相続の知識

遺産分割協議証明書とは? 協議書との違いや作成方法を解説

多数の相続人がいると、遺産分割協議は難航しやすいだけでなく、その後の手続きに多くの時間と労力を要することも少なくありません。遺産分割協議証明書は、遺産相続手続期の負担軽減にも有効な書類です。本記事では、遺産分割協議を取りまとめている相続人の方に向けて、遺産分割協議証明書の概要やメリット、デメリットについても解説します。

遺産分割協議証明書とは

「遺産分割協議証明書」とは、相続人同士の話し合いによって決まった遺産分割の内容を記述した文書です。「遺産分割協議書」とよく似ているものの、書類の作成方法や記載する内容などに違いがあります。

概要・必要性

遺産分割協議証明書とは、相続人同士による遺産分割協議の結果を記載した書類です。相続人すべてがどのような内容で合意したかを証明するための重要な書類であり、各相続人がそれぞれ作成した文書に署名・捺印することで、その内容に間違いがないと証明されます。遺産分割協議書と同じ効力がある遺産分割協議証明書は、不動産の相続登記や預貯金の払い戻し、相続税の申告手続きなどを行う際に使われています。書類は個別に作成されるため、相続人同士が離れた場所で生活している場合でも、スムーズに手続きを進めることが可能です。

遺産分割協議証明書と遺産分割協議書との違い

遺産分割協議証明書と遺産分割協議書は、どちらも遺産分割協議の内容を証明するという同じ目的で作成される書類です。しかし、書類を作成する方法や用途には違いがあります。遺産分割協議証明書には、相続人1人ひとりが引き継ぐ財産の内容が書かれているため、書類に記載された内容を承認したことを示す署名・捺印も、自身のものだけが必要です。

 遺産分割協議証明書と遺産分割協議書との違い

例えば、相続人が4人(A・B・C・D)いる場合は、4通の証明書が作成されます。相続人ごとに作成された書類には、個々が相続する財産のみが記載されています。Aの遺産分割協議証明書には、Aが相続する財産が記載されているので、Aの署名と捺印がなければ書類は完成しません。

一方、遺産分割協議書は、相続人すべてで1通の書類を作成しなければなりません。そのため、人数分の署名・捺印を集める必要があります。遺産分割協議書は、1人でも署名・捺印が欠けてしまえば無効となってしまうため、注意が必要です。書類には、すべての相続人が相続する財産の内容が記載されます。

遺産分割協議書に関してさらに詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

遺産分割協議証明書のメリット

相続人ごとに異なる内容で作成される遺産分割協議証明書には、以下の4つのメリットがあります。

  • 簡単に作成できるため時間がかからない
  • 相続人が多い場合も短時間で作成できる
  • 相続人が遠方の場合でも対応しやすい
  • 紛失などが起きた場合も対処しやすい

遺産相続は、期限内に多くの手続きを行わなければなりません。自身の状況に合わせて、少しでも負担の軽減につながる方法を知っておきましょう。

簡単に作成できるため時間がかからない

基本的に、遺産分割協議証明書に記述される内容は、自身が相続する財産のみに限定されます。比較的容易に作成でき、相続人同士が話し合うためのスケジュールを確認したり、調整したりする手間も省けます。各相続人は自分に関わる内容を確認するだけで書類を作成できるのは大きなメリットです。また、自身の署名と捺印があれば完了できるため、遺産分割協議書と比較した場合、労力の大幅な削減が期待できます。

相続人が多い場合も短時間で作成できる

相続人の数が増えるほど、遺産分割協議書を作成する時間もかかります。相続人のすべてが遺産分割協議書に記載された内容を確認したうえで同意し、1通の書類に署名・捺印しなければ書類は完成しないため、想定以上の時間がかかるかもしれません。遺産分割協議自体は、電話や書面を送付して進めることも可能です。しかし、1通の遺産分割協議書を全相続人で共有する場合、考えている以上の時間を要するかもしれません。

対して、遺産分割協議証明書は、各相続人が自身の遺産分割協議証明書を作成して署名・捺印するだけで書類は完成します。そのため、多数の相続人がいる場合でも、短時間で遺産分割協議書と同等の効力がある遺産分割協議証明書を作成できます。

相続人が遠方の場合でも対応しやすい

上述したように、遺産分割協議書では、1通の書類を全員に回して署名と捺印を集めなければなりません。そのため、遠方に住んでいて連絡が取りづらい相続人がいる場合、書類が完成するまでに多くの時間が必要です。

一方、遺産分割協議証明書の場合、各相続人が自身のために作成された証明書へ署名・捺印するだけで書類は完成します。そのため、遠方の相続人に対しても素早く対応できるのが大きな利点です。

紛失などが起きた場合も対処しやすい

相続人全員が署名・捺印する遺産分割協議書では、1通の書類を複数の相続人に対して送付するため、途中で紛失や破損のリスクが生じます。紛失や破損などがあった場合には、一から書類を作り直さなければならない可能性もあります。

一方、遺産分割協議証明書であれば、書類を紛失してしまったときに、その相続人の書類だけを作り直せば対処できます。

遺産分割協議証明書のデメリット

遺産分割協議証明書には多くのメリットがある一方で、いくつか注意すべきデメリットもあります。

  • 証明書の内容などを偽装される恐れがある
  • 相続人全員の証明書がないと進められない手続きがある
  • 証明書では対応できない手続きに出くわす場合もある

デメリットをよく理解したうえで、必要な対策を講じましょう。

証明書の内容などを偽装される恐れがある

各相続人がそれぞれ遺産分割協議証明書を作成する過程で、協議内容や署名・捺印が偽装される可能性もゼロではありません。特に、相続トラブルが発生している場合には、このような偽装のリスクに対する防止策をしっかり考えておく必要があります。相続の手続きを円滑の進めるために、証明書を回収する際に、各相続人の遺産分割協議証明書の内容を確認するほか、印鑑登録証明書の提出も同時に依頼するなどして、偽装の防止に役立つはずです。

