2025年問題とは? 社会への影響や国の対策、企業ができること
Tweet2025年、超高齢社会となっている日本では、労働力不足や社会保障費の増大が深刻化します。中小企業にとっては事業承継や人材確保が重要な課題です。
この記事では、2025年問題が中小企業に与える影響と、今できる対策をわかりやすく解説します。事業の将来に直結するこの問題をしっかり理解し、成長戦略に役立ててください。
目次
2025年問題とは
2025年、団塊の世代が後期高齢者となり、社会の超高齢化が進みます。これにより、社会保障費の増大、労働力不足、医療・介護の緊迫など、さまざまな社会問題が発生します。具体的には以下のとおりです。
- 2025年問題の概要:団塊の世代が後期高齢者となることで生じる社会問題
- 関連する問題との比較:「2025年の崖」「2040年問題」との違い
- 社会への影響と対策:社会保障費の負担増、医療・介護の緊迫、労働力不足など
「2025年問題」の概要
2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり、日本は75歳以上の高齢者が国民の5人に1人に達します。この変化に伴い、社会保障費の増加や労働力不足、医療・介護サービスの緊迫など、「2025年問題」と呼ばれるさまざまな問題が深刻化しています。
令和6年版高齢社会白書によれば、2023年10月1日時点で、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は29.1%に達している一方、15~64歳の労働人口の割合は59.5%です。このデータから見て取れるように、少子化と高齢化が同時に進行し、社会保障制度や経済全体に大きな負荷がかかっています。特に、医療や介護サービスの需要が急増する一方で、それを支える人材の確保が難しくなり、地域社会や経済への影響が懸念されています。
こうした状況の改善にあたっては、政府や企業の連携による、労働力の確保や介護サービスの充実が求められます。具体的には、若年層の人材育成や高齢者の就業促進、技術革新を通じた効率化などの施策です。さらに、社会全体で高齢者が活躍できる環境を整えることが、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となります。
「2025年の崖」との関連性
「2025年問題」と「2025年の崖」は、関連性がありそうですが、指している問題は異なります。
まず、「2025年問題」は、団塊の世代が後期高齢者となることに伴い、社会保障制度に多くの問題が生じる事態です。特に社会保障費の増大、労働力不足、医療・介護サービスの緊迫といった影響が顕著です。団塊の世代が75歳以上となることで、医療や介護の需要は急増し、それを支える人材が不足するという状況が想定されています。
さらに、この問題は地域経済や社会全体に深刻な影響を与える可能性があるため、今後の対策が急務とされています。
一方で、「2025年の崖」は、企業が抱えるITシステムの老朽化に関する問題です。経済産業省は、古いITシステム(レガシーシステム)が2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失をもたらすと警告しています。この背景には、老朽化したシステムの非効率性やセキュリティリスク、さらに新たな技術への適応力の欠如が存在しています。多くの企業がデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める中で、従来のシステムの維持がますます困難になっており、早急な対応策が必須です。
経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
「2040年問題」との違いについて
「2025年問題」と「2040年問題」は、どちらも日本の少子高齢化が引き起こす社会問題ですが、焦点が異なります。
「2025年問題」は、団塊の世代が後期高齢者となることで生じる、社会保障費の増加や労働力不足、医療・介護の緊迫などを指します。
一方、「2040年問題」は、団塊ジュニア世代が65歳以上となることで深刻化する諸問題に着目しているのが特徴です。2040年には生産年齢人口がさらに減少し、社会保障費の負担も大きくなると予測されています。これらは2025年問題の延長線上にあると捉えて差し支えありません。
