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令和6年改正家族法の実務対応 共同親権と親権者指定・変更の実務

令和6年改正家族法の実務講座、シリーズ2回目の本講では、令和6年改正、令和8年4月1日に施行された選択的共同親権を中心に、親権者指定の判断枠組み、親権者変更を中心に深掘りします。(シリーズ1回目はこちら)また、親権行使についても代諾養子縁組等の問題となりやすい点を紹介しつつ、実務での留意点を整理します。

はじめに、おさらいも兼ねて共同親権制度と親権者を指定するときの考え方を、次に、一度決まった親権者を変更する場合の考え方をお話しし、最後にいくつか問題になりやすい点を挙げながら親権の行使について解説します。

1 親権者の指定

そもそも親権とは何かということをおさらいしましょう。親権には、大きく分けて未成年の子の利益のために行使される身上監護と財産管理の側面があります。身上監護には、子の居所指定(民法822条)、監護・教育(820条)、職業許可(823条)、15歳未満の氏の変更や代諾養子縁組(791条)が含まれます。他方で、財産管理には、管理・法定代理(824条)や法律行為の同意(5条)が含まれます。

その上で、こちらもおさらいですが、選択的共同親権制度に関する条文を見てみましょう。「双方又は一方」と文言が変更されています。

改正前は、離婚に際して父母の一方を親権者と定める単独親権が原則でしたが、改正後は、協議離婚・裁判離婚いずれの場合も、父母の双方又は一方を親権者と定めることが可能となりました。共同親権は、離婚後も父母双方が適切に養育に関わることにより子の利益を図ることを理念としています。

この制度変更に関して、次の3点が重要です。

①親権と居所・監護の切り分け

共同親権は、離婚後も父母双方が適切に養育に関わることにより子の利益を図ることを理念としています。そのため、これまでのように親権者≒同居親とは限らなくなり、今後、子の居所や監護の在り方は、親権と別個に検討されるべき事項となります。

② 協議離婚時の取扱い

ここは従来の説明を変えなければならないところです。この度、親権者が定まっていなくとも、親権者指定の審判・調停を申し立てていれば離婚届が受理される可能性が出てきました。少なくとも法的には、離婚時に親権者の定めをすることが必須ではなくなりました。

③ 親権の性質の明確化

親権は親の権利であると同時に義務でもあることが条文上明確化されました。また、父母間の相互人格尊重義務も新たに明記されました。

2 親権者を定める際の判断枠組み(民法819条7項)

それでは、親権者を定めるときには、どのようなことが重要になるのでしょうか。819条7項が新設されました。単独親権と共同親権の関係は、条文上、あくまで選択的です。どちらが原則だとか、どちらが例外だとかそういう話ではありません。

もう少し条文を分析してみましょう。裁判所が離婚や認知に伴う親権者指定、または親権者変更を判断する際は、子の利益のため、

①父母と子との関係
②父と母との関係
③その他一切の事情

を総合考慮します。他方で、「必要的単独親権事由」がある場合には、必ず単独親権とする必要があります。そのため、まずは必要的単独親権事由について分析していきます。

必要的単独親権事由

概ね次の2類型です。

1号(親子関係に着目):

父または母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められる場合。典型例としては、虐待、悪意の遺棄、著しい不適切な親権行使などに加えて、詳しくは条文を見て欲しいのですが、親権喪失・停止に準ずる事情を含みます。

2号(こちらは父母関係に着目):

父母の一方による身体的暴力は当然、精神的・経済的・性的DVなど心身に有害な言動の有無も考慮要素です。また、協議が調わない理由、濫用的な手続申立てや重大な約束違反の反復など、将来にわたる最低限の協力関係の構築が見込めず、共同での親権行使が困難と認められる場合。

これら以外にも、共同親権により子の利益を害する特段の事情があれば、単独親権を選択すべきとされます。1号や2号に準ずる事情がこれに当たると解されますが、どういった事例かについては今後の事例の集積を待つ必要があります。必要的単独親権事由がある場合については以上のとおりですが、次に必要的単独親権事由がない場合について分析します。

必要的単独親権事由がない場合

要的単独親権事由が認められないときは、
①父母と子との関係(従前の親権行使、子の利益配慮、子の心情・意向等)
②父と母との関係(親権共同行使のための最低限の意思疎通・協力関係の有無、第三者関与の安定性、対立の変化、関係阻害の有無)
③その他一切の事情
を総合考慮し、共同か単独かを決めます。このうち①の父母と子の関係というところは、さらに父母側の事情と子側の事情に分けて検討することが必要です。

