後継者不足とは? 原因から解決策まで徹底解説!
Tweet日本では少子高齢化や価値観の変化などにより、多くの企業が後継者不足という課題を抱えています。この課題は単なる企業経営の問題にとどまらず、地域経済や雇用にも深刻な影響を及ぼしかねません。本記事では、企業における後継者不足の現状やその原因を解説するとともに、具体的な解決策や成功事例を紹介します。
目次
企業の後継者不足問題とは
企業の後継者不足問題とは、事業承継したいのに会社を引き継ぐべき後継者が見つからず、廃業を余儀なくされる企業や個人事業主が増加している問題のことです。後継者不足がもたらす影響は、単に一企業の存続にとどまりません。中小企業や小規模事業者が廃業することで、地域社会の雇用が失われ、経済規模が縮小する懸念があります。例えば、地域密着型の企業が消滅することで、地域住民にとって生活の利便性が損なわれたり、経済の多様性が失われたりするかもしれません。
また、中小企業は日本のGDPの大きな割合を占めるため、この問題が長引くと経済全体にも大きな打撃を与える可能性があります。
特に、日本は超高齢社会に突入しており、経営者の高齢化がこの問題を一層深刻化させています。
中小企業庁が公表している「事業承継ガイドライン(第3版) 」によれば、60歳以上の経営者のうち半数程度が事業承継の準備を進めていない状況です。このような状況を放置すると、日本全体の経済活動が停滞するため、持続可能な成長を促す仕組みづくりが重要です。
後継者不足の傾向がある職業・業界
日本全体で進行している後継者不足問題は、特定の職業や業界でより顕著に見られており、高齢化が進行している分野や、人手不足が深刻化している業界では、より深刻な状態です。また、デジタル化やITの導入が遅れている企業でも、後継者不足の傾向が強いことが指摘されています。
代表的な業界としては建設業と製造業です。これらの業界は職人の技術が重要である一方で、若者離れが進んでおり、後継者の確保が難しい状況に直面しています。さらに、地方に拠点を置く中小企業では、地域の人口減少の影響を受け、後継者不足が一層深刻化しています。
特に建設業では、長年培われた技術の伝承が難しくなっており、事業承継が進まないことで業界全体の技術力低下が懸念されています。一方、製造業では国内外の競争が激化する中、後継者の不足により事業継続が困難なケースが増えています。
後継者不足の現状
日本における後継者不足問題は、経営者の高齢化、後継者不在率の高さ、後継者不在による廃業件数の増加といったところからも深刻さが分かります。以下では、それぞれについて詳しく解説します。
経営者の高齢化
中小企業や小規模事業者の経営者年齢が年々高齢化している現状は、後継者不足問題の根本的な要因のひとつとされています。中小企業庁によると、この20年間で経営者年齢のピークは50代から60~70代へと大幅に上昇しています。このデータは、経営者が引退を考える年齢に近づいていることを示しており、事業承継の準備が急務であることを浮き彫りにしています。
さらに、中小企業庁の「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」では、2025年までには70歳(経営者の平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人に達すると予測しています。このような状況下では、早急に後継者を見つけるか、他の承継手段を検討しなければ、事業の存続が難しくなると考えられます。
後継者不在率が高い水準
経営者の高齢化が進む中、後継者不在率が依然として高い水準にあることも問題です。中小企業庁の「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によれば、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者(約245万人)のうち、約半数(127万人)が後継者未定の状態にあるとされています。
また、帝国データバンクの「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)」によると、2024年の全国の後継者不在率は52.1%で、特に秋田県と鳥取県で高い傾向が見られました。その理由として、家族経営の企業が多く、第三者に経営権を譲渡することに対する心理的抵抗があることなどが関係していると考えられます。
後継者不在による廃業件数の増加
日本政策金融公庫が公表している「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」によると、後継者が決定している企業は全体の10.5%でした。一方、後継者が見つからないために廃業を予定している企業は57.4%と、2019年の調査よりも4.8ポイント上昇しており、問題の深刻さを物語っています。
後継者がいないことによる廃業は、地域経済や雇用環境に大きな影響を与えます。特に地方では、企業の廃業が地域社会の活力を失わせる要因にもなりかねません。このような状況を改善するためには、M&Aの活用や、第三者承継の普及促進が重要です。
日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」
後継者不足の原因
後継者不足の問題は、日本全体の社会構造や経営環境の変化が複雑に絡み合った結果として生じています。その要因は多岐にわたりますが、代表的なものとしては、労働人口の減少、親族内での価値観の変化、事業承継の準備不足が挙げられます。
労働人口の減少
