ファミリービジネスとは? 特徴やメリット・デメリット、課題について解説
Tweet事業承継や後継者問題、家族間の対立など、ファミリービジネスならではの悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、ファミリービジネスのメリットとデメリットについて、具体例を交えて解説します。また、事業承継やガバナンスなど、永続的な発展のために知っておいたほうがいい知識をわかりやすく紹介します。
目次
ファミリービジネスとは
「ファミリービジネス」とは、特定の一族が経営の中心となっている企業を指します。多くの場合、その一族が株式の大部分を所有している形です。いわば「家族経営」の会社であり、「同族経営」「同族会社」「オーナー企業」などとも呼ばれます。小さな商店から大企業まで、私たちの身近に数多く存在する、一般的な企業形態のひとつです。
家族経営の特徴は、経営の実権が特定の一族に集中している点にあります。このため、意思決定が迅速に行えるほか、企業の文化や価値観が深く根付いており、経営理念が一貫しています。また、株式の大部分を一族が保有することで、外部からの影響を受けにくく、安定した経営が期待できるのも特徴的な点です。
一方、課題となるのが次世代への事業承継です。適切な後継者を育成し、企業文化を継承していくことは、ファミリービジネスの永続的な発展のために欠かせません。
ファミリービジネスは、一族の強い結び付きを基盤とする独自の経営形態であり、その強みを活かしつつ、事業承継などのさまざまな課題を乗り越えていくことが求められます。
ファミリービジネスで有名な企業の例
ファミリービジネスというと、小さな個人経営のお店を思い浮かべるかもしれませんが、世界を代表する大企業の多くも、実は創業者の家族が経営に関わっています。
海外では、小売業最大手のウォルマートや、自動車メーカーのフォルクスワーゲンなどが代表的な例です。日本でも、トヨタグループやサントリー、パナソニック、カシオなど、誰もが知るような大企業が創業家によって支えられています。
スイスのザンクトガレン大学の研究によると、世界の上場企業の80%~90%が同族経営企業です。その売上高は世界第3位の経済大国に匹敵する規模に達しています。
同族経営の企業が成功する秘訣は、長期的な視点と、従業員への深い信頼にあると見られます。創業者の家族は、会社の存続を世代を超えて考え、従業員一人ひとりを大切にすることで、強い企業文化を築き上げてきました。
日本の竹中工務店は、4世紀以上も続く老舗企業として知られています。長い歴史の中で、家族はさまざまな困難を乗り越え、事業を拡大してきました。
同族経営企業とは、単なる血縁関係によって結び付いているものではなく、企業文化や価値観を共有する家族のような存在であることが示唆されています。
ファミリービジネスのメリット
ファミリービジネスは、迅速な意思決定、独自の競争力、そして事業継承の容易さという、一般企業とは異なる特徴を持っています。
- 迅速な意思決定:トップダウンによる意思決定で、変化の激しいビジネス環境に素早く対応可能
- 独自の競争力:長年の歴史と伝統、家族の絆により生み出される強固な競争力
- 事業の継続性と一貫性:長期的な視点で経営を行い、企業文化を継承することで、安定した成長が実現
意思決定が速い
スピーディーな意思決定は、企業の競争力を左右する重要な要素のひとつです。特に、変化の激しい現代においては、速やかな判断と実行が求められます。
ファミリービジネスで見られる、強力なトップダウンによる意思決定は、こうしたスピード感を生み出す代表的な手法です。トップのリーダーが明確なビジョンを持ち、その方向性に基づいて迅速な判断を下すことで、組織全体が迅速に動き出せます。
競争の優位性を持っている
ファミリービジネスは、単なる企業ではなく、家族という強い絆で結ばれた共同体です。この特徴が、一般企業にはない独自の競争優位性を生み出します。
前述の意思決定のスピードは、その顕著な例です。家族経営では、トップダウンによる迅速な意思決定が可能となり、変化の激しいビジネス環境においてさまざまな状況へ即座に対応できます。また、長年にわたって培われた伝統やノウハウは、顧客からの信頼につながり、競合との差別化をもたらします。
さらに、家族経営は、長期的な視点を持てる点も強みです。四半期ごとの業績に一喜一憂するのではなく、企業の持続的な成長を視野に入れ、投資や事業展開を行えます。
事業の継続性・一貫性に強みがある
ファミリービジネスは、その性質上、家族によって事業承継が行われるという側面も持ち合わせています。この点が、一般企業にはない強い継続性と一貫性を生み出す形です。
経営者の任期が長期化しやすいという特徴は、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点での経営が可能であることを示します。また、創業者の理念や価値観が代々受け継がれ、企業文化として根付くと、事業の方向性がブレにくくなります。
