底地とは?借地との違い・メリット・デメリット・売却方法をわかりやすく解説
Tweet「底地とはどのようなもので、借地とはどう違うのか」「底地をいかにして売却すればよいのか」
という疑問を持つ方へ向けて、本記事では底地の概要や借地との違い、メリット・デメリットなどを解説します。併せて、底地の売却方法もお伝えするので、底地を手放したいと考えている方はぜひ最後までご覧ください。
目次
底地とは?
底地(そこち)とは、借地権や地上権が設定された貸地です。第三者に土地を貸し出した状態であり、地権者(底地の所有者)は底地権を有します。底地権は、所有する底地に付随する権利であり、賃料の請求権や所有権などが該当します。
底地の所有者
底地の所有者は地権者(地主)であり、底地権者とも呼ばれます。底地権者は、土地の貸し出しによって借地人(土地を借りた人)から賃料や契約更新料などの収益を得ています。
なお、底地を所有する地権者であっても、貸した土地を自由にする権利はありません。底地の上には建物が建っており、借地権も存在するため、売却や土地の一部利用を地権者の一存で行うことも不可能です。
底地と借地の違い
底地と借地は、同じ土地を立場によって呼び替えた言葉です。底地とは「地主から見た呼び方」で、貸し出した(借地権が設定された)土地を指します。他方、借地とは「借地人から見た呼び方」で、地権者から借りた土地のことです。
同じ土地でも、地主からすると貸し出した土地の上に建物が建っている「底地」であり、土地を借りて建物を建てた借地人からすると「借地」ということになります。
底地の種類
底地は、普通借地権が設定されたものと、定期借地権が設定されたものとに分けられます。普通借地権とは更新が可能な借地権を指し、定期借地権は契約期間の上限が決まっていて原則、更新ができない権利です。
普通借地権が設定された底地
普通借地権は借地権の一種であり、平成4年施行の借地借家法によって設立された権利です。契約期間は最低30年となっており、借地人が望むのであれば地主は原則契約を更新しなくてはなりません。
なお、地主が契約の更新を拒否することも可能です。ただ、それには契約の解除が妥当であると判断されるような正当事由が求められます。更新拒絶が妥当かどうかは、主として以下の要素で判断されます。
- 地主、借地人が土地の使用を必要とする理由
- 借地に関する従前の経過(契約締結における事情、契約の経過期間、賃料不払いなどの有無)
- 土地の利用状況(建物の種別、構造、規模、用途、周辺状況など)
- 財産上の給付(立ち退き料などの提供の有無)
借地権は、土地を借りた人の保護を目的とした権利であり、地権者の立場は弱いと言わざるを得ません。正当事由が認められるケースでも、借地人は時価で建物を買い取るよう請求でき、更新請求に対し異議を唱えなかったときは自動的に契約が更新されます。つまり、一度普通借地権が設定されると、地権者側からの契約解除は極めて難しいのが現実です。
一般定期借地権が設定されている底地
一般定期借地権は定期借地権の一種で、公正証書などの書面によって特約を付与できる借地権です。最低契約年数は50年であり、契約の更新は原則できません。なお、定期借地権には、これ以外に事業用定期借地権と建物譲渡特約付借地権があります。
特約としては、「契約更新はなし」「契約期間延長の拒否」「期間満了後における建物の買い取り請求不可」などが挙げられます。なお、これらの特約を付与するには、公正証書などの書面でのやり取りが必要です。
一般定期借地権は、居住用建物である老人ホームやマンションなどに利用されるケースがほとんどです。更新の必要がないため、契約期間が終了すると貸し出していた土地は地権者のもとへ戻ります。正当事由も不要なので、地権者は契約期間が満了さえすれば確実に土地を取りもどせる点が特徴です。
底地は固定資産税の対象
固定資産税は普通税の一種であり、土地や家屋などの不動産を対象とした税金です。土地であれば住宅用地や畑、山林などが、家屋であれば分譲マンションや戸建て住宅などが、それぞれ課税対象とされます。
底地も宅地とみなされるため、固定資産税を納めなくてはなりません。底地の固定資産税額を算出する数式は以下の通りです。
- 原則的な計算式:課税標準額×1.4%
- 住宅以外の建物(ホテルやオフィスなど)が建築されている場合の計算式:土地の固定資産税評価額×70%×1.4%