2040年問題の詳細については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらもぜひご覧ください。
2025年問題で何が起こる?社会への影響
2025年問題により、日本社会は大きな変化を迫られます。少子高齢化の進展に伴い、さまざまな問題が深刻化します。具体的には以下のとおりです。
- 社会保障費の増大:高齢者の増加に伴い、年金や医療費などの社会保障費が膨大になり、財政を圧迫する
- 医療・介護の緊迫:医療・介護の需要が増加する一方で、人材不足の拡大によるサービスの質の低下が懸念されている
- 労働力不足による事業承継の困難:後継者不足により、中小企業の廃業が相次ぎ、地域経済が衰退するおそれがある
ここでは、これらの問題が社会に与える影響と、解決に向けた取り組みを詳しく解説します。
社会保障費の負担増
2025年問題や2040年問題の中でも大きな課題は、社会保障費の増加です。超高齢社会において、老齢年金や介護保険、医療費が急増し、現役世代の負担が厳しくなるという現状が続いています。
特に高齢者の医療費は医療保険制度を圧迫し、財政悪化や若年層の将来不安を引き起こしています。これに対処するためには、社会保障制度の改革や高齢者の就業促進、医療サービスの効率化など、多方面からの対策が不可欠です。加えて、持続可能な社会を築くために、地域社会や民間の協力も重要です。
医療・介護の体制維持が困難
医療・介護サービスの需要が急増する一方で立ち現れる、少子化に伴う医療・介護分野での人手不足も深刻な問題のひとつです。
特に医師、看護師、介護士の不足が顕著で、これが医療・介護の質を低下させる懸念を生んでいます。また、人員が確保できなければそもそも医療サービス自体を縮小せざるを得ません。このままでは、必要な医療や介護を受けられない高齢者が増えると見られます。
人材確保と医療費の問題を解決し、持続可能な医療・介護体制を維持するためには、政策の見直しや新たな制度の導入など、早急かつ多角的な対策が必要です。地域社会全体の協力も不可欠です。
労働力不足による事業承継の困難・廃業増
少子高齢化が進行する中、中小企業の経営者が引退年齢を迎えつつある一方で、後継者の不足が深刻な問題となっています。
特に地方においては若者の都市部への流出が続き、後継者が見つからない状況です。この結果、経営者が引退した後に廃業する企業が増加しており、地域経済の衰退や雇用の減少が深刻化しています。地域活性化のためには、後継者育成に向けた支援策や、企業の事業承継を促進するための制度整備が急務です。
具体的には、経営者と後継者とのマッチングイベントの開催や、資金面での支援、さらに教育プログラムの充実が求められています。これらの取り組みを通じて、地域の経済基盤を下支えしていかなければなりません。
2025年問題に対して国が行っている対策
2025年問題への対策として、政府は多様な取り組みを進めています。ここでは、以下の3つの観点から、政府の取り組みを解説します。
- 社会保障制度の改革:高齢者の医療費負担の見直しなど、社会保障制度の持続可能性を高めるための取り組み
- 医療・介護人材の確保:人材不足の解消に向けた、人材の育成や多様な人材の活用
- DX推進:デジタル技術を活用した、経済活性化と働き方改革
社会保障の見直し
少子高齢化が進む中、社会保障費増大に対応するため、政府は高齢者の医療費負担の見直しを進めています。
2022年10月から、75歳以上の一定以上の収入がある高齢者の医療費負担が1割から2割に引き上げられました。財政の安定を図る目的で進められたこの引き上げ施策は、低所得の高齢者にとって大きな負担となります。結果として、医療へのアクセスが制限される懸念があるため、高額療養費制度の見直しや低所得者向け支援の強化が求められています。
医療・介護従事者の確保
超高齢社会である日本において、医療・介護従事者の確保は喫緊の課題です。人手不足が深刻化する中、政府や自治体、民間企業では、以下のようなさまざまな取り組みが行われています。
未経験者の参入促進
- キャリアチェンジ支援:医療・介護分野への転職を希望する人向けの、再教育や資格取得といった支援の実施
- 奨学金制度:医療・介護の専門学校や大学への進学を支援する奨学金制度の拡充
