会計・税務に関する国家資格には、税理士と公認会計士という2つの選択肢があります。どちらも高い専門性と社会的信頼を得られる魅力的な資格ですが、業務内容や取得方法には大きな違いがあります。
「税理士と公認会計士、どちらを目指すべき?」「そもそもどう違うの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、税理士と公認会計士の業務内容の違いから試験制度や難易度の比較、キャリアパスの特徴まで徹底解説します。読者のみなさまにとって最適な資格選びの参考になれば幸いです!
税理士と公認会計士の業務内容と違い
税理士と公認会計士は、法律で定められた独占業務が明確に異なります。それぞれの専門分野と主な仕事内容を見ていきましょう。
独占業務から見る違い
税理士と公認会計士は法律によって独占業務が明確に規定されています。税理士は「税理士法」に基づき、公認会計士は「公認会計士法」に基づいて業務を行います。
税理士の独占業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つです。主に納税者側に立って、確定申告などの税務書類作成や節税対策のアドバイスを行います。
一方、公認会計士の独占業務は、財務諸表監査です。企業が作成した財務諸表が適正かどうかを第三者の立場からチェックし、その信頼性を保証します。
クライアント層の違い
業務内容の違いから、自然とクライアント層も異なってきます。税理士は個人事業主から中小企業まで幅広い事業者と関わることが多いです。
税理士は税務申告が必要な全ての個人・法人が対象となるため、地域に密着した中小企業や個人事業主のサポートが中心です。一方、公認会計士は主に上場企業や大企業を対象としています。これは、金融商品取引法や会社法により、一定規模以上の企業には会計監査が義務付けられているためです。クライアント層の違いは、将来のキャリアや働き方にも大きく影響します。
その他の関連業務と実際の仕事
独占業務以外にも、両資格とも様々な関連業務を行っています。税理士と公認会計士の仕事の幅は広がっています。
税理士は記帳代行や決算業務、経営コンサルティングなど、中小企業の経営全般をサポートすることが多いです。公認会計士はM&Aアドバイザリー、IPO支援、内部統制構築支援など、より専門的・戦略的なコンサルティングを行うケースが増えています。これらの関連業務は、独占業務ではないため、どちらの資格でも取り組むことができますが、実務では得意分野や専門性に応じて棲み分けが進んでいます。
税理士と公認会計士の働き方と収入の違い
資格取得後のキャリアパスや収入面においても、税理士と公認会計士には特徴的な違いがあります。ライフスタイルやキャリア目標に合わせて選ぶことで自分が目指すべきものがなにか見つけていきましょう!
就職先と働き方の違い
税理士と公認会計士では、一般的な就職先や働き方に大きな違いがあります。自分の希望するワークスタイルと合致するかどうかは重要なポイントです。
税理士の場合、税理士法人や会計事務所に勤務するケースと、独立開業するケースの両方があります。地方都市を含め全国各地で開業が可能で、地域密着型のサービスを提供することが多いのが特徴です。
一方、公認会計士は大手監査法人(Big4と呼ばれる4大監査法人など)に勤務するケースが多く、チームで監査業務を行うため組織的な働き方になります。勤務地は東京や大阪などの大都市圏が中心となり、繁忙期には長時間労働になることもあります。
年収や収入の違い
収入面では、働く場所や経験によって大きな差があります。一般的な傾向と収入の幅を把握しておきましょう。
公認会計士は、監査法人に勤務する場合、初年度から比較的高い年収が期待できます。新人でも年収500〜600万円程度からスタートし、経験を積むにつれて1,000万円を超えるケースも多いです。税理士の場合は、勤務先や規模によって大きく異なりますが、一般的には税理士法人勤務で400〜700万円程度、独立開業して成功すれば1,000万円以上の収入も可能です。特に税理士は、独立開業して自分の事務所を持ったり、希少性の高い専門性を有することで、高収入を得るチャンスがある点が魅力です。
税理士と公認会計士の試験制度と取得方法の違い
両資格とも難関国家資格として知られていますが、試験制度や受験資格、合格後の登録までの道のりは大きく異なります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った勉強方法を選びましょう!
