相続の知識

同族会社の株式譲渡について|手続きやメリット・デメリットを解説

近年、同族会社の株式譲渡が注目されています。 本記事ではなぜ株式譲渡が増えているのか、株式譲渡の良い点や悪い点、事業承継によって株式譲渡を行う際の工程などを解説します。さらに、株式譲渡に必要な書類や、譲渡の際に発生する税金や注意点にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

同族会社とは

「同族会社」とは、少数の特定の株主が経営権を握っている会社のことです。一般的にオーナー(創業家)が株式の大半を所有している会社を指します。、税制上は、会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社をいいます。
一般的なイメージのように、血縁・婚姻関係にある個人による同族会社も多数存在しますが、上記の税務の定義上、法人でも成り立ちます。また、同族会社は非上場の中小企業に多く見られます。

株式譲渡の方法

株式の譲渡を行う際には、①売買 ②贈与 ③相続という3種類の選択肢があります。株式譲渡の方法やメリット・デメリットを個別に解説していきます。

売買

売買は、最も一般的な株式譲渡の方法です。株式を金銭と交換し、引き換えに所有権が移転します。資金力が脆弱な相手は対象となりにくいため 、M&Aによる事業の承継や、従業員を後継者として承継する際に用いられます。

株主(オーナー)は売買によって得た対価に対し、所得税と住民税が課せられます。また、評価額より大幅に安く売った場合、差額分が贈与とみなされることもあり得ます。この場合贈与税が課せられますが、贈与税を払うのは贈与を受けた側です。贈与税は超過累進課税のため、適正な評価額に注意すること、事前に相手とよく相談しておく必要があります。

贈与

贈与は、無償で株式を譲渡する方法で、親族間で行われるのが一般的です。現在のオーナーが生前に株式を無償で渡す生前贈与も選択肢のひとつです。贈与は金銭を受け取らないため、贈与する相手に資金力がなくても可能ですが、贈与を受けた後継者自身が贈与税を払う必要があります。この場合の贈与税は株式の評価額によって決定され、場合によっては高額の贈与税が課せられる可能性もあります。事前に評価額を把握して、贈与前に税金対策をしておく必要があります。

相続

株式の保有者に相続が発生したとき、その相続人に株式が承継される方法です。株主(オーナー)が死亡し、その株式を相続人(親族)が後継者となり、相続で取得するのが一般的です。相続人は、売買のように購入資金を用意する必要がありません。

とはいえ、税額は株式の評価額によって算定されるので、価値が高い株式であれば高額の納税が必要となることもあります。そのため、事前に評価額を把握しておくことが重要です。

また、相続人が多い場合、株式が分散して経営が不安定化するリスクもあります。リスクを低減するためには、現オーナーは生前に遺言書で株式が分散しないように対策しておかなければなりません。

同族会社の株式譲渡が注目されている背景

近年、同族会社の株式譲渡が注目されています。もともと同族会社は非上場の中小企業に多く、小規模な企業ほど後継者が不足しがちであり、また経営者の高齢化も進んでいることから、株式譲渡が一つの解決策として検討されることが増えています。

企業の経営に関する情報を扱っている帝国データバンクが、2022年から2024年にかけて27万社を対象として行った調査によれば、2024年現在、後継者不在率は52.1%と報告されており、事業承継の難しさが明確化されています。

また、この調査では後任代表者の経営経験についても言及されています。その中では、経営経験3年未満の後任代表者が59%と半数を大きく超えていること、経営経験3年未満の後任代表者がここ数年増加していることも記載されており、ここでも後継者が不足する傾向が見えます。

帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)」

同族会社が株式譲渡を行うメリット・デメリット

同族会社が株式譲渡を行う場合、メリットとデメリットがあります。大きな金銭が動く場合がありますし、税額やその後の事業にも関わることなので、事前にしっかり押さえておきましょう。

メリット

同族会社で株式譲渡を行うと、①創業者利益の獲得 ②事業承継の手段として有効 ③資金調達も可能 ④節税に役立つ などのメリットがあります。以下に①~④のメリットを個別解説します。

①創業者利益の獲得

「創業者利益」とは、企業立ち上げ時の出資額と売却時の差額を指します。この金額が大きいほど事業展開が成功した証明になりますから、金額的な利益が得られることに加えて経営者のモチベーションにもなる要素です。