さらに、家族という特別な絆によって強い帰属意識が育まれれば、社員のモチベーション向上にもつながります。結果として、顧客からの信頼も厚くなり、安定した経営基盤を築くことが可能です。
ファミリービジネスのデメリット
ファミリービジネスは、家族の絆という強みを活かせる一方で、以下のような特有の課題を抱えています。これらは企業の運営や成長に重大な影響を及ぼしかねないため、慎重な対策が求められます。
- 私物化のリスク:経営者の独断や私情が優先され、企業の不正につながる可能性がある
- 家族間の対立:後継者問題や経営方針の違いが、企業の分裂を招くことがある
会社の私物化など、公私混同が起きやすい
ファミリービジネスは、家族の絆を基盤とするがゆえに、経営者の独断や私情が優先されるリスクもあります。いわゆる「ワンマン経営」です。経営者の強いリーダーシップが事業を牽引する一方で、会社を私物化したり、従業員の意見を軽視したりといった問題も起こり得ます。
創業家出身の経営者が巨額の背任によって会社に損害を与えた事件や、創業者の子供が人事権を濫用した事例に見られるように、経営者の私的な利益追求が企業の不正につながるケースもあります。
ファミリービジネスの成功のためには、経営者の強いリーダーシップと、透明性の高い経営、そして多様な意見を取り入れる仕組みが求められます。
家族間での紛争が起きやすい
ファミリービジネスは、家族の絆を基盤とする一方で、その絆が逆に家族間の紛争を引き起こす可能性もあります。
経営方針の違いや、後継者選びにおける不平等感などが、兄弟姉妹間の対立に発展するケースは少なくありません。親子が経営権を巡って争うなど、実際に多くの企業でこのような「お家騒動」が報じられています。
このような事態を防ぐためには、ファミリービジネスにおけるガバナンスが不可欠です。家族間の合意形成のための仕組みを構築し、透明性の高い経営を行えば、紛争を未然に防げます。
以下では、ファミリーガバナンスの重要性や、具体的な構築方法について詳しく解説しています。
ファミリービジネスが抱える3つの課題
家族の絆を基盤とするファミリービジネスは、経営、所有、そして家族という3つの側面で特有の課題を抱えています。
- 経営面:利益の確保、新規事業の開発、問題解決など、一般的な企業と同様の課題に加え、家族間の関係性や企業文化といった複雑な要素が絡み合っている
- 所有面:株式の継承や、透明性のある経営体制の構築など、事業の継続性を左右する重要な問題がある
- 家族面:後継者問題や家族間の対立など、感情的な側面が強く影響し、企業の安定的な発展を阻む可能性がある
1. 経営面での課題
ファミリービジネスは、経営面でさまざまな課題を抱えています。特に、スリーサークルモデルと呼ばれる経営・所有・家族の三要素からファミリービジネスを捉える視点で見てみると、その課題の複雑さが浮き彫りになります。
利益が出ない、新規事業の開発ができない、問題の抽出が困難といった具体的な課題は、単なる経営上の問題にとどまりません。家族間の関係性や企業文化といった深層心理的な要因とも深く結び付いています。
2. 所有面での課題
2つ目の大きな課題は、所有面にあります。特に、株式承継とファミリーガバナンスは、多くのファミリービジネスが直面する課題です。
株式承継は事業を引き継ぐ上で不可欠な手続きですが、相続税の問題や、家族間の意見対立など、さまざまな困難が伴います。また、家族経営における意思決定の透明性や公平性を確保するための仕組み、すなわちファミリーガバナンスを構築するのは容易ではありません。
3. 家族面での課題
ファミリービジネスでは家族面での課題も少なくありません。
特に、後継者不在の問題は、多くのファミリービジネスが直面する深刻な事態です。後継者がいない、あるいは適任者がいない場合、事業の存続が危ぶまれるだけでなく、家族間の争いを引き起こす可能性もあります。
また、家族内の不和も、ファミリービジネスの安定的な発展を阻む大きな要因です。経営方針の違い、相続問題、あるいは感情的な対立など、さまざまな要因が家族間の亀裂を深める可能性があります。
これらを放置しておくと、企業の分裂や経営の停滞につながりかねません。
ファミリービジネスの「事業承継」問題は、専門家に相談しよう
ファミリービジネスは、長所と短所を併せ持つ経営形態です。強い絆や伝統を活かせる反面、後継者問題や家族間の対立など、特有の課題を抱えています。これらの課題は、事業の運営に多大な影響を及ぼすことがあります。
特に事業承継は、ファミリービジネスの存続を左右する重要な問題です。後継者不在や相続税対策など、さまざまな課題が複雑に絡み合い、多くの経営者を悩ませています。
税理士法人レガシィでは、長年の経験と実績に基づいて事業承継をお手伝いする、事業承継スタートパックをご用意しております。相続対策、事業計画策定、後継者育成など、事業承継に関するあらゆるサポートの提供が可能です。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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