スリーサークルモデルとは?事業承継に役立つフレームワーク
Tweet同族企業の事業承継では、家族・所有・経営の利害が複雑に絡み、感情と立場の対立が課題になりがちです。スリーサークルモデルを理解することで、関係性を整理し、承継を円滑に進めるヒントが得られます。この記事では、スリーサークルモデルの概要や注目される理由、7つの立場や活用法を解説し、事業承継に役立つ視点を紹介します。
目次
スリーサークルモデルとは

まず、スリーサークルモデルについて理解するために、この考え方において基本となる3つの円と、一般企業との違いを押さえておきましょう。
スリーサークルモデルの3つの円とは
スリーサークルモデルは、同族企業の関係性を整理するための代表的なフレームワークであり、3つの円で構成されます。
- ファミリー(家族)
- オーナー(所有)
- ビジネス(経営)
この理論モデルは、1982年にアメリカの経営学者のジョン・デイヴィスとレン・タゴーリによって提唱されました。ファミリービジネスを構成する要素を3つに分け、それぞれの役割や関係性を可視化することで、人間関係や経営状況の把握が容易になります。
一般企業との違い
一般企業の場合、経営は「ビジネス(経営)」と「オーナー(所有)」の関係を中心に進められます。ファミリーという要素が入らない分、関係性は比較的シンプルです。
一方、ファミリービジネスの場合は、これら2つに加えて「ファミリー(家族)」という要素が入ります。強い組織力や結束力など同族企業ならではの強みがある反面、関係性は複雑になる傾向があります。
なぜ同族企業にスリーサークルモデルが注目されているか
スリーサークルモデルが同族企業で注目されるのは、第三者の視点を取り入れることで、企業の状況を客観的に把握しやすくなるためです。
同族企業の場合、家族間の価値観の違いや意見の対立、複雑な感情の絡みなどにより問題が生じやすくなる場合があります。経営者としての役割や株主としての立場が一人に重なることが多く感情と利害が絡み合いやすい点が理由のひとつです。また、相続により複数の親族が経営権を持つ場合なども、争いが生じることがあります。
特に、3つの円が重なり合う部分で利害の衝突が生じやすく、複数の問題が重なっていることも珍しくありません。
スリーサークルモデルを活用すれば、3つの視点から関係性や課題を可視化でき、経営の健全化や円滑な事業承継に役立ちます。
スリーサークルモデルにおける7つの立場と分類

スリーサークルモデルにおいて、関係する人々は以下の7つの立場に分類されます。
①ファミリー(家族)
②オーナー(所有)
③ビジネス(経営)
④ファミリー・オーナー
⑤ファミリー・ビジネス
⑥オーナー・ビジネス
⑦ファミリー・オーナー・ビジネス
それぞれについて、どのような人が該当するのか見てみましょう。
ファミリー(家族)
ファミリー(家族)は、家族であるものの、経営にも所有にも関わっていないポジションです。家族として感情的なつながりは強いですが、経営や所有に関する意思決定には関与できません。
社長の配偶者や引退した家族など、従業員ではない親族がこれにあたります。
オーナー(所有)
オーナー(所有)とは株主のことで、家族でも従業員でもありません。企業の経済的利益や財産の保全を重要視し、合理性を重視した発言が多い傾向にあります。
このポジションにあたるのは、親族ではない出資者や、外部株主などです。
ビジネス(経営)
ビジネス(経営)は、会社で働いている、家族でも株主でもない従業員です。実務を担う立場にあり、業績や職場環境に精通していますが、家族が優遇されている状況に不満を持つ場合もあります。
非同族の社員や管理職などがこれにあたります。
ファミリー・オーナー
ファミリー・オーナーは、家族であり株主でもありますが、従業員ではないポジションです。家族間のつながりがあり経営への関心は強いものの、現場にいないために非現実的な期待をしてしまうこともあります。
相続で株を受け継いだ、従業員ではない兄弟姉妹などが該当します。
ファミリー・ビジネス
ファミリー・ビジネスは、家族であり、従業員でもあるものの株は持っていない人たちです。家族であるゆえの感情と、日々の業務との兼ね合いで葛藤を抱えることがあります。
社員として働いている経営者の子などがこれにあたります。
オーナー・ビジネス
オーナー・ビジネスは、株を所有し、会社で実務にも関与している従業員です。オーナー視点と現場目線の両方を持っているため多角的に物事を見ることができますが、家族の意向に挟まれることもあります。
このポジションに該当するのは、株を持つ非同族の幹部社員や従業員株主などです。
ファミリー・オーナー・ビジネス
ファミリー・オーナー・ビジネスは、3つの円すべてに属する中心人物です。大きな影響力と責任を担う立場で、事業承継などの意思決定でも大きな役割を果たします。
創業者や現社長、株を持つ親族の役員・従業員などがこれにあたります。
事業承継でのスリーサークルモデルの活用ポイント

事業承継においてスリーサークルモデルを活用する際は、以下のポイントを押さえておくことが大切です。
- 関係者の立場を見える化して、混乱を防ぐ
- 後継者の育成と位置づけを明確にする
では、混乱や意見の対立を回避するために具体的にどのような点を意識すればよいのか、以下で解説します。
関係者の立場を見える化して、混乱を防ぐ
ファミリービジネスを長く持続させるためには、スリーサークルモデルの観点から関係者の立場を可視化し、自社にどのような課題があるのかを把握することが大切です。
ファミリービジネスにおいては、立場や役割の異なる関係者がそれぞれ異なる意見や期待を抱えており、利害や視点が複雑に交錯しています。それぞれのサークルの視点に立ちながら企業内の人間関係を整理することで、問題点の洗い出しと分析が可能です。
問題点を整理する際は、以下のような点を確認するとよいでしょう。
- 誰がどのような立場にあるか
- 事業内容を知っているか
- どのような役割を果たしているか
- どのような権限を持っているか
- 自社株の株価を知っているか
- 一族との関係は良好か
このような点を客観的に考慮することで、組織内に潜在する課題を明確にし、円滑な事業承継や経営体制の再構築につなげられます。
後継者の育成と位置づけを明確にする
事業承継において、後継者の育成は非常に重要な要素です。そのうえで、後継者が今どの円に属しているか、将来どこに移るべきかを明確にすることは、スムーズな事業承継につながります。
スリーサークルモデルを活用することで、後継者の視点や利害関係、潜在的な課題などを把握できます。発見された課題に取り組むことで、将来的なトラブルを回避しつつ、計画的な育成プログラムを実行することが可能です。
また、スリーサークルモデルを活用したうえで事業承継計画も作成し、会社の将来を見据えた中長期的なプランを明確にしていくことも大切です。
同族企業の事業承継には課題もある!スリーサークルモデルを参考に、専門家に相談しよう
スリーサークルモデルを参考にしながら同族企業の事業承継を行う際には、相続対策にも並行して取り組むことが肝要です。円滑かつ効果的な事業承継や相続対策を実現させるには、税務面での専門知識が必要となるため、専門家の手を借りるのがおすすめです。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