受験資格と試験科目の違い
試験を受けるための資格要件と、実際の試験科目構成には大きな違いがあります。自分の学歴や状況に合わせて検討する必要があります。
公認会計士試験には受験資格の制限がなく、学歴や実務経験に関係なく誰でも受験できます。試験は短答式試験と論文式試験の2段階に分かれており、短答式試験で4科目(財務会計論、管理会計論、監査論、企業法)に合格すると、論文式試験(必須4科目+選択1科目)を受験できます。
一方、税理士試験は一部科目に受験資格があります。一般的には大学で一定の単位を修得していることや、税務に関する実務経験などが必要です。ただし、2023年からは簿記論と財務諸表論については受験資格不要となりました。税理士試験の最大の特徴は科目合格制度で、1科目ずつ受験して合格 することができ、一度合格した科目は生涯有効です。
試験難易度と合格率の比較
両試験とも難関資格ですが、試験形式や合格までの道のりには大きな違いがあります。自分の学習スタイルに合った選択が重要です。
公認会計士試験は、全科目を一括で合格する必要があるため、短期間に集中して学習することが求められます。全体の合格率は例年7〜10%程度と非常に低く、学習時間の目安は約3,500~4,000時間と言われています。
一方で、税理士試験は科目ごとの合格制度があり、1科目ずつじっくり学習できる反面、全科目合格までに時間がかかるケースが多いです。各科目の合格率は10〜2015 %程度で(年度や科目によって異なる)、5科目すべての合格までの学習時間は約2,500~3,000時間が目安とされています。
働きながら長期的に資格取得を目指す場合は税理士試験、短期集中で資格取得を目指す場合は公認会計士試験が向いていると言えるでしょう。
合格後から登録までの流れ
試験合格後も、実際に資格を取得して業務を行うためには、さらにいくつかのステップが必要です。合格後の道のりも考慮して計画を立てましょう。
公認会計士試験前後を問わず、3年以上業務補助に携わる必要があります。また、公認会計士試験に合格した後は、実務補習を受ける必要があります。業務補助・実務補習が完了したら、修了考査を受検します。全要件を満たしてはじめて、公認会計士の登録ができます。修了考査を受けることが求められます。さらに、修了考査に合格した後、2年以上の実務経験を積んで初めて公認会計士として登録できます。
税理士試験の場合、全科目合格後に2年以上の税務に関する実務経験(税理士事務所や国税局での勤務など)が必要です。ただし、この実務経験は試験合格前に積んだものでも認められるため、働きながら受験していた場合はすでに条件を満たしていることもあります。
公認会計士から税理士になる方法
公認会計士資格を持っていると、税理士試験の全科目免除を受けられる特別なルートがあります。キャリアの幅を広げる選択肢として知っておくことがおすすめです!
無試験で税理士登録する条件
公認会計士には、税理士資格を取得するための特別なルートがあります。必要な条件と手続きを理解しておきましょう。
公認会計士として登録した人は、追加で必要な実務経験等の条件を満たせば、税理士試験を受けずに税理士登録ができます。具体的には、公認会計士としての登録後に、税務に関する実務経験(2年以上)か、研修(税理士法に規定する研修)のいずれかを満たす必要があります。
この「公認会計士から税理士になる」ルートは、両方の資格を持つことでキャリアの選択肢を広げられる大きなメリットです。一方、税理士から無試験で公認会計士になるルートはありません。キャリアを広く考えるなら、まず公認会計士を目指すという選択肢も検討価値があります。
両資格を持つメリット
公認会計士と税理士、両方の資格を持つことで得られる具体的なメリットを見てみましょう。
両資格を持つことで、財務諸表監査と税務の両方の専門知識を活かした総合的なサービスを提供できます。例えば、上場企業の監査だけでなく、税務コンサルティングも一貫して行えるため、クライアントの信頼を得やすくなります。
また、キャリアの選択肢も広がります。大手監査法人での経験を積んだ後、独立して税理士業務を行うというキャリアパスや、複数の専門分野を持つことでより高度な財務・税務アドバイザリー業務に特化するなど、様々な働き方が可能になります。特に上場企業や大企業と取引する税理士としては、公認会計士の知識も持っていることが大きな強みとなります。
税理士と公認会計士はどちらを選ぶべき?
両資格の特徴を踏まえて、自分に合った選択をするためのポイントを整理します。適性や将来の働き方を考慮し、選択していきましょう!
