コラム

相続と竹取物語(その1)

今回は「竹取物語」に表れる相続的テーマを考えたいと思います。YouTubeチャンネル登録者数100万人を突破した芸能文化税理士法人会長で公認 会計士・税理士の山田真哉さんと2023年、お互いのYouTubeチャンネルで共演させていただきました。山田真哉さんは、皆様ご存知の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(165万部)、『女子大生会計士の事件簿』(シリーズ100万部)を始め20年前から数々の大ベストセラー書籍を出版されていますが、大学では文学部に在籍され、様々な文学作品や思想に造詣が深く、研究熱心な先生です。今回、「『相続と文学』の対談に当たって先生のおすすめ文学作品は?」という質問に「『竹取物語』はどうですか?」と仰っていただき、「面白いかも!?」となり、取り上げました。5つほど相続的なポイントがあるのでこのコラムでも1つずつご紹介したいと思います。


1つ目は「財産を突然得ると人は変わってしまうことがある」です。


『竹取物語』は竹取の翁夫婦がかぐや姫という竹の中で神々しく輝く小さな女の子(かぐや姫)を天から授かるシーンから始まります。夫婦は子宝に恵まれず慎ましく暮らしていましたが、かぐや姫を授かっただけでなく、竹を切るたびに砂金が見つかるようになり、翁夫婦は面喰います。その後、かぐや姫は見目麗しい女性へと成長し、噂をかぎつけた5人の貴公子たちが求婚をしていくことになります。


ここで翁夫婦の生活も一変します。慎ましい暮らしから一転し、貴族たちと交流する華やかな生活を送るようになります。ただ、かぐや姫は誰にもなびかず、最終的には帝にもつっけんどん。最後は月に帰ります。今まで欲がなかった翁夫婦ですが、この時は大変焦りました。そのせいで、かぐや姫は願いとは逆の行動をとることになります。やはり、かぐや姫や砂金という今まで手に入れたくても入れられなかった幸運や財産を手に入れたことで「欲」が出てしまったものと思われます。


相続においても多額の遺産を手に入れられそうになった又は手に入れた時、心境や生活の質が大きく変化し、性格や考え方が変わることがあります。勘違いをして態度が傲慢になったり、その結果、人と揉めてしまい、ツキを失ってしまうこともありえます。ツキを得るには人に譲ることも大事だと言われています。ツキを得るために月に帰る――そんなダジャレを山田先生にお話ししたところ、苦笑が尽き(ツキ)ませんでした(笑)。


この歌の「子ら」も母の死によって深い悲しみに暮れ、大きな孤独を感じたと思います。我々のような士業は、「母」の遺産について目に見えるお金という「勘定」に気を配りますが、この「子ら」は「勘定」なぞはどうでもよく、「死」というものしか受け取れないくらい「感情」的になっている、そんなふうにも読めます。「勘定」より「感情」に配慮する事例として、まさに相続的な短歌と言えるでしょう。


YouTubeチャンネル「相続と文学」では今回の論点をより詳細に解説しています。今後もこのような相続を中心テーマとして描いている文学作品について、取り上げていきたいと思いますので、ご感想やご意見をYouTube等でコメントとして頂けると幸いです。


【相続と『竹取物語』前編】なぜ「かぐや姫」は「相続・贈与」の物語なのか?【対談・オタク会計士YouTuber:山田真哉先生(チャンネル登録者数63万人!)】