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税務調査の流れ|チェックされるポイントや注意点も解説

税務調査の流れを把握し、必要な対策を講じることは重要です。本記事では、税務調査の流れやチェックされるポイント、さらに税理士に依頼するメリットについて解説します。調査対応の不安を軽減し、適切な対策を理解することで、安心して業務に取り組めるようになります。税務調査に関する疑問や悩みを解消するために、ぜひご一読ください。

税務調査とは

税務調査とは、納税者の不正または過少申告を防止するために行われる調査 です。納税者の申告内容や納税状況を税務当局がチェックすることで、公正な税負担を実現し、適切な国の税収維持につなげています。調査の対象は、法人税や所得税、相続税、消費税、固定資産税、印紙税など、さまざまな種類の税金です。故意による不正だけでなく、数字の入力ミスが不正会計と判断される可能性もあるため注意が必要です。

税務調査が実施される時期

税務調査の時期は特定されていません。しかし法人では、決算期に関係して実施される傾向にあります。個人事業主の場合、確定申告後の4月~5月、国税・税務署の人事異動が落ち着く7月~11月の実施が多くなっています。

また、税務調査の時期は、企業規模や業種によっても異なるのが一般的です。例えば、収入や支出が特定の時期に集中する業種は、その時期に合わせて調査が行われます。ただし、相続税の場合、申告直後に税務調査が実施されるケースはほとんどありません。申告してから1~2年後のタイミングで実施されるケースが多く、7月~11月に集中しやすい傾向にあります。

それぞれの調査が行われる確率について、次項をご参照ください。

税務調査が入る確率

国税庁では、申告件数に対してどれだけ実地調査が行われたかという数値を公表しています。その数値を基に予測できる税務調査の確率は以下の通りです。

  • 法人:1.5~2.5%程度
  • 個人事業主:1.5~2.5%程度
  • 個人(相続税):4.5%~5.5%程度

最も高い確率で税務調査が入っているのは「個人の相続税」です。約20人に1人の割合で調査が実施されています。税務調査が入る確率や、対象になりやすい法人・個人の特徴については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。

税務調査の種類

税務調査には「任意調査」と「強制調査(犯則調査)」の2種類があります。税務署が、納税者の協力を前提に実施するのが「任意調査」です。一方、国税局が強制的に実施する強制調査は、犯罪捜査の一環として行われます。両者の違いと特徴を把握しておきましょう。

任意調査

税務調査と呼ばれるものの大半は裁判所の令状を必要としない「任意調査」です。納税者の同意に基づき、税務署職員が2日程度の時間をかけて調査を行います。任意調査の場合は、事前通知を行うのが一般的ですが、中には無予告で実施されるケースもあります。
無予告の調査対象になりやすいのは、重大な不正行為が疑われる場合や書類だけでは事実を確認することが難しい現金取引の多い業種です。この場合「任意」であっても、基本的に調査の拒否は認められません。

調査そのものを拒否したり、資料の開示を拒んだりすれば、ペナルティや強制調査につながる可能性があります。ただし、あくまで納税者の協力を前提に実施されるため、正当な理由があれば、日程の調整に応じてもらえるケースもあります。

強制調査(犯則調査)

「強制調査(犯則調査)」は税務署ではなく「マルサ」と呼ばれる国税局査察部が実施する調査を指します。巨額な脱税や悪質な事案の立件を目的とした、犯罪捜査の一環で実施される調査です。
任意調査とは違い、納税者の同意や事前通知をせず、裁判所の令状により強制的な調査が実施されるため、調査の拒否や日程の変更は認められません。強制調査の結果、納税者の不正が発覚した際は、罰金や刑事罰が適用される可能性があります。

税務調査の流れ

税務調査の任意調査は、以下のような流れで進められます。

  1. 税務署からの事前通知が入る
  2. 税務調査の日程を決める
  3. 税務調査に必要な書類を集める
  4. 税務調査当日に税務署職員の対応をする
  5. 税務署からの指摘事項に回答する
  6. 税務調査の結果を待つ
  7. 「修正申告」がある場合は修正・追徴課税の納付を行う

