税務調査が入る確率とは|調査内容、対象になりやすい法人・個人の特徴
Tweet本記事では、税務調査がどれほどの確率で行われているか知りたいという方に向けて、税務調査が入る確率や対象になりやすい法人・個人事業主・個人の特徴を紹介します。税務調査が入る確率を下げるためのポイントも解説しているので、税務調査について必要な知識を身に付けておきたいという方は、ぜひ参考にしてください。
目次
税務調査が入る確率とは
- 法人の場合1.5~2.5%程度
- 個人事業主の場合1.5~2.5%程度
- 個人(相続税)の場合4.5%~5.5%程度
国税庁では毎年、法人税・消費税・相続税に関する調査を実施し、その概要を公表しています。税務調査が入る確率とは、法人税などの申告件数に対し、国税庁(管轄税務署)が実地調査を行った件数の割合です。税務調査の入る確率がもっとも多いのは個人の相続税となっています。
法人の場合=1.5~2.5%程度
国税庁が発表した「令和4事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和4年度の法人税申告件数は合計で312万8,000件でした。「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」では、申告件数の1.98%にあたる6万2,000件が実地調査の対象となったことが報告されています。
なお、申告件数に対する実地調査の割合は、令和3年度が1.34%、令和2年度で2.4%程度でした。このような結果から、法人の場合、税務調査が入る確率は1.5~2.5%程度だと考えられます。
個人事業主の場合=1.5~2.5%程度
国税庁が公表している「令和4年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、令和4年度の個人事業主による消費税の申告件数は合計で105万5,000件でした。「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」では、申告件数のうち消費税に関する実地調査が行われたのは、2.42%に該当する2万5,513件と報告されています。
令和3年度に実地調査が行われたのは、113万5,600件のうち1.49%にあたる1万6,908件でした。
この結果から、個人事業主に対して税務調査が入る確率は、1.5~2.5%程度であると想定されます。
個人(相続税)の場合=4.5%~5.5%程度
国税庁の「令和4年分相続税の申告事績の概要」によれば、令和4年度に相続税の申告書提出に係る被相続人の数は、合計で15万858人でした。また「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」を見ると、実地調査が行われた割合は、全体の5.43%にあたる8,196件だったことが分かっています。
なお、令和3年度は被相続人数が13万4,275人、そのうち実地調査件数は6,317件となっていて、割合は4.70%と高めです。このようなデータから、個人の相続税の場合は4.5~5.5%程度となっていることが読み取れます。
そもそも税務調査とは?
税務調査とは、確定申告の内容に対して、税務署が正確性や適法性を確認するために行う調査です。企業や個人事業主が提出した申告書や決算書に基づき、収入や経費の計上方法、税金の計算方法などが正しく行われているかどうかを確認します。
税務調査は、公正な税負担の実現を目指して行われるものであり、税法に基づいて適正に課税するための重要なプロセスとなっています。税務調査は、事前に通知されてから実施されるのが一般的です。ただし、場合によっては予告なしに行われるケースもあります。
調査の範囲は広く、帳簿をはじめ領収書や納品書といった証ひょう類の確認、取引先や関係者への聞き取り調査なども含まれます。特定の疑惑がある場合や大規模な不正が疑われる場合には、より詳細な調査が行われるケースも少なくありません。
万が一、確定申告の内容に間違いや不正が見つかった際は、修正申告や追加納税が求められ、これにより、延滞税や加算税が発生する場合もあります。こうした状況に陥らないよう、企業や個人事業主は日頃から正確な帳簿管理と適切な申告を心掛ける必要があります。
税務調査の種類
税務調査には、納税者の協力により実施される「任意調査」と、裁判所の令状に基づいて行う「強制調査」があり、強制調査ではとくに厳しい対応が求められます。
任意調査
任意調査とは、納税者の協力により行われる一般的な税務調査を指します。税務署の調査官が納税者の事業所や自宅を訪問し、確定申告書や帳簿類を確認したうえで納税額が適正であったかどうか調査を行います。
「任意」とされているものの、納税者が調査を拒否することは認められません。納税者が調査を拒否した場合、罰則の対象となる可能性があります。「質問検査権」を有する調査官は、必要に応じて納税者や関係者への質問や、書類の提出を求めることが許されています。
任意調査では、事前に通知書が届くケースが一般的です。そのため、不明点や不安があれば、前もって税理士などに相談し、必要な準備を整えておくとスムーズに対応できます。
