相続の知識

ウェルスマネジメントとは? プライベートバンキングやアセットマネジメントとの違い

近年、富裕層を中心に注目を集めているのがウェルスマネジメントです。富裕層ならではの多大な資産を管理、運用、あるいは次代へ承継していくためにも、ウェルスマネジメントについてぜひ知っておきましょう。
定義や類似した言葉との違いから、注目を集める背景、具体的なサービス内容まで解説します。

ウェルスマネジメントとは

ウェルスマネジメント(Wealth Management)とは、富裕層や高所得者を対象に、資産の最適化や保全をおこなう総合的な管理サービスを指します。

具体的には投資や資産管理、税務対策、相続対策、保険、年金計画など、様々な分野において専門的なサポートをおこないます。金融機関や専門家が携わるため、顧客ごとのニーズに合わせて的確なサービスを提供できるのが特徴です。

ウェルスマネジメントは、もともとは欧米で富裕層を対象に始まったサービスでした。起源を辿ると11世紀までさかのぼり、スイスのプライベートバンクが発祥と言われています。近年では日本でもウェルスマネジメントの概念が認知されはじめ、徐々にサービスも増えてきました。

プライベートバンキングとの違い

ウェルスマネジメントと似た意味を持つ言葉にプライベートバンキングが挙げられます。どちらも富裕層向けの資産管理サービスであり、同じ意味で使われることも多いですが、厳密にはサービス内容に違いがあります。

プライベートバンキングは銀行のプライベートバンキング部門が、自行の審査を通過した富裕層に対して個別にサービスを提供するのが特徴です。専任のプライベートバンカーがつき、顧客の要望やニーズをヒアリングし、最適な資産運用方法を提案します。資産運用の手段としては、銀行が提供している投資商品や個別の預金金利、ローンの活用などが挙げられます。銀行が提供することもあり、基本的には銀行で取り引きできる範囲でおこなわれるサービスです。また、通常の銀行取引と異なり、銀行側が顧客の預金を他の顧客へ貸して金利を得ることはありません。

一方、ウェルスマネジメントも富裕層に対する資産運用・資産管理をおこなう点は同様ですが、ウェルスマネジメントのほうがより幅広いサービスを提供する点が異なります。資産運用や資産管理以外にも、資産の活用方法の相談や資金調達、税金や相続対策、事業継承など多様なニーズに応えます。

つまり、ウェルスマネジメントは単なる資産運用にとどまらず、富裕層の全体的な財務戦略をサポートする包括的なサービスです。

アセットマネジメントとの違い

ウェルスマネジメントと混同されやすい言葉には、アセットマネジメントもあります。アセットマネジメントもまた、所有する資産を運用し増やしていく業務やサービスを指すものです。しかし、同じ資産活用に関する概念ではあるものの、両者の目的は異なります。

ウェルスマネジメントが富裕層の包括的な資産管理を目的とするのに対し、アセットマネジメントはあくまで資産の価値拡大や収益性拡大を目的としています。投資運用に特化し、資産の成長とリスク管理に重点を置いているのがアセットマネジメントの特徴です。

資産を増やすのが目的ならアセットマネジメント、資金調達や節税、相続なども含めて総合的かつ長期的に資産管理をしたいならウェルスマネジメントと、使い分ける必要があります。

ウェルスマネジメントが注目を集める背景

欧米から始まったウェルスマネジメントの概念は、近年国内でも注目を集めています。注目を集める背景として、主に次の2点が挙げられます。

富裕層の増加による需要が高まっている

2013年以降、富裕層にあたる世帯数や総資産総額は増加傾向にあります。野村総合研究所の調査によると、「純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移」は純金融資産保有額が1億円以上~5億円未満の「富裕層」は2021年時点で139.5万世帯、同5億円以上の「超富裕層」は9.0万世帯で、合計すると148.5万世帯におよびます。2019年時点では132.7万世帯だったため、3年間で15.8万世帯増加している計算です。

また、富裕層をさらに細分化すると、もともとの地主や資産家だけでなく、事業承継した経営者や起業家、師士業など様々です。資産内容はもちろん、資産形成のプロセスも多様化が進んでいます。

