令和8年税制改正(抜粋)
01 特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
内容のポイント
青色申告書を提出する法人が一定の規模以上の特定生産性向上設備等(仮称・次ページ参照)に該当するものの取得等をし、これを国内にあるその法人の事業に用いた場合には、「特別償却(即時償却)」又は「税額控除」を選択して適用できる制度。
1.対象法人
青色申告書を提出する法人
「中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く)」と「農業協同組合等」の法人は無条件で対象となる。それ以外の法人は、適用する年度の所得金額が、前期の所得金額を超え、かつ、次の※①、②のいずれかに該当しない事業年度には、本制度を適用することができない。ただし、繰越税額控除制度は除かれる。
①継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上(※1)
②国内設備投資額が当期償却費総額の30%を超えること(※2)
(※1)「資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合」又は「常時使用する従業員の数が2,000人を超える場合」には2%以上
(※2)「資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合」又は「常時使用する従業員の数が2,000人を超える場合」には40%
2.対象資産
生産等設備を構成する「機械装置」「工具」「器具備品」「建物」「建物附属設備」「構築物」「ソフトウェア」で一定の規模以上の、特定生産性向上設備等に該当するものの取得等をし、これを国内にあるその法人の事業の用に供するもの。
(1)生産等設備とは
その法人の事業の用に直接供される減価償却資産で構成されるものをいい、「事務用器具備品」「本店」「寄宿舎等の建物」「福利厚生施設等」は該当しない。
(2)一定の規模以上の判定
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対象設備 |
要件 |
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機械装置 |
1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの |
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工具器具備品 |
それぞれ1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの(それぞれ1台又は1基の取得価額が40万円以上で、かつ、一事業年度におけるその取得価額の合計額が120万円以上のものを含む。) |
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建物 |
一の取得価額が1,000万円以上のもの |
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建物付属設備及び構築物 |
それぞれ一の取得価額が120万円以上のもの(建物附属設備については、一の取得価額が60万円以上で、かつ、一事業年度におけるその取得価額の合計額が120万円以上のものを含む) |
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ソフトウェア |
一の取得価額が70万円以上のもの |
(3)特定生産性向上設備等とは
産業競争力強化法の生産性向上設備等のうち、次の基準に適合することについて経済産業大臣の確認を受けたものをいう。
①生産性向上設備等の導入に係る投資計画に記載された生産等設備を構成する生産性向上設備等の取得価額の合計額が35億円以上であること(中小企業者又は農業協同組合等については、5億円以上)
②生産性向上設備等の導入に係る投資計画における年平均の投資利益率が15%以上となることが見込まれるものであること
③生産性向上設備等の導入に係る投資計画にその実現に必要な資金調達手段が記載されていること
④生産性向上設備等の導入に係る投資計画が取締役会等の適切な機関の意思決定に基づくものであること
⑤上記のほか、生産性向上設備等の導入がその法人の設備投資を増加させるものであること等の要件を満たすものであること
(4)取得等とは
取得、製作または建設をいい、建物にあっては改修(増築、改築、修繕又は模様替をいう)のための工事による取得又は建設を含む。
(5)その他の要件
・産業競争力強化法の改正法の施行の日から令和11年3月31日までの間に経済産業大臣の確認を受けたものに限る
・その確認を受けた日から同日以後5年を経過する日までの期間内に、取得等をし、その事業の用に供した場合に限る(貸付の用を除く)
3.優遇措置の内容
その事業の用に供した日を含む事業年度において特別償却(即時償却)と税額控除の選択適用が可能となる。
(1)特別償却(即時償却)
取得価額の全額を損金算入することができる。
(2)税額控除
当期の法人税額の20%を限度として、以下の税額控除を行うことができる。なお、控除限度額超過額は一定の要件を満たす場合に限り3年間の繰越ができる。
①機械装置、工具、器具備品、ソフトウェア
取得価額 × 7%
②建物、建物附属設備、構築物
取得価額 × 4%
4.他の制度との併用について