戸建てやアパートなど、住宅が建築されているケースでは、軽減措置が適用されるため固定資産評価額は抑えられます。
底地を所有するメリット
底地として土地を貸し出すメリットは、借地人から地代収入を得られる点です。また、借地人に土地の管理を一任できるため地権者の管理負担が少ないうえに、相続税対策として有効なのも魅力です。
地代収入を得られる
ある土地が底地と呼ばれるのは、借地人が存在している場合です。したがって、底地からは定期的な地代を得られます。30~50年と長期の契約となるケースも多いため、地権者は長期的に安定した収入を得られる点が魅力です。
底地を貸し出していれば、突然収入が途絶える心配がありません。アパートやマンション経営などの不動産投資では、入居者の増減によって収入が大きく下がる、途絶えるといったリスクがありますが、底地の運用ならこうしたリスクを軽減できます。
また、地代が値下がりしないのもメリットです。原則として、底地の地代は契約締結時に取り決めた金額が適用されます。地権者が地代を値上げすることはあっても、値下がりはしないため、長期的に安定した収入を得られます。
管理の手間が少ない
貸し出した底地の管理は借地人が行うため、地権者にかかる負担はありません。土地の状況確認やメンテナンスといった管理が不要であり、ランニングコストがかからないのも魅力です。
アパートやマンション運営の場合、さまざまな手間が発生します。常に物件の状況を正確に把握する必要があり、修繕やメンテナンスにも対応しなくてはなりません。ときには入居者同士のトラブルを仲介したり、クレームに対応したりといった状況にも陥ります。
一方、底地の運用なら上記のようなリスクを軽減できるため、副業としての運用にも適しています。そのため、初めて不動産投資を手掛けようとしている方や、できるだけ管理の手間を少なくしたいと考えている方には、底地の運用がおすすめです。
相続税対策になる
底地などの不動産を相続するうえで、問題となるのが相続税です。相続税は相続財産の金額が多いほど税率が高くなり、不動産など評価額が高くなりがちな財産を相続すると、場合によっては莫大な相続税が発生し、相続人に多大な金銭的負担をかけかねません。
しかし底地は「1―借地権割合」に土地の評価額が下がるうえ、賃貸している土地として、相続税の「小規模宅地等の特例」を活用できます。特例では利用区分や面積によって減額割合が定められていますが、底地は「貸付事業用宅地等」に該当することで、相続税の対象となる相続税評価額を下げられ、結果的に相続税の軽減が図れます。こちらは最大で相続税評価額が50%も減額されるため、非常に有効な相続税対策になります。
なお、一口に底地といっても、小規模宅地等の特例を利用できないケースもあるため注意しましょう。例えば、土地を無償または極端に低い金額で貸し出しているケースでは特例を利用できず、相続税対策としては有効ではありません。
底地を所有するデメリット
長期的かつ安定した収入を得られ、なおかつ管理の手間も少ないと魅力的な底地ですが、デメリットもいくつかあるため注意が必要です。底地は地権者であっても自由に売却ができないほか、地代の滞納リスクがある、権利関係が複雑になるなどのデメリットがあります。
自由に売却できない
地権者は底地の所有者であるものの、土地を自由に使えるわけではありません。底地を利用する権利は、土地を借りた借地人が有します。そのため、底地を駐車場にして運用したい、第三者へ売却したいと考えてもすぐには実行に移せません。
また、借地人に立ち退いてもらうのも困難です。底地の上に存在する建物の所有者は借地人であり、立ち退いてもらうには正当事由を満たす必要があります。
さらに、底地として貸し出した土地は、長期間手もとに戻ってきません。普通借地権なら最低30年、一般定期借地権なら最低50年は戻ってこない点に注意しましょう。将来的に土地を売却したい、自分たちが住む家を建てたいなどと考えているのなら、将来の運用を踏まえた行動が求められます。
地代を滞納されるリスクがある
借地人が地代を支払ってくれない、数年にわたり滞納される、といったリスクが考えられます。底地の運用で得られる収益が収入の軸である場合、収入が途絶えてしまい、生活に支障をきたすおそれもあります。
アパートやマンション運用でも、家賃の滞納トラブルは少なくありません。ただ、アパートやマンション運用では、入居者に家賃保証会社を利用してもらうケースが多く、万が一家賃を支払ってもらえなくても、保証会社が大家へ支払いを行います。そのため、家賃保証会社を利用している限り、大家のもとに家賃が入ってこないことはありません。
