特別寄与料とは?寄与分との違い・相場・請求の期限などを紹介
Tweet特別寄与料とは、近年導入された新しい制度です。従来では金銭面で報われなかった介護などで故人に寄与した人に対して支払われる金銭で、寄与に応じて相続人から受け取れます。本記事では、特別寄与料の概要や請求できる人、請求方法、期限などについて詳しく解説します。
目次
特別寄与料とは
特別寄与料は、2019年度に民法1050条の改正で導入された制度です。被相続人の介護やその他 の貢献によって財産を維持または増加させた相続人以外の親族が、その貢献に応じて金銭を請求できる法的枠組みを指します。
以前の制度では、相続人以外の親族が被相続人の介護や財産の維持または増加させても、財産を受け取れませんでした。この不公平を是正するため、2019年度に制度が導入されました。
なお、特別寄与料は「被相続人からの遺贈」という扱いになります。基本的に被 相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人が対象となるため、相続税額の2割加算の対象になります。
相続税の2割加算については、以下の記事もご覧ください。
特別寄与料の請求が可能な人
誰でも特別寄与料を請求できるわけではなく、一定の制限があります。
請求できる人
- 6親等以内の血族や配偶者かつ無償での介護や事業の従事があった人
- 3親等以内の姻族かつ無償での介護や事業の従事があった人
ただし、以下の条件に当てはまる人は対象にはなりません。
対象外である人
- 相続人
- 相続放棄をした人
- 相続欠格事由がある人
- 血族または姻族でない人
- 内縁の夫または内縁の妻
特別寄与料と寄与分の違い
似た制度として、寄与分があります。寄与分とは、被相続人の相続財産の増加や維持に無償で貢献した相続人に対して認められるものであり、他の相続人よりも財産を多く受け取れるようになります。
特別寄与料との大きな違いは、対象となる人です。寄与分は法定相続人だけが対象になり、特別寄与料は法定相続人以外の親族(6親等以内の血族や配偶者、3親等以内の姻族等の条件あり)が対象になる点です。
具体的には「息子の妻が無償で介護を行っていた」という場合、寄与分の対象にはなりませんが、特別寄与料の対象になる可能性があります。
特別寄与料を請求するにあたって求められる要件
請求するには、民法1050条1項に定められる以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 療養看護その他の労務の提供
- 上記の行為が無償で提供されていた
- 被相続人の財産の維持または増加に寄与をした
無償である必要がありますが、単純に無報酬だった場合だけでなく、報酬があったとしても提供した労務に対して著しく低い価値しか得られていない場合は、その労務は無償とみなされます。
特別寄与料を請求するためには、無償の労務によって相続財産の維持あるいは増加したことの因果関係が認められる必要があります。つまり、療養看護などによって、相続財産の維持または増加に関与していることが認められる必要があり、精神的な支えになっただけという場合は不十分と判断されます。例えば、親族が看護したことにより、ヘルパーなどの介護サービスを依頼せずに済んだことによって財産が維持できたといった、明確な因果関係が求められます。
特別寄与料の相場と計算方法
民法1050条では、特別寄与料について「家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」とあります。
第千五十条
被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
事情は個々の相続が行われた際の状況によって異なり、ケースバイケースで判断されるため、明確な相場はありません。ただし、看護・介護や事業への従事に基づく計算方法が目安として用いられています。次項でそれぞれの計算方法や、話し合いで決める場合について紹介します。
被相続人の看護・介護をしていた場合
看護・介護の特別寄与料は以下の計算式によって求められます。
【特別寄与料 = 介護日数 × 介護報酬相当額 × 裁量割合】
介護日数は、入院や介護サービスを受けた期間は含まれません。介護報酬相当額は、介護報酬基準から計算します。通常は1日あたり5,000~8,000円が目安となります。裁量割合は裁判所が個々の事情を勘案して判断し、0.5~0.9を目安として設定されます。
被相続人の事業に従事していた場合
被相続人の事業に従事していた場合は以下の計算式によって求められます。
【特別寄与料 = 本来得られたはずの年収 × (1-生活費控除割合)× 寄与年数】
本来得られたはずの年収は、同種・同規模・同年齢の年間給与額を参考に算出されます。生活費控除割合は生活費の負担分を引いた金額を表します。
話し合いで決める場合
当事者間で話し合いによって特別寄与料を決めることも可能です。裁判所が算出する場合は、先述した計算式が適用されます。しかしあくまで目安であり、個々の相続の状況によってはそれでは割に合わないというケースも存在します。
その際は、寄与をした人の貢献度に基づき、相続人を含めて話し合いをすることで妥当な金額を導き出すことになります。ただし、遺産分割とは異なるものであるため、遺産分割協議の枠組みで決めることはできません。
特別寄与料の請求方法と請求期限
請求するためには、方法と期限を把握して決められた方法で定められた期間までに行動を起こす必要があります。特に、期限を逸してしまうと特別寄与料を受け取ることができないため、いつが期限になるかを明確に把握して請求する準備を行うことが大切です。
特別寄与料を請求する方法
請求手続きは慎重に行う必要があるため、事前に特別寄与料の請求方法を把握してくことが大切です。まずすべきことは相続人への請求です。特別寄与者は相続人に対して請求を行い、相続人との合意が得られると特別寄与料の支払いが行われます。しかし、相続人への請求と話し合いで問題が解決しない場合、家庭裁判所へ申し立てられます。
家庭裁判所は申し立てに基づいて調停もしくは審判を行います。調停の際には、当事者から事情を聞いたり、資料を確認したりして解決の方向を探ります。調停がまとまらなかった場合は、家庭裁判所が審判を行います。
特別寄与料の請求期限
請求期限は、特別寄与者が相続の開始もしくは相続人を知った日から6カ月です。この期間は、消滅時効とされているため、時効完成によって利益を受ける相続人が主張することで、請求権は消滅してしまいます。
また、特別寄与料の請求には除斥期間が存在します。除斥期間とは、一定期間内に権利を行使しない場合、その権利が消滅する期間のことです。この期間は時効とは異なり中断がありません。1年を経過すると家庭裁判所などを通じた請求もできなくなる点に注意しましょう。
おわりに:特別寄与料の請求は専門家に相談を
特別寄与料は、2019年の法改正により認められた比較的新しい制度です。相続人以外の親族で、無償で被相続人の介護や財産の管理などを行い、財産の維持・増加に寄与した人が請求できます。
特別寄与料の計算方法は、寄与の形態や期間・度合いにより異なるため、ご自身が行った寄与がどの計算方法に該当するかを確認し、事前に目安としての額を把握しておきましょう。請求の際には話し合いを行いますが、合意できない場合は家庭裁判所に申し立てる必要があります。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
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