①父母と子との関係

父母側の事情としては、従前の親権行使の態様、子の利益に配慮する姿勢の有無等を検討します。結局のところ、親が子の利益のために親権行使できるかの問題です。

例えば、子の前で口論をしていたり、子に他方の親の悪口をことさらに言うことがこれに当たります。子を紛争に巻き込まないよう配慮をしていないと、親権者にふさわしくないということですよね。子に他方の親の悪口を言わないというのは、実務上、私も依頼者様にいつもお願いしているところです。あとは、養育費を払わないことは、責任を果たしていないということで重く見られます。

次に、子側の事情を見てみましょう。もちろん、子が親に対してどう思っているかという心情は重要ですし、子がどちらの親に親権行使してほしいかも重要です。先ほど、共同親権者を定める場合、従前のように監護がメインではなくなるという話をしましたが、監護者指定等で争われている場合には、そこでの争点も重要になってきます。

お子様の監護者についての意向と、親権者についての意向がズレている場合、共に生活するのは母が良いけど、父にも共同親権者でいてほしいと思うことは一応あり得ますよね。もっとも、全て母にやってほしいという子もいるでしょうから、この辺りで考え方を複眼的に変えなければならないことはあり得ます。

また、年長の子の場合は、子の意思を重視することになります。これ自体は従前の実務と同様です。具体的には、子が父母双方の関りを望むか、子が一方の親への拒否的感情を有しているか等が重要です。
これまで、必要的単独親権事由がない場合の考慮要素のうち、父母と子の関係というのを見てきましたが、次に②父と母との関係をみていきます。

②父と母との関係

共同親権とするためには、協議や一定の協力関係が必須です。そこで、父母の関係と親子関係をちゃんと切り分けて考えられるのか、子の利益のためなら協力できるか、あるいは今後そのような関係を構築できそうかが検討されます。

具体的には、最低限必要な意思疎通ができていればよいとされます。第三者が介入している場合ですが、例えば第三者機関を通じて連絡調整をしているとか、父母の親、子にとっての祖父母を介して連絡調整をしており、それが長期間問題なく継続している場合も含まれます。

当初、高葛藤でも関係性の変化があれば父母の協力関係が期待できるということになるでしょう。他方で、一方の親が協力しないとか、関係を悪化させている場合等は注意が必要です。共同親権にしない方向に働く事情です。

考慮要素をまとめると、同居時及び別居後の親権行使や監護の在り方、別居後の親子交流等の連絡調整の経過、親権者の定めの協議が調わなかった、つまり争いになった理由等です。

③一切の事情

他に、③一切の事情を考慮するわけですが、実務上、①、②で目立つ問題がなければ、父母間の協力関係の見通しが主要な判断素材となります。

判断枠組みを一覧にするとこのようになります。裁判所の考えとしては、全体として、まず必要的単独親権事由の有無を検討し、なければ①〜③の総合考慮で共同・単独を選択するという二段構えのようでいて、必ずしも必要的単独親権事由の有無を先に検討するわけでないとされています。とはいえ、実務家としてはまずは必要的単独親権事由がないかを考えることにはなると思っています。

協議離婚に伴う親権者指定の手続

先ほど簡単に紹介しましたが、協議離婚の場合に限り、親権者を定めなくても離婚ができる制度になりました。これまでは離婚届の際に親権者の指定はセットでしなければならなかったので、ここは大きな違いです。なぜこのような制度ができたかというと、早く協議で離婚したいと思った方が、親権者を安易に相手方として離婚届を出してしまうと、結局子の利益にかなわないということでできた制度です。

協議離婚の届出受理に際し、親権者の定めがあるか、親権者指定の審判・調停の申立てがされていることが要件となりました。ただし、親権者指定の審判・調停の申立てをしたとして、後に要件を満たさないことが判明したとしても、離婚の効力自体は妨げられません。

要点をまとめると、協議離婚に限る、離婚前に親権者指定の審判または調停の申立てがされているというのが前提です。申立後は速やかな離婚届出が求められます。また、離婚後は親権者が定まるまで共同親権状態となります。親権者指定の審判・調停の手続では、早期に離婚見込みがあることを示す必要があります。離婚後、早々に離婚の記載のある戸籍謄本を提出する必要があります。また、後に審判・調停を取り下げる場合、家庭裁判所の許可が必要です。意図的にとりあえず審判・調停の申立てをして離婚届を出してしまい、後から審判・調停を取り下げることが許されると、濫用的に使われてしまうおそれがあります。