強制調査
強制調査(査察調査)とは、脱税の疑いがある法人や個人を対象に実施する税務調査です。任意調査とは異なり、裁判所の令状に基づいて行われるため、納税者の同意を必要としません。また、実施には厳格な基準が設けられています。
強制調査では、事前に裁判所から取得した令状により、調査官が強制的に立ち入り調査を行う権限が与えられています。そのため、納税者や関係者が調査を拒否することは許されません。本調査の結果、納税者の脱税が発覚した場合、追徴課税や罰金が科されるほか、刑事罰が適用されるケースもあります。
税務調査で確認、調べられること
納税者の適切な税金の申告・納付を確認するのが税務調査の目的です。そのため調査官は、過去5年分の申告内容を対象に詳しい調査を実施します。ただし不正が疑われる場合、調査期間が過去7年に延長されるケースもあります。
調査官は、収入の適性性や経費計上された支出が適切かどうか、不正な節税行為が行われていないかなど、申告内容に関するすべての情報を詳細に確認します。実際の取引が帳簿と一致しているか、固定資産や在庫などの資産も調査の対象範囲です。
特に、大きな金額の取引や異常な動きが見られた場合は、さらに厳しい調査が行われます。税務調査には納税者の協力が不可欠です。調査官が求める書類を迅速に提供したり、質問に対して誠実に答えたりすることで、調査がスムーズに進行します。
調査の過程で問題が発覚した場合、その場で納税者に対して説明や訂正を求めるケースもあります。場合によっては、取引先や関係者に対し、聞き取り調査を実施することも少なくありません。
このように、税務調査では、あらゆる角度から納税者の税務状況を把握するための情報が収集されます。
税務調査の確率が高くなる法人の特徴
税務調査の確率が高くなりやすい法人には、いくつかの共通点があります。一般的に、高い収益がある企業や複雑な取引を行う企業、利益の増減が激しかったり海外と多くの取引を行ったりしている企業などは、税務調査の入る確率が高くなりやすいとされています。
事業規模が大きい
収益の高い大企業では、多くの取引を行うため、経理処理が煩雑になりがちです。そのため、ミスが生じる可能性が高くなると考える税務署は、大企業を重要な監視対象としています。また、大企業の申告内容に誤りがあれば、納税額が大きく変わることも理由のひとつです。
売上の計上ミス、過剰な経費、取引の実態が不明確なことで発生する誤りが発覚した発見、多額の追徴税が発生しかねません。大企業が税務調査に備えるためには、日頃から正確な帳簿管理と適切な税務申告を心がける必要があります。
これらが適切に実施されていれば、税務署からの信頼が得られると同時に、調査のリスクも最小限に抑えられます。
売上・利益などの変動が大きい
直近数年の間で売上や利益が大きく変動している企業は、調査の対象にされる確率が高まります。特に大幅な黒字転換や利益の増減が見られる法人は、税務署から注目を集めやすい傾向にあることも覚えておきましょう。
例えば、前年に比べて急激な売上増加が見られる場合、架空売上や不正な取引が行われていると疑われる可能性があります。また、利益の急増は、費用の過少計上や収入の過大計上などが疑われるため、詳細な調査が実施されます。
収入や支出の計上方法、取引の実態、帳簿の整合性などをいま一度チェックしておきましょう。
過去に申告漏れを指摘されている
一度申告漏れを指摘された企業は、税務署の監視対象として継続的にチェックされる傾向にあります。この場合、過去に指摘された問題が再発していないか、過去に指摘された内容が改善されているかどうか重点的にチェックします。
税務署では、過去の申告漏れが再度発生するリスクを重視し、該当する企業に対して定期的な調査を実施するのが一般的です。指摘歴があれば、当該企業が税法を遵守しているかどうかを確認するために、帳簿や取引内容を細かく調査します。
過去の指摘事項が解消されていない場合は、新たな指摘や追加の施策が求められます。
対象となりやすい業種に属している
不正が多発している業種は監視対象になりやすいため、調査が入る確率は高くなります。現金取引の多い風俗業・飲食業・廃棄物処理業などは、実際の売上額を申告せずに一部を除外する不正が発生しやすい業種です。
このような不正を防止するために、税務当局は、不正が多い業種を厳重な監視・調査の対象としているケースが珍しくありません。
税務調査の確率が高くなる個人事業主・個人の特徴
確定申告が未提出となっている場合、個人事業主の納税回避が疑われるため、税務調査が入る確率は高まります。事業規模に対して異常に高額な経費項目がある場合や、あまりに売上の変動がない事業者も、意図的な操作を疑われがちです。また、個人が高額な相続税を申告したときも、実地調査が行われやすくなっています。
確定申告をしていない
確定申告は、所得や経費を正確に報告し、適正な納税を行うための重要な手続きです。取引先に税務調査が入った場合は、当該取引先と関係する個人事業主も調査の対象となる可能性があります。