特定生産性向上設備等に係る投資計画の確認を受けた法人については、その投資計画の期間中においては、次の制度の適用を受けることができない(次の②の制度のうち繰越税額控除制度を除く)。
①地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度
②中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度
(中小企業経営強化税制)
③カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
影響
①幅広い資産が対象に
従来の投資減税と比較して要件のハードルは高いものの、建物を含めた幅広い資産が対象となり、大規模投資を行う企業にとっては極めて強力な支援となる。
②キャッシュフローの改善
即時償却を選択することで、投資初期のキャッシュフローを大幅に改善し、次の投資への余力を生み出すことができる。
対応
①有利不利の綿密な検討
本制度の適用を受ける投資計画期間中は、「中小企業経営強化税制」や「カーボンニュートラル投資促進税制」など、他の類似する税制優遇措置との併用はできないため、有利不利を事前にシミュレーションする必要がある。
02 インボイス制度の定着に向けた対応(経過措置の見直し)
内容のポイント
(1)インボイス発行事業者となる小規模個人事業者の税額控除に関する経過措置
①インボイス(適格請求書)発行事業者である個人事業者が、令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間(免税事業者がインボイス発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられない課税期間に限る)について、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、その課税標準額に対する消費税額に7割を乗じた額とすることにより、納付税額が課税標準額に対する消費税額の3割とすることができる。
②上記①の適用を受ける場合、確定申告書にその旨を付記する。
③上記①の適用を受けたインボイス発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間の確定申告期限までに、その翌課税期間について、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を認められる。
※現行の2割特例の適用を受ける小規模個人事業者についても、上記と同様の措置を講ずることとし、令和8年10月1以後に終了する課税期間から本措置を適用できることとする。

(2)免税事業者等からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置
①標題の経過措置の最終的な適用期限が2年延長され、控除可能割合が次のとおり、段階的に縮減される。
(イ)令和8年10月1日~令和10年9月30日まで … 70%
(ロ)令和10年10月1日~令和12年9月30日まで … 50%
(ハ)令和12年10月1日~令和13年9月30日まで … 30%
(ニ)令和13年10月1日~ … 0%
※令和8年9月30日までの控除可能割合…80%

②租税回避の防止を図る観点から、その課税期間における一の免税事業者等からの課税仕入れのうち本経過措置の対象とできる上限額が現在の10億円から1億円に引き下げられる。
なお、その超えた部分の課税仕入れについては、本経過措置の適用を認められない。
また、当該上限額については取引実態等を踏まえ、今後、更なる引き下げが検討される。
③上記の改正は、令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用される。
影響
(1)インボイス発行事業者となる小規模個人事業者の税額控除に関する経過措置
〇個人についてのみ新たな経過措置
インボイス発行事業者となる個人についてのみ、追加の緩和措置期間が設けられることにより、事務負担に対する影響が大きい小規模個人事業者への一定の配慮が見られる。
(2)免税事業者等からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置
〇上限額の引き下げに伴う仕入れ税額控除の制限
上限額が現行の10億円から1億円に大幅に引き下げられることにより、一の免税事業者との取引額が大きい課税事業者は特に影響を受けることになる。
〇免税事業者等との取引の差し控え
今後も上限額の更なる引き下げの可能性が明示されており、かつ、最終的には控除不可となるため免税事業者等との取引を控える傾向がより顕著となる。
対応
免税事業者から課税事業者への移行(■影響(1)(2)共通)
今までの激変緩和措置に加え、さらなる経過措置として、インボイス発行事業者となる小規模個人事業者の3割特例が2年間に限り適用可能となり、インボイス制度に移行する小規模個人事業者への一定の配慮がされる。
一方、免税事業者からの課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の段階的縮減に見て取れるように、免税事業者を続ける事業者は徐々に不利になっていくため、課税事業者への移行を検討したい。
03 個人所得税・住民税の改正(「年収の壁」を178万円へ引き上げ)
内容のポイント
手取りを増やし、労働力不足を解消するため、所得税の非課税枠(年収の壁)が従来の103万円(令和7年度では160万円)から178万円へと引き上げられる。
1.国税
①基礎控除の引き上げ