日本が直面している少子高齢化は、後継者不足の大きな原因のひとつです。内閣府の「令和6年版高齢社会白書(概要版)」によると、2025年には国民の約3人に1人が65歳以上、さらに約5人に1人が75歳以上になる計算です。
少子高齢化による労働人口の減少は、特に地方の中小企業や小規模事業者に大きな影響を与えています。若年層の人口が減少することで、地元で事業を引き継ぐ候補者そのものが少なくなっており、事業承継の選択肢がますます限られてしまうかもしれません。
内閣府「令和6年版高齢社会白書(概要版)第1章 高齢化の状況(第1節及び第2節)」
親族間における事業承継の価値観の変化
かつては、親族内で事業を承継することが一般的でした。しかし、時代の変化とともに、親の事業を必ずしも引き継ぐ必要はないという価値観が広がりつつあります。若い世代は自分の興味や関心を重視して職業を選ぶ傾向が強まっており、親の事業よりも自らが望む仕事を優先する人が増えています。
また、地方では子どもが都市部に転出してそのまま戻らないケースも多くなりました。都市部では多くの就職機会があり、地方に残って事業を引き継ぐよりも、都会でキャリアを積む選択がしやすい環境が整っています。
事業承継の準備不足
後継者を選定し、育成するには長い時間と計画が必要です。しかし、日々の業務に追われる中で事業承継の準備が後回しにされるケースは多く、結果的に後継者不足を招くことがあります。とりわけ中小企業では、経営者一人に多くの業務が集中しているため、後継者の育成に割ける時間やリソースが限られているのが現状です。
また、事業承継の準備が不十分なまま経営者が引退年齢を迎えることで、後継者がスムーズに経営を引き継ぐことが難しくなります。経営ノウハウの共有や人脈の引き継ぎが不十分だと、後継者は経営に必要なスキルを十分に習得できず、事業の継続が困難になる可能性があります。
後継者不足の解決方法・対策
後継者不足を解消するには、以下の方法が有効とされています。
ここからは、それぞれの解決方法について詳しく解説します。
社内で後継者を育成する
後継者を親族内に限らず、企業内で後継者を育成する方法です。社内で後継者を選ぶ場合、その人物が事業内容や企業文化に精通しているため、事業承継がスムーズに進むことが期待できます。また、既存の従業員との信頼関係が構築されていることも利点です。
ただし、後継者の育成には時間がかかるため、早めに取り組むことが重要です。後継者候補に対して経営の知識やスキルを計画的に教育し、経営者としての役割を段階的に引き継がせる道筋を整備する必要があります。
外部から後継者を登用する
社内で後継者候補を見つけることが難しい場合、外部から人材登用するのもひとつの解決策です。
外部から後継者を迎えることで、新たな視点や知識を企業にもたらし、事業の発展が期待できます。特に、専門知識や経験を持った人材を登用することで、経営改革や成長戦略を推進する可能性が広がります。
一方で、外部からの登用には社内の反発や文化の違いによる摩擦が生じるかもしれません。そのため、後継者候補の選定や登用は慎重に進める必要があります。候補者とのコミュニケーションを密にし、社内での信頼関係を築くことが重要です。
企業価値を向上させる
企業価値の向上は、後継者不足の解決策として非常に重要な取り組みです。企業の価値が高まることで、M&Aを検討する際、円滑に進みやすくなるだけでなく、後継者候補が事業に魅力を感じる可能性も高まります。また、企業価値を向上させる努力は、単に引き継ぎを促進するだけでなく、企業の成長基盤を強化することにもつながります。
具体的には、企業の強みを明確化し、それをさらに伸ばすための施策を行うことが効果的です。例えば、製品やサービスの品質向上、業務効率化による利益率の改善、新しい市場への参入などが挙げられます。これらの取り組みは、企業の競争力を高めるだけでなく、後継者が引き継ぎ後の将来性をイメージしやすくするメリットもあります。
さらに、M&Aを成功させるためには、専門家のアドバイスを受けることが重要です。専門家は、企業価値の適切な評価方法や、買収候補者との交渉をサポートしてくれるため、リスクを抑えながら手続き全体をスムーズに進められます。
マッチングサービスを利用する
近年では、後継者を探している企業と、事業を引き継ぎたい個人や団体をつなぐマッチングサービスが注目されています。これらのサービスは、民間の企業や公的機関によって提供されており、後継者不足に悩む企業にとって重要なリソースとなっています。
公的機関が運営するマッチングサービスでは、無料で相談や支援を受けられる場合が多く、安心して利用できます。一方で、民間のサービスでは、より細やかなマッチングや専門的なアドバイスが受けられることが特徴です。自社の状況に応じて、適切なサービスを選ぶことが重要です。
事業承継やM&Aの専門家に相談する
後継者不足問題の解決において、事業承継やM&Aの専門家の力を借りることも効果的です。信頼できる専門家から適切なアドバイスを受けることで、事業承継のプロセスを効率化し、リスクを低減できます。
専門家は、企業の状況を客観的に分析し、最適な承継方法を提案してくれます。また、法務や税務などの複雑な問題についてもサポートを受けることが可能です。このような外部の力を活用することで、後継者不足問題を解決し、事業の将来性を確保できます。
事業承継の際に起きやすいトラブル
事業承継は企業の存続を左右する重要な手続きですが、その過程でさまざまなトラブルが生じることがあります。ここでは、親族内・親族外での承継やM&Aを活用した承継における代表的なトラブルについて解説します。
