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巡回監査担当者のための相続対策の着眼点

本記事では、税理士事務所の法人税の担当者(以下、「巡回監査担当者」といいます。)に向けた相続対策の着眼点について解説しています。

はじめに:巡回監査担当者の相続対策の基本

巡回監査担当者は、日々会社オーナーや会社の機微な情報に触れていることから、相続対策の必要な事項に対面することも少なくありません。しかし、それらの情報がお客様の相続対策につながっていないのも残念ながら現状であると思われます。

また、私の体験では、多くの相談者は、相続対策の必要性を理解していても、誰に、どのように依頼して相続対策を進めて行けばよいか分からず、相談者のほとんどが効果的な相続対策を実行していない現状にあります。

相続対策は、まず現状を概算でも良いので概要を把握し、具体的な対策を立案・検討し、意思決定を経て実行に移すことになります。
多くの人は、相続対策は高度で、かつ、専門的な知識が必要で、何か難しそうに思いがちです。

しかし、相続対策の基本の対策、例えば、遺言書の作成、生前贈与の実行、個人事業の法人化、生命保険の活用による相続税の納税資金対策などは、お客様が容易に理解することができ、意思決定があればすぐにでも実行できる項目も少なくありません。

そこで、巡回監査担当者のために、相続対策の着眼点について要点のみを分かりやすく解説することとします。

Ⅰ. 相続対策の4つの基本対策の概要

相続対策の4つの基本対策(遺言書の作成、生前贈与の活用、資産管理会社の活用及び生命保険の活用)の概要について解説することとします。
巡回監査担当者として、この4つの基本対策の概要を理解していれば、顧問先の社長などと相続対策の話になっても税務の専門家として十分対応できます。

相続対策は、「争族」の防止、相続税の納税資金対策、及び相続税の軽減対策3つの課題に集約されます。決して節税対策だけが相続対策ではないことを理解しておかなければなりません。そのことから、顧問先の社長の心配はどこにあるのか、傾聴して整理することが大事です。

Ⅱ. 相続対策の着眼点(個人の相続対策)

個人の相続対策の着眼点

巡回監査担当者が行う、一般個人の方や、個人事業を営んでおられる人の相続対策の着眼点について解説することとします。

この場合に留意すべき点は、一般個人の方の相続対策では、税法はもとよりその他法律や社会の制度・仕組みについて理解が不十分な人もおられることから、分かりやすく書面にまとめて詳細に説明し、相談者自らが理解し意思決定を促す必要があります。

相続対策の効果は、一定の前提条件を基に算定されることから、将来の税制改正などによって相続対策の効果が減殺されることもありますので、書面で説明しておくことで後日のトラブルを回避することに役立ちます。

1. 家族構成
まず家族構成から確認します。この場合に、配偶者の有無、家族に障害者などがいないか、相談者の残された時間はどのくらいかなどを確認します。

2. 推定被相続人の年齢と健康状態
相談者の年齢と健康状態を確認します。健康状態に問題がない場合には、年齢から平均余命を基に相続対策を進めることが基本です。
また、夫婦のうち、どちらが先に死亡するかを仮定して、先に死亡すると仮定する者の相続対策を優先するようにします。一方、いずれの者の財産が多いか概算でも把握し、財産の多い者の相続対策を優先することも考えられます。

3. 相続人間での争いの可能性
相続人間で争いの可能性が考えられる場合には、公正証書遺言で遺産を誰に相続させるか明確にしておくことが重要です。

4. 遺言書の作成
相続対策では、遺言書を残しておくことが望ましいのですが、その中でも以下のような事情にあるような人は、遺言書の作成について提案することが欠かせません。

(1)遺言書が必須と考えられる事例
① 再婚し先妻(夫)との間に子がいる場合
相続争いに発展することが多くあります。遺言書で自社株などは後継者が確実に相続することができるようにしておかなければなりません。
② 子のいない夫婦の場合
子がいない相続で、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合には、兄弟姉妹には遺留分が認められていませんので、遺言書を残しておけば遺言者の遺志どおりに遺産を相続させることができます。
③ 内縁の者や孫に遺産を残したい場合
内縁の者や孫は相続人ではないことから、遺産を残したい場合には、遺言書でその旨を書いておく必要があります。