調査の通知を受けたら、調査官に正確な情報を提供できるように、書類を整備しなければなりません。あらかじめ税理士などの専門家に相談すれば、具体的なアドバイスを受けられるため、さまざまなリスクを軽減できます。

1.税務署からの事前通知が入る

一般的な任意調査の場合、調査が入る前に税務署から事前通知があります。事前通知の方法は主に電話です。ただし、電話による通知が困難な場合は、税務署の判断によって書面での通知が行われます。なお、税理士に申告書の作成を依頼し、委任状にあたる権限証書に同意を記載している場合、原則として代理人となる税理士に事前通知が入ります。

事前通知の詳しい内容は、以下の通りです。

  • 調査目的
  • 調査の日程
  • 調査を行う場所
  • 対象となる税目
  • 課税期間
  • 必要な帳簿書類

事前通知の時期について、法令に明確な規定はないため、税務署の判断で通知が行われます。事前通知のタイミングについて、国税庁では「調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行う」としています。

国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け) 「問13 事前通知は、調査の何日くらい前に行われるのですか。」

2. 税務調査の日程を決める

税務署職員と連絡を取り、調査の実施日を決定します。実施日は自身や業務の都合にあわせて決められるようになっています。また、正当な理由があれば、決定後の日程変更も可能です。日程の変更が認められるのは以下のようなケースです。

  • 一時的な入院
  • 親族の葬儀
  • 業務上やむを得ない事情が生じた場合

税理士の立ち会いを希望する場合は、税理士との連絡調整も必要です。

3. 税務調査に必要な書類を集める

日程が決まったら、税務調査の実施に必要な書類を準備します。顧問税理士がいる場合、調査の対象期間を確認したうえで、具体的な対策を検討します。また、法律や税法の疑問点を解消しておくと、不安を軽減できるはずです。税務調査で必要な書類は以下の通りです。

  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 決算書
  • 納税申告書
  • 請求書、領収書、契約書
  • 預金通帳の写し

書類を準備する段階で申告漏れに気づいた場合は、税務調査が実施される前に速やかに修正申告もしくは期限後申告を行いましょう。税務調査前に自主的な修正申告を行うことで、ペナルティの負担が軽減される可能性があります。

4. 税務調査当日に税務署職員の対応をする

調査当日は、税務署職員が店舗やオフィスに訪れ、事業概要から確認するのが一般的です。事業概要の確認がひと通り終了すると、税務署職員が総勘定元帳や仕訳帳、決算書といった各書類の確認を進めます。

税理士に立ち合いを依頼した場合は、税務署職員との専門的なやり取りをサポートしてもらえますが、細かな業務内容や取引状況に関しては納税者本人に回答を求める場面もあります。税務調査の実施期間は、企業や事業の規模によって異なりますが、2日程度かかるケースが大半です。

5. 税務署からの指摘事項に回答する

税務署職員からの指摘・質問には、誠実に対応しなければなりません。指摘・質問内容は、取引の背景や経費の取り扱いに関するものが中心です。証拠となる書類を提示し、丁寧かつ正確に回答できるよう準備しておきましょう。

納得のいかない指摘には、しっかりと反論・交渉することが重要です。また、答えられない質問には、答えられない理由を正直に説明する必要があります。曖昧な回答や虚偽を報告するなど、非協力的な態度を示した場合、税務署職員に強い不信感を抱かれかねません。
場合によっては、取引先や金融機関などの関係者を対象とする「反面調査」につながる可能性もあります。

6. 税務調査の結果を待つ

一般的に、税務調査の実施から1カ月程度で結果が通知されますが、事業規模が大きい場合や重大な申告漏れが発覚した場合、長期間に及ぶケースもあります。税務調査の結果は主に以下の3パターンに分類されます。

  • 申告是認:申告内容に問題がなかった場合
  • 修正申告:税務署からの指摘を認め、正しく申告し直す
  • 更生:指摘に対し納税者が納得せず、修正申告を出さない場合に税務署が申告の誤りを正す