相続人全員の証明書がないと進められない手続きがある

遺産分割協議証明書は、全相続人の証明書が揃わなければ法的効力を発揮しません。そのため、証明書の作成に応じないなど1人でも非協力的な相続人がいる場合には、相続手続き全体がストップする可能性があります。このような事態を回避するためにも、各相続人がきちんと証明書を作成しているかどうか、こまめに進捗状況を確認するようにしましょう。

証明書では対応できない手続きに出くわす場合もある

一般的に、多くの手続きで求められているのは、遺産分割協議書です。そのため、遺産分割協議証明書に慣れていない担当者や機関に遭遇する可能性もあります。場合によっては、証明書を提出しても手続きが進まないケースなどもあり、別途で遺産分割協議書を作成しなければならない事態も想定されます。このような場合、手続きに慣れた専門家に依頼するのもひとつの方法です。

遺産分割協議証明書の書き方・記載内容について

遺産分割協議証明書を不備なく完成させるために、書き方と記載すべき内容をあらかじめチェックしておきましょう。

遺産分割協議証明書の記載内容

遺産分割協議証明書には、相続人全員の相続財産を証明書に記述する方式もありますが、ここでは、自身が取得する財産のみを記述する方式をとり上げ、書き方を紹介します。

記載内容

  1. タイトル部
    「遺産分割協議証明書」と記載します。遺産分割協議書と間違えないようにしてください。
  2. 被相続人の氏名
  3. 被相続人の本籍地
  4. 被相続人の最後の住所地
  5. 被相続人の生年月日(和暦)
  6. 被相続人の死亡年月日(和暦)
    氏名や本籍地などは、被相続人の戸籍謄本・住民票(除票)を参考にして、正確に記入してください。
  7. 遺産分割協議の合意
    遺産分割協議を行い、相続人全員で合意した旨の文言を記載します。
  8. 相続財産の分け方
    「1.次の遺産は、相続人■■が相続する」といった文言を記載します。
  9. 相続するものを記載
    土地を相続する場合であれば、不動産全部事項証明書の表題部通りに記載しましょう。建物付きの土地を相続する場合、土地と建物を分けて記載します。
    また、預貯金を相続する場合、金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号を以下のように記載します。
  10. 書類作成・署名押印の年月日(和暦)
    作成日は相続人ごとに異なっていてもかまいません。ただし、相続人ごとに異なる日付の場合、遺産分割協議の成立は、記載された日付の中で一番遅い日付になります。相続人全員で話し合い、同一の日付に合わせるほうが望ましいとされています。
  11. 相続人と被相続人の関係
    例えば、相続人が被相続人の長男である場合、「相続人(長男)」と記載してください。
  12. 相続人の生年月日、住所、氏名、印鑑欄
    印鑑は市区町村役場に登録された実印を用意します。相続登記の際に必要となるので、印鑑登録証明書も用意してください。

以上の注意点を踏まえた遺産分割協議証明書は、以下のように作成されます。

遺産分割協議証明書

被相続人 ◯◯◯◯
本籍地 東京都◯◯区〇〇 ◯丁目◯番
最後の住所地 東京都◯◯区〇〇 ◯丁目◯番◯号
生年月日 昭和◯◯年◯◯月◯◯日
死亡年月日 令和◯◯年◯◯月◯◯日

被相続人 ◯◯◯◯(以下「被相続人」という)の遺産相続につき、相続人全員で遺産分割協議を行った結果、次のとおり遺産分割協議が成立したことを証明する。

1.次の不動産は、相続人■■■■が相続する。

(1) 土地
所在 東京都◯◯区◯◯ ◯◯丁目
地番 ◯◯番◯◯
地目 宅地
地積 ◯◯.◯◯㎡

(2) 預貯金
◯◯銀行 ◯◯支店 普通預金 口座番号◯◯◯◯

令和◯◯年◯◯月◯◯日

生年月日 昭和◯◯年◯◯月◯◯日
住所 東京都◯◯区◯◯ ◯◯丁目◯◯番◯◯号
氏名 ■■■■(長男)
印鑑欄(実印を押印)

遺産分割のお悩み・ご相談は「レガシィ」まで

遺産分割協議証明書は、相続人が遺産分割に合意した内容を証明するための重要な書類です。遺産分割協議書と比較した場合、かかる手間は少なくなるため、相続人が多い場合や遠方とのやり取りが必要な際も迅速に対応できるのがメリットです。ただし、全相続人の証明書が揃わない限り、相続の手続きは進められません。また、内容が偽装されるなどのリスクに対する備えも必要です。

遺産分割のシミュレーション等、相続に必要な手続きのお困りごとがあれば、ぜひ「税理士法人レガシィ」にご相談ください。相続を専門として、創業60周年を迎えた税理士法人レガシィが、相続に関するさまざまな悩みをしっかりとサポートします。

面倒な手続きはプロにお任せ!相続手続きサービス(遺産整理業務)

当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。

詳細はこちら
この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

税理士法人レガシィ社員税理士武田利之の画像

武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

相続の相談をする老夫婦のイメージ画像

無料面談でさらに相談してみる