確定申告が未提出の場合、その個人の収入や経費の状況を把握する手段が限られます。そのため、不正などのリスクが高いと判断されると、税務署の厳しい調査を受けなければなりません。調査では、収入の源泉や支出の詳細、取引先との関係性などが徹底的に調査されます。
確定申告の内容(経費)に不審点がある
経費の計上に不自然な点が見られる際は、その正確性が疑われ、詳細な調査が入ります。例えば、一般的に交際費が少ないとされている業種にもかかわらず、多額の交際費が計上されている場合、申告内容に嫌疑かけられます。
交際費は税務上で認められる範囲が限られているため、注意が必要です。また、経費の割合が異常に高くなっていたり、他の経費と比べて著しくバランスを欠いていたりするケースも同様です。
不審な内容が含まれていた場合、税務署はそれが虚偽申告や経費の過剰計上によるものでないかをと考え、詳細な調査を実施します。経費の証ひょう類が適切に保管されているか、取引の実態があるかどうかなども詳細に確認するため、場合によっては、経費と事業の関連が確認できる書類の提出が必要です。
売上900万円台を維持している
売上高が1,000万円を超えると消費税の課税義務が発生します。毎年の売上高が900万円台を維持している場合、意図的に納税義務の基準を避けていると疑われ、税務署の調査対象になるケースがあります。
特に、業種や事業の成長を考慮して自然な売上増加が見込まれるにもかかわらず、売上高が一定水準にとどまっている場合、売上の一部を除外して、課税対象額を意図的に減少させていると判断されかねません。すべての取引を正しく記録して透明性を保つことが大切です。
相続税の申告をした
高額な資産が関与する相続税の申告は、税務署の調査対象になりやすいとされています。相続税の申告において、資産の評価が正しく行われているか、贈与された財産がすべて申告されているかなど、詳細にチェックされます。
特に、財産の評価額が高額であったり、多くの財産が存在したりする相続は、十分な注意が必要です。不動産の評価と市場価格に大きな相違が見られたり、特定の相続人に対して不自然な優遇措置が取られていたりする場合には、厳しいチェックを受けなければなりません。
上述したように、税務調査が入る理由でもっとも多いのが相続税申告です。追徴課税や延滞税などのリスクを避けるためにも、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
税務調査が入る確率を下げるためのポイント
税務調査が入ると、たとえ意図的な不正がなくても、企業の信頼が失墜したり追徴課税や罰金による経済的な負担が増えたりするなど、さまざまなリスクが生じます。このようなリスクを避けるためにも、適切に帳簿を管理して正確な税務申告が行えるよう、内部統制を整備したり適切に経理処理を行ったりする心掛けが重要です。
確定申告を正しく行う
正しい確定申告書を作成することは、税務調査のリスクを避けるために欠かせない要素です。ミスのない確定申告を行うために、以下のポイントを押さえておきましょう。
1.不備がないか確認する
確定申告書には、収入や経費、税額などを記載します。これらの情報に誤りがあると、税務署からの問い合わせや調査が入るリスクは高くなります。計算ミスや記入漏れがないかどうか、書類がすべて揃っているか、入念にチェックすることが大切です。
2.申告書の内容は細かく記載する
売上や利益が大きく変動しているようなことがあれば、その原因を明確に記載するようにしましょう。確定申告書の「本年中における特殊事情」という欄を活用し、事業の拡大や新製品の投入、経済状況の変化など、変動の原因を具体的に記載します。証拠となる領収書・請求書などの証ひょう類はすべて保管し、必要に応じて提出できるようにしてください。
意図的な不正行為は行わない
税務調査の確率を下げるためには、売上の意図的な調整や経費を水増しするなどの行為を避けなければなりません。
これらの不正行為は税務署の目に留まりやすいため、調査の対象となる確率は大幅に高くなります。
例えば、売上を低く見せるために、架空の経費を計上することで税負担を軽減しようとする行為は明らかな不正行為です。
相続税の申告においても、財産の評価を過少に見積もるなどの操作は通用しません。
税務署では、納税者の情報を一元で管理する「KSKシステム(税総合管理システム)」を使い、申告内容に異常値の有無を厳しくチェックしています。
悪質な不正行為が発覚した場合、重い罰則が科される可能性があります。
このようなリスクを避けるためにも、日ごろから正確な申告が行えるように心掛けることが大切です。
税務調査のご相談はレガシィまで
税務調査は、法人・個人事業主・個人を対象に、確定申告の内容が正確かどうか確認するために行われるものです。税務調査が入る割合は、個人の相続税がもっとも高くなっており、突然の事前連絡に戸惑うケースも多くなっています。
不要な税務調査を回避するためにも、申告は適切に行いましょう。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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