相続の知識

オフショア投資とは? メリットやリスク、税金に関する注意点を解説

日本の経済成長が鈍化している中、海外の金融商品へ投資する「オフショア投資」が注目を集めています。この投資手法は高い利回りなどを期待できる一方で、さまざまなリスクも内包しており、運用に対する正しい理解が必要です。
本記事では、オフショア投資の詳細からメリットやリスク、税制に関する注意点まで詳しく解説します。

オフショア投資とは

オフショア投資とは、海外の国や地域に投資する投資方法のひとつです。「オフショア(Offshore)」は「海外」や「沖の」を意味し、日本の投資家が海外の保険や投資信託などの金融商品に対して、海外の金融機関を通じて投資することを指します。

海外であればどこでも良いわけではなく、投資先として対象となるのは、非居住者(外国人)に対して低税率、または非課税といった形で租税環境が優遇されている地域です。ドバイ、香港、シンガポールなど、世界には40以上の国や地域がこれに該当すると考えられ、一般的にはそれらの中でも新興国への投資を指します。
これらの地域は、タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれることもあり、第一次産業(農水林業)や第二次産業(第一次産業で得た資源を加工・生産する産業)の発展が難しいため、税制に優遇措置を設けて外貨を集める戦略を取っています。

オフショア投資が注目を集める背景

日本では過去にもオフショア投資が話題になりました。特に、香港の保険を活用した事例が有名で、日本の変額個人年金保険に近い形で運用を行い、年利10%以上を誇る商品でした。もちろん投資である以上元本の保証はありませんが、複利の効果も見込め、満期時には解約返戻金が支払った保険料の数倍になることが想定されました。このような高い利回りであったことが、現在でも注目を集める主な要因のひとつです。

また、高度経済成長期以来、日本の経済成長が鈍化し、経済発展の見込みが薄いことも背景にあります。国内での投資は利回りが低く、特に老後資金の確保を目的とした運用は厳しい状況です。このため、投資家は高い利回りを求めて海外に目を向けるようになりました。

海外でも特に新興国は経済発展が著しく、投資の利回りが高い傾向です。新興国の経済成長に伴い、投資のリターンが期待できるため、多くの投資家がオフショア投資に興味を持ちつつあります。このような背景から、現在オフショア投資は再び注目を集め始めました。

オフショア投資のメリット

オフショア投資には国内への投資と比べて高い利回りが期待できることや、世界中の金融商品に分散投資できること、地域によっては運用にかかる税率がかなり抑えられることなど、さまざまなメリットが挙げられます。
ここからは、オフショア投資におけるメリットを解説します。

利回りが良い

メリットのひとつ目として、日本での資産運用に比べて高い利回りが期待できる点が挙げられます。たとえば元本を確保しつつ15年間で140%など、かなりの高利回りを謳う商品もあります。もっとも、投資にリスクは付き物であり、元本保証型の投資商品でない限り、元本割れなどのリスクも世界共通です。

また、一定の元本に毎年同額の利益が発生し続ける単利の運用よりも、前年の元本と利益が翌年の元本となり、長期運用することでより多くの資産増加を狙える複利の運用が人気を集めています。日本のように、経済の成長が鈍化しており金利も低い中での単利運用は、堅実な投資方法であるものの、資産が増えづらいことがデメリットです。

世界中の金融商品に投資できる

オフショア投資では、世界中のさまざまな投資商品に分散投資できる点が魅力です。投資対象も株式や債券に限らず、生命保険や、日本にはない資源のコモディティ投資など、多岐にわたります。ただし、リスク分散のためにも、後述のカントリーリスクを考慮した商品選びが重要です。

税率が低い

海外のタックスヘイブンと呼ばれる国や地域での投資は、運用利益に対する税率が低く、非課税の場合があることもメリットです。他方、日本で株式などの資産運用をすると、利益に対して約20%の税金が発生します。ただし、世界中の投資商品を見ても運用利益がずっと非課税とされることはほとんどありません。また、近年はタックスヘイブン対策税制が策定されるなど、規制が厳しくなり、無条件で大きなメリットが得られる状況ではなくなっています。海外へ投資する際には、こうした点も考慮する必要があります。

参照元:国税庁|株式・配当・利子と税

オフショア投資のリスク

オフショア投資では海外に投資を行う分、為替リスクやカントリーリスクを考慮したり、外国語の契約書を十分に理解するための言語スキルを習得したりする必要もあります。ここからは、オフショア投資で考えられるこれらのリスクについて解説します。

為替リスクがある

オフショア投資を行う際、日本から投資用の資金を送金したり、運用利益を引き出したりするタイミングで気をつけるべきことが為替リスクです。外貨を日本円に換える場合、円高になると損失が発生し、日本円を外貨に換える際には円安になると損失が生じます。そのため、為替変動を見ながら適切なタイミングで送金や出金を行わなければならず、タイミングを誤ると大きな損失を被る可能性があります。
リスクヘッジとしては、取引の際の為替レートを事前に決めておく「為替リスクヘッジ」という方法があります。これは為替の大幅な変動への対策ですが、手数料がかかるうえ、リスクを完全になくせるわけでもありません。
取引で大きな損失を出さないよう為替の動きや仕組みを十分に理解し、タイミングを見ながら適切な対策を講じることが重要です。