②事業承継の手段として有効

株式譲渡は事業承継の手段として有効です。特定の人が株式の50%を超えるように譲渡を行えば、経営権も譲り渡すことができるため、後継者の指名ができ、後継者不足を解決できます。

③資金調達も可能

非上場の株式は上場されている株式より高額評価されることもあります。そのため株式譲渡によって大きな資金が得られるケースもあり、次なる事業の資金とする人や、老後の生活資金として活用することも可能です。

④節税に役立つ

株式はオーナーが故人となった後に相続されることもありますが、株式譲渡した方が効率よく節税効果を得られます。数値としてみると、相続税は最も高い場合55%ですが、株式譲渡は個人なら20.315%、法人なら29~約34 %と、節税効果が高いことは明確です。

デメリット

非上場企業の株式を譲渡する場合、その株式に関連するすべての資産や権利も一緒に移転されます。つまり、会社が所有している不動産や設備、契約なども含めて、譲渡先に引き継がれることになります。

そのため、もし特定の資産(たとえば、重要な不動産や特定の機械設備など)を譲渡せずに会社に残したいと考える場合、株式譲渡という方法は適していません。なぜなら、株式を譲渡すると、その会社に関連するすべての資産も一緒に譲渡されてしまうからです。

「特定の資産を残したい」のであれば、株式譲渡ではなく、他の方法を検討する必要があります。
ま た、売却する相手に不利な情報を隠して譲渡を行った場合、契約を破棄される可能性がありますし、訴えられることも考えられます。
そのため非上場の株式を譲渡する場合、これらのデメリットを踏まえて進めるべきです。

同族会社が株式譲渡で行う方法

同族会社が株式譲渡によって事業を承継する場合、会社の規模や業態、経営状況を考慮することに加えて、会社法に沿って手続きを進める必要があります。細かい方法は会社ごとに定められた定款によって異なりますが、取締役会や株主総会などから了承を得なければ、譲渡できないことが一般的です。

中小企業では他社に株式が譲渡されることを好まないケースが多く、譲渡制限をかけている場合があります。
株式の譲渡を考える場合、まず会社の登記簿謄本を見て、譲渡に制限がかけられているかどうかを確認しましょう。

同族会社の事業承継を株式譲渡で行う際の手続きの流れ

同族会社が株式の譲渡によって事業の承継を行う場合、以下の手順を踏まなければなりません。
この項目では、その手続きの流れを4つのステップで解説します。

  • 株式譲渡の承認請求を行う
  • 承認機関から承認を得る
  • 株式譲渡契約書を結ぶ
  • 株主名簿の書き換えを行う

それぞれの手続きについて詳しく解説します。

1. 株式譲渡の承認請求を行う

株式の譲渡を考える株主(オーナー)は、まず会社に対して譲渡する株数や、譲渡相手の氏名や法人名などを示す必要があります。そのため「株式譲渡承認請求書」という書面を作成して提示しなければなりません。
この手続きが雑であったり不十分だったりするとトラブルになる可能性があり、その後の経営にも関わるため、専門性をもつ税理士に相談される方法もひとつです。

2. 株式譲渡承認機関から承認を得る

株式譲渡の承認請求が実施された場合、株式譲渡承認機関は、株式譲渡を行うかどうかを検討しなければなりません。一般的に、取締役会や株主総会を開催して、譲渡を承認するかどうかが判断されます。
承認機関が存在しない企業は、臨時で株主総会を開いて株式の譲渡について決議を取る必要があります。

株式の譲渡を認めるかどうかは、承認請求を受領した日から数えて2週間以内に返答することが義務付けられています。仮に返答や通知がない場合は、請求者は承認されたこととみなして譲渡を行うことができます。
そのため、可否の通知は確実に行うことが重要です。

3. 株式譲渡契約書を結ぶ

株主総会や株式譲渡承認機関で株式の譲渡が承認されたら、次に行うのは譲渡対象者との協議・交渉です。売却の価格や条件、日程や支払い方法などについて双方が合意したら、株式を譲渡する契約書を交わします。

契約書には以下の項目を明記することが一般的です。
①譲渡する株式の銘柄や種類、株式数
②譲渡の日程
③譲渡価格
④譲渡金の支払い方法
⑤譲渡実行の前提条件
⑥表明保証(譲渡に関連する約束事を保証すること)
⑦損害賠償や補償