(1)合計所得金額が2,350万円以下の個人の控除額が4万円引き上げられる(恒久制度)
(2)令和8年及び令和9年の基礎控除の特例(2年間限定の制度)
合計所得金額が489万円以下の個人の控除額が104万円になる。
合計所得金額が489万円超655万円以下の個人の控除額が67万円になる。
②給与所得控除の引き上げ
(1)最低保障額が69万円に引き上げられる(恒久制度)。
(2)令和8年分及び令和9年分の給与所得控除の特例(2年間限定の制度)
給与所得控除の最低保障額が69万円からさらに5万円引き上げられ74万円になる。
③扶養控除等の連動見直し
「合計所得金額」等の基準も62万円以下(勤労学生控除の基準は89万円以下)に引き上げ。
④ひとり親控除の引き上げ(令和9年以降)
控除額が38万円に引き上げ(現行35万円)。
2.地方税
①基礎控除
見直しなし
②給与所得控除の引き上げ
(1)最低保障額が69万円に引き上げられる。
(2)令和9年分及び令和10年分の給与所得控除の特例(2年間限定の制度)
給与所得控除の最低保障額が69万円からさらに5万円引き上げられ74万円になる。
③扶養控除等の連動見直し
「合計所得金額」等の基準も62万円以下(勤労学生控除の基準は89万円以下)に引き上げ。
④ひとり親控除の引き上げ
控除額が33万円に引き上げ(現行30万円)
基礎控除
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基礎控除 |
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合計所得金額 |
令和7年 |
令和8-9年 |
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132万円以下 |
95万円 |
104万円 |
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132万円超~336万円以下 |
88万円 |
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336万円超~489万円以下 |
68万円 |
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489万円超~655万円以下 |
63万円 |
67万円 |
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655万円超~2,350万円以下 |
58万円 |
62万円 |
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2,350万円超~2,400万円以下 |
48万円 |
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2,400万円超~2,450万円以下 |
32万円 |
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2,450万円超~2,500万円以下 |
16万円 |
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2,500万円超 |
0円 |
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給与所得控除
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給与所得控除 |
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給与等の収入金額 |
令和7年 |
令和8-9年 |
| 190万円以下 | 65万円 | 74万円 |
| 190万円超~220万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
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| 220万円超~360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
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| 360万円超~660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
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| 660万円超~850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
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| 850万円超 | 195万円 | |
3.インフレ連動制の導入
今後の基礎控除等は、直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率に合わせて見直す仕組みが創設された。
影響
①働き控えの解消
178万円まで所得税がかからなくなるため、パートやアルバイトの労働者が年末に勤務時間を調整する「働き控え」が大幅に緩和され、人手不足の解消に寄与する。
②幅広い層での減税
年収の壁の引き上げは、一定の給与所得者全体の課税対象額を押し下げるため、中堅所得層も含めた幅広い納税者にとって実質的な減税効果をもたらす。