申告内容に問題がなければ是認通知書が届き、税務調査は終了です。申告内容に問題がある場合は、修正申告もしくは更生の対応を行う必要があります。

7. 「修正申告」がある場合は修正・追徴課税の納付を行う

税務調査の結果が是認となれば問題ありませんが、修正申告となった場合は申告と追徴課税の支払いが必要です。修正申告を行うかどうかの決定権は納税者自身にあり、最終的な対応は納税者に委ねられるため、顧問税理士がいる場合はよく相談してから決定するようにしましょう。
税務署の指摘に納得できない場合は、修正申告をせず更生を待つのもひとつの方法です。ただし、その場合は延滞税や過少申告加算税が課される可能性があります。

税務調査でチェックされるポイント

税務調査では、売上と収益に関する情報や経費と費用など、適正な税務処理が行われているかどうかをチェックします。

  • 売上の期ズレ
  • 増減の幅が広い項目
  • 経費
  • 在庫

これらのポイントについて指摘や質問を受けた際、明確に回答できるよう準備を整えておくことが重要です。

売上の期ズレ

期ズレは、財務状況の操作に該当するため、税務調査で発見されると深刻な問題となります。売上の繰り延べや費用の前倒し、架空取引の計上など、利益を操作することで税金を減らす行為は違法です。たとえ意図的ではなかったとしても、期ズレによって本来納めるはずの当期分の納税額が変わるため、適切な修正が必要です。

期ズレは、単純な会計処理のミスや会計基準の認識の違いによって発生することが少なくありません。意図的な期ズレと判断されれば不正会計とみなされ、修正申告だけでなく追徴課税が発生する可能性もあります。長期のプロジェクトや事業年度前後の取引を扱う際は、特に注意しましょう。

増減の幅が広い項目

前年と比べ、増減の幅が大きい項目は重点的なチェックを受けやすいポイントです。例えば「前年に比べて売上が大幅に減少している」「特定の経費のみ大幅に増加している」といったケースでは、その理由を具体的に説明するよう求められます。大きな変動があったとしても、正当な理由があれば問題ありません。契約書をはじめ取引に関連した証拠書類を準備し、税務署職員が納得できる説明をする必要があります。

経費

経費の計上が適切かどうかもチェックされます。領収書や請求書などの証拠書類と照合し「私的な経費を計上していないか」「架空の経費を計上していないか」といった細かい確認が行われます。
高頻度で利用している飲食店や領収書のない交通費などは、私的利用を疑われやすいため、詳細な記録を残しておかなければなりません。業務上、飲食代や交通費の額が大きくなる場合、領収書などの証拠書類をしっかりと保管し、事業との関連性を明確に提示できるよう準備しておきましょう。

在庫

製造業や卸売業のような多くの在庫を抱える業種の場合、在庫の計上を適切に行っているかどうかも税務調査のチェックポイントになります。在庫である棚卸資産は金額が大きくなりやすいため、計上漏れがあると税金の計算に多大な影響を与えます。棚卸資産に該当するのは以下の在庫です。

  • 他社から仕入れた商品
  • 自社で作成した製品
  • 作成中の仕掛品
  • 未使用の消耗品
  • 未着品
  • トラック品

このうち、特に注意が必要なのは「未着品」と「トラック品」です。未着品は注文してからまだ届いていないもの、トラック品は発送後にまだ売り上げていないものを指します。例えば、年度末の3月31日に注文し、翌年度の4月1日以降に届いた未着品は、計上漏れが起きやすくなるため注意しましょう。

税務調査対応中の注意点

税務調査の対応中にも気をつけるべきポイントがいくつかあります。調査のスムーズな進行のために、以下のポイントを意識しましょう。

嘘をつかない

指摘・質問を受けた際は、言い逃れや一貫性のない回答をすることは避け、誠実に対応しなければなりません。万が一嘘をついてしまった場合、税務署職員からの疑いはさらに強くなります。その場は嘘で乗り切れても、後日になって不正が発覚すると、通常より重いペナルティを課される可能性があります。事態を悪化させないためにも、税務署職員の指摘・質問には正直に答え、万が一ミスが発覚した際も協力的な態度を見せることが重要です。

