高齢の親を詐欺被害から守る|手口や対策を紹介
Tweet近年、高齢者を狙った詐欺被害が深刻化しています。特に親世代を中心に年間数百億円規模の被害が発生しており、その手口は年々巧妙化しています。本記事では、高齢者が詐欺被害に遭いやすい理由や代表的な詐欺の手口、そして何より大切な実践的な対策方法をご紹介します。
目次
高齢者が詐欺のターゲットになりやすい理由
高齢者が詐欺被害に遭うケースが多いのには、いくつかの理由があります。加齢による変化や社会環境の変化が、詐欺師にとって格好のターゲットとなる要因を生み出しています。
認知機能と判断力の変化
加齢に伴い、記憶力や判断力にわずかな変化が生じることがあります。これは自然な変化ですが、詐欺師はこの点を巧みに利用します。例えば、複数の人物が入れ替わり立ち替わり電話をかけてきて混乱させる「かけ子」と呼ばれる手法では、状況判断が難しくなります。
また、突然の電話やメールで焦らされると、通常なら気づくはずの不自然さに気づきにくくなります。特に「今すぐ対応しないと大変なことになる」という焦りを煽る手法は、冷静な判断を妨げる要因となっています。
社会的孤立と心理的要因
一人暮らしの高齢者や日中独りで過ごす時間が長い方は、人との会話や触れ合いを求める気持ちが強くなります。詐欺師はこの心理を利用し、親身に話を聞いたり、共感したりする態度で信頼関係を築こうとします。
特に子や孫を装った詐欺では、「家族のために何とかしたい」という気持ちに付け込まれることが多いです。家族愛や責任感の強い方ほど、実は詐欺に遭うリスクが高いという皮肉な現実があります。
情報リテラシーの世代間ギャップ
デジタル技術やインターネットの急速な発展により、高齢者の中にはオンライン詐欺の手口や対策に関する知識が不足している方も少なくありません。スマートフォンやインターネットバンキングなど、若い世代には当たり前の技術でも、高齢者にとっては新しい学びとなることが多いのです。
このような情報リテラシーの差を狙い、フィッシングメールやSMS詐欺、偽サイトへの誘導など、デジタル技術を悪用した詐欺が増加しています。特に最近ではAIを活用した精巧な偽音声による詐欺も登場しており、その見分けは専門家でも難しくなっています。
高齢者を狙う詐欺の代表的な手口
詐欺の手口は時代とともに進化し続けていますが、基本的なパターンを理解しておくことで、被害を未然に防ぐことができます。以下に代表的な詐欺の手口をご紹介します。
特殊詐欺(電話・メールを使った詐欺)
特殊詐欺の中でも最も多いのが「オレオレ詐欺」です。子どもや孫を装って「事故を起こした」「会社のお金を使い込んだ」などと電話をかけ、示談金や弁償金名目でお金を要求します。警察官や弁護士、銀行員になりすましたりするケースも増えています。
また、「還付金詐欺」では市役所や税務署の職員を装い、「医療費の還付金がある」「保険料の払い戻しがある」などと言って、ATMへ誘導し、実際には振り込み操作をさせる手口です。公的機関がATMの操作を指示することは絶対にありません。この点を覚えておくだけでも、被害を防ぐことができます。
ネット詐欺と架空請求
スマートフォンやパソコンを利用する高齢者が増えるにつれ、オンライン詐欺の被害も増加しています。フィッシング詐欺では、実在する銀行や通販サイトを装ったメールが送られ、リンク先の偽サイトで個人情報やクレジットカード情報を入力させます。
架空請求詐欺では、「有料サイトの利用料が未払い」「このままだと法的措置を取る」などと脅し、不安にさせて支払いを促します。身に覚えのない請求や、極端に恐怖を煽る内容の連絡は、詐欺の可能性が高いと考えるべきです。(参考:警視庁┃架空料金請求詐欺)
訪問販売と悪質商法
訪問販売による詐欺も高齢者を狙った手口の一つです。「屋根の無料点検」と言って訪問し、実際には問題がなくても「このままでは危険」と不安をあおり、高額な修理契約を結ばせる手口があります。また、「特別価格」「今日だけ」などと言って、健康食品や浄水器などの高額商品を契約させる事例も多いです。