対応
①勤務時間の再設計
従業員は年間収入178万円を意識した働き方が可能になるため、企業側はシフト管理や社会保険(106万円・130万円の壁)との兼ね合いを再考する必要がある。
②扶養家族の収入確認
学生や配偶者のアルバイト収入が多少増えても扶養控除の対象内に収まるケースが増えるため、家族全体の税負担シミュレーションを行うことが推奨される。
③年末調整の準備
令和8年分の所得税から適用されるため、企業は新しい控除額に基づいた計算システムの改修や源泉徴収事務の確認が必要。
04 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(超富裕層への課税強化)
内容のポイント
株式等の譲渡所得が多い富裕層に対し、税負担の垂直的な公平性を図るため、追加的な税負担を求める措置が大幅に強化される。
①「1億円の壁」の解消:所得税(申告納税分)は累進課税だが、株式等の譲渡所得は分離課税(一律税率)であるため、所得が極めて高い層になると税負担率が逆に下がってしまう逆転現象が是正される。
②特別控除額の半減:追加課税の計算において基準所得金額から差し引くことができる特別控除額が、現行の3.3億円から1.65億円に引き下げられる。
③税率の引き上げ:適用される税率が、現行の22.5%から30%へ大幅に引き上げられる。
④適用時期:2027年(令和9年)分以後の所得税から適用される。
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項目 |
改正前 |
改正後 |
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特別控除額 |
3.3億円 |
1.65億円(半減) |
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適用税率 |
22.5% |
30%(引き上げ) |
影響
①超富裕層への実質増税:金融所得や不動産譲渡益などが多額にある個人にとって、課税のしきい値が下がり、かつ税率が上がるため、税負担が大幅に増加する。
②再分配機能の強化:格差の固定化を防止し、社会全体の公平性を確保するための財政の再分配機能を高める狙いがある。
対応
①納税シミュレーションの実施:基準所得金額(合計所得金額から特別控除を引く前の金額)が1.65億円を超える可能性がある場合は、令和9年以降の税負担額がどのように変化するか、事前に試算しておくことが推奨される。
②資産売却タイミングの検討:2027年(令和9年)からの適用となるため、多額の含み益がある資産の売却を検討している場合は、施行前の売却を含めたスケジュール管理が重要になる。
05 住宅ローン控除の5年延長と子育て世帯等への優遇拡充
内容のポイント
住宅価格の高騰やカーボンニュートラルの実現に向けた動きを踏まえ、住宅ローン控除の適用期限が大幅に延長されるとともに、子育て世帯や若者夫婦世帯への支援が「認定住宅等である中古住宅」にも拡大されました。
①適用期限の5年延長
2025年(令和7年)末までとされていた期限を、2030年(令和12年)末まで5年間延長します。
②子育て世帯等への優遇を認定住宅等である中古住宅へ拡大
19歳未満の扶養親族がいる世帯や若者夫婦が、「省エネ基準適合以上の中古住宅」を取得する場合も、借入限度額の上乗せ措置の対象となります。
③控除期間の延長(中古)
省エネ性能の高い中古住宅(認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合)の控除期間を、従来の10年間から13年間に延長します。
④床面積要件の緩和
その年分の合計所得金額1,000万円以下の人を対象とする「床面積40㎡以上50㎡未満」の特例措置を、新築だけでなく中古住宅等にも拡大します。
⑤災害危険区域等内の新築等は適用対象外
安全安心な住まいの実現のため、2028年(令和10年)以降に居住を開始する場合、土砂災害特別警戒区域などの「災害レッドゾーン」内での新築等(一定の建替えを除く)は原則として適用対象外となります。
子育て世帯等の場合
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区分 |
改正前(令和7年) |
改正後(令和8、9年) |
控除期間 |
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新築:認定住宅 |
5,000万円 |
5,000万円(維持) |
13年 |
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新築:ZEH水準省エネ住宅 |
4,500万円 |
4,500万円(維持) |
13年 |
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中古:認定住宅 |
3,000万円 |
4,500万円(引上げ) |
13年 |
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中古:ZEH水準省エネ住宅 |
3,000万円 |
4,500万円(引上げ) |
13年 |
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区分 |
改正前(令和7年) |
改正後(令和8、9年) |
控除期間 |
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新築:認定住宅 |
