相続の知識

SWGsとは?SDGsとの違い、なぜ今ウェルビーイングに注目?

 

持続可能な社会づくりの指標として広く知られるSDGsが2030年に達成期限を迎える中、次世代の国際目標としてSWGs(持続可能なウェルビーイング目標)が注目を集めています。SWGsは単なる環境保全や経済発展だけでなく、人々の幸福感や社会的つながりを重視する新たな枠組みです。なぜ今、世界はウェルビーイングに焦点を当てているのでしょうか?本記事では、SWGsの基本概念からSDGsとの違い、そして個人や企業が実践できる取り組みまで、わかりやすく解説します。ウェルビーイング社会への移行に向けた最新動向を理解し、自分自身や組織の幸福度向上に役立てていきましょう。

ウェルビーイングとは?SWGs登場の背景

SWGsを理解するためには、まずその中核概念である「ウェルビーイング」について知る必要があります。ウェルビーイングとは単なる物質的な豊かさを超えた、より包括的な幸福の概念です。

ウェルビーイングの定義と重要性

ウェルビーイングは「Well(良い)」と「Being(状態)」の造語で、身体的・精神的・社会的に満たされた健康かつ幸福な状態を指します。世界保健機関(WHO)は健康を「単に病気や虚弱でないことではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態である」と定義しており、これがウェルビーイングの基礎となっています。

近年、このウェルビーイングという概念は、経済指標だけでは測れない人間の幸福や社会の持続可能性を示す重要な指標として注目されています。GDPなどの経済成長が必ずしも人々の幸福感向上に直結しないという認識が広がる中、より多面的な豊かさの指標が求められているのです。

ウェルビーイングの2つの側面

ウェルビーイングには主に以下の2つの側面があります。

  • 客観的ウェルビーイング:GDP、健康寿命、生涯賃金、失業率、教育水準、育児休業取得率などの数値データに基づく指標。肉体的健康や経済的豊かさを客観的に評価できます。
  • 主観的ウェルビーイング:生活満足度、人生評価、感情面(喜び・楽しさなど)を含む個人の感じ方や認識を反映する指標。物質的豊かさ以外の心身の豊かさを測定します。

この二つの視点からウェルビーイングを総合的に捉えることで、より実質的な「幸福」や「豊かさ」に迫ることができます。実際、経済的に豊かな国でも、必ずしも国民の主観的幸福度が高いとは限らないという現象が世界各国で確認されています。

ウェルビーイングが注目される社会的背景

ウェルビーイングが注目される背景には、以下のような社会的要因があります。

第一に、SDGsの達成に向けた取り組みが進む中で、持続可能な開発の最終目的は何かという問いが浮上しています。経済発展や環境保全の先にある「人間の幸福」という観点から、SDGsの次の目標として「持続可能なウェルビーイング(SWGs)」が提唱されるようになりました。

第二に、成熟経済社会においては「実感できる豊かさ」へのシフトが進んでいます。特に先進国では物質的な豊かさだけでなく、精神的な充実感や社会とのつながりといった側面が重視されるようになってきました。経済的豊かさが必ずしも幸福に直結しないという認識が広がる中、より多角的な幸福の指標が求められているのです。

ウェルビーイングについては以下の記事でも解説しています。ご参照ください。

ウェルビーイングとは? 意味や日本の現状、取り組みについて解説

 

SWGsとは何か?その定義と目的

SWGs(Sustainable Well-being Goals)は、SDGsの次世代フレームワークとして注目されています。単なる持続可能性を超えて、人々の総合的な幸福を追求する新たな指標として提唱されています。

SWGsの基本概念と特徴

SWGs(Sustainable Well-being Goals)は、「持続可能なウェルビーイング目標」と訳され、2030年に達成期限を迎えるSDGs(持続可能な開発目標)の次世代フレームワークとして国際的に議論が進んでいます。SWGsは社会全体や個人の「幸福」「健康」「充実感」などのウェルビーイングを中心に据えた新しい指標体系です。

SWGsの特徴は、単に環境面や経済面の持続可能性だけでなく、人間の幸福感や生きがいといった主観的要素も重視する点にあります。SDGsが主に「持続可能な開発」という側面に重点を置いているのに対し、SWGsはより人間中心の「持続可能な幸福」を追求するコンセプトと言えるでしょう。

SDGsからSWGsへの流れ

SDGsが2015年に採択されて以降、グローバル社会は17の目標達成に向けて取り組んできましたが、新型コロナウイルスパンデミックなどの影響もあり、多くの目標で達成が難しい状況となっています。このような中、SDGsの次の国際目標として注目されているのがSWGsです。

SWGsへの移行には以下のような背景があります。

  • SDGsの限界と課題の認識(進捗の遅れ、各国間の意志統一の難しさなど)
  • パンデミックを経た価値観の変化(健康や心身の充実への意識向上)
  • 「成長」や「幸福」の概念の再定義が国際社会で求められている

こうした流れの中で、SWGsは単なるSDGsの延長ではなく、より包括的で人間中心の新たな国際目標として位置づけられないか注目されています。

SDGsとSWGsの違い

SDGsとSWGsは共に持続可能な社会の実現を目指していますが、その焦点や取り組み方には明確な違いがあります。両者の違いを理解することで、国際社会がどのような方向に進もうとしているのか見えてきます。