- 働きながら学べる制度:仕事をしながら資格を取得できるような制度の整備
多様な人材の活用
- 外国人介護人材の受け入れ:外国人介護福祉士の資格認定制度の創設や、外国人受け入れ体制の整備の推進
- 高齢者の再就職支援:経験豊富な高齢者を介護の現場で活躍させる取り組みの実施
- 地域住民のボランティア活動の促進:地域住民がボランティアとして介護に関わるなど、人材不足を補う取り組みの実施
政府は、これらの取り組みを通じて医療・介護の現場で働く人材の多様化を進めることで、人材不足の解消を目指しています。
DX推進
デジタル技術の進展に伴い、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が重要視されるようになっています。この動きに対応する形で、経済産業省は「デジタルガバナンス・コード2.0」を策定しました。
この指針に基づいて、中小企業でもIT導入や業務システムの刷新が進められています。DXにより、業務効率化や生産性向上が実現し、同時に属人化の解消や人材不足の改善が期待されます。たとえば、熟練職人の技術をIT技術によって再現し、その人物でなければできない業務の領域を狭めるといったことです。
2025年問題に対して今、企業ができること
2025年問題に直面する企業は、人材不足や事業継承などの問題を抱えています。これらの解決に向けて、持続的な成長を実現するために企業ができることを、以下の3つの視点から取り上げます。
- 社内環境の整備:従業員の定着率向上と働きがいを高めるための取り組み
- IT導入・DXの推進:生産性向上と新たなビジネスモデル創出のための取り組み
- 事業承継の準備:企業の永続的な発展のための取り組み
社内環境の整備
少子高齢化が進む中、企業は人材の定着と貢献を促すために、社内環境の整備が重要な課題です。リモートワークやフレックスタイム制、育児・介護休業の支援など、多様な働き方を導入し、従業員の満足度を高める取り組みが広がっています。
また、これらの取り組みを外部に発信することで企業のイメージを向上させれば、自社に合った人材の増加が期待できます。特に多様な働き方を推進する企業は、ワークライフバランスを重視する求職者から好印象を持たれる傾向にあり、採用活動においても有利です。こうした取り組みが従業員のモチベーションや生産性の向上をもたらし、企業全体の成長に寄与します。
IT導入・DXの推進
人材不足が深刻化する中、企業はIT導入やDXの推進を通じて、新たな働き方と生産性向上を実現しなければなりません。リモートワークやビジネスケアラーなど多様な働き方を円滑に進められるようにすべく、クラウドやビデオ会議システムの導入が必要です。
さらに、RPAで単純作業を自動化し、AIでデータ分析を効率化することで、労働力不足を補い、業務の質を向上させられます。AIやVR技術を活用した職人技術のデジタル化も、後継者育成に役立つはずです。
事業承継の準備
企業の永続的な発展には、事業承継の準備が欠かせません。後継者に関しては、社内で育成する、外部から迎え入れるといった選択肢があり、親族以外の第三者への承継も注目されています。
特に、M&Aによる承継は、企業の成長加速や新たな経営資源の取り入れに有効です。とはいえ、後継者の選定や事業評価、交渉など、慎重な対応が必要であり、弁護士や税理士といった専門家の助言が重要となります。
事業承継のお悩みは、レガシィまでご相談ください
2025年、日本では超高齢社会が続く影響で社会保障費が増大し、労働力が不足し、医療や介護が緊迫することが予想されています。人口減少という観点でも死亡者数が160万人になるものとされ過去最高となり、大相続時代に向けた相続対策も必要です。
企業は後継者不足や人材不足に直面し、事業の継続が難しくなることも考えられます。そこで、社内環境の改善やIT導入、事業承継など、早期の対策が必要です。
税理士法人レガシィでは、豊富な経験と専門知識を持つスタッフが、お客様の状況に応じて最適な相続や事業承継プランをご提案します。相続や事業承継に関するご不明な点や、具体的なご相談は、お気軽にレガシィまでお寄せください。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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