4,500万円 |
4,500万円(維持) |
13年 |
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新築:ZEH水準省エネ住宅 |
3,500万円 |
3,500万円(維持) |
13年 |
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新築:省エネ基準住宅 |
3,000万円 |
2,000万円(引下げ) /令和9年対象外 |
13年 |
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中古:認定住宅等 |
3,000万円 |
3,500万円(維持) |
13年 |
影響
①中古市場の活性化
これまで「新築を選ばないと損」と感じていた子育て世帯にとって、高性能な中古住宅を選択する経済的メリットが大幅に増えます。
②長期的な住居費負担の軽減
控除期間が13年に延びることで、教育費などがかさむ時期の家計を長期にわたってサポートする効果があります。
③居住地の安全性への意識向上
災害リスクの高い区域が対象外となるため、物件選びにおいて「ハザードマップ」の確認がより実務的に重要視されるようになります。
対応
①省エネ性能の確認
中古住宅を検討する場合、その物件が「省エネ基準」を満たしているかどうかが控除額や期間を左右するため、不動産会社への事前確認が必須です。
②資金計画の再作成
適用期限が2030年まで延びたことで、無理な駆け込み購入を避け、家族のライフステージに合わせた柔軟な購入計画が可能となります。
③立地環境の再点検
将来の資産価値や税制優遇の可否を考慮し、検討中の物件が災害レッドゾーン等に該当しないか、自治体の情報を精査する必要があります。
06 NISA(少額投資非課税制度)の対象拡大と利便性向上
内容のポイント
次世代の資産形成を支援し、「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるため、NISA制度が大幅に拡充されます。
①対象年齢の拡大(0歳からのNISA)
これまで18歳以上とされていた年齢制限が撤廃され、0歳から利用可能な新たな枠組みが導入されます。これは実質的に、旧「ジュニアNISA」の後継制度としての位置付けです。
②未成年者向けの非課税枠
0歳から17歳までの未成年者に対して新たにつみたて投資枠として、年間投資上限額60万円、非課税保有限度額600万円の非課税枠を設定します。
③18歳での自動移行
18歳に達した時点で自動的に成人向けNISAへ移行し、非課税枠も成人のつみたて投資枠(年間360万円、最大1,800万円)に統合されます。
④「つみたて投資枠」の対象拡大
投資初心者が購入しやすい環境を整えるため、対象となる指数に「読売株価指数」や「JPXプライム150指数」などを追加し、さらに債券が運用資産の50%を超える投資信託も対象に加わります。
⑤適用開始日
未成年者向けの拡充は、2027年(令和9年)1月1日から適用されます。
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項目 |
成人向けNISA(現行) |
未成年者向けNISA(新設) |
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対象年齢 |
18歳以上 |
0歳 ~ 17歳 |
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年間投資枠 |
360万円 (つみたて120万円/成長240万円) |
60万円(原則つみたて型) |
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非課税保有限度額 |
1,800万円 |
600万円 |
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払出し制限 |
なし |
18歳まで原則制限(注1) |
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制度移行 |
- |
18歳で成人NISAに自動統合 |
(注1)子が12歳以降であれば、払出し事由が教育費または生活費の支払いのためである場合に限り、子の同意を得て非課税での払出しが可能です。
影響
①早期資産形成の促進
子供の誕生直後から非課税での長期運用が可能となり、大学進学等の将来のライフイベントに向けた資金準備が容易になります。
②国内投資の活性化
国内市場を対象とした指数の追加により、個人の現預金が国内経済の成長を後押しする流れが期待されます。
③投資の選択肢拡大
債券重視型の投資信託が対象に加わることで、よりリスクを抑えた運用を希望する層にもNISAの門戸が広がります。
対応
①教育資金戦略の再検討
これまでの学資保険や現預金による準備に加え、新NISAを組み合わせたポートフォリオへの見直しが有効です。
②払出しルールの確認
原則18歳までの払出し制限があるため、流動性が必要な資金とは分けて管理する必要があります。
③金融機関の選定
金融機関変更時の即日買付が可能になるなど利便性が向上するため、サービス内容を比較して最適な窓口を選択することが推奨されます。
④贈与税への留意
17歳までのつみたて投資枠への資金拠出を親などからの贈与による場合、年間投資上限額の60万円のみであれば贈与税の基礎控除の範囲内ですが、それ以外に贈与を受けている場合には贈与税の申告漏れに注意が必要です。