(2)不動産賃料収入の帰属
個人で不動産賃貸業を営む者の場合、遺言書を残すことは必須であると考えられます。遺言書が残されていないと、遺産分割協議が調うまでの間の賃料収入は、各相続人の相続分に応じてそれぞれ帰属するとされています。
そのため、遺産分割協議がますます難しくなってしまいます。

5. 生前贈与の提案
贈与とは、民法549条で、「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」とし、諾成契約とされています。
暦年贈与によれば、毎年繰り返して贈与することによって、将来の相続税の軽減を図ることができます。

6. 不動産オーナーの相続対策(法人化)
個人で不動産賃貸業を営む人が、既に所有している賃貸住宅を、主として相続対策のために不動産管理会社へ賃貸不動産を譲渡するのが良いかという判断基準は、以下の4つに区分されると思います。

● 4つの判断基準
対応策 毎年の所得税等の軽減に役立つ 将来の相続税の軽減に役立つ
法人化大いに推進
法人化慎重に判定 ×
法人化前向きに検討 ×
法人化見合わせ × ×

7. 生命保険の活用についての提案
生命保険の活用は、税制上さまざまな優遇規定が設けられており、相続対策においても有効な方法となります。しかし、①目的にあった保険商品に加入すること、②目的にあった契約形態で加入すること、などに注意しなければ、期待した効果を得ることはできません。

会社オーナー向けの相続対策の着眼点

巡回監査担当者は、損益計算書の収益、費用などについて関心が高く、貸借対照表について軽視する傾向にあります。

会社の前年対比の売上高の推移、原価率、人件費率、営業外損益や特別損益など法人の所得計算に直結する項目や、法人税の課税上のトラブルに発展する可能性のあるものには細心の注意を払いますが、貸借対照表の固定資産や株主などについてはほとんど関心を示すことはありません。

会社オーナーの相続対策は、まず株主が誰か、会社が所有する資産や負債など貸借対照表の確認をすることから始めなければなりません。

1. 財産の棚卸を実行する
会社オーナーの所有する財産は、換金処分の困難な財産の占める割合(自社株・会社利用不動産・居住用不動産)が高いことが特徴です。
業績の良い会社では、自社株の相続税評価額が驚くほど高く評価されることがあります。事業承継対策を考える場合、まず自社株の相続税評価額を算出し、株価引下げの具体的な提案が欠かせません。

財産の棚卸に際しては、現状の財産についての棚卸のみ行うのではなく、10年くらい先までの簡易なシミュレーションも併せて行うことが肝要です。
それらのことを通じて、相続対策の重要性について、対策を提案する者と相続人との共通の認識とすることができて、相続対策を実行するきっかけとなります。

2. 株主は誰か
実務では、株主の確認は法人税の申告書別表二(同族株主等の判定に関する明細書)に記載している株主名簿などを参考にしています。申告書に記載されている株主が真の株主でないことも少なくないことから、慎重に誰が真の株主か判定しなければなりません。

3. 固定資産の部に建物のみが記載されている場合
建物は空中には浮いていません。会社が建物のみを所有している場合には、その敷地の所有者は誰で、貸借関係はどのようになっているのか確認が欠かせません。

4. 同族関係者である役員と同族会社との建物(又は土地)の貸借
会社オーナーから貸借している土地・建物が「使用貸借」だと、自用地や自用家屋として評価され、小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなります。

5. 遺言書の作成
遺言書が残されていないと、事業承継にも支障をきたすことがあります。
(1)非上場株式等についての納税猶予を受けることができなくなることもある
(2)後継者の議決権の確保ができなくなることがある
(3)遺言書によって配当還元方式で自社株を相続することができる場合がある

6. 役員退職金規程の整備
役員の退職金の支払いは、法的な義務ではありません。労働基準法89条では、就業規則を作成する場合に、会社が退職手当の定めをする場合において、一定の事項を定めるように規定しているだけです。
役員退職慰労金規程が定められていてはじめて、役員退職金を請求する権利が発生するのであり、当然もらえるわけではありません。そのため、役員退職金規程の整備が欠かせません。

7. 役員借入金の精算
同族会社への貸付金の回収が困難と思われる場合でも、回収が不可能又は著しく困難であることが立証できないと相続財産として課税されます。
そこで、その貸付金については、債権放棄や自社株への組換えなどの対策を実行しておく必要があります。

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