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相続税申告における債務及び葬式費用の取扱い
相続税は相続人等が取得した財産に対して課税されます。財産には積極財産だけでなく消極財産も含まれ、積極財産から消極財産を控除した金額などを基に相続税の課税価格が計算されます。
相続税法22条(評価の原則)では、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況によるとしています。
そのため、相続財産から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるもので、控除すべき債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、長期かつ無利息等であるときには、相続財産から控除される債務の金額は、常に当該債務の弁済すべき金額と一致するものではないことになります。
近年、債務や葬式費用は、被相続人1人当たりの金額は減少傾向にあります。相続税の課税価格は債務や葬式費用を控除して求めることから、それらの金額の確認と控除される債務や葬式費用に該当するのか確認が大切です。
第一章 債務控除に関する相続税法の規定
1. 相続財産から差し引くことができる債務
相続財産から差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるものです。
なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付または徴収されることになった所得税などの税金については、被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。
相続税の課税価格の計算上、相続人又は包括受遺者が負担した債務の金額は、取得財産の価額から控除されます(相法13)。
(1)債務控除の対象となる債務とは
① 相続人又は包括受遺者が承継した債務であること(相法13①)
② 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(借入金、未払金及び公租公課など)であること(相法13①)
③ 確実と認められるものであること(相法14①)
(2)債務控除の対象とならない債務
被相続人の債務であっても、相続税の非課税財産である①墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの、②宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業の用に供することが確実なものについて、これらの取得、維持又は管理のために生じた債務の金額は、その財産を課税価格に算入しないこととの見合いで、控除しないこととされています(相法13③)。
2. 債務控除の対象となる債務
相続債務のうち、相続財産から控除されるのは、確実と認められるものに限られています(相法14)。また、債務控除をすることができる者は、無制限納税義務者で包括受遺者及び相続人に限られています(相法13)。
(1)特別寄与料が相続税の課税価格に算入される場合の支払った特別寄与料
特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額が当該特別寄与者に係る相続税の課税価格に算入される場合には、当該特別寄与料を支払うべき相続人が相続又は遺贈により取得した財産(※1)については、当該相続人に係る課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額(※2)から当該特別寄与料の額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による(相法13④、21の15②)こととされています。
(※1)被相続人が相続時精算課税における特定贈与者(相法21の9⑤)である場合のその被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の規定の適用を受ける財産を含みます。
(※2)相続時精算課税の適用を受ける財産については基礎控除後の価額
(2)特別縁故者や特別寄与者が負担した債務
債務控除について規定する相続税法13条1項では、「相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。)により財産を取得した者が・・・」と規定しており、当該財産の取得が相続税法4条の規定により特別縁故者や特別寄与者が遺贈により取得したものとみなされた者については、同法第13条の規定の適用はありません。
しかし、民法958条の2又は民法1050条の規定により、相続財産の分与を受けた者又は特別寄与者が、当該相続財産に係る被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合については、相続税法基本通達4-3により特別縁故者が相続財産の分与を受けた金額又は特別寄与者が受けた特別寄与料から控除することとしていて、その費用を控除した後の価額をもって相続税の課税財産となる特別寄与料等の額とされます(相基通4-3)。
(3)準確定申告における所得税の負担について
可分債務(金額的に分割できる債務)については、一般的には、被相続人の死亡と同時に法定相続人が法定相続分の割合により承継して、遺産分割の対象にはならないものと解されています。また、相続による国税の納付義務の承継を規定した国税通則法によると、相続人が2人以上あるとき各相続人は民法900条から902条まで(法定相続分、代襲相続分、遺言による指定相続分)の規定によりあん分して被相続人の国税の納付義務を承継するとしています(通法5)。
したがって、被相続人の所得税の準確定申告による納付義務については遺産分割の対象とはならず、法定相続分等に基づいて債務控除することになります。
しかしながら、相続税の課税価格計算の税務実務では、一般的には、相続人全員の同意があるときは、被相続人の所得税債務について相続人が遺産分割した金額に基づいて債務控除をすることが認められています。
3. 遺産分割協議書へ債務の負担についての記載方法と留意点
遺産を相続しない相続人がいる場合の遺産分割協議書への債務の負担についての記載方法について、以下のような対応が求められます。
民法上、相続債務は原則として法定相続分に応じて当然に承継されます。例えば、遺産分割協議で「Aは債務を負わない」と決めても、債権者には効力がありません。そのため、債権者から被相続人の履行を請求されたらAは法定相続分に相当する債務の弁償をしなければなりません。
しかし、相続人同士の内部関係(最終的に誰が負担するか)は自由に決められるので、遺産分割協議によって遺産を取得しない人が、債権者から被相続人の債務の履行を請求されたときに、他の相続人が負担することを遺産分割協議書に反映させることが必要です。
また、遺産分割協議書に記載する方法以外に「債務負担契約書」を作成する方法もあります。
第二章 葬式費用に関する相続税法の規定
被相続人の葬式費用について相続財産から控除することかできるのは、居住無制限納税義務者または非居住無制限納税義務者で、葬式費用を負担することになる相続人や包括受遺者(相続時精算課税の適用を受ける贈与により財産をもらった人を含みます。)です(相法13①)。
国税庁の統計資料から葬式費用の推移をみると、コロナ禍にあった令和2年に大きく金額は減少しています。その後も、葬式費用の額は減少したままの状況が続き、家族葬などによって近親者だけで執り行う傾向が推測されます。
葬式費用は、被相続人の債務ではありませんが、人の死亡に伴う必然的出費であることなどから相続財産から控除するものとされています。
1. 相続財産から控除される葬式費用
葬式費用等のうち、控除できるものと控除できないものは、以下のように通達で明らかにしています。
一定の相続人および包括受遺者が負担した葬式費用を遺産総額(注)から差し引くことができますが、葬式費用として控除できるものについては、以下のとおりです。
| 控除できる葬式費用(相基通13-4) | 控除できない葬式費用(相基通13-5) |
|---|---|
| 葬式や葬送に際し、またはこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が控除できます。) | 香典返しのためにかかった費用 |
| 遺体や遺骨の回送にかかった費用 | 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用 |
| 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれに当たります。)(※1) | 初七日など法事のためにかかった費用 |
| 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用(※2) | 医学上、裁判上の特別の処置に要した費用 |
| 死体の捜索または死体や遺骨の運搬にかかった費用 | |
| 死亡診断書・死体検案書の文書料(※3) |
(注)制限納税義務者は、控除できる債務の範囲が制限されているほか、葬式費用についても控除対象となりません。
(※1)葬儀当日に、本葬と初七日法要を同時に行った場合、葬儀費用と初七日の費用が請求書などで明確に区分されているときの初七日費用については控除することができません。また、弔問客が負担したお花代も、一括して請求書に記載されることがありますので、申告の際は注意しましょう。
(※2)お寺などへの支払について領収書がなく場合でも、支払った金額は控除することができます。
(※3)死亡診断書又は死体検案書は、死亡届出の際に添付が求められるもので、火葬許可を得るために必要な手続となります。そのため、葬儀を行うための必須の手続であることから葬式費用に該当すると考えられます。
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