07 暗号資産取引に係る申告分離課税への移行等
内容のポイント
これまで「雑所得」として最大約55%の累進課税(総合課税)が適用されていた暗号資産取引について、投資環境の整備と国際水準への適合を図るため、株式等と同様の申告分離課税が導入されます。
①税率の一律化
金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等(特定暗号資産)の取引について、所得の金額にかかわらず、税率を一律20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)とします。
②損失の繰越控除
特定暗号資産の取引で生じた損失について、一定の要件の下で翌年以後3年間繰り越して、翌年以降の特定暗号資産に係る所得から控除することが可能になります。
③対象範囲の拡大
現物取引だけでなく、デリバティブ取引や特定暗号資産を投資対象とするETF(上場投資信託)から生じる所得も分離課税の対象に含まれます。
④適用条件
この見直しは、金融商品取引法等の改正により暗号資産が「金融商品」として適切に位置付けられることを前提としています。
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項目 |
改正前(現行) |
改正後(令和8年度大綱) |
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課税方式 |
総合課税(雑所得) |
申告分離課税 |
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税率 |
約15% ~ 最大約55%(累進税率) |
一律 20.315%(所得税等15.315%、住民税5%) |
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損失の取扱い |
繰越不可 |
3年間の繰越控除が可能 |
影響
①高額利益者への恩恵
利益が大きい投資家にとっては、最大55%から20%へ大幅な減税となるため、投資意欲の向上が期待されます。
②資金・人材の国内回帰
税制を国際水準に合わせることで、海外へ流出していた資金や人材を日本国内に呼び戻す戦略的な効果を狙っています。
③リスク管理の容易化
損失を3年間繰り越せるようになることで、単年度の赤字が無駄にならず、より長期的な視点での運用が可能になります。
対応
①運用戦略の見直し
税率が20%に固定され損失の繰り越しも可能となるため、利益確定のタイミングやポートフォリオ(現物・デリバティブ・ETFの組み合わせ)の再検討が有効です。
②施行時期の確認
適用時期は「金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日」とされており、今後の法改正の動向を注視する必要があります。
③国外転出時課税
改正により、暗号資産が国外転出時課税の対象資産となるか注視する必要があります。
08 相続税等の財産評価の適正化(賃貸不動産の節税封じ)
内容のポイント
市場価格と通達に基づく評価額の乖離を利用した過度な節税を抑制するため、1.一定の貸付用不動産と2.不動産小口化商品の評価方法が、従来の路線価等による評価から「通常の取引価額(取得価額)」に基づく評価に厳格化される。
1.と2.について、適用対象や評価方法などが異なるので、両者比較の上、注意が必要。
1.一定の貸付用不動産
①「5年以内」の取得・新築物件の評価方法の見直し
相続開始前(課税時期)の5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の賃貸用不動産は、通常の取引価額(取得価額)で評価する。
※なお、当該改正を通達に定められる日の5年以上前から所有している土地に、その通達が定められる日までに新築をした家屋(建築中含む)は適用除外とされている。
②貸付用不動産の「通常の取引価額」
通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%相当額によって評価することができるとされている。
2.不動産小口化商品
①評価方法の見直し
不動産特定共同事業契約や信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産(いわゆる不動産小口化商品)については、取得時期にかかわらず、通常の取引価額によって評価される。
②不動産小口化商品の「通常の取引価額」
通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、A:出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、B:事業者等が把握している適正な売買実例価額、C:定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額で評価することができるとされている。
ただし、上記A~Cに該当するものがないと認められる場合には、1.②に準じて評価する。
3.適用時期
1、2ともに2027年(令和9年)1月1日以降の相続等により取得する財産から適用される。
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項目 |
改正前(現行) |
改正後(令和8年度大綱) |
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①対象:一定の貸付用不動産 |
