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報告義務化! 医療法人の経営情報報告制度について解説

医療法が改正され、医療法人が開設する病院及び診療所に係る経営等の情報を収集し、データベースとして整備することとなりました。
これに伴い、医療法人は病院・診療所の経営情報の報告が義務化されました。
この記事では、報告制度について解説していきます。

1.施行日

令和5年8月1日
⇒令和5年8月以降に終了する会計年度から対象になります。

2.報告対象となる医療法人

原則、全ての医療法人が報告対象となります。
ただし、法人税の申告で租税特別措置法第67条第1項の規定による社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用して所得の金額を計算した場合には、その会計年度に係る報告は対象外となります。なお、該当する医療法人は、所定の様式によりその旨を報告する必要があります。

3.報告期限

報告期限は、原則、医療法人の会計年度終了後3か月以内になります。
ただし、医療法第51条第5項の規定により公認会計士又は監査法人の監査を受ける医療法人は、会計年度終了後4か月以内になります。

4.報告先

報告先は、医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事となります。なお、複数の病院等を開設し、これらの所在地が都道府県をまたがっている場合も、報告先は、全て主たる事務所の所在地の都道府県知事となります。

5.報告方法

都道府県知事への報告方法は、次のいずれかの方法になります。
なお、厚生労働省では、可能であれば(1)の報告方法によることをお願いしています。

(1)医療機関等情報支援システム(G-MIS)

G-MISから様式をダウンロードし、これに報告事項を記載した上でG-MISにアップロードすることにより報告します。

(2)郵送等による報告(書面での送付)

様式を書面で郵送等により報告します。

6.報告する情報

(1)対象

医療法人が開設する病院及び診療所の経営等(本来業務に限る。)の情報が対象になります。
したがって、介護老人保健施設又は介護医療院は対象外です。また、附帯業務は対象外です。

訪問看護については、病院・診療所が本来業務の中で実施している訪問看護は、その病院・診療所に含めて計上しますが、訪問看護ステーション(附帯業務)は対象外です。

複数の病院・診療所を開設している場合の報告は、病院又は診療所ごとに報告することになります。

(2)報告事項

①病院等の基本情報
イ)医療法人を表す番号
a)医療法人整理番号
b)法人番号

ロ)医療機関を表す番号
a)病床・外来管理番号
b)医療機関コード

ハ)病院等の名称、所在地等
a)法人名及び病院名(診療所名)
b)役員数及び職員数
c)病院等の所在地
d)期間
e)消費税の経理方式
f)主たる診療科(診療所のみ)

②病院等の収益及び費用の内容

イ)病院の項目

医業収益
入院診療収益
保険診療収益(患者負担含む)
公害等診療収益
その他の診療収益
室料差額収益
外来診療収益
保険診療収益(患者負担含む)
公害等診療収益
その他の診療収益
その他の医業収益
うち保健予防活動収益
うち運営費補助金収益
医業費用
材料費
医薬品費
診療材料費・医療消耗器具備品費
給食用材料費
給与費
(うち消費税課税対象費用)
役員報酬
給料
賞与
賞与引当金繰入額
退職給付費用
法定福利費
委託費
うち給食委託費
設備関係費
(うち消費税課税対象費用)
うち減価償却費
うち器機賃借料
研究研修費
(うち消費税課税対象費用)
経費
(うち消費税課税対象費用)
うち水道光熱費
控除対象外消費税等負担額
本部費配賦額
医業利益(又は医業損失)
医業外収益
うち受取利息及び配当金
うち運営費補助金収益
うち施設設備補助金収益
医業外費用
うち支払利息
経常利益(又は経常損失)
臨時収益
うち運営費補助金収益
うち施設設備補助金収益
臨時費用
税引前当期純利益(又は税引前当期純損失)
法人税、住民税及び事業税負担額
当期純利益(又は当期純損失)

ロ)診療所の項目

医業収益
入院診療収益
保険診療収益(患者負担含む)
公害等診療収益
室料差額収益
その他の診療収益
外来診療収益
保険診療収益(患者負担含む)
公害等診療収益
その他の診療収益
その他の医業収益
うち保健予防活動収益
うち運営費補助金収益
医業費用
材料費
医薬品費
診療材料費・医療消耗器具備品費
給食用材料費
給与費
(うち消費税課税対象費用)
役員報酬
給料
賞与
賞与引当金繰入額
退職給付費用
法定福利費
委託費
うち給食委託費
減価償却費
器機賃借料
その他の医業費用
(うち消費税課税対象費用)
うち水道光熱費
うち控除対象外消費税等負担額
うち本部費配賦額
医業利益(又は医業損失)
医業外収益
うち受取利息及び配当金
うち運営費補助金収益
うち施設設備補助金収益
医業外費用
うち支払利息
経常利益(又は経常損失)
臨時収益
うち運営費補助金収益
うち施設設備補助金収益
臨時費用
税引前当期純利益(又は税引前当期純損失)
法人税、住民税及び事業税負担額
当期純利益(又は当期純損失)

