相続の知識

相続税の書面添付制度とは?メリット・注意点を解説

相続税の申告において、知っておきたい重要な決まりごとのひとつが「書面添付制度」です。この仕組みを活用して、税理士が申告内容の適正性を説明する書面を添付すれば、税務調査のリスク軽減を期待できます。この記事では、制度の概要からメリット・デメリット、注意点までを分かりやすく解説します。

相続税の書面添付制度とは

相続税の書面添付制度の理解と正しい活用は、さまざまなメリットをもたらします。まずは制度の基本的な仕組みと、なぜ積極的に活用すべきなのかについて解説します。

相続税の書面添付制度とは

書面添付制度の概要

書面添付制度とは、税理士が専門的な見解や説明を申告書に加えて、税務調査や申告手続きを効率化することを目的に設けられた制度です。この制度を利用する場合、税理士が作成過程で確認した内容を意見として表明するため、税務署や国税局からの内容についての見解を高められます
税理士法第33条の2には、法令に従って作成された申告書であることを証明するために、税理士がその見解を記した書面を申告書に添付できる旨が明記されています。
この制度は、相続税にだけ有用なわけではありません。法人税、所得税、消費税などでも可能です。

書面添付制度を活用すべき理由

書面添付制度を利用すれば、申告内容の信頼性が高まり、税務調査のリスクを抑えられます。財産が多く、申告が複雑になりやすい富裕層にとっては、特に活用するメリットが大きい制度です

財産が多いと、申告内容が複雑になる分、申告漏れや誤りが起こりやすくなります。その結果、過少申告と判断されれば、加算税や延滞税といった思わぬ負担が生じかねません。
こうしたリスクは、書面添付制度を活用することで大きく減らせます。調査の可能性を完全に防ぐことはできませんが、税理士のサポートを受けて制度を利用すれば、不安を低発生前減することが可能です。

相続税の書面添付制度と税理士の関係

税理士は、相続税の書面添付制度において欠かせない存在です。ここでは、相続税申告において税理士が果たす役割や、書面添付制度を活用する税理士の現状について解説します。

相続税申告における税理士の役割

相続税の申告において、税理士は相続財産の調査や適正評価、申告書の作成・提出などを専門的に代行しています。税理士への相談を通して、自分では気づけない節税対策を教わることも少なくありません。控除や特例、各種優遇措置の適用可否を判断しながら、相続分野における専門知識を活かして状況に応じた最適なアドバイスを提供してくれます。

税理士には、税務調査対応のサポート依頼も可能です。調査時の税務調査官への対応を一任すれば、税務関連の複雑な指摘や質問にもスムーズに対処できます。
財産の種類や規模が多く、申告手続きが煩雑になりやすい場合は、特に税理士に依頼するのがおすすめです。

書面添付制度は税理士のみが作成可能

書面添付制度における添付書面は、税理士のみが作成できると税理士法第33条の2で定められています。

申告書を税理士または税理士法人が作成した場合は、税理士が計算・整理したり相談に応じたりした事項を添付書面に記載できます。
書面添付制度を利用できるのは税理士だけであり、納税者自身が添付書面を作成することはできません。そのため、税理士が関与することで申告内容の信頼性が高まり、税務調査の対象になりにくくなります。

書面添付制度を活用する税理士の現状

 

書面添付制度を活用する税理士の現状

 

書面添付制度は申告書の信頼性を高められますが、対応している税理士は多くありません。理由として、通常の申告書作成より作業量が増えることや、添付書面に誤りがあれば懲戒処分の対象となるリスクがあることが挙げられます。

ただし、相続税に関しては、書面添付制度の利用が少しずつ増えてきています。国税庁の「令和5事務年度実績評価書」によると、書面添付の利用割合は令和元年度の21.5%から令和5年度には24.3%へと上昇しました。

財務省「令和5事務年度 国税庁実績評価書の概要」

相続税申告における書面添付制度のメリット

相続税申告における書面添付制度のメリット

相続税申告において、書面添付制度を利用することには以下のようなメリットがあります。

  • 税務調査の対象となりにくい
  • 税理士への意見聴取で調査が終わる場合もある
  • 税務調査に至らなければ加算税が課されない

これらのメリットは主に税務調査に関わるものであり、特に調査リスクを抑えたい方に有効です。

税務調査の対象となりにくい

書面添付制度の利用は、申告書が専門的なチェックを税理士から受けていることを証明します。これにより、税務署などから得られる信頼性が高まり、調査対象から外れるケースが増えます。