質問されたことにだけ答える

質問されていないことまで話した結果、内容の矛盾を指摘されることも考えられます。疑いの目を向けられたことにより、チェックポイントが増えてしまえば、その分税務調査の時間は長引きます。税務署職員は、家族構成や趣味などの雑談から、必要な情報を引き出すケースが大半です。税務調査をスムーズに終わらせるために、雑談中でも気を抜かず、質問されたことだけに対して誠実に回答するようにしましょう。

手元に残す書類はコピーしておく

事業の規模が大きかったり調べる書類が多かったりする場合、税務署から書類の持ち帰りを要求されることがあります。強制ではないものの、持ち帰りに応じるとスムーズに調査が進む可能性があります。書類を預ける際は、税務署に渡しても事業に支障がない資料かどうかを考慮するほか、万が一の紛失に備えてコピーを取っておいたり、重要な書類は渡さなかったりする自己防衛策も必要です。

税務調査をスムーズに終わらせる方法

税務調査に適切に対応するには、法的な知識が求められます。また、必要な書類を準備するための時間と労力も必要です。税理士などの専門家に相談すれば、トラブルを未然に防げるほか、複雑な税務の手続きも迅速に進められます。

税の申告書作成を税理士に依頼する

確定申告書や相続税の申告書など、税理士に作成をサポートしてもらうのも有効な手段です。税務の専門家が申告書を作成するため、客観的な信頼性が高まります。具体的には、以下のようなメリットが期待できます。

  • 正確な申告ができる
  • 時間と労力を減らせる
  • 節税につながる可能性がある
  • 税金に関わるさまざまな相談ができる

ただし、税理士が作成したからといって、100%税務調査に入られないわけではありません。自力で作成する場合と税理士に依頼する場合のどちらであっても、税務調査の対象になる可能性はあります。

税務調査の対応を税理士に依頼する

税理士に立ち会いを依頼すると、税務調査がスムーズに終わる可能性は高くなります。専門家のサポートを得ることで、税務署職員とのコミュニケーションがスムーズになるなどのメリットがあります。

  • 税務署職員との交渉を任せられる
  • 対応にかかる時間と心理的負担を軽減できる
  • 不要な追徴課税を回避しやすくなる

税務調査の対応はレガシィにご相談ください

税務調査は、納税者が収入や納税額を正しく申告しているかどうか確認するために実施される調査です。法人・個人事業主・個人で実際に税務調査が入った割合を見てみると、個人の相続税が約20人に1人と高い割合で税務調査の対象になっていることがわかります。

税理士法人レガシィは、60年以上の歴史がある相続専門の税理士法人です。税務調査に関する豊富な知識と経験を有する税理士が多数在籍しているため、税務調査に不安を感じている方はぜひご相談ください。初回の面談は、無料で対応しています。

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この記事を監修した⼈

税理士法人レガシィ代表社員税理士パートナー陽⽥賢⼀の画像

陽⽥ 賢⼀税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

企業税務に対する⾃⼰研鑽のため税理⼠資格の勉強を始めたところ、いつの間にか税理⼠として働きたい気持ちを抑えられなくなり38歳でこの業界に⾶び込みました。そして今、相続を究めることを⽬標に残りの⼈⽣を全うしようと考えております。先⼈の⽣き⽅や思いを承継するお⼿伝いを誠⼼誠意努めさせていただくために・・

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武田 利之税理士法人レガシィ 代表社員税理士 パートナー

相続はご他界された方の人生の総決算であると同時にご遺族様の今後の人生の大きな転機となります。ご遺族様の幸せを心から考えてお手伝いをすることを心掛けております。

<総監修 天野 隆、天野 大輔税理士法人レガシィ 代表

<総監修 天野 隆、天野 大輔>税理士法人レガシィ 代表

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