興味・適性で選ぶ
自分の興味や適性に合った資格を選ぶことが、長期的なキャリア満足度につながります。どちらがご自身に合っているかを考えてみましょう。
会計全般に広く興味があり、大企業の財務状況分析や監査業務に魅力を感じる方は公認会計士が向いています。企業の財務諸表が正しいかをチェックし、その信頼性を担保する役割に使命感を持てる方に適しています。
一方、税法に興味があり、節税対策や確定申告業務など実践的な税務業務に携わりたい方は税理士が向いています。また、クライアントと直接関わり、個人事業主や中小企業の経営サポートをしたいという方にも税理士は適職です。「法律や規則を理解して適用する」のが得意な方は税理士、「数字を分析して本質を見抜く」のが得意な方は公認会計士との相性が良い傾向があります。
ライフスタイル・働き方で選ぶ
将来どのような働き方をしたいかも、資格選びの重要なポイントです。ライフプランに合わせた選択を考えましょう。
地方での就職や独立開業を希望する場合は、税理士の方が選択肢が広がります。税理士は全国各地で需要があり、地元に密着した働き方も可能です。また、独立開業の壁が比較的低く、自分のペースで仕事ができる点も魅力です。
一方、大企業や国際的な環境で働きたい、キャリアアップを重視したいという方は公認会計士がおすすめです。大手監査法人やコンサルティングファームでの勤務経験は、その後のキャリアにも大きなプラスになります。組織での働き方に適応できる方や、チームで業務を進める環境が好きな方に向いています。
学習環境・期間で選ぶ
資格取得までの学習環境や期間も、選択の重要な要素です。自分の状況に合った資格を選びましょう。
仕事をしながら資格取得を目指す場合は、科目合格制度のある税理士試験の方が取り組みやすいでしょう。1科目ずつ時間をかけて合格を積み重ねていくことができます。
一方、学生や資格取得に専念できる環境にある場合は、公認会計士試験の方が短期間で資格取得が可能です。集中して学習に取り組み、2〜3年で合格を目指すことができます。税理士試験は「長期戦・少しずつ」、公認会計士試験は「短期決戦・集中型」と例えられることが多いです。自分の学習スタイルや生活環境に合った選択をすることが、合格への近道になります。
税理士と公認会計士の将来性と課題
会計業界全体の変化を見据え、両資格の将来性や課題について理解しておくことも大切です!テクノロジーの進化に伴う業界の変化にも目を向けましょう。
AI・テクノロジーによる業界変化
AIやクラウド会計の普及により、会計・税務業界は大きく変わりつつあります。将来を見据えた対応が求められています。
定型的な業務はAIやクラウド会計ソフトに置き換わりつつあります。例えば、領収書の読み取りや仕訳入力、基本的な財務諸表作成などは自動化が進んでいます。この変化により、単純な記帳代行や申告書作成だけでは付加価値を提供することが難しくなってきています。
これからの税理士・公認会計士に求められるのは、AIやテクノロジーでは代替できない高度な判断や戦略的アドバイスです。税理士なら税務戦略やオーナー企業の事業承継・相続対策、公認会計士ならデータ分析に基づく経営改善提案やM&Aアドバイザリーなど、より付加価値の高いサービスが重要になっています。テクノロジーを味方につけ、効率化した分を高度なコンサルティング業務に充てるという発想が求められています。
人口減少社会における展望
日本の人口減少に伴い、会計・税務業界も変化を迫られています。この変化を踏まえた長期的なキャリア展望が重要です。
人口減少に伴い、個人事業主や中小企業の数が減少していくことは避けられない状況です。これは特に税理士業界において、従来型のクライアント層が縮小することを意味します。また、両資格とも高齢化による業界内の世代交代も課題となっています。
こうした環境変化の中で生き残るためには、専門性の深化や差別化が必要です。例えば国際税務や事業承継、M&Aなど特定分野に特化することや、複数の専門資格を組み合わせることで独自の強みを作ることが重要になっています。また、英語力を活かした国際業務や、ITスキルを併せ持つことで、活躍の場を広げることも検討価値があります。業界の変化を前向きにとらえ、自らの強みを磨いていく姿勢が重要です。
まとめ
税理士と公認会計士、それぞれの特徴と違いについて詳しく解説してきました。最終的な選択は、ご自身の目標やライフスタイルに合わせて行うことが大切です。
- 税理士は税務の専門家として、確定申告や税務相談を独占業務とし、主に中小企業や個人事業主をサポート
- 公認会計士は財務諸表監査の専門家として、主に上場企業や大企業の財務の信頼性を担保する役割
- 試験制度は、税理士が科目ごとの合格制で長期戦型、公認会計士は一括合格型で短期集中型
- 将来の働き方として、税理士は独立開業や地域密着型、公認会計士は大手監査法人や企業内での組織的な働き方が中心
- 公認会計士は条件を満たせば無試験で税理士登録が可能だが、その逆はできない
税理士と公認会計士、どちらの資格も社会的ニーズが高く、やりがいのある仕事です。これから会計・税務の道を目指す方は、自分の適性や希望する働き方、学習環境などを総合的に考慮して選択することをおすすめします。
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