終活でやることとは?始めるタイミングや目的についても解説
Tweet終活とは、最期を自分らしく迎えるために行う活動のことです。身の回りの整理や遺言書の作成など、残された家族の負担を軽くするための活動でもありますが、自分自身と向き合い、人生の振り返りを行うことで、老後生活の充実にもつながります。本記事では、終活が必要な理由やメリット、始めるタイミング、やるべきことを解説します。
目次
終活とは、人生のより良い最期に向けた活動
終活とは、一般的に「人生のより良い最期を迎えるために行う活動」のことを指します。
身の回りの整理だけでなく、財産の相続先の決定や遺言書の作成、葬儀・墓の準備など、人生の最後を迎えるための準備を行います。終活は自分の死後、家族などの周囲に対して迷惑をかけないようにするための取り組みとして行っている方も多いですが、自分自身のために行う前向きな活動としても捉えられます。それは、自分が歩んできた人生を振り返り、気持ちの整理を行うことです。これまでの“自分”を見つめることで、今後の人生に向けてどう生きるか、ライフプランを考えるためのきっかけにもなります。
なぜ終活をするのか
近年「終活」という言葉も広く知れ渡るようになりましたが、なぜ終活をするのか、目的や必要とされている理由として、大きくは以下のものが挙げられます。
- 家族が困らないようにするため
- 病気や介護に備えるため
- 老後の生活を充実させるため
1.家族が困らないようにするため
終活をする人の一番の目的は、「自分の死後に家族が困らないようにするため」という方が多いです。2018年に株式会社マクロミルが行なった『終活に関する意識調査』では、終活をする理由として最も多かったのが「家族に迷惑をかけたくないから(89%)」という回答でした。
実際の問題として、自分の意思表示がないまま死を迎えてしまうと、家族は葬儀や相続、遺品整理など、何をどうして良いのか想像以上に困ります。実家や預貯金などの遺産はどのように相続するのか、お墓はどのような形式が良いのか等を事前に決めておき、また持ち物の断捨離をしておくことで、家族の負担を減らすことが可能です。
【出典:株式会社マクロミル『20~70代にきく終活に関する意識調査』
2.病気や介護に備えるため
年齢を重ねるにつれて、病気などで急に自由に動けなくなってしまう可能性が高まります。そうなってしまってからではタイミングが遅く、そのうち取り組もうと思っていた家の整理や、子どもや配偶者へ伝えたいことなどがあっても、上手くできなくなってしまいます。前述した『終活に関する意識調査』の中でも、その目的として「寝たきりになった場合に備えるため」という回答は2番目に多い結果でした。
また近年深刻な社会問題となっている「少子高齢化」は大きな問題です。今後も高齢者は増え続け、厚生労働省が行った分析では、近い将来の2025年には総人口に対する高齢者の割合が30%に達すると見込まれています。介護や看取りを行う人材の減少によって社会保障制度が大きく揺らぐ可能性も心配されています。このような状況に対して、急な病気や介護に向けて自ら備えをしておくという「終活」の必要性が増しているというわけです。
3.老後の生活を充実させるため
3番目は、その人の未来を見据えた目的です。日本人の平均寿命は、厚生労働省が発表した2021年の統計※によると、男性81.47歳、女性は87.57歳と高い水準を維持しています。通常60歳で定年退職を迎える人が多い日本では、長い老後をできるだけ健やかに過ごすためにも、ライフプランの設計は必要不可欠です。終活によってこれまでの人生を振り返り、また老後のプランニングを行うことで、老後の不安を解消し前向きに生きられるでしょう。
終活は、老後の生活を充実させるためにも重要な取り組みです。
終活のメリット
終活を行うことで得られるメリットは以下のような内容です。終活を行う目的や理由と密接に関連してくるところでもあります。
- 家族間のトラブルを防ぐ
- 老後の漠然とした不安が解消される
- 今後の人生プランを描くことができる
1.家族間のトラブルを防ぐ
遺産相続などに関する家族のトラブルは、よく起こる問題のひとつで、良好だった関係がこじれてしまう要因にもなり得ます。例えば実家を誰が受け継ぐかなど、物理的に分けられない遺産を巡って争いが起これば、いざ親がいなくなってしまったあとでは誰も止める人がいません。終活によって財産の配分や相続方法などを検討し、遺言書・エンディングノートなどにしっかり記載しておくことで、家族間でのトラブルも未然に防止できます。
2.老後の漠然とした不安が解消される
老後の不安が解消されることもメリットのひとつです。残される家族や大切な人々のことを考えると、姿が見えない大きな不安に押しつぶされそうになることもあるかもしれません。しかし終活によって、この目に見えない不安というのは、じつは一つ一つ解決していけるものだと気づくことができるでしょう。例えば、自分が亡くなった後の家や持ち物はどうなるのかという不安については、残しておきたいものであれば子どもにその意思を伝えておく、受け継ぐ人をあらかじめ決めておくことで解決できます。病気になってしまうことが不安な場合は、今から自分が入りたいと思える病院や老人ホームなどの施設を探し、家族に伝えておくことで事前準備ができます。
死に関することは、人間だれしもあまり考えたくない、話したくないと考えます。しかし、
3.今後の人生プランを描くことができる
