ)

定率法では初年度の減価が大きく、年数が経つほど1年あたりの控除額が小さくなります。売買実例価額等で評価できる場合はそちらが優先されます。

船舶の相続に伴う名義変更の手続き

名義変更(移転登録)の手続きは、船舶の総トン数や種類によって窓口と必要書類が異なります。

  • 総トン数20トン未満の小型船舶:日本小型船舶検査機構(JCI)に申請
  • 総トン数20トン以上の船舶:地方運輸局(船舶登録)が窓口
  • 漁船:都道府県への漁船登録(所属漁協を通じた手続き)が別途必要な場合がある

船舶の総トン数で異なる手続き先

まず、船舶検査証書や登録事項通知書で船舶の種類・総トン数・登録先を確認します。総トン数20トン未満の小型船舶(ボート・水上オートバイ・ヨット等)はJCIに移転登録を申請します。20トン以上の船舶は地方運輸局が所管する船舶登録が必要で、船舶国籍証書の書換えも伴います。検査を受ける必要がある船舶では、移転登録とあわせて船舶検査証書の所有者書換手続きが必要になる場合もあります。

名義変更の必要書類

JCI(小型船舶)の相続による移転登録に必要な書類の基本的な構成は次のとおりです。

  • 被相続人の除籍謄本と相続人であることを証明できる戸籍謄本(一式)
  • 遺産分割協議書および協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書(または調停書・審判書)
  • 複数人で相続する場合は共同所有者申告書
  • 変更・移転登録申請書(申請人の実印押印が必要)・申請人の印鑑証明書(申請日の3か月以内)
  • 船舶検査証書・船舶検査手帳・手数料払込証明書

書類の細部は登録先によって異なるため、最新の必要書類は手続き先の窓口で確認してください。

名義変更にかかる費用

JCIへの小型船舶の移転登録手数料は3,350円です(令和8年現在)。所有者名・住所・船籍港以外の変更がある場合は船舶検査証書の書換手数料(4,350円)が加算されます。行政書士等の専門家に代行を依頼する場合は別途報酬が発生します。最新の手数料はJCI公式サイトまたは各支部でご確認ください。

船舶の相続に関するよくある質問

船舶の相続に関する主な疑問点をいくつか紹介します。

船舶の相続税評価額はどうやって調べますか

まず中古艇販売業者・マリーナ・海事検定機関等に相談し、課税時期における売買実例価額や精通者の査定価格を把握します。これらが得られない場合は、同種同型の船舶の新造価額から定率法による減価分を控除する通達136の方法で評価します。評価方法の判断や計算に不安がある場合は、税理士に相談することをお勧めします。

船舶を相続したらまず何をすればよいですか

はじめに、船舶検査証書や登録事項通知書で船舶の種類や登録先を確認します。その上で、相続税評価額の算定と名義変更の手続きを並行して進めます。手続き先が不明な場合はJCIや管轄の地方運輸局に問い合わせるとよいでしょう。

船舶の名義変更をしないとどうなりますか

JCIからの受検案内が旧所有者(被相続人)宛に届き続けます。また、船舶がトラブルを起こした場合には旧所有者の情報が関係機関に提供されます。小型船舶登録法第10条は所有者変更から15日以内の申請を義務づけており、怠った場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

船舶の相続は評価と名義変更を早めに進める

船舶の相続税評価は財産評価基本通達136に基づき、売買実例価額や精通者意見価格を原則として行い、これらが明らかでない場合は新造価額から定率法による減価分を控除する方法によります。名義変更の手続き先は総トン数や種類によって異なり、書類の準備にも時間がかかるため、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)を見据えて早期に着手することが大切です。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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