3 親権者変更

さて、親権者の指定がされた後、親権者を変更する場合にはどのような検討がされるかをみていきます。819条6項が変わりました。

類型と改正の要点

改正後は、親権者変更の申立権者に子本人が加わり、変更の方向性として、

① 単独→単独
② 単独→共同
③ 共同→単独

の全パターンが可能となりました。改正前と異なり、必ずしも現実の監護親を親権者とするとは限らず、事情に応じて別居親を含む共同親権への変更もあり得えます。

要点としては、親権者変更の際の考慮要素が規定されました。また、改正前と異なり監護親の変更がされるとは限らなくなりました。例えば同居親を共同から単独に変えるとか、同居親の単独から別居親を含む共同にするとかです。そして、子も申立てができるようになりました。

判断要素(民法819条8項)

協議によって定められた親権者変更の際の考慮要素の条文をみていきます。819条8項。親権者変更の場合に、父母の協議により定められた親権者を変更するかの判断では、

①協議の経過(暴力等の有無、家事調停・ADRの利用、公正証書の有無等を含む)
②その後の事情変更
③その他の事情
を考慮することとなります。協議により定められたのかどうかで考慮要素が変わってくるので、以下、個別に検討します。

協議により親権者を定めた場合、①協議の経過、②その後の事情の変更、③その他の事情を考慮します。

当該協議の経過というのは、例えば父母間のパワーバランスが一方に偏っているせいで、もう一方が押し込められて言いなりになってしまったりしていないか、ということが挙げられます。

その後の事情というのは、例えば、以前親権者を決める時には父母間の葛藤が強かったが、その後対立が緩和したとか、そういった事情を指します。親権者は一旦定められた親権者を変更するものなので、②が主たる考慮要素になりやすいです。

裁判所が判決又は審判で定めた親権者を変更する場合

次に、裁判所が判決又は審判で定めた親権者を変更する場合について検討します。
まず、先ほどの819条8項の適用はありません。また、裁判所が決めた場合にはパワーバランスの問題ではなく、ある意味お墨付きがあるといえるため、①協議の経過も考慮要素から外れます。その後の事情変更がメインとなります。

そして、変更の際に単独か共同かについては、冒頭の親権者の定めた判断枠組みと同様とされています。必要的単独親権事由があるか、それがない場合には当事者及び子の関係性等を検討します。では、共同親権から単独親権に変更する場合にはどうなるでしょうか。

事案の類型ごとの整理

・共同親権→単独親権

協議によって定められた場合について検討します。協議で共同親権となったが、その合意形成に対等性を欠く問題がある場合は、事情変更を過度に重視せずに、親権者指定の基本枠組みで判断されます。事情変更は、子の利益の観点から円滑な親権行使が期待できない客観的状況の発生を意味し、一時的・短期的な変化は該当しません。

当事者間に合意ある場合でも、それを妄信するわけではなく、あくまでそれも一要素となって判断されることに注意が必要です。

裁判で共同親権とされた場合は、①当該協議の経過を見ないのは当然として、②すでに共同親権が子の利益に適うと判断されたという経緯を踏まえ、事情変更の判断は慎重にする必要があります。

・単独親権→共同親権

次に、単独親権→共同親権の場合について検討します。改正法施行後に定めた単独親権を変更する場合と施行前に定めた単独親権を変更する場合に共通して、必要的単独親権事由の存否を検討します。

これがない場合は次の検討に移ります。施行後は協議により定めたか、裁判によって定めたかに分かれます。

改正後に定めた単独親権を変更する場合、①協議の合意形成過程に問題があれば、②の事情変更を重視せずに親権者の枠組みで判断されます。例えば、関係性に問題があるにもかかわらず、当事者間の対等性を欠く協議により共同親権となった場合がこれに当たります。

合意形成過程に問題がない場合、②関係性に関する重要な事情変更が検討されます。
父母関係の葛藤の沈静化や連絡調整の実務的安定性など、時的推移を重視することとなります。

改正法施行「後」に裁判で単独親権とした場合については、どうでしょうか。①当該協議の経過はみないとして、共同から単独の場合と同様に②慎重に事情変更を検討します。かつて必要的単独親権事由があるとされた場合、それが消滅しているかが主な論点となるでしょう。

では、改正法施行前に定めた単独親権を変更する場合はどうでしょうか。基本的には改正法施行後の場合と同じです。合意ある場合でも当然に共同とはなりません。なお、改正法施行それ自体は事情変更に当たりません。

離婚時でなく、離婚後の関係性が重要となります。

改正前に定めた単独親権に関しては、改正法の施行自体は事情変更にならず、離婚後から審判・調停時までの親子・父母関係の実態、とりわけ葛藤の沈静化、親子交流や養育費の連絡調整、子に関する話合いの状況、相互の配慮・尊重姿勢などが重視されます。

・単独親権→単独親権(他方の親へ)