終活において身の回りのものを整理していると、それが手元にある理由を思い出すでしょう。頂いた贈り物であれば贈り主を思い出し、昔よく使用していた生活用品であればその時代や時期を思い出します。そういえば始めたいと思っていたスポーツがあったけれど、忙しさに任せてできていなかった、などの事実にも気が付きます。
終活への取り組みは、これまでのかけがえのない人生を振り返り、今後を見据えるためのより良い時間となるでしょう。今までの人生を振り返ることで、これからの残りの人生をどう生きるかという新しいプランを立てることにもつながります。終活をきっかけに「今後の人生で何をしたいか」が見いだせることで、残りの時間を有意義に過ごせるでしょう。
終活を始めるタイミング
終活を始めるタイミングは、定年退職後の60代に入ってからが一般的です。ただ、終活自体はいつ始めてもおかしくなく、タイミングは人それぞれです。もしも「終活」というワードに興味が湧いて調べているのなら、今が始めるタイミングかもしれません。
終活を始めるきっかけとして多いのは、前述した定年退職や還暦を迎えたとき、身近な人が亡くなったときなど、人生の節目となる出来事があったときです。また、健康面などで不安を抱えたときに始める方も多く、実際に余命告知を受けて必要に迫られるケースもあります。
終活は、身体が十分に動けるうちから始めるとよいものです。身の回りの整理や断捨離など、想像以上の気力体力が必要になるためです。前述のように、健康面からの理由により必要に迫られる場合などは気力体力が備わらず、終活を思い通りに進めることが難しくなります。
終活は、ゆっくりと人生を振り返り、残りの人生に充実感をもたらすために重要な取り組みです。終活を行う期間にできるだけゆとりを持たせるためにも、気力体力がある比較的若いうちに始めてみましょう。
終活でやること 5選
終活において、特にこれをやらなければならないという事柄はありません。なぜならば、その人その人の状況によって、やったほうが良いことや、やりたいことは異なるからです。
ここからは特に死後、家族に面倒を掛けないため、また、残りの人生を前向きに過ごすために行うべきこととして、5つを例に選びましたので、解説します。
1.身の回りの物を整理する
身の回りのあらゆる所有物の生前整理は、終活の中でも重要な取り組みです。遺族にとって遺品整理は困りごとのひとつとして挙がることもあり、専門業者に頼むケースも増えています。早いうちに不用品の処分を行い、生前使用していたものに関しても死後の取り扱いを明確にしておくことで、残された家族の負担を減らせます。また、近年のデジタル化における特徴ともいえる「デジタル終活」も忘れてはいけません。PCやスマートフォンに保存されているアドレスなどの個人情報や写真・動画、さらにクレジットカード情報、ネット銀行などのデータは、デジタル遺品として残り続けます。これらのデータをあらかじめ整理しておくことで、見られたくない情報を閲覧される心配がなくなるでしょう。
2.葬儀やお墓を決める
終活において葬儀の形式やお墓を決めておくことは、自分の望む形で供養してもらうためにも重要です。近年は、これまでの形式に囚われることのない「自分らしい」葬儀を望む人も増えています。また、お墓も先祖代々の「家墓」以外に、「個人墓」や「夫婦墓」、「共同墓」などの種類があり、お墓に納めない「樹木葬」や「散骨」といった方法もあります。希望がある場合にはこれらを明確にしておくことも終活の取り組みです。さらに、遺影にしたい写真を自らで選んでおけば、家族としてもその意思を尊重してくれることでしょう。
3.老後資金を確認する
老後資金を確認しておくことも、残された人生をよりよく生きるための終活です。自分の持っている資金を確認し、今後の生活プランを立てます。まずは具体的に、「老後どのような生活を送りたいか」「いつまで働くか」などを想定し、支出と収入のバランスを予測しましょう。もしも老後資金が不足する場合、元気なうちに働いて年金以外の収入を増やしたり、投資信託などの資金運用を始めたりするといった対策が必要です。
一方、2021年に公表された厚生労働省の統計によると、全国平均で65歳以上の要介護認定者の割合が18.6 %にも上ります。これは約5人に1人は要介護であるという現状を示すデータであり、介護にかかる費用も老後資金として準備しておくことが重要です。
4.エンディングノートを作成する
終活にはエンディングノートの作成もおすすめです。
エンディングノートとは、プロフィールや自分史、その時々の健康状態、葬儀・お墓の希望、そのほか家族に伝えておきたいことを書いておくノートであり、法的効力のある遺言書などとは異なります。正式な書き方は決められているわけではないため自由に書いて構いませんが、目的としては終活としての取り組みと同じ、人生の振り返りや家族の負担軽減、今後の人生のためなどです。
近年はエンディングノート専用の製品がさまざまなメーカーから販売されており、中身を吟味しながら自分に合った1冊を選ぶとよいでしょう。
税理士法人レガシィでもエンディングノートを出版していますので、よろしければぜひどんなものかご覧になってみてください。
エンディングノートに書く項目
エンディングノートに書くべきおすすめの項目は、生年月日や血液型などの基本情報に加え、趣味や特技、性格、自分史などの自分に関する情報です。預貯金や不動産などの財産・資産、年金証書や各貴重品などの保管場所も記載しておくと、家族があちこち探す手間を省けます。さらに、身の回りのことや家族・親族、友人についての思い、医療・介護・葬儀・お墓などの希望も記載しておきましょう。
