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ミニマムタックスとは?超富裕層の課税強化の背景、仕組みについて解説

2025年分の所得から適用される課税強化策「ミニマムタックス」で追加課税されるのは超富裕層の人々です。年間合計所得が30億円以上、金融所得などのみの場合は10億円以上の人が対象になると見込まれています。本記事では、ミニマムタックスの概要や仕組みなどについて詳しく解説します。除外される所得にも触れています。

ミニマムタックス(超富裕層に対する追加課税措置)とは

ミニマムタックスとは、2022年に取りまとめられた「令和5年度税制改正大綱」に盛り込まれた課税措置の「通称」です。本税制改正では「家計の資産を貯蓄から投資へと振り向ける」「資産所得の倍増につなげる」「極めて高い水準の所得に対する最低限の負担を求める」などを目的に、(1)個人所得課税、(2)資産課税、(3)法人課税、(4)消費課税、(5)国際課税、(6)納税環境整備、に対してさまざまな税制措置が講じられています。このなかでミニマムタックスは、個人所得課税に対する措置であり、財務省によれば、「税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化のための措置を設けます」(同税制改正大綱から引用)と表現されています。

ミニマムタックスをひと言でいえば、「年収30億円以上の超富裕層に対する実質の追加課税制度」です。現行の税制においては、富裕層が優遇されているという不公平感が国民のなかに存在することは否めません。わが国の所得税は7段階の累進課税制が取られており、最高税率は45%です。この45%という税率は先進主要国のなかでイギリス、フランス、ドイツと同じで、最高税率が課される所得金額は日本では4,000万円以上、ドイツはその2倍強、イギリスは1/2弱です。

ミニマムタックスの仕組み

ミニマムタックスの対象者は、年間の合計所得金額が約30億円を超える納税者とされています。

合計所得金額から特別控除額である3.3億円を引いた金額に、税率22.5%を掛けた金額が、通常の所得税額を超えた場合、その差額分を申告納税しなければなりません。

これを計算式で表すと以下のようになります。

(合計所得金額-3.3億円)×22.5%-通常の所得税額=追加納税額

合計所得金額とは「株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した金額」のことで、スタートアップへの再投資やNISA関連の非課税所得は含まれません。

では、実際に追加納税額がどれくらいになるのか、試算してみます。話を単純化するため、(1)年間の合計所得がすべて金融資産である、(2)所得税に焦点を当てるため、税率を金融所得課税のうちの所得税分15%にする、という前提で計算します。

合計所得金額が10億円の場合

  • ミニマムタックス適用前:10億円×15%=1億5,000万円
  • ミニマムタックス適用後:(10億円-3.3億円)×22.5%=1億5,075万円
  • 追加納税額:75万円

合計所得金額60億円の場合

  • ミニマムタックス適用前:60億円×15%=9億円
  • ミニマムタックス適用後:(60億円-3.3億円)×22.5%=12億7,575万円
  • 追加納税額:3億7,575万円

超富裕層に対する追加課税措置は2025年より実施予定

2023年度の税制改正法案は2023年の通常国会で可決・成立しました。上述した通り、本改正法案にミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化)政策が含まれており、2025年(令和7年)分の所得から適用されることになっています。

本改正法案に盛り込まれた個人所得課税関連政策には、ミニマムタックスのほかにも、以下のような政策が含まれます。

  • NISA制度の抜本的拡充・恒久化
  • スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設
  • 特定非常災害に係る損失の繰越控除の見直し

例えばNISAでは、つみたてNISA、一般NISAともに口座開設可能期間が設けられていましたが、制限がなくなり、投資上限額も引き上げられています。

超富裕層に対する追加課税措置の背景

ミニマムタックスが設けられた背景にはどのような事情があるのでしょうか。その理由としては大きく以下の2つが挙げられます。

  • 日本国内における「1億円の壁」という格差是正のため
  • 世界(米英独)との足並みをそろえるため

日本国内における「1億円の壁」という格差是正のため

上述した通り、わが国の所得税は累進課税制度が採用されており、所得が増加するにつれて税率が高くなる仕組みです。所得税の最低税率は年間合計所得が194万9,000円(1,000円未満の端数を切り捨て)までの5%、最高税率は4,000万円以上の45%です。一方で、株式譲渡益や配当金などの金融所得に関しては、総合課税、申告分離課税、申告不要から納税者が選択できますが、申告分離課税を選択した場合の所得税率は一律15.315%(復興特別所得税0.315%を含む)と、給与所得などに課される所得税の最高税率よりも低く設定されています。