最近では、コロナ禍をきっかけに「除菌グッズ」「特殊マスク」などの必要性を強調し、効果の疑わしい商品を高額で販売するケースも報告されています。突然の訪問者には安易にドアを開けず、その場での契約は絶対に避けるよう指導することが大切です。(参考:消費者庁┃訪問販売 – 特定商取引法ガイド)
高齢の親を詐欺から守るための実践的対策
高齢者を詐欺から守るためには、家族や地域、社会全体での取り組みが必要です。特に身近な家族ができる対策から、より専門的な支援まで、段階的に取り組むことが効果的です。
日常的なコミュニケーションと情報共有
詐欺防止の第一歩は、家族間の定期的なコミュニケーションです。週に1回程度は電話や訪問で近況を確認し、金銭的な話題も自然に会話に取り入れることが大切です。最近の詐欺事例について新聞記事やニュースを共有し、「もしこんな電話がきたらどうする?」と具体的な対応を話し合っておきましょう。
家族間で「合言葉」を決めておくことも効果的です。例えば、本当の家族からの電話かどうか確認するための秘密の言葉や、緊急時の連絡方法などを事前に取り決めておくことで、なりすまし詐欺を見破ることができます。
電話・通信環境の整備
詐欺の多くは電話から始まります。迷惑電話防止機能付きの電話機への交換や、電話会社が提供する迷惑電話ブロックサービスの導入を検討しましょう。最近では、AIが怪しい電話を自動検知して警告してくれるサービスも増えています。
また、留守番電話を活用するのも効果的です。「知らない番号からの電話には出ず、まず留守番電話に録音してもらう」というルールを徹底することで、冷静に対応する時間を確保できます。スマートフォンを使用している場合は、迷惑メール対策アプリの導入も検討しましょう。
金融機関の防犯サービス活用
多くの銀行では、高齢者向けの詐欺防止サービスを提供しています。例えば、一定額以上の引き出しや振込みに制限をかけたり、普段と異なる取引があった場合に家族にも通知が行くサービスなどがあります。こうしたサービスを利用することで、被害を未然に防いだり、早期発見につなげたりすることができます。
また、キャッシュカードの利用限度額の引き下げも効果的な対策です。普段使わない分のお金は定期預金にするなど、すぐに引き出せない形で管理することも検討しましょう。必要に応じて、家族が共同で口座を管理できる「家族信託」などの仕組みを活用することも一つの方法です。
地域や専門機関との連携
詐欺対策は家族だけでなく、地域ぐるみで取り組むことが重要です。地域の見守りネットワークや民生委員との連携、自治体が開催する詐欺防止セミナーへの参加などを通じて、情報と対策を共有しましょう。
また、消費生活センターや警察の相談窓口も積極的に活用することをお勧めします。不審な電話やメールを受け取った段階で、専門機関に相談する習慣をつけることで、被害を未然に防ぐことができます。最近では、高齢者向けのホットラインも充実してきているので、これらの連絡先を目立つところに貼っておくと良いでしょう。
詐欺対策のための実践的アクションプラン
ここまで様々な対策方法をご紹介してきましたが、実際に行動に移すためのステップを整理しておくと効果的です。以下に、高齢の親を詐欺から守るための具体的なアクションプランをご紹介します。
すぐにできる対策(1週間以内)
まずは、すぐに始められる基本的な対策から取り組みましょう。電話機の横に「不審な電話があったら必ず家族に相談する」という注意書きを貼ったり、家族の連絡先や警察、消費生活センターの電話番号を大きな文字で書いたカードを目立つ場所に置いたりするだけでも効果があります。
家族との合言葉を決めることもすぐにできる対策です。例えば、本当の家族からの電話かどうかを確認するための質問(「お母さんの好きな食べ物は?」など、第三者には答えられないもの)を決めておくと良いでしょう。また、普段から使用する銀行口座の通帳やカードの保管場所を家族間で共有しておくことも重要です。
- ・不審な電話・メール対応の注意書きを電話機の横に貼る
- ・家族の連絡先と相談窓口の電話番号カードを作成
- ・家族との合言葉を決める
- ・銀行口座やカードの確認と整理
- ・最近の詐欺事例について家族で話し合う時間を設ける
1ヶ月以内に取り組む対策