目標の焦点と対象範囲

SDGsとSWGsでは、その目標の焦点と対象範囲に明確な違いがあります。SDGsは主に「持続可能な開発」に焦点を当て、貧困、飢餓、教育、環境保全など17の広範な目標を通じて、地球規模の課題解決を目指しています。

一方、SWGsは「持続可能なウェルビーイング」に焦点を当て、人々の幸福感や満足度、生きがいなど、より人間中心の価値に重点を置いています。具体的には、精神的健康、自己決定権、社会的つながり、文化的充実といった要素が重視されます。

以下の表はSDGsとSWGsの主な違いをまとめたものです。

 

項目 SDGs SWGs
主眼 持続可能な開発 持続可能なウェルビーイング
指標 貧困削減・環境保護・教育等17ゴール 幸福度・健康度・自己決定権等
アプローチ 社会課題解決中心 個人と社会双方から”幸せ”を追求
時期 〜2030年 ポスト2030年

 

ウェルビーイングを測定する方法

ウェルビーイングを向上させるためには、まずその現状を正確に測定することが重要です。主観的・客観的両面からウェルビーイングを測る様々な手法が開発されています。

主要なウェルビーイング測定手法

ウェルビーイングの測定には、様々な手法が用いられています。代表的なものとして、「キャントリルの梯子」があります。これは人生を0〜10の11段階に例え、自己評価で幸福度を測定する手法で、国連の「世界幸福度報告」でも採用されている国際的に認知された方法です。

また、「人生満足度尺度」も広く使われており、これは5つの幸福度に関する質問に7段階評価で回答し、その合計点数で幸福度を判定するものです。これらの測定手法は、個人が簡単に自己チェックできる点が特徴で、自分自身のウェルビーイング状態を知る手がかりとなります。

そのほか、ギャラップ社による5つのウェルビーイング指標(仕事、人間関係、経済状況、健康状態、地域社会)も企業や組織でよく用いられています。これらは総合的な幸福度を測るために、生活の様々な側面からアプローチする手法です。

 

SWGsの未来展望と日本の課題

国際社会でSWGsの重要性が高まる中、日本はどのような課題に直面し、どのように対応していくべきでしょうか。SWGsの将来像と日本社会について考察します。

ポストSDGs時代の国際的動向

2030年のSDGs達成期限が近づく中、国際社会では次の国際目標としてSWGsへの関心が高まっています。国連や各国政府、学術界では、SDGsの成果と課題を踏まえた新たなフレームワークの構築が議論されています。

特に注目すべき動向としては、経済成長一辺倒ではなく、人間の幸福や地球環境の持続可能性を重視した指標体系への移行が挙げられます。例えば、GDPに代わる国家の豊かさの指標として、「国民総幸福量(GNH)」や「持続可能な経済福祉指標(ISEW)」などの導入が検討されています。

また、デジタル技術の発展により、リアルタイムでウェルビーイング指標を測定・分析することが可能になってきています。これにより、従来の統計調査よりも迅速かつ詳細な幸福度の把握が可能となり、より効果的な政策立案が期待されています。

日本社会におけるSWGs実現への課題

日本社会がSWGsを実現していくためには、いくつかの重要な課題に取り組む必要があります。まず、客観的な経済指標と主観的な幸福感のギャップを埋めることが大きな課題です。日本はGDPでは世界上位に位置しながらも、幸福度ランキングではG7最下位となっています。

この課題に対する解決策として、以下のような取り組みが考えられます。

  • ワークライフバランスの抜本的改革(長時間労働の是正、柔軟な働き方の促進)
  • コミュニティの再構築(地域のつながりの強化、孤立防止)
  • 教育改革(幸福学や感情リテラシーの導入、多様な能力の評価)
  • 医療・福祉の転換(予防医療の強化、メンタルヘルスケアの充実)

また、日本特有の課題として、若年層の幸福度の低さが挙げられます。SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が発表した世界幸福度報告書によると、特に30歳未満の幸福度が国際的に見ても低い水準にあることが分かります。若者の自己実現や社会参加を促進する政策が重要です。具体的には、若者の起業支援、多様なキャリアパスの提供、社会的意思決定への参画機会の拡大などが考えられます。

さらに、企業レベルでも従業員のウェルビーイングを経営戦略の中心に据える「ウェルビーイング経営」への転換が求められています。単なる福利厚生の充実だけでなく、働きがいや自己成長、社会的意義を感じられる職場づくりが重要です。

ウェルビーイング経営については以下の記事をご確認ください。

ウェルビーイング経営とは? メリットや取り組み事例を紹介

まとめ

SWGsとウェルビーイングについて、さまざまな側面から見てきました。最後に、私たち一人ひとりができることと社会全体での取り組みについてまとめます。

 

  • ・SWGsは単なる経済発展を超えた「持続可能な幸福」を目指す新しい国際目標枠組みである
  • ・ウェルビーイングには客観的側面(経済・健康指標等)と主観的側面(幸福感・満足度等)の両面がある
  • ・日本は経済的には豊かでも、主観的幸福度ではG7最下位であり、特に若年層の幸福度向上が課題
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ウェルビーイング社会の実現は、政府や企業だけでなく、私たち一人ひとりの意識と行動にもかかっています。まずは自分自身のウェルビーイングに目を向け、「何が自分を本当に幸せにするのか」を考えてみましょう。そして家族や友人、職場や地域社会でのつながりを大切にし、互いのウェルビーイングを高め合う関係を築いていくことが大切です。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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