収入が事業所得や給与所得の場合は、所得金額に応じた所得税を納めなければならないため、不公平感が出ることはほとんどありません。問題なのは、高額所得の富裕層が、課税率が一律20.315%(0.315%の復興特別所得税を含む)の金融所得が多くあり、合計所得金額が一定額を超えると、所得税負担率が下がっていく現象があることです。

財務省が2022年10月に公表した個人所得課税に関する参考資料によれば、申告納税者の所得税負担率は、所得金額1億円までは右肩上がりで上昇していくものの、1億円を超えると逆に右肩下がりで下降していきます。これが「1億円の壁」と呼ばれるものです。同資料によれば、合計所得1億円超の納税者の合計所得額は約5.6兆円(2020年分)ですが、そのうち給与所得の占める割合は19.3%にすぎず、最も多い非上場株式等の譲渡所得等が27.4%、その次が分離長期譲渡所得で21.3%でした。

こうした富裕層の税負担の不公平性を是正するために導入されたのがミニマムタックスです。

財務省|第19回税制調査会(2022年10月18日)資料一覧 資料2

世界(米英独)との足並みをそろえるため

「1億円の壁」に相当する現象は、日本のみならず、欧米の先進主要国でも見られます。例えば、所得税の最高税率が45%と日本と同じイギリス、フランス、ドイツの場合、金融所得に対する課税率はイギリスが最高20%、フランスが分離課税12.8%、ドイツが同26.375%(株式譲渡益の場合)と、税率こそ異なるものの、所得税に比べればかなり低く抑えられており、10%と20%の二段階のイギリスを除いて、税率は一律です。アメリカは0%、15%、20%の三段階で、香港、シンガポール、中国、台湾、韓国などの東アジア諸国は非課税が一般的です。

所得の下位99.9%までは、高所得であるほど所得税負担率は上がり、上位わずか0.1%に属する超富裕層は逆に、高所得であるほど負担率が下がるともいわれています。

日本証券業協会|金融所得の実態に関する分析

超富裕層に対する追加課税措置の対象者と除外される所得

ここでは、2025年分の所得から適用されるミニマムタックスの、

  • 対象者となる人
  • 除外される所得など

について解説します。

対象者となる人

ミニマムタックスの対象となるのは、純金融資産保有額が5億円以上ある超富裕層の人であり、年間合計所得が30億円以上の人だと見られています。ただし、先に述べたように、累進課税の対象である事業所得と給与所得のみで収入を得ている場合は、対象にはなりません。一方で、金融所得や土地建物の長期譲渡所得が多くある人の場合は、ミニマムタックスの対象になり得ます。仮にすべての所得が金融所得などだった場合には、年間所得10億円以上からが対象になると見られています。

除外される所得など

ミニマムタックスにおいて除外される所得としては、NISA(上限:1,800万円)やエンジェル税制による非課税所得(上限:20億円)、源泉分離課税の所得などがあります。エンジェル税制とは、本税制改正で盛り込まれた「スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設」のことであり、株式譲渡益をスタートアップ企業に再投資した個人投資家に対して、再投資分には課税すしないという優遇処置です。この場合のスタートアップとは、自己資金による創業と、未上場ベンチャー企業で設立5年未満などの条件があるプレシード・シード期の企業が該当します。

経済産業省|エンジェル税制

税金に関するご相談はレガシィまでお気軽にお問い合わせください

ミニマムタックスは、ひと言でいうと「富裕層に対する課税強化策」です。すべての所得が給与所得または事業所得以外からの場合で、年間合計所得が30億円以上の人が該当すると見られています。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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