特に自分史は、生活の中で振り返る機会が意外とないものです。また改まって自分が歩んできた人生について、子どもたちに話す機会も少ないのではないでしょうか。悲しみの中で残された家族にとっても、父や母の人生ストーリーは良い思い出の品になるはずです。
エンディングノートは、一度書いて終わりではありません。人生が進むにつれ、健康面や資産の状況、心境の変化もあるでしょう。定期的に見直し、必要に応じて修正や加筆を行うことが適切です。
エンディングノートの保存場所
エンディングノートには、個人情報に加え遺産などに関する重要な情報を記載するため、誰もが簡単にわかる場所への保管は避けなければなりません。一方で、厳重にしすぎて死後誰も見ることができなくなってしまうと、エンディングノートの役割を失います。対策としては、エンディングノートの存在自体を家族に伝え、信頼できる家族だけに場所を教えておくことが挙げられます。また、自分と家族が知る貸金庫で保管するという手法も有効です。
5.遺言書を作成する
遺族間の争いを避けるためにも、自分の意思を示す遺言書の作成は重要な取り組みです。遺言書があれば、自分の意志に基づいた遺産分割が可能になります。エンディングノートとの違いは、公的な書類として効力が発生するという点です。
一般的に遺言書には、全文を自筆で書く「自筆証書遺言」と公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」、そして遺言内容を秘して存在だけ証明してもらう「秘密証書遺言」がありますが、いずれも作成要件があります。自分に適した遺言書を作成するには、弁護士や司法書士など専門家に相談することもおすすめです。
私たち税理士は、相続税がかかると予測される場合において、相続税額のシミュレーションをしながら遺言書の作成をお手伝いすることができます。「誰にどう分割したら、より多くの資産を子どもたちに残せるのだろう?」と疑問に思う方は、ぜひ相続に詳しい税理士に相談してみてください。
家族が困る「相続税」も事前に対策しましょう
前述した相続税の対策も、見過ごされがちですが重要な終活のひとつです。せっかく頑張って築いてきた財産(遺産)をのこしても、半分以上が税金で徴収されてしまうという事態も起きかねません。そのような場合に有効な相続税の対策は、基本的には「いかにして相続財産ではない形で、事前に財産を受け渡すか」を考える必要があります。
具体的な方法としては、「生前贈与」や「生命保険の加入」「不動産の購入」などが主な手段として挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
代表的な対策は生前贈与
相続税対策として代表的なものは「生前贈与」です。財産の贈与には基本的に贈与税が課されますが、年間110万円以下であれば非課税で財産を子や孫に贈与できます。例えば子や孫を合わせた5人に毎年100万円ずつ贈与すると、1年で500万円、10年で5,000万円を非課税で贈与することができる計算です。しかし、定期贈与(一定の期間に一定の金額で贈与をすること)とみなされると、トータルの金額に対して贈与税が発生するおそれがあります。進学や入学、結婚などに合わせた形で不定期に贈与したり、渡す金額をその都度変えたりするなどの工夫が必要です。
生命保険の非課税枠を利用
生命保険に加入し、非課税枠を利用する手法も相続税対策の有効手段です。相続税が非課税となる基礎控除額は【3,000万円+600万円×法定相続人の数】と決められていますが、相続人を受取人とした生命保険はそれに加算されず、別で【500万円×法定相続人の数】まで非課税枠を利用できます。一方、生命保険は契約者や被保険者、受取人などの設定により、課税される金額や非課税枠の対象になるかが異なります。相続税を節税できる効率的な手法ではありますが、生命保険の設定をよく確認しておくことが重要です。
不動産の購入で財産の評価額を減少
不動産の購入により財産の評価額を低くすることも、相続税の節税対策のひとつです。不動産の相続税評価額は、手持ちの現預金の額より税額計算上いくらか低くなります。また、購入した不動産が賃貸用であるならば、さらに評価額が下がります。しかし、その場合、管理の手間や修繕費、空き家などのリスクを把握しておかなければなりません。
おわりに:終活は「終わり」ではなく「始まり」である
終活は人生の最期に向けて前向きに生きるための取り組みであり、自分の死後における家族の負担軽減や、老後生活の充実のためにも大切です。終活を行うことで、遺族間のトラブル防止や老後不安の解消、人生を振り返ることができるなどのメリットがあります。また、終活では、遺言書の作成や身の回りの整理などに加え、相続税対策を行うことも重要です。
税理士法人レガシィは、50年以上の歴史と相続税申告実績累計1.5万件を超える実績を持つ相続専門の税理士法人です。土地評価に強く、終活における相続税対策にもアドバイスができる税理士が多数在籍しています。相続税対策にお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。
詳細はこちらこの記事を監修した⼈
陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
無料面談でさらに相談してみる