このように富裕層が国内で増えた結果、富裕層に特化してニーズに応えるウェルスマネジメントが注目を集めています。

参照:野村総合研究所|純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数の推移

富裕層への課税強化で資産運用ニーズが増えている

富裕層が増加している現状を踏まえ、政府は富裕層への課税を強化しつつあります。たとえば2023年度税制改正により、2025年から主に年間の所得が30億円超となるような超富裕層に対し最低22.5%の税負担が新たに課せられます。また、相続税についても生前贈与における相続財産の加算対象期間が延長されることとなりました。こちらは2024年1月以後の贈与について、段階的に適用されます。

こうしたなか、富裕層からは節税対策としてウェルスマネジメントのニーズが増加傾向にあります。ウェルスマネジメントでは金融機関だけでなく、税理士や弁護士など専門家からのアドバイスも受けられ、節税、相続、資産や事業の承継などまで対応できるため、課税強化への対策としてニーズが高まっています。

ウェルスマネジメントの主なサービス内容

ウェルスマネジメントで取り扱うサービスは、顧客のニーズに応じて多岐にわたります。そこで、主なサービス内容を、大きく5つに分けて紹介します。

  • 投資や金融商品などを活用した「資産運用」
  • 顧客のスムーズな「資金調達」のサポート
  • 相続を念頭に置き、トラブルを防ぐための「資産承継対策」
  • 事業を確実に次代へ引き継ぐための「事業承継対策」
  • 活用できていない不動産の運用を提案する「不動産コンサルティング」

資産運用

資産運用のサービスでは、株式やファンド、債券などの投資商品を活用して資産を増やしていくためのサポートをおこないます。顧客によって「リスクが高くてもリターンの高い投資を選びたい」「長期的に安定した利益を得たい」など様々なニーズがあるため、個別に最適な商品を提案します。また、サービスによっては顧客に応じて金融商品をオーダーメイドし、提供するケースもあります。

投資商品の説明からニーズに合わせた商品や投資方法の提案、利益に対する税金対策などまで、トータルで提供するのが特徴です。

資金調達支援

資金調達支援では、事業に必要な資金調達を、適切なタイミングでスムーズにおこなえるようサポートします。銀行からの融資やベンチャーキャピタルなどによる資金提供はもちろんのこと、手元にある株や不動産など資産の現金化による資金調達まで対応可能です。

新規事業の立ち上げや事業拡大など、顧客のニーズによってコンサルティングもおこないます。専門家に悩みを相談できるため、個々の状況に対して顧客は最適な手段で資金調達できます。

資産承継対策

相続税対策をはじめとして、資産承継にまつわる様々な課題の解決をサポートするのもウェルスマネジメントの業務です。特に、富裕層の資産は個人資産と法人資産の両方が関わるケースが多いため、問題やリスクがより複雑になる傾向があります。また、資産が多いことから相続でのトラブルが発生するリスクも高いため、次代へとスムーズに引き継げるよう総合的なサポートを提供します。

たとえば遺産分割方針や、具体的な方法についてヒアリングや策定をおこないます。遺言書の作成を担当することもあります。

事業承継対策

なんらかの事業を営んでいる顧客に対しては、将来的な事業承継についてもサポートします。特に、国内では経営者の高齢化や後継者不足などが課題になるケースが少なくありません。現在の経営状況を細かく調査・分析し、いつ、だれに事業承継すべきかプランを練ります。また、必要に応じて後継者の選定、育成なども支援します。

不動産コンサルティング

富裕層のなかには、土地やマンション、ビルなど様々な不動産を保有している方が多くいます。もし不動産の運用が最適化されていない場合は、不動産コンサルティングによって、より有効な投資手段や運用方法を提案します。また、現在ある資金を運用するために新たな不動産の取得や保有する不動産の売却をサポートするのも業務のひとつです。

自分に合ったサービスを選択して、資産を適切に管理しよう

ウェルスマネジメントは富裕層向けに資産管理や運用について包括的な支援を提供するサービスです。節税や事業承継など個々のニーズによって最適なサービスは異なるため、自分に合ったサービスを選択し、資産を適切に管理しましょう。

また、不動産コンサルティングもウェルスマネジメントの業務のひとつです。特に相続対策として不動産投資を検討している場合は、専門家への相談が有効です。60年以上の歴史がある税理士法人レガシィでは、不動産投資コンサルティングによって節税につながる不動産投資をサポートしているので、ぜひご相談ください。

不動産投資コンサルティング

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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