資産組み換えとは? メリットや効果的な方法について解説
Tweet相続を検討する際や、所有不動産の収益性に課題を感じた際に、検討すべき有効な対策のひとつが「資産組み換え」です。手持ちの資産を別の資産へと交換する資産組み換えは、相続税対策や収益性向上などの利点があります。本記事では、資産組み換えの基本概念から具体的なメリット、そして不動産を中心とした効果的な実践方法まで、相続対策の観点からわかりやすく解説します。
目次
資産組み換えとは?
資産組み換えとは、所有している資産の種類(現金、預金、不動産、有価証券(株式、債券)など)や、それぞれの資産が全体に占める割合を見直し、現状や将来の目的にあわせて最適なポートフォリオへ調整することです。「資産の組み換え」とも呼ばれます。
例えば、古くなった不動産を所有しているのが負担になったとき、その不動産を売ってお金に換えるという方法があります。また、不動産を売却して他の不動産を購入することも、資産組み換えのひとつです。代表的な資産組み換えの方法としては、以下のような例が挙げられます。
- アパートを売却して現金を保有する
- 株式を手放して預金を増やす
- 更地に賃貸アパートを建てる
このように、資産組み換えは単なる売買だけを指すものではありません。相続税対策、円満な遺産分割の準備、納税資金の確保、資産価値の維持や向上、収益性の改善といった、さまざまな目的を持って計画的に行われます。
保有する資産の種類や構成が変われば、その資産が生み出す収益性や流動性、安定性なども変わります。そのため、ライフプランや相続の意向にあわせて定期的に資産内容を見直すことが大切です。
資産組み換えを行うメリット
計画的な資産組み換えは、とくに相続を見据えた場合に多くの利点をもたらします。主なメリットは次の3点です。
- 相続人の負担軽減につながる
- 相続税の節税につながる可能性がある
- 収益性向上によって納税資金の準備となる
以下でそれぞれを詳しく解説します。
相続人の負担軽減につながる
資産組み換えのメリットのひとつは、相続人の負担軽減につながることです。相続人は、相続人調査や遺産分割、相続税の申告や相続登記など、しなければならない手続きが多くあります。資産組み換えをすれば、その負担をいくらか減らせるかもしれません。
例えば、資産を見直して遺産分割しやすい構成にしておけば、相続人間の争いを回避できる可能性が高くなります 。マンションやアパートの一室、一軒家などは分割できませんが、売却して現金に換えれば一円単位での分割が可能になります。また、相続する物件がひとつしかない場合、その物件を売却し、代わりに複数の物件を購入することで複数人での分割を可能にするのも有効な手段です。
さらに、管理負担の軽減にもつながります。活用していない土地や老朽化したアパートなどは、固定資産税や管理の手間がかかる一方、収益を生まない「負動産」となってしまう場合があります。これらを売却したり、収益性の高い資産に組み換えたりすることで、相続人が引き継ぐ管理の負担やコストを減らせます。不動産を売却して現金に換えることで、納税資金を準備しやすくなる点もメリットのひとつです。
相続税の節税につながる
資産組み換えは、計画的に行うことで相続税の負担を軽減できる可能性があります。ひとつは、相続税評価額の仕組みを利用する方法です。現金や預金は額面通りに評価されますが、不動産の相続税評価額は一般的に市場価格(時価)よりも低く評価される傾向があります。これは、土地であれば路線価や固定資産税評価額、建物であれば固定資産税評価額を基に計算されるためです。
この評価方法の違いを利用し、現金を相続税評価額が低くなりやすい不動産、とくに賃貸不動産などに組み換えることは有効な節税対策です。相続財産全体の評価額を圧縮し、結果的に相続税を抑える効果が期待できます。
また、相続する財産のなかに被相続人等の自宅や事業に使っていた土地、あるいは賃貸アパートなどの敷地がある場合「小規模宅地等の特例」を活用できるかもしれません。特例の対象に該当する場合、居住用や事業用の宅地では最大80%、貸付用の宅地では最大50%(面積上限あり)の評価減が受けられます。ただし、この特例の適用要件は非常に細かく定められており、利用できるかどうかの判断には専門的な知識が必要です。
さらに、生命保険を活用することも有効な手段となり得ます。被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人となる死亡保険金は、遺産分割の対象外となるだけでなく、「500万円 × 法定相続人の数」までの金額が非課税となります。現金を計画的に生命保険料に充てることで、課税対象となる相続財産を減らす効果が期待でき、納税資金の確保にも役立ちます。
収益性向上によって納税資金の準備となる
資産組み換えで資産全体の収益性を高めることは、相続税の納税資金確保に直結します。相続税は原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に現金で一括納付する必要があります。納付期限に間に合わない場合は、延滞税などの追加負担が課されます。税金を分割で支払ったり不動産で代替納付したりする特例制度もありますが、適用条件が厳格なため、事前に十分な資金を用意しておくことが賢明です。
現金が少なく不動産など換金しにくい資産が多い場合、資産組み換えが解決策となります。例えば、遊休地や空室の多い古いアパートを売却し、需要の高いエリアの賃貸物件や安定配当が期待できる金融商品に投資することも資産を確保するひとつの手段です。また、未活用の土地を駐車場や賃貸アパートとして活用することも効果的な方法といえます。ただし、賃貸経営には空室リスクや修繕費等のコストも伴うため、事前の市場調査と収支シミュレーションを綿密に行うことが重要です。
資産組み換えの効果的な方法
資産組み換えの効果的な方法は、目的により異なります。資産組み換えの主な目的は、大きく分けて次の2つに分類されます。
