生前贈与の相談は誰に?相談先それぞれの役割・特徴、探し方を解説
Tweet生前贈与を検討しているものの「誰に相談すべきか分からない」「税理士や弁護士などの違いが分からない」と悩んでいる方も多いでしょう。生前贈与は、税務や法律、書類作成という複数の専門分野が複雑に絡み合う制度です。本記事では、生前贈与の相談先と各専門家の強みや費用の相場、専門家の探し方について分かりやすく解説します。
目次
生前贈与の相談先の役割と特徴
生前贈与には、税務や法律、不動産登記、書類作成など、さまざまな専門分野が関わります。主な相談先は、「税理士」「弁護士」「司法書士」「行政書士」の4つです。
税理士 | 節税や相続税の申告を得意とする税務の専門家 |
弁護士 | 相続争いなど法的トラブルの予防・対応に強い法律の専門家 |
司法書士 | 不動産の名義変更や登記手続きに関する実務を担う登記の専門家 |
行政書士 | 贈与契約書など公的書類の作成を得意とする書類作成の専門家 |
自身の目的や状況に適した相談先を選択できるよう、それぞれの違いについて正しく理解しておきましょう。
税理士
税理士は、税に関する手続きや相談を担う国家資格者です。主に税務書類の作成や申告の代理、税務相談などを行います。
個人・法人を問わず、納税者の立場で税務全般をサポートする役割を担います。税理士には、依頼者に代わり税務署とやりとりできる法的な権利「税務代理権限」が与えられています。税務調査の立ち会いや、税務署への意見申述を行うことも可能です。なお、税理士は、単なる「申告の代行者」ではありません。依頼者の状況を踏まえたうえで、税務的な助言や将来の対策提案まで行います。
役割
生前贈与において税理士が担う主な役割は、以下の通りです。
- 贈与税の計算と申告書作成
- 相続税との兼ね合いを考慮した贈与計画の立案
- 非課税枠の有効活用に関するアドバイス
- 複数年にわたる贈与のスケジューリング
特徴
税務の最新制度に精通している税理士は、節税面で心強いサポートを提供してくれます。相続税対策の一環としての贈与に強く、不動産評価や特例適用など、複雑な事案に対応力があることも特徴です。相談費用が比較的明確に設定されているケースが多いため、依頼しやすい一面もあります。
弁護士
弁護士は、法的なトラブルの予防と解決を担う国家資格者です。民事・刑事・家事・行政など、幅広い法律問題に対応する専門家です。
弁護士の主な業務は、依頼者の代理人として交渉や訴訟を行うことです。契約書の作成やチェック、法律相談なども日常的に扱います。また、裁判所での手続きに関して唯一代理権を持つ資格です。個人・法人を問わず、法律の面で困っている人をサポートし、複雑な利害関係の調整や感情の絡む問題にも冷静に対応してくれます。
役割
生前贈与において、弁護士が果たす役割は以下の通りです。
- 贈与契約の法的妥当性チェック
- 遺留分侵害リスクへの法的見解の提示
- 相続人間の利害対立に備えた対策
- 紛争発生時の交渉代理・訴訟代理
特徴
法律全般の専門家である弁護士は、法的リスクへの分析力と対応力に優れています。また、争いが生じた際に代理人として対応できる唯一の専門家です。事務所ごとの特色があり、生前贈与に強い事務所に相談すれば心強いサポートを得られます。ただし、他の専門家に比べ、相談費用は高額になる傾向があります。
司法書士
司法書士は、登記や法律書類の作成を専門とする国家資格者です。不動産や会社に関する登記手続きを中心に行います。
具体的には、不動産の売買や相続に伴う名義変更登記、会社設立時の登記などが挙げられます。また、裁判所に提出する書類の作成、簡易裁判所における訴訟代理など、一部の法的手続きに対応できるのも特徴です。
役割
生前贈与で司法書士が担う役割は、以下の通りです。
- 不動産贈与に伴う名義変更登記の申請
- 贈与契約書の法的整備(必要に応じて)
- 登記に必要な書類の収集と整備
- 法務局への登記手続き代理
特徴
司法書士の特徴は、不動産贈与の登記実務に強い点です。不動産が贈与の対象に含まれる場合、「所有権移転登記」の手続きが必要です。自身で手続きを行うことも可能ですが、外部へ依頼する際は司法書士の独占業務とされています。法務局とのやり取りも一任できるため、手続きがスムーズに進みます。一方で、税務や法律判断はできないため、他士業との連携が必要です。報酬は業務内容と不動産の評価額によって変動します。
行政書士
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成を専門とする国家資格者です。各種許認可申請や契約書作成など、幅広い書類業務に対応します。
具体的には、建設業許可や飲食店営業許可の申請、在留資格関連の手続きなどが挙げられます。行政手続きは複雑であり、法律の知識と書類を作成・提出するための手間が必要です。行政書士はその橋渡し役となり、書類の作成・提出を担います。