なお、贈与によって株式を譲渡する場合は、対価が発生しない形で契約を結ぶこととなります。

4. 株主名簿の書き換えを行う

契約を終えたら、株式を譲渡する人(法人)と譲渡される人(法人)は、株主名簿の変更を連名で企業宛に請求します。これを受けて会社側が名簿の書き換えを行ったことを経て、株式の譲渡が終了します。
念のため、名簿が適切に変更されたかどうかを確認する目的で、株主名簿の記載事項を請求して、譲渡が完了していることを確認すると良いでしょう。

株式譲渡に必要な書類

株式の譲渡をトラブルなく遂行するには、準備段階や譲渡段階、譲渡後などタイミングにより必要な書類が異なります。この項目では、段階に応じて必要となる書類の名称とその概要、発行者について解説します。

①株式の譲渡を準備する段階
株式譲渡承認請求書 会社に株式の譲渡が適切かどうかを判断してもらうための書類(譲渡を希望する株主が作成)
株主総会招集通知/取締役会招集通知 提起された株式の譲渡が適切かどうかを検討するための会合を通知する書類(会社が発行)
株主総会議事録/取締役会議事録 提起された株式の譲渡についての検討を行った会の議事録(会社が作成)
株式譲渡承認の通知書 譲渡を行う株主に対して、株式の譲渡を認める旨を知らせる書類(会社が発行)
②譲渡を実施する段階
株式譲渡契約書 株式の譲渡に関する諸契約(株式を譲渡する株主と譲渡される人あるいは企業が合議の上発行)
③譲渡終了後
株主名簿の書き換え請求書 株式譲渡に伴う株主名簿の変更を依頼する書類(株式を譲渡した側と譲渡された人または企業が連盟で発行)
株主名簿 株式の譲渡に伴って変更された名簿(会社が発行)
株主名簿記載事項証明書の交付請求書 株式の譲渡に伴う名簿変更が適切に行われたことを確認するための請求書(株式を譲渡した側と譲渡された人または企業が作成)
株主名簿記載事項証明書 株式の譲渡に伴って名簿変更が適切に行われたことを証明する書類(会社が発行)

株式譲渡の評価額

株式の譲渡を検討する場合、利益や税金などの金銭的要素を無視して進めることはできません。適切な売却価格や発生する税額を検討するには、まず評価額を知ることが重要です。この項目では譲渡する株式の評価額について解説します。

株式の評価額は、上場企業であれば、「1株当たりの金額×譲渡する株数」という計算式で求めることが可能です。
一方、同族企業の場合、株式を上場していないことが一般的です。そのためこの項目では、非上場株式の評価額を求める方法について解説します。

上場されている株式は1株当たりの単価が取引所で日々表示されますし、株取引を行うサイトなどで確認できます。しかし非上場企業に関しては明確な市場価格がないため、自社の株式の評価額は必要に応じて算出する必要があります。

非上場の株式の評価額を算出する方法としては、以下の3種類が代表的です。それぞれの名称と特長を解説します。

①純資産価額方式

純資産価額方式では、会社が保有する資産から債務や法人税などを差し引いて残った額を株主に分配する前提で評価額を算出します。この方法は「原則的評価方式」とも呼ばれており、同族会社の評価を行う際に有効です。

②類似業種比準方式

類似性がある上場企業の株価を参照して評価額を算出する方法です。純資産価額方式と同様に「原則的評価方式」とも言われるもので、同族企業の株式を評価する場合に利用されます。

③配当還元方式

配当還元方式は、対象となる企業の配当金から評価額を算出する方式です。比較的計算は容易ですが、上記の類似業種比準方式より評価額が低くなることは知っておくべきです。
なお、この方法は経営に関与しない程度の少数株を保有している場合に用いられることが多いです。

株式の評価額に関して詳しくまとめた記事を以下にご紹介します。株式の評価額への理解を深めるために、ぜひ併せてご参照ください。

株式譲渡で発生する税金

株式の譲渡を考える際には、税金の発生条件やおおよその課税額も検討しておくべき要素です。非上場企業であっても、会社規模や事業内容、業績などによって株式が高額評価されることもあります。するとその分支払うべき税金の額も上がりますから、ぜひ事前に課税される条件や税額の見当をつけておきましょう。