経営状況に関する情報の様式中、備考に「任意記載」とない科目は、必須記載科目になります。同様式中、備考に「任意記載」と記載している科目は、任意記載科目になります。任意記載科目は、記載が困難でなければできるだけ記載するよう求められています。任意記載科目について記載が困難な場合は、「*」を記載します。

病院等の「収益及び費用」に係る科目の名称は、病院会計準則(「病院会計準則の改正について」(平成 16 年8月 19 日付け医政発第 0819001号))をもとに定められています。一方、医療法人は、法令の規定によるほか、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従って行われることとされています。そのため、各医療法人の会計基準によって、勘定科目の名称と一致しない場合がありますが、報告に際し、科目の名称は統一されています。

資産、負債及び純資産(貸借対照表)の情報については、この制度による報告の対象ではありません。

③病院等の職員の職種別人員数その他の人員に関する事項

イ)職種別の給与総額及びその人数に係る職種

医師
歯科医師
薬剤師
看護職員
保健師
助産師
看護師
准看護師
その他の医療技術者等
診療放射線技師
臨床工学技士
臨床検査技師
リハビリスタッフ
理学療法士
作業療法士
視能訓練士
言語聴覚士
歯科衛生士
歯科技工士
栄養士等
管理栄養士
栄養士
調理師
社会福祉士
精神保健福祉士
保育士
看護補助者
事務職員
事務(総務、人事、財務、医事等)担当職員
医師事務作業補助者
診療情報管理士
その他の職員

病院・診療所ごとに上記の職種ごとの職員の給与総額及びその人数を記載する必要があります。なお、「医療法人に関する情報の調査及び分析等」の取扱い(第2版)について(厚生労働省医政局医療経営支援課 令和5年10月2日 事務連絡)及び様式の注書きには、「把握している職種は全て記載し、記載が困難な職種には「*」を記載する」とあります。

7.第三者への経営情報等の記載の委託

G-MISを使用して報告する場合、経営情報等の記載を外部に委託することが可能です。
この場合、G-MISの医療法人マスタの担当者を委託先の担当者で登録することも可能です。

G-MISでは、医療法人の経営情報等(事業報告書等)を報告する『医療法人ID』と医療機関としての日次、週次報告をされている『医療機関ID』は別のIDとなっています。
医療機関スタッフにG-MISで報告した事業報告書等及び経営情報等を見られたくない、又は、委託先に医療機関として報告している情報を見られたくない場合には、IDの統合を行わず、別々のIDのまま運用することで対応できます。

なお、既にIDの統合を済ませている場合は、申し出によりG-MIS事務局でID統合の解除を行うことも可能です。

8.報告様式

都道府県知事への報告様式は、次のとおりです。
(1)病院に係る報告事項〔様式1〕
(2)診療所に係る報告事項〔様式2〕

なお、初回報告の経過措置(令和5年8月1日から令和6年7月31日までの間に終了する会計年度に係る報告が対象)として、一部の報告事項を省略することができます。その場合には、次の様式を使用します。
(3)病院に係る報告事項〔様式1-2〕
(4)診療所に係る報告事項〔様式2-2〕

9.報告項目における基準となる期日・期間

(1)病院等の基本情報(役員及び職員の人数並びに主たる診療科を除く。)

報告に係る医療法人の会計年度の最終日

(2)役員及び職員の人数

医療法人の会計年度内の12月31日を末日とする1年間にある7月1日
これによりがたい場合は、医療法人の会計年度内の7月1日

(3)主たる診療科

7月1日(医療法人の会計年度内の7月1日)

(4)病院等の収益及び費用の内容

医療法人の会計年度1年間

(5)職種別の給与総額

1月1日から12 月 31 日までの1年間(医療法人の会計年度内の12 月31 日を末日とする1年間)
これによりがたい場合は(4)の会計年度

(6)職種別の人数

7月1日((2)と同じ)

【具体例】会計期間が令和5年4月1日~令和6年3月31日の場合
(1)基本情報
令和6年3月31日
(2)役員及び職員の人数
令和5年7月1日
(3)主たる診療科
令和5年7月1日
(4)病院等の収益及び費用の内容
令和5年4月1日~令和6年3月31日
(5)職種別の給与総額
(原則)令和5年1月1日~令和5年12月31日
よりがたい場合は、令和5年4月1日~令和6年3月31日
(6)職種別の人数
令和5年7月1日

10.罰則規定

医療法人の事業報告書等の届出と異なり、経営情報等の未報告そのものに罰則は規定されていません。しかし、未報告の状況が改善されない場合は医療法第64条に規定する都道府県知事の医療法人への指導監督権限(一般規程)の中で対応されることが想定されています。

11.最後に

本記事は、2024年2月2日時点のものです。制度創設後まもない制度であり、今後、取扱い等が変更になることがありますので、実務の際には下記の厚生労働省ホームページ等にて最新情報をご確認ください。また、都道府県ごとに指導等が異なることがありますので、提出先の都道府県のホームページ等にて最新情報をご確認ください。

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