次のステップとして、環境整備や情報収集に取り組みましょう。迷惑電話防止機能付きの電話機への買い替えや、電話会社が提供する迷惑電話ブロックサービスの契約を検討してください。また、銀行での取引限度額の見直しや、不正検知サービスの申し込みも効果的です。
地域で開催される詐欺防止セミナーや、警察署の高齢者向け防犯教室などに参加することも重要です。同じ悩みを持つ家族と情報交換することで、新たな対策方法を知ることができるかもしれません。また、スマートフォンを使用している高齢者には、詐欺対策アプリのインストールをサポートしましょう。
- ・迷惑電話防止機能付き電話機の導入
- ・銀行の取引限度額見直しと不正検知サービスの申し込み
- ・詐欺防止セミナーや防犯教室への参加
- ・スマートフォンの詐欺対策アプリ導入
- ・地域の見守りネットワークへの参加または情報収集
長期的な視点での対策
詐欺対策は一度行えば終わりではなく、継続的な取り組みが重要です。定期的な家族会議を開き、最新の詐欺手口や対策について話し合う習慣をつけましょう。また、高齢者のデジタルリテラシー向上のために、講座などに参加することも検討してください。
将来的なリスク管理として、家族信託や成年後見制度などの法的な仕組みについても学んでおくと良いでしょう。認知機能の低下が進む前に、財産管理について家族で話し合い、適切な対策を講じておくことが重要です。また、定期的に専門家に相談し、最新の対策や制度について情報を得ることも大切です。
- ・月に一度の家族会議で詐欺対策を話し合う習慣化
- ・デジタルリテラシー向上のための講座参加
- ・家族信託や成年後見制度についての情報収集と検討
- ・専門家への定期的な相談
- ・地域の高齢者見守りネットワークへの積極的参加
もしも詐欺被害に遭ってしまったら
万が一、詐欺被害に遭ってしまった場合でも、迅速かつ適切な対応によって被害を最小限に抑えることができます。初期対応の重要性と具体的なステップを理解しておきましょう。
初期対応・通報・相談先
詐欺被害に気づいたら、すぐに行動することが重要です。振り込め詐欺の場合、振込直後であれば金融機関に連絡して振込停止手続きを行える可能性があります。また、クレジットカード情報を詐取された場合は、カード会社に連絡して利用停止の手続きを行いましょう。
被害届の提出も忘れずに行ってください。警察への被害届は詐欺被害の統計や今後の対策に活かされるだけでなく、保険金請求や民事訴訟の際の重要な証拠にもなります。また、国民生活センターや地域の消費生活センターにも相談することで、同様の被害の防止に貢献できます。
相談先 | 連絡先 | 対応内容 |
---|---|---|
警察 | 110(緊急時) 最寄りの警察署 |
被害届の提出、証拠の保全 |
金融機関 | 各銀行のコールセンター | 振込取消、口座凍結の相談 |
消費生活センター | 188(いやや) | 専門家による相談、解決策の提案 |
国民生活センター | 公式ウェブサイト | 詐欺の最新情報、対処法の確認 |
心理的サポートと再発防止
詐欺被害に遭った高齢者は、経済的損失だけでなく強い心理的ショックを受けていることが多いです。自責の念や恥ずかしさから、周囲に打ち明けられずに一人で悩みを抱え込むケースも少なくありません。家族は責めるのではなく、まずは心理的なサポートを優先しましょう。
「あなたが悪いわけではない」「プロの詐欺師は誰でも騙す技術を持っている」と伝え、安心感を与えることが大切です。必要であれば、詐欺被害者のサポートグループや心理カウンセリングを利用することも検討してください。そして、再発防止のために何ができるかを一緒に考え、具体的な対策を講じることで、前向きな気持ちを取り戻すサポートをしましょう。
まとめ
詐欺から高齢の親を守るためには、家族のコミュニケーションが何よりも重要です。日頃から金銭的な話題もオープンに話し合える関係性を築き、互いに気づいたことを共有し合える環境を作りましょう。そして、地域や専門機関とも連携しながら、社会全体で高齢者を詐欺から守る取り組みを進めていきましょう。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表