では、単独親権→他方の親への単独親権に変更する場合はどうでしょうか。

この場合は従前の実務と変更はありません。819条8項の整理に沿って、協議過程の対等性、事情変更、その他事情を総合評価することとなります。

子が申立人となる場合の留意点

改正前と異なり、子本人は、年齢制限なく(意思能力があれば)親権者変更を申立てをすることができます。このとき、現親権者の同意は不要です。このときの相手方は父母双方です。

それとは別に、子は父母間の手続に当事者参加をすることもできます。これまでの利害関係参加では子の利益を害する懸念がある場合に裁判所による却下があり得ますが、子自身が申立人または当事者参加する場合は裁判所が却下できないところがポイントです。家裁は、子への手続説明、手続代理人の活用、家裁調査官の関与など、子の利益保護に配慮しながら進めることとなります。

4 親権の行使

親権行使の基本構造(民法824条の2)

民法824条の2は、原則として、親権は父母が共同して行うと定めます。もっとも、例外的に、

・一方のみが親権者である場合
・他方が親権を行えない場合
・子の利益のため急迫の事情がある場合
には、親権を単独行使できます。

それとは両立して、共同親権でも、監護・教育に関する日常行為は単独で行使できます。

では、共同で行使しなければならない事項について、父母間の協議が調わない場合にはどうなるでしょうか。改正法では、子の利益のため必要があるとき、家裁は一方の親権単独行使を定めることができると規定しました。

親権行使者の指定の対象「特定の事項」

家裁が単独行使を定めうる特定事項は、概ね次の類型に分かれます。

・身上監護で子に重大な影響を与える行為:居所の決定、在学契約の締結、重大な医療行為の決定など。
・財産管理に関する行為:子名義の預貯金の引出し等。
・身分行為:15歳未満の氏の変更の法定代理、15歳未満の養子縁組の代諾など。

実務上の具体例(在学契約)

以下では、問題となりそうな事例をいくつか説明します。学校との在学契約は、日常行為の範囲を超え重大な事項となり得るため、父母の協議が調わない場合には、親権行使者の指定で一方に単独決定権を付与する運用が想定されます。

もっとも、子の入学試験が終わり、入学が迫っている場合には、民法824条の23号に規定されている「急迫の事情」があるということで、親権の単独行使をすることがあり得ます。この「急迫の事情」の規定の運用が気になるところですが、親権行使に関する論点となりやすい規定だと思っています。

子の氏の変更

共同親権では、子の氏の変更は一方が単独で決められず、協議不調時は親権行使者指定の申立てが必要となります。とはいえ、通常は同居親が指定されやすいのですが、共同生活上の必要性等を踏まえて判断されます。子の意思をどう考慮するかについては、子がどちらの氏を選ぶかではなく、子が身分上の重要事項をどちらの親に決めてもらいたいかという観点から考慮されます。年長の子が明確な変更意思を持つ場合は、その点を父母が配慮すべきであるという話になり、子の意思を十分に考慮して決することとなるでしょう。

代諾養子縁組

改正により、親権行使の基本原則として、「子の利益のために行使」するものと明文化されました。婚姻中は、父母双方が親権者とされます。他方で、離婚後に子が養子の場合の親権者は、直近の縁組による養親、またはその配偶者である実親が親権者であると整理された。

つまり、離婚後に共同親権とされた後、一方が再婚して子が再婚相手と養子縁組をすると、他方の実親は親権者でなくなるということです。しかし、15歳未満の子の縁組には親権者の代諾が必要であり、共同親権では父母双方の同意が要るため、親権を失いたくない親が代諾せず、紛争化するリスクが高いです。

代諾に係る親権行使者指定の際には、「子の利益のため必要」より要件が厳格になり、「子の利益のため特に必要」(797条4項)であることが要件となります。これは、別居親が親権を失う重大な効果を踏まえたものです。

判断枠組みとしては、別居親が親権者であり続けることに子の利益上の問題があるかが中心でして、以下の事情を検討することになります。

①別居親に関する事情(扶養義務履行、親子交流の実施状況、従前の親権行使、今後の方針等)

ここに問題がなければ、この時点で要件を満たさないと考えてよいです。

②養親予定者に関する事情(同居の有無、子との関係性、別居親との交流妨害の有無等)

こちらは①に問題がある場合にはじめて検討することとなります。養親予定者と子との関係性に特段の問題がなければ要件充足されることとなります。

③子の意思・意向(相応の年齢で明確に養子を拒否する等は重視)

共同親権の理念上、別居親が適切に子と関わっており問題がない場合に、養子縁組を通じて別居親が親権者としての権利義務を失うことは正当化されにくいです。そのため、別居親と子の関りが適切な場合には、同居親が勝手に代諾して子に養子縁組をさせることはできないということになります。

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