ところが、家賃保証会社の多くは、あくまで入居者の家賃滞納による損害を補償対象としており、地代は対象外としているところがほとんどです。そのため、家賃保証会社は利用できず、地代を滞納された場合には地主自らが督促や回収に向けて動かなくてはなりません。
権利が複雑になる可能性がある
相続が発生した折に、権利関係が複雑になりがちなのも底地のデメリットです。底地に付与された借地権や地上権などのさまざまな権利は、地権者と借地人のそれぞれが有しています。そこへ相続が絡むとさらに面倒なことになり、権利関係が複雑になった結果、状況を把握できなくなるおそれもあります。
たとえば、借地人の遺産分割協議がスムーズに進まないケースでは、地代をどこへ請求してよいのかわからなくなるかもしれません。このケースでは、法定相続人への請求が可能であるものの、そもそも遺産分割が進んでいないとそれもできません。
しかも、地権者は不動産所得で得た所得税や住民税などを納税する必要があります。地代を回収できずとも納税の義務は発生するため、大きな金銭的負担がのしかかります。このような場合、素人では解決が難しいため、専門家への相談が必要です。
底地の主な売却方法
底地の主な売却方法として、借地人への売却が考えられます。また、底地と借地を同時に売却する、底地の権利のみを売るといった方法もあります。
借地人に売却する
底地を貸し出している相手である、借地人に売却する方法です。借地人に買い取りの意思があるのなら、わざわざ新たな買主を探す必要がなく、スムーズに取引を成立させられます。
借地人にとっては、底地を買うと更新料や地代を支払う必要がなくなるというメリットがあります。そこで、交渉をうまく進めれば、相場に近い価格で買ってもらえる可能性が高いと考えられます。
ただし、そもそも借地人が土地を購入したいと考えていないのなら、この方法は使えません。また、交渉がスムーズに進まず、かえってトラブルに発展するケースもあるため注意が必要です。
底地と借地を売却する
底地だけの場合、土地の上に借地人の建物が建っているため、単体で売却するのは困難です。一方、底地と借地を同時に売却できるのなら、購入希望者を見つけやすくなります。
住まいを求めている方からすると、土地と建物を一度に入手できるのは大きなメリットです。そのため、底地を単体で売却するよりも、売れる可能性は格段に高まると考えられます。
ただし、この手法も借地人の意向次第であるため、地権者がいくら意欲的でも借地人が首を縦に振ってくれないと成立しません。双方が売りに出したいタイミングが異なるケースも考えられます。
底地と借地を同時に売却したいのなら、借地人と密にコミュニケーションをとりつつ、早い段階から話し合いを進めていきましょう。
底地の権利のみを売却する
底地の権利のみを、投資家をはじめとした第三者に売却する手法です。土地の権利者は投資家に移るものの、借地人はそのまま今まで通り土地の上で暮らすことが可能です。
底地の権利のみ単体で売却するのは、簡単なことではありません。ただ、投資家が魅力的な土地と判断したのなら、売れる可能性はあります。収益性が高く、将来的に大きな利益をもたらしてくれると判断されたのなら、希望に近い価格で売却できるかもしれません。
また、底地を専門的に扱う業者へ売却するのもひとつの手です。不動産買い取り業者のなかには、底地を専門とする企業もあり、積極的に買い取りを行っています。相場より価格が下がるケースが多いものの、スピーディーな売却を実現できる点が魅力です。
おわりに:底地の相続でお悩みの場合は専門家に相談を
底地には、安定した収益を得られ管理の手間が少ないメリットがある反面、自由に売却できない、地代を滞納されかねないといったデメリットもあります。また、権利関係が複雑になるケースも多く、トラブルに発展することも少なくありません。
底地の主な売却方法としては、借地人への売却、底地と借地の同時売却、底地の権利のみの売却が挙げられます。いずれの方法を選ぶにせよ、底地は扱いが難しいため、売却はプロへの相談がおすすめです。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表
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