- 遺産分割対策を行う
- 相続対策を行う
それぞれのケースについて、具体的にどのような資産組み換えが効果的なのか解説します。
遺産分割対策を行う
相続の際に相続人の間で争いが起きて、遺産分割協議がスムーズに進まないことはめずらしくありません。複数の相続人が円満に資産を相続するためには、適切な遺産分割対策が求められます。遺産分割対策のために行う資産組み換えは、大きく分けて不動産の売却、代償分割、不動産の複数所有という3つの方法があります。
不動産を売却する
最もシンプルでわかりやすい方法が、分割しにくい不動産を生前に売却し、現金化しておくことです。現金であれば、相続分に応じて1円単位で公平に分割できます。また、相続人が不動産の管理や活用方法で悩む必要もなくなります。
売却する際は、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な市場価格で売却することが肝心です。売却によって得た資金は、預金として保有するほか、他の金融商品や分割しやすい小規模不動産などに換えることも考えられます。
ただし、不動産の売却益には譲渡所得税や住民税がかかります。また、買い手を見つけるまでに時間がかかるケースも多いため、売却のタイミングや税金についても考慮しておきましょう。
代償分割を行う
代償分割とは、相続人のうちの1人が遺産を取得し、他の相続人に代償金を支払うなどして埋め合わせる遺産分割方法です。相続する遺産の分割が不可能な場合や、共有分割が難しい場合に行われます。
例えば、3,000万円の価値がある不動産ひとつの遺産に対し、相続人が3人いるケースについて考えてみましょう。3人のうち1人が不動産を取得すると、残りの2人は受け継ぐものがなく、不公平になってしまいます。この場合、不動産を取得した人が他の2人に1,000万円ずつを支払うことで、公平な代償分割が行われます。
代償分割の利点は、公平な分割が可能になることに加えて、不動産を手元に残せることです。先祖代々受け継いできた土地など、思い入れのある財産も手放すことなく円満に相続財産の分割ができます。争いを避けるために、代償金の金額設定は誰もが納得できるような方法で注意深く行われる必要があります。
代償分割を行う際は、公平な金額設定を行うために専門家の意見を取り入れることが重要です。これにより、相続人間での不公平を解消し、円満な分割が可能となります。
不動産を複数所有する
計画的に複数の不動産を所有することで、相続人間の希望に合わせた分割を行うことが可能になります。例えば、相続人が3人いるのに相続財産が不動産ひとつしかない場合、スムーズな分割は難しいでしょう。しかし、この不動産を3つの不動産に組み換えれば、トラブルを回避しやすくなります。
注意点は、不動産の種類や評価額を調整して公平性を確保することです。自宅や賃貸住宅、貸地など種類や利用状況が異なると、市場価値も大きく変わる可能性があります。完全に公平に分けるのは難しいため、評価額に差がある場合は代償金の支払いなどを組み合わせる必要があるかもしれません。また、不動産の数が増えると管理の負担も増えるため、その点も考慮しましょう。
相続対策を行う
相続対策のために資産組み換えをする場合、現金を賃貸不動産にする、または更地に賃貸不動産を建てるという主に2つの方法があります。
現金を賃貸不動産にする
現金を賃貸アパートやマンションの購入に充てることは、よく知られた相続税対策のひとつです。この節税効果は、現金と不動産の評価方法の違いを利用しています。現金は額面通りに評価される一方、賃貸不動産は実際の市場価値より低く評価される傾向があります。
具体的には、賃貸物件の土地は「貸家建付地」として更地より低く評価され、建物も「貸家評価」として自己使用の建物より低い評価となります。このため、現金を賃貸不動産に変えることで、相続財産全体の評価額が下がり、結果として相続税が抑えられる可能性があります。さらに、家賃収入によって相続税の納税資金や相続人の将来の生活資金を確保できるかもしれません。ただし、節税効果の有無や程度は、個々の状況や適用要件によって異なります。
ただし、賃貸経営には空室発生のリスク、将来的な家賃下落の可能性、定期的な修繕費用、管理会社への委託費用など、さまざまな注意点もあります。単に「節税になるから」という理由だけで不動産投資を始めるのは危険です。立地選定、物件調査、長期的な収支計画などを慎重に行い、投資としても成立する物件 を選ぶことが重要です。
更地に賃貸不動産を建てる
更地に賃貸アパートなどを建設するのは、土地の有効活用と相続税対策を両立する方法です。土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」として評価され、相続税評価額が更地や自己使用の建物より低くなる傾向があります。結果として相続税の負担軽減につながることが考えられます。
加えて、貸付事業用宅地等については、一定の要件を満たす場合に小規模宅地等の特例が適用されることがあります。この特例に該当する場合、土地評価額が50%減額 される(※面積上限あり)可能性があり、負担軽減につながります。ただし、適用要件は複雑なため、専門家への相談が欠かせません。
現金を賃貸不動産にする場合と同様で、空室リスクや管理・修繕コストの発生なども考慮したうえで、取り組む必要があるでしょう。
不動産を活用した相続ならレガシィにご相談ください
資産組み換えは、不動産や現金を効果的に活用し、相続税対策や遺産分割の円滑化に寄与します。適切な方法を選ぶことで節税や納税準備が可能です。不動産投資コンサルティングなど、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
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