役割
行政書士が果たす役割は、以下の通りです。
- 贈与契約書、財産目録、贈与証明書などの作成
- 役所や法務局への書類提出のサポート
- 手続きに必要な添付書類の案内・収集代行
- 書面に関する法的整備と第三者への証明性の担保
特徴
行政書士は、書類作成を通じてトラブルを未然に防止します。手続きの段取りや全体像を整理する案内役となる存在です。他の専門家と比べて費用は安価な傾向にあり、依頼のハードルは低めです。ただし法的代理権や登記代理権は持たないため、他の専門家との連携を考慮しなければなりません。
生前贈与は専門家に相談するべき3つの理由
生前贈与は、将来の相続税対策や家族間の資産移転に役立つ手段として知られています。専門家に相談・依頼するメリットは、以下の3つです。
- 相続税の節税になるかどうかを見極められる
- 状況に応じた適切な贈与方法を提案してもらえる
- 親族間トラブルのリスクを事前に防止できる
適用の可否や税務上の効果、贈与後の法的トラブルを回避したいと考える場合、専門家のアドバイスがあると安心です。
1. 相続対策になるかを見極められるため
生前贈与は、すべてのケースで節税効果があるとは限りません。贈与の方法やタイミング、贈与対象者、財産の種類によっては、税負担が増す可能性もあります。税理士などの専門家に相談すると、以下のような視点から「本当に生前贈与が得策かどうか」客観的に判断してもらえます。
- 相続税の課税対象額にどのように影響するか
- 贈与税とのバランスはどうか
- 非課税枠や特例の活用可否
- 相続開始3年以内の贈与の取り扱い
例えば、相続人に対して贈与を行った場合、相続開始前の3年以内であれば、贈与と見なされず再び相続財産に含まれます。このような制度上の落とし穴を把握した上で、適切な相続対策を行うためには、専門的な知識が必要です。「生前贈与=節税になる」という一面的な判断ではなく、実際に節税になるかどうかを総合的に判断してもらえる点が、専門家に相談する大きなメリットです。
2. 状況に応じた生前贈与の方法を検討できるため
専門家に相談すれば、個別事情を踏まえた贈与方法について、具体的な提案が受けられます。生前贈与は、一律に適用できる制度ではありません。贈与者や受贈者の状況に応じて最適な方法が異なるため、以下の要素を考慮した総合的な判断が必要です。
- 贈与者の年齢・健康状態・収入や生活資金の見通し
- 受贈者の年齢・ライフステージ
- 財産の種類と評価額
- 家族構成や相続人間の関係性
例えば、贈与者が高齢であり、相続が近いと見込まれる場合「相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算される」というルールを踏まえた設計が求められます。一方で贈与者が比較的若く、長期的に贈与を継続できる状況であれば、数年間をかけた計画的な贈与が最適だと判断できます。
生前贈与には、主に2つの税制制度があります。
- 暦年贈与(基礎控除110万円を毎年活用、7年超で相続財産への持ち戻しなし)
- 相続時精算課税制度(基礎控除110万円を毎年活用、基礎控除額超は最大2,500万円まで非課税枠あり、相続財産への持ち戻しあり)
専門家に相談すれば、贈与目的や財産内容、家族の事情を考慮しつつ最適な制度を選択できます。
不動産や現金、有価証券など、贈与する財産の種類に応じたアドバイスが受けられるのも大きな利点です。
3. 親族間でのトラブルを防げるため
将来的な争いを未然に防止できることも、専門家に依頼するメリットです。生前贈与は、親族の間で感謝されると同時に、トラブルの火種になりやすいため慎重に検討する必要があります。贈与の内容や時期、受贈者の偏りなどが原因で、争いに発展するケースも少なくありません。
生前贈与を行う際は「なぜこの人に」「何を」「どれだけ贈与するのか」といった意図を文書化し、第三者の視点で整理することが重要です。専門家の支援を受けて正式な贈与契約書を作成すれば、以下のようなトラブルを防止できます。
- 契約内容を明文化して、当事者の認識違いを防止できる
- 金銭・不動産の授受の証拠となるため、贈与の既成事実化ができる
- 相続時に「実質的な相続財産ではない」と主張されるのを防げる
生前贈与の話し合いは、感情が絡みやすいため、親族同士の対話だけでは冷静に判断できないケースも考えられます。専門家が第三者の立場として間に入ることで、緩衝材の役割を果たせることも重要なポイントです。
生前贈与での相続税対策に強い税理士の探し方
税理士と一口に言っても、法人税や所得税を専門とする事務所から、相続や贈与に特化した事務所まで幅広く存在します。相続税対策に強い税理士を選ぶためには、以下の3つのポイントを押さえて比較し、自身の状況に合う税理士を見極めることが大切です。