カントリーリスクがある

新興国の高い成長率や利回りを期待できる点は魅力的ですが、それと引き換えにカントリーリスクも存在します。これは投資対象の国や地域が抱える、経済や政治的情勢によるリスクのことです。新興国では情勢が不安定な場合も多く、突然の取引き制限などで予期せぬ損失が発生することがあります。たとえば、突然の政変や経済危機、法改正などが起きた場合、投資資産の価値が大きく下落する可能性を考慮しなければなりません。
新興国に対してオフショア投資をする際は、このリスクを理解し、投資先の情勢を常に把握することが求められます。また、情勢の変化があっても即座に対応できる柔軟な投資戦略を持つことが重要です。

外国語スキルが必要となる

海外の投資商品は、基本的に全ての情報を英語で処理することが必要です。選択できる商品にもさまざまな種類があるため、最低限内容を理解して投資先を決められる程度の英語力が求められます。また、何かトラブルがあった際には自ら問い合わせたうえでやりとりする必要もあります。コミュニケーションが心配な場合は、国内の信頼できる仲介業者へ委託することも検討しましょう。

オフショア投資の注意点

タックスヘイブンと呼ばれる国や地域へ投資すれば税金がかからないと誤解されやすいですが、実際は海外で得た利益などの収入についても所得税と住民税が課税されます。また、投資商品の種類によって課税方式も異なるため、正しく理解したうえでの適切な対応が必要です。ここからは、海外への投資において気をつけるべき税金面でのポイントについて解説します。

基本的に確定申告は必要である

オフショア投資によって得た海外の所得について、日本は全世界所得課税方式を採用しています。したがって、租税条約により現地で非課税となった場合でも、日本に在住している限りは所得税と住民税の課税が行われます。このため、オフショア投資で得た所得についても基本的には確定申告が必要です。また、確定申告の際には、海外での利息や配当金、キャピタルゲインなどを含め、全ての所得を申告しなければなりません。

課税方式が複数ある

オフショア投資において、課税方式は投資商品や所得区分によって選択できるものが異なります。代表的な課税方式は総合課税、分離課税の二種類です。
まず、総合課税は、投資以外の年間所得とまとめて課税する方法です。これに対して分離課税は、投資所得だけを個別に課税する方法です。分離課税はさらに以下のように分けられます。
ひとつ目は申告分離課税で、自分で確定申告を行うパターンです。ふたつ目は源泉分離課税で、証券会社が投資家の口座から税金を差し引きし、代わりに納付するパターンです。この場合、投資家自身が確定申告を行う必要はありません。ただし、源泉分離課税に関しては国内の金融機関を利用した場合に限られ、海外の現地金融機関を利用するオフショア投資では利用できない点に注意が必要です。

外国税控除を適用できる場合がある

オフショア投資を行う際、海外で得た収入に対して現地で源泉徴収されたときには、国際的な二重課税を回避する措置として、外国税控除を適用できる場合があります。外国税控除を適用することで、海外で納付した税金の一定額を日本国内での所得税や住民税から差し引くことが可能です。確定申告の際には、この外国税控除の申告を忘れないようにする必要があります。
ただし、全てのケースで外国税控除が適用されるわけではありません。たとえば、日本と投資対象の国が租税条約を締結している場合で、外国税の軽減や免除に関する規定の中で相手国に課すことのできる額を超えた金額に相当する部分は、外国税額控除の対象外です。また、海外で得た配当所得において、源泉分離課税を選択しているケースなども同様に対象外となります。こうしたさまざまな要因で適用の対象外になる可能性があるため、詳細については国税庁のホームページをご確認ください。

参照元:国税庁|No.1240 居住者に係る外国税額控除

海外銀行口座の利息も課税対象となる

海外の銀行口座を投資用に利用している場合、その預貯金に対して発生する利息も日本での課税対象となります。これらの利息は利子所得とみなされ、利子が支払われた時点で所得とされます。そのため、利息が発生した時点の為替レートで換算した金額を他の所得と合算し、「総合課税」の方式で確定申告を行う必要があります。
ただし、年間の収入金額が2,000万円以下のサラリーパーソンについては、確定申告が基本的に不要です。
また、海外での利息や雑所得といった各種所得の合計が20万円以下の場合も、確定申告は不要となります。
このように、海外銀行口座の利息も適切に申告することが求められるため、注意が必要です。

参照元:参照元:国税庁|確定申告が必要な方

オフショア投資は慎重に!できればプロの意見を聞いてから行おう

オフショア投資は世界中のさまざまな金融商品から投資先を選択でき、高い利回りが期待できるといった魅力があります。その一方、英語や為替への理解に加えて、カントリーリスクの考慮、商品の種類や所得区分に応じた確定申告なども必要になり、初心者向きではありません。

海外の金融商品を相続した場合などでお困りの際は、ぜひお気軽に税理士法人レガシィへご相談ください。相続専門の税理士法人として60年以上の歴史を有するレガシィでは、経験豊富な税理士が的確にサポートいたします。

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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