相続の知識

遺贈で取得した不動産は不動産取得税が課税される?回避策についても解説

不動産の遺贈を考える際、受遺者に不動産取得税が課税されるか心配になる方も多いでしょう。不動産取得税は、包括遺贈であれば課税されませんが、特定遺贈では課税される場合があります。本記事では、不動産取得税の概要や、相続・贈与・遺贈と不動産取得税の関係を解説します。

そもそも不動産取得税とは

不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課税される税金です。売買や贈与など、取得方法にかかわらず納税義務が発生します。遺贈と不動産取得税の関係を理解するために、まずは不動産取得税について把握しておきましょう。

不動産取得税の概要

不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した際に課税される税金です。集合住宅や店舗、工場、田、畑、山林、牧場なども、すべて不動産に含まれます。「不動産を取得する」とは、不動産所有権の取得を意味し、登記の有無は関係ありません。不動産取得税は、不動産を取得する際に金銭のやり取りがあるかないかに関係なく課税されます。したがって、売買や建築以外の贈与や交換なども課税対象となります。ただし、相続により法定相続人が取得する場合、原則として不動産取得税は課税されません。

不動産取得税は、不動産を取得した人がその不動産の所在地である都道府県に納付します。納税は、金融機関やコンビニエンスストア、クレジットカードなどによる納税が可能であり、不動産を管轄する都道府県から届く納税通知書に従って行います。納税期限は都道府県によって異なるため、通知書を確認し、納め忘れがないように注意しましょう。不動産取得税の課税対象に関しては、以下の記事も参考になります。

不動産取得税の計算

不動産取得税は、「固定資産税評価額×税率」の計算式を用いて算定できます。固定資産税評価額とは、各市町村が定めた固定資産税の評価額であり、土地の場合は時価の約70%、建物の場合は新築なら請負工事金額の約50〜60%が目安です。
ただし、面積や形状、構造、築年数などにより変動するため、正しい評価額は課税明細書や固定資産課税台帳、固定資産評価証明書などで確認するようにしましょう。

税率は原則として4%ですが、経過措置により住宅のための土地や家屋の場合は3%です。 さらに住宅を新築する場合、条件を満たしていれば、建物の評価額から1,200万円が控除される特例があります。また、一定の条件を満たして土地を取得した場合、土地の評価額を1/2にする措置や次の2つのうち高い方の金額が土地の税額から軽減できる措置があります。

  • 45,000円
  • 土地1平方メートルあたりの価格×住宅床面積の2倍(1戸あたり200平方メートルを上限)×税率

相続・贈与・遺贈と不動産取得税の関係

不動産取得税がかかるかどうかは、条件によって異なります。不動産取得税の有無について、4つのケース別でどう違うのかを解説します。

  • 相続の場合
  • 死因贈与の場合
  • 包括遺贈の場合
  • 特定遺贈の場合

相続の場合

相続により法定相続人が不動産を取得した場合、不動産取得税は課税されません。法定相続人の範囲は、配偶者、子ども、父母、祖父母、兄弟姉妹です。法定相続の場合、民法で定められた法定相続人でなければ財産を引き継げません。

この場合の不動産取得税は、相続人が複数人であっても1人であっても非課税となります。法定相続において不動産取得税が課税されない理由は、所有権の移動が主な性質となるためです。 また、一度成立した遺産分割協議を相続人全員の合意のうえで解除し、再分割した場合も不動産取得税はかかりません。

死因贈与の場合

死因贈与とは、贈与者と受贈者の両者が合意したうえで締結される贈与契約です。例えば「Aが死亡した場合、住宅と土地をBに贈与する」というケースは、Aが贈与者、Bが受贈者にあたる死因贈与となります。契約は口頭のみでも成立しますが、贈与者死亡後のトラブルを回避するために、契約書は作成しておきましょう。

なお、死因贈与であれば、法定相続人以外にも不動産を贈与できます。契約は破棄できないため、贈与者が希望する相手に財産を確実に渡せるのがメリットです。死因贈与の場合、遺言と同様に贈与者が撤回することも可能です。また、生前贈与の場合は贈与税が課税されますが、死因贈与の場合の課税は相続税となるため、大半のケースで後者のほうが低い税額となります。

不動産を登記する際に必要となる登録免許税は、法定相続人または相続人以外の場合を問わず課税対象です。死因贈与は、贈与者が渡したい相手に不動産を確実に贈与できるメリットがある一方で、 法定相続人への贈与も含めて不動産取得税が課税される点に注意が必要です。

包括遺贈の場合

包括遺贈とは、比率を決めて法定相続人や第三者に財産を遺贈する方法です。包括遺贈であれば比率を決定するだけで遺贈できるため、遺言の作成後に財産の増減があったとしても、遺言を作成し直す必要がありません。

また、包括遺贈では法定相続人以外の受贈者にも同様の権利が与えられるため、遺産分割協議に参加することも可能です。そのため、複数人の受遺者や相続人がいる場合、遺産分割協議の際に誰が何を受け取るのか決定するのが一般的です。

協議の結果不動産を受け継ぐことになった場合、相続する人が法定相続人であっても第三者であっても不動産取得税は課税されません。ただし、包括遺贈では、借金なども引き継がれるため注意が必要です。

例えば、遺贈者が住宅ローンの返済を終えていなかった場合、その残高は受遺者が支払わなければなりません。包括遺贈を放棄する際は、 包括遺贈を知った日から3カ月以内に相続放棄と同等の手続きが必要です。

特定遺贈の場合

「特定遺贈」は、特定の不動産を特定の個人または団体へ遺贈する方法です。どの財産を誰に遺贈するのか明確に指定し、相続人や相続人以外に遺贈します。例えば、「自宅不動産をAに遺贈する」「◯◯銀行の口座の預金をBに遺贈する」などが特定遺贈に該当します。

特定遺贈は、受遺者と受け渡す財産が決定しているため、トラブルを回避しやすく、比較的スムーズに財産を引き継げるのがメリットです。また、遺贈者が指定しない限り、負債は引き継がれません。ただし、法定相続人が不動産を特定遺贈で受け継ぐ際、不動産取得税は非課税となりますが、第三者の場合は課税されます。なお、特定遺贈の場合は相続放棄の期限がないため、複数の相続人や受遺者がいるケースでは相続に関する手続きが滞る可能性があります。

不動産取得税を回避するには「包括遺贈」を選ぶ

包括遺贈は法律上「相続」と同様に扱われるため、原則として不動産取得税はかかりません。包括遺贈者が遺産分割協議に参加することも可能です。遺言者の意思が尊重される相続では、包括受遺者以外の法定相続人がいる場合でも、受遺者に財産が引き継がれます。

ただし、法定相続人の遺留分は遺言よりも優先されるため、包括受遺者であっても拒否できません。包括遺贈を希望する際は、遺言書を作成する段階で決めておく必要があります。

土地の相続などのお悩みはレガシィまでご相談ください

不動産を法定相続人へ引き継ぐ場合、不動産取得税は非課税となります。一方、贈与や遺贈で不動産を受け渡す際には、遺贈の種類や法定相続人か第三者かによって不動産取得税の有無が変わります。不動産取得税の負担を回避して法定相続人以外に財産を引き継ぎたい場合は、包括遺贈を選択しましょう。

不動産の遺贈に関する疑問は、ぜひ相続専門の税理士法人レガシィへご相談ください。相続を専門とするレガシィには、60年の歴史があります。経験豊富な税理士が、贈与や遺贈に関するお悩みを解消します。

不動産コンサルティング

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この記事を監修した⼈

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陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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