- 相続税申告の実績が豊富にある
- 不動産や非上場株式など難易度の高い財産に詳しい
- 相続税対策に関する実績やノウハウを持っている
生前贈与を活用して相続税対策を行う場合、どの税理士に依頼するかが結果に大きな影響を与えます。
相続に関する経験が豊富かを確認する
生前贈与と相続税対策は、密接に関係しています。相続に詳しい税理士に相談すれば、贈与税だけでなく、将来の相続税まで見据えたアドバイスが受けられます。相続税は、税目でも特に専門性が高い分野です。相続財産の評価や特例適用の判断、親族関係や遺産分割の複雑さなど、さまざまな知識が求められるため、以下のような観点で税理士事務所の実績を確認しておきましょう。
- 相続税申告の年間件数が多いか
- 特化している分野があるか
- 二次相続まで踏まえた提案をしてくれるか
最近では、「相続専門税理士」「生前対策専門事務所」などの名称を掲げている税理士事務所も少なくありません。こうした事務所では、生前贈与や遺産分割、二次相続までを見据えたコンサルティングを実施するケースが多くなっています。
また、定期的に相続セミナーを開催している税理士も、最新の法改正や制度動向に詳しい傾向があるため、判断材料のひとつになるかもしれません。多くの税理士事務所では、初回相談(無料または有料)を設けています。初回相談でさまざまな質問をした際に、制度面だけでなく、実務的な視点を交えた回答が返ってくる税理士に依頼するようにしましょう。
土地・不動産など難しい分野に精通しているかを確認する
不動産の生前贈与に詳しい税理士を選ぶのもおすすめです。不動産は評価方法や課税対象の判断が複雑であり、土地の形状や接道状況、用途地域などにより評価額が変わるため、机上の理論に加え、実務経験が欠かせません。税務的な観点では、以下のような特徴が挙げられます。
- 相続税評価額と実勢価格の差が大きい
- 小規模宅地等の特例など、要件の複雑な特例が多い
- 共有不動産や貸家建付地の評価が難しい
不動産に関する知識や生前贈与の実績が豊富な税理士事務所であれば、単に贈与時の税額を算出するだけでなく、贈与後の活用方法や売却時の税務アドバイスまで一貫してサポートしてくれます。
不動産に強い税理士かどうかを見極めるには、以下のポイントを参考にしてください。
- ホームページや実績紹介に「土地」「不動産」「小規模宅地等の特例」などの記載があるか
- 不動産関連のセミナーやコラムを発信しているか
- 初回相談で、不動産に関する具体的な相談に即座に答えられるか
不動産を含め、総合的な提案力があるかどうかを見極める必要があります。
実績とノウハウが豊富かを確認する
生前贈与で後悔しないためには、税理士事務所の実績とノウハウをチェックしましょう。どれだけ深い知識を持つ税理士であっても、実務経験が少なければ制度を上手く活用しきれない可能性があります。税理士事務所を選ぶ際は、公式サイトや相談サイト、口コミなども確認することが大切です。以下の3つが特に重要なポイントです。
- どのような相談に対して、どのような解決策を提示したか
- 節税額や相続争いの回避など、具体的な成果を記載しているか
- 実際の相談者がどのような点を評価しているか
口コミの内容から、実務的な強みや依頼者との信頼関係がどのようになっているかが読み取れます。事例紹介の中に「不動産贈与」「複雑な相続関係」「高齢の親をめぐる対策」など、自分のケースと近い内容が含まれているかどうかも確認しましょう。生前贈与は、単独で行うものではなく、相続全体の流れの一部として設計するのが望ましいです。相続に特化していない税理士事務所の場合、このような視点が含まれず、目先の贈与税対策だけに偏ったアドバイスになる可能性があります。ホームページに掲載されたコラムやFAQ、SNS、ブログなど情報をしっかりと確認し、信頼感を持てるかどうか判断しましょう。
生前贈与の相談はレガシィまで
生前贈与は、相続税対策や円満な資産承継を実現するために有効な手段です。しかし、贈与の方法やタイミング、適用すべき制度は個々の状況により大きく異なります。生前贈与の手続きは、複雑になるケースが多いため、専門家のサポートがあると安心です。
相続専門の税理士法人レガシィでは、贈与税・相続税・遺言・不動産などをトータルに見据えた生前対策をサポートしています。初回の相談は無料で行っているので、生前贈与のお悩みがあれば、ぜひ一度レガシィにご相談ください。
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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表