添付書面には、専門知識に基づき細部まで必要事項が記載されます。書面添付制度に対応できる税理士は相続税申告の専門家であり、その確認を受けることで税務調査を回避できる可能性が高まります。

税理士への意見聴取で調査が終わる場合もある

書面が添えられている場合、税務署などはまず税理士に対して意見聴取をします。意見聴取とは書面添付制度の利用時に行われる、税務調査前の税理士への聴取調査のことです。この聴取で疑問点が解消されれば、税務調査に至ることなく手続きは終了します。
意見聴取では、相続人の同席は不要です。対応はすべて税理士に任せられるので、税務調査官からの難解な質問などによる精神的負担を避けられます。

税務調査に至らなければ加算税が課されない

意見聴取のみで税務調査に至らなかった場合は、原則として加算税が課されません。意見聴取は税務調査と違い、税額などの認定を目的に行われるものではないからです。ここで申告漏れが判明しても、修正すれば自主的な申告とみなされ、ペナルティである過少申告加算税の対象外となります。
ただし、延滞税はかかるので注意しましょう。

書面添付制度のデメリット・注意点

書面添付制度のデメリット・注意点

書面添付制度には、以下のようなデメリットや注意点もあります。

  • 適正申告のための財産確認に時間がかかる
  • 内容によっては書面添付が逆効果になることもある
  • 書面添付制度を引き受けてくれない税理士もいる

デメリットを理解しておくことで、制度をより安心して活用できます。

適正申告のための財産確認に時間がかかる

相続税を適正に算出するには、財産内容や金額の丁寧な確認が欠かせません。書面添付制度においても同様です。税理士も懲戒処分などのリスクを抱える分、中途半端な調査はできません。遺産の計上漏れや計算間違いがないよう、場合によっては過去の帳簿や金融機関での入出金記録、特許権・著作権の有無などを詳しく調べるため、事前準備や調査には、時間を要します。丁寧な調査を行うためには、申告期限を意識しながら十分な時間を確保できるよう、前もって税理士へ依頼しましょう。

内容によっては書面添付が逆効果になることもある

多くの場合、書面添付制度を利用することで相続税申告に大きなメリットが生じます。
しかし、添付書面の内容が不十分または形式的である場合、かえって信頼性を損ない、税務調査に移行するリスクが高まります。

このようなリスクを避けるためにも、実績と信頼のある税理士に依頼し、説得力のある書面を作成してもらいましょう。

書面添付制度を引き受けてくれない税理士もいる

書面添付制度には税理士側にもリスクがあるため、対応に自信がない、あるいは実績がない場合には引き受けてもらえないことがあります。さらに、事務所によっては相続税申告の通常業務に含まれておらず、有料オプションとして追加報酬が必要になるケースもあります。

依頼するときは、制度に前向きに対応し、しっかりとした実績がある税理士事務所かどうかの見極めが大切です。

書面添付制度の内容・記載例

書面添付制度の内容・記載例

添付する書面に記載する事項は、税理士の情報・相続人の情報・被相続人の財産・家族の財産・参照した書類などです。これらの点に関して、税理士が確認した項目を事実に基づき細かく記載します。

また、全8ページの「税理士法第33条の2の書面添付に係るチェックシート[相続税]」も書面とともに提出します。これは財産項目ごとの確認ポイントが示された書類です。書面作成時に使用することで正しく書面が作成されているかチェックできます。提出は必須ではありませんが、提出することで書面の正確性を税務署に示せます。

相続税の書面添付制度は信頼できる税理士に相談しよう

書面添付制度は、実績のある税理士に相談するのがおすすめです。適切な書面作成やリスク回避のポイントを心得た経験豊富な税理士なら、調査リスクを軽減できます。

税理士法人レガシィは、相続・事業承継専門で60年以上の実績がある税理士法人です。相続税申告実績数は累計2万件を超えています。書面添付制度に関しても、相続のプロフェッショナルが最後までしっかりと対応いたします。経験豊富な税理士による手厚いサポートを提供しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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