コラム
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今回は、前回に引き続き「竹取物語」に表れる相続的テーマを考えたいと思います。YouTubeチャンネル登録者数100万人を突破した芸能文化税理士法人会長で公認会計士・税理士の山田真哉さんと2023年、お互いのYouTubeチャンネルで共演させていただきました。今回も「『相続と文学』の対談に当たって先生のおすすめ文学作品は?」という質問に「『竹取物語』はどうですか?」と仰っていただき、「面白いかも!?」となり、取り上げました。 5つほど相続的なポイントがあるので、このコラムでも1つずつご紹介したいと思います。
今回はその3。「養子」です。竹取の翁夫婦には“実子”はいませんでした。かぐや姫を地球に生えている竹から取り上げて養ったので、現代の民法に当てはめれば、かぐや姫の“養親”です。待望のこどもで あり溺愛しますが、その美しさから貴族が噂を聞きつけ、翁夫婦は実質的に貴族の仲間入りをして「勘定」に目がくらんでしまいます。しかし、かぐや姫の本来の故郷は月。なので、実親(月)との間で揺れる 姫の在り方は、現代の養子が抱えるアイデンティティの葛藤に通じています。
現代の相続でも、養子縁組は相続対策の一環で利用されることも多いです。少子高齢化でアトツギが不足しているため、今後も養子を迎えるケースが増えるでしょう。しかし、実際には思った通りにいかないこともしばしば。なぜでしょうか?
理由の一つとして、金銭「勘定」的な相続対策にとらわれすぎているということが考えられます。現代では、養子によって相続税の納税負担を減少させることもできます(基礎控除が増え、相続人増加によっ て税率が下がることもあるので)。しかし、そのような効果的な数字だけを見ていると、養子本人の複雑な悩みに気づけず、疲弊させてしまうことがあります。
養子の人格を認め、実の子と同様に愛せるか、という「感情」面を重視したいところです。実子であれば許せた失敗を養子でも許せるか、自問自答することも重要に思います。養子候補の気持ちにも配慮すべき です。こどもだと思っていても意外にも家のことを考えていて、かぐや姫のように故郷を思う気持ちがやはり勝ることも多いからです。数字の勘定よりも、むしろ心の感情にウェイトを置くことで、バランスが取 れ、状況が好転してくるように思います。
1937年に『竹取物語』を現代語訳した川端康成夫妻も1943年に実際に養女を迎えます。この物語に惹かれたのは執筆時点で既に養子を考えていたこともその1つかもしれません。
YouTubeチャンネル「相続と文学」や『税務弘報』7月号でも今回の論点について解説しています。ご感想やご意見をYouTube等でコメントとして頂けると幸いです。