全ての物件 |
相続等開始前5年以内に有償取得・新築した物件 |
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評価の基本尺度 |
路線価・固定資産税評価額等 |
通常の取引価額 ※取得価額に地価等の変動を考慮した価額の80%相当額 |
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適用開始日 |
- |
2027年(令和9年)1月1日~ |
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②対象:不動産小口化商品 |
全ての物件 |
全物件(取得時期を問わず一律) |
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評価の基本尺度 |
路線価・固定資産税評価額等 |
通常の取引価額 ※売買実例価額等 (ただし、売買実例価額等がないと認められる場合は①に準ずる) |
|
適用開始日 |
- |
2027年(令和9年)1月1日~ |
影響
①大幅な増税リスク
これまで現預金を賃貸不動産に買い換えるだけで評価額を3割〜5割程度に圧縮できていたスキームが、相続直前の対策としてはほとんど通用しなくなる。
②タワマン節税に続く包囲網
マンション評価の見直しに続き、一棟貸し物件やアパート等についても「市場価格との乖離」を突いた対策が封じられることになる。
③駆け込み贈与の注意点
2027年(令和9年)以降の相続等により取得した場合に適用されるため、2026年(令和8年)中に駆け込み贈与を検討するケースも増えると思われるが、借り入れを起こして購入、建築している場合は、負担付き贈与による時価課税に注意が必要となる。
また、負担付き贈与でない場合においても、総則6項の適用について懸念が残る。
対応
①取得スケジュールの再考
今回の改正では、2026年末(令和8年末)までの相続等による取得については現行評価が維持される「適用除外」の期間が設けられているため、贈与等を検討中の案件は早期に対応する必要がある。
また、5年以上所有している土地に建築を検討中の場合も、当該改正を通達に定める日までに着工していれば当該物件は、適用対象外となるため、早期に着工する必要がある。
なお、「改正を通達に定める日まで」という表現のため、具体的な日付が決まっておらず、結果的に間に合わないリスクも伴う。
※ただし、上記対応ができたとしても、駆け込み贈与等による総則6項の適用リスクについては引き続き注意が必要となる。
②長期保有へのシフト
5年を超えて保有すれば原則として現行の評価方法が適用されるため、相続直前の「駆け込み対策」ではなく、長期的な視点での資産運用・承継計画がより重要になる。
③不動産小口化商品の再点検
不動産小口化商品は取得時期を問わず取引価額評価となるため、相続税対策としての選択肢からは外れていくと思われる。現在保有のものは、投資対象としての資産価値があるかどうかを吟味して将来にわたって保有すべきかどうか、シミュレーションを行うことが推奨される。
④不明点
適用対象となる「一定の貸付用不動産」の定義や地価の変動等を考慮する具体的計算方法などは現時点で不明のため、引き続き状況を注視していく必要がある。
09 事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等
内容のポイント
経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継を円滑に進めるため、法人版および個人版の事業承継税制について、特例承継計画の提出期限が以下の通り延長される。
①法人版事業承継税制
特例承継計画の提出期限が、2027年(令和9年)9月末まで1年6カ月延長される。
②個人版事業承継税制
個人事業承継計画の提出期限が、2028年(令和10年)9月末まで2年6カ月延長される。
これらは、中小企業等の経営者の円滑な世代交代を通じた生産性向上という待ったなしの課題を解決するための、時限措置とされている。
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区分 |
改正前(令和7年度時点) |
改正後(令和8年度大綱) |
延長期間 |
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法人版(特例承継計画) |
2026年(令和8年)3月末 |
2027年(令和9年)9月末 |
1年6カ月 |
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個人版(個人事業承継計画) |
2026年(令和8年)3月末 |
2028年(令和10年)9月末 |
2年6カ月 |
※適用期限(法人版:令和9年12月、個人版:令和10年12月)到来後の事業承継のあり方については、次年度の税制改正で結論を得ることとされている。
影響
①検討期間の延長
後継者が未決定などの理由で、従来の期限(2026年3月末)までに計画の提出が間に合わなかった事業者にとって、検討・準備のための時間的な猶予が生まれることとなった。
対応
①検討済みのお客さまの再確認
本特例は2018(平成30)年からスタートし、すでに約7年が経過した。経済状況も大きく変わり、以前検討したお客さまの経営状況、承継者の状況も少なからず変化しているものと考えられる。この延長をきっかけとして話題に上げ、再シミュレーションを検討するのにも良い機会と考えられる。