親族内の事業承継で起きやすいトラブル
親族内での事業承継では、特有の課題を抱えることがあります。後継者候補となる親族に経営者としての資質が必ずしも備わっているとは限らず、それが原因で承継が円滑に進まない場合があります。また、後継者以外の親族が承継に反対することで、家庭内での意見の対立が生じることも少なくありません。
さらに、現経営者の資産相続に関する問題もトラブルの原因となりがちです。例えば、経営権を誰に譲るのか、また他の親族にどのように資産を分配するのかについて合意が得られないケースがあります。このような状況を避けるためには、早い段階から親族間での話し合いを行い、透明性を確保することが大切です。ただし、家族だからこそ感情的な問題が絡みやすく、コミュニケーションが難航する場合もあります。
親族外の事業承継で起きやすいトラブル
親族以外から後継者を選ぶ場合、特に注意が必要です。この場合、後継者を育成するために時間と労力がかかることが多く、現経営者との経営理念や方針の違いがトラブルの要因になることがあります。加えて、内部の従業員からの反発が起きる可能性もあり、新たな後継者が十分な信頼を得られない状況に陥ることも考えられます。
また、取引先との関係性が変化することも懸念されます。長年築いてきた取引先との信頼関係が、新しい後継者によって損なわれるリスクがあるため、事前に取引先へ説明や調整を行うことが重要です。これらの問題を未然に防ぐためには、計画的な後継者の選定と育成、そして社内外への適切な説明が必要不可欠です。
M&Aの事業承継で起きやすいトラブル
M&Aを利用した事業承継では、企業価値の適切な評価や売買のタイミングが重要です。企業価値が適切に評価されていない場合、買収側との交渉が難航したり、不適切な条件で取引が進んだりするリスクがあります。そのため、早い段階から企業価値を高めるための取り組みを行うことが求められます。
さらに、M&Aでは売買契約に伴う法的な手続きや税務問題も発生するため、専門的な知識が欠かせません。これらのトラブルを避けるためにも、経験豊富な専門家の支援を受けることが大切です。また、M&A後の従業員や取引先との関係性の維持についても計画を立てておくことで、スムーズな事業承継が可能になります。
成功する事業承継のポイント
事業承継を成功させるためには、単に後継者を決定するだけではなく、現状の課題を把握し、具体的な対策を講じることが重要です。
まずは、現在の経営状況を正確に把握し、後継者の選定や育成を計画的に進める必要があります。
特に、企業の財務状況や事業の強み・弱みを明確にすることが大切です。また、事前準備として親族や従業員とコミュニケーションをとり、事業承継に関わる関係者が同じ方向を向けるよう、現経営者が主導して合意形成を図ることも大切です。
次に行うべきことは、事業承継の計画です。この計画には、後継者の選定、育成スケジュール、承継のタイミング、財務や法務に関する対策などが含まれます。
実際に事業承継の段取りが決定したら、専門家の助けを借りることも検討しましょう。信頼できるコンサルタントや税理士、弁護士などの専門家に相談することで、リスクを最小限に抑えながらスムーズに進めることが可能です。
とりわけ、M&Aを活用した承継を検討する場合、専門的な知識や経験が求められる場面が多くあります。外部の視点を取り入れることで、新たな事業展開のアイデアを得られるかもしれません。
後継者不足対策サポートの成功例
親族内に後継者が不在とされていた企業が、コンサルティングサポートを活用し、親族間での対話を通じて親族外後継者を選定した事例があります。専門家が現経営者と後継者候補、さらには他の親族との橋渡しを行うことで、意見の対立を解消し、合意を得ることができました。第三者の介入によって冷静な議論が可能となり、感情的なトラブルを避けられる点がコンサルティングの大きな利点です。
また、相続が完了した後も経営方針をめぐって家族間で意見が分かれていた企業が、専門家のアドバイスを受けながらクロスボーダーM&Aを実現した事例もあります。グローバルな視点を持つ買い手を見つけることで、企業価値を最大化し、さらなる成長を遂げることができました。この事例では、税務や法務の専門家が連携し、複雑な手続きを効率的に進めることで、トラブルを最小限に抑えられました。このように、専門家のサポートを活用することで、後継者不足の課題に対処しつつ、新たな可能性を広げられます。
おわりに:後継者不足問題にはプロの力を借りて対策しよう
親族や社内に後継者がいない場合でも、M&Aやマッチングサービスを活用することで、リスクを最小限に抑えながら円滑な事業承継を進められます。しかし、これらの取り組みを経営者一人で進めるのは容易ではなく、専門知識や経験を持つプロの力を借りることで、スムーズな事業承継が実現しやすくなります。
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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・
武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー
相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。
<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表>
<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表