個人が譲渡する場合

同族会社であれば非上場であり、かつオーナー個人が株式を保有していることが多い傾向があります。個人で株式を譲渡する場合、所得税や贈与税が発生することが考えられるので、以下でそれぞれについて解説します。

所得税

株式の譲渡によって所得が発生した場合、所得に応じて所得税や住民税を払う必要があります。また、2037年までは復興特別所得税が課せられることも忘れてはなりません。
支払うべき税額を知るには、まず譲渡所得の算出から始めましょう。

譲渡所得は、譲渡価格から必要経費を引いた金額で、必要経費には委託手数料や取得費などが含まれます。ただし、取得費が不明である場合には、概算経費として、概算であれば譲渡価格の5%と考えることが一般的です。
譲渡所得に対して発生する税金は20.315%(所得税+復興特別所得税:15.315%、住民税:5%)です。

贈与税

売却ではなく、対価を求めずに譲渡する贈与を選択した場合、贈与を受けた側が贈与税を払うことになります。また、株式の評価額が時価よりも低い価格である場合も、評価額と売却額の差額が贈与とみなされて、贈与税を課せられます。

法人が譲渡する場合

法人が株式を譲渡する場合、個人とは異なり法人税などの名目で課税されます。また、法人の場合、ほかの所得と併せて課税額を算出することになり、全所得に対して比例課税方式で課税するので 、譲渡分だけの税額に着目してもあまり意味がありません。

なお、法人税の対象となるのは譲渡金額自体ではなく、譲渡金額と取得金額の差額です。また、法人税は基本的に23.2%とされています。

中小企業庁「法人税率の軽減」

ただし、所得の大きさや会社規模によって税率が変わることもあるので、個別の税率を踏まえて算出しましょう。

株式譲渡時の注意点

株式の譲渡においては、評価額より低額で譲渡した場合と高額で譲渡した場合、また個人と法人の違いなどで課税の仕方が異なる場合があります。ここではその違いを個別に解説していきます。

無償・低額での譲渡

株式を無償で譲渡する場合や評価額の半額以下で売却する場合、みなし贈与税が課せられる場合や、みなし譲渡所得となる可能性があります。

①譲渡側、譲渡される側の双方が個人 譲渡側は無償または低額で譲渡しても課税されません。一方譲渡を受けた側は、贈与税を課せられる可能性があります。
②譲渡側、譲渡される側の双方が法人 一般的に譲渡側は譲渡益に対して課税されます。無償や低額での譲渡の場合、寄付として損金不算入と考えることが可能です。
また、譲渡を受けた側は利益に対する課税を課せられます。
③譲渡側が個人、譲渡される側が法人 個人が無償または低額で譲渡を行うと、みなし譲渡所得税が課せられます。なお、課税対象は評価額と取得金額の差額です。
一方譲渡を受けた側は、評価額と譲渡金額の差を受贈益としてそれに見合う税額を要求されます
④譲渡側が法人、譲渡される側が個人 譲渡側は受贈益に対する課税が行われます 。
譲渡された側は、評価額と譲渡価格の差に対する所得税が課せられます。
ただし譲渡側が雇用している人に譲渡を行った場合は給与所得として課税されます

時価より高い価額での譲渡

個人に対して時価(評価額)より高額で譲渡を行った場合、譲渡した側は評価額から売却額を引いた金額に対して所得税を課されます。
一方譲渡を受けた側は、評価額と購入額の差に対する贈与税を要求されます。
ただし、譲渡の相手が法人の場合、評価額と売却額の差額に対して受贈益が課せられます。

株式譲渡でのお悩みは、専門家までご相談ください

同族会社が株式を譲渡する場合、選択肢によって課税の有無やメリット・デメリットが異なるので、事前にしっかり知識をもって取り組むことが重要です。「わからない」「自信がない」と思うのであれば、譲渡や税務の専門家に相談することをおすすめします。

「税理士法人レガシィ」は、60年以上の歴史の中で、多数の相続や事業承継をサポートしてきた実績をもっています。そのため、「譲渡を効率よく進めたい」、「できるだけ節税したい」、「トラブルがないように譲渡を終えたい」と思う方は、ぜひお気軽に税理士法人レガシィにご相談ください。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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