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令和8年度税制改正で変わる相続対策の新常識と提案実務

相続税に関する直近の税制改正で、実務上影響の大きいと考えられるものに、小規模宅地等の特例の規定の改正や、令和5年度改正における生前贈与についての改正があります。暦年贈与を活用した対策は多くの人が実行しています。この暦年贈与について、生前贈与加算の対象期間を3年から7年に延長するなどの改正が行われました。

また、令和8年度税制改正では、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するなどの改正が行われます。

不動産オーナーにとっては、所有する土地の上にアパートを建築するなどの対策は、相続税対策の定番でありますが、相続が間近になってから行う建築では、建物の建築価額と相続税評価額の差額による相続税の軽減効果は期待できなくなるなど、従来の相続対策を抜本的に見直さなければなりません。

そこで、相続対策への影響が大きい直近の税制改正の概要を確認し、これからの相続対策の在り方について検討することとします。

Ⅰ. 相続税に関する直近の税制改正

1. 小規模宅地等の特例の改正

①  特定居住用宅地等の特例の適用に当たって、いわゆる「家なき子」の範囲について、被相続人の居住の用に供されていた宅地等を相続等により取得した親族が、相続開始前3年以内に国内にある当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の3親等内の親族又は当該親族と一定の特別の関係がある法人の所有する家屋に居住したことがない者であること」に見直され、一定の経過措置の適用がある場合を除き、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した小規模宅地等の課税の特例に規定する宅地等について適用されることになりました。

②  平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した小規模宅地等の課税の特例に規定する宅地等で相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等を除くこととされました。

③ 平成31年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した小規模宅地等の課税の特例に規定する宅地等で、相続の開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等をその対象から除くこととされました。

2. 令和5年度税制改正

(1)相続時精算課税贈与の改正
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とするなどの改正が行われ、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用することとしています。

(2)暦年贈与課税の改正
相続又は遺贈により財産を取得した者が、加算対象期間(※)内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとすることとし、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用することとしています。

(3)居住用の区分所有財産の評価の見直し
令和6年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した居住用の区分所有財産の評価について、従前の評価方法によって評価した価額×区分所有補正率を乗じて評価することとされました。

(4)極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(措法41の19)
個人でその者のその年分の基準所得金額(※1)が3億3,000万円を超えるものについては、その超える部分の金額の100分の22.5に相当する金額からその年分の基準所得税額(※2)を控除した金額に相当する所得税を課することとされました。

(※1)基準所得金額とは、総所得金額及び分離課税の各種所得金額を合計したもの(確定申告不要制度を適用することができる上場株式等に係る配当所得の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額を含みます。)をいいます。
(※2)基準所得税額とは、通常の方法で(確定申告不要制度を適用する所得を除いて)計算した場合の申告書上の所得税の額及び確定申告不要制度を適用した所得に係る源泉徴収税額を合計したもの(復興特別所得税を含みます。)をいいます。

1年間の基準所得金額が3.3億円を超える方について、その超える部分の金額の22.5%に相当する金額から、その年分の基準所得税額を控除した金額を所得税の額に加算し、確定申告を行う必要があります。

基準所得金額には、確定申告不要制度を適用することができる上場株式等に係る配当所得の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額を含みますので、特定口座内で受け取った配当金額や譲渡所得金額を確認しなければなりません。
この改正は、令和7年分以後の所得税について適用することとしています。

3. 令和8年度税制改正

(1)貸付用不動産の評価方法の見直し
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとしました。

この改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。
ただし、この改正については、当該改正を通達に定める日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限ります。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含みます。)には適用しません。

●適用関係の本則
被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引又は新築した一定の貸付用不動産 令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価に適用
● 経過措置
当該改正の内容が通達に定められる日までに、被相続人が所有する土地のうち、 同日の5年前から所有する土地に 新築した(又は建築中の)家屋については、 新通達の適用対象外
上記以外の土地に 新通達の適用対象

(2)不動産小口化商品の評価方法の見直し
不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することとされました。
この改正は、令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

(3)極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し
税負担の公平性の確保の観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化のため、特例対象者を個人でその者のその年分の基準所得金額が1億6,500万円(現行:3億3,000万円)を超えるものとするとともに、税率を30%(現行:22.5%)に引き上げることとしました。
この改正は、令和9年分以後の所得税について適用することとしています。

4. これからの相続対策の新常識

(1)相続開始直前になっての駆け込み対策の封じ込め
近年の税制改正などによって、相続開始直前になっての駆け込み対策はほとんど封じ込められました。
相続対策によって相続税の軽減効果が発生するには、3年(新たに貸付事業の用に供された宅地等についての小規模宅地等の特例の適用)、5年(貸付用不動産の評価)、7年(生前贈与加算の期間)以上の時間を要することになります。
さらに、不動産の時価と相続税評価額との差額をねらった対策は、総則6項の適用も考えられます。

(2)これからの相続対策の基本
税制や通達の穴を狙ったような対策や、即効性のある対策には落とし穴が潜んでいます。
時間をかけて地道に対策の実行が望まれます。

① 相続税の軽減対策
相続税を軽減するには、収入を減らす、又はこれ以上資産が増えない対策を実行する(相続人や同族法人に収入を移転する)ことと、保有する資産を減らす(生前贈与など)ことなどが基本です。
イ 収入を減らす又は増えないようにする
 高収益な賃貸不動産については、法人へ移転するなどの対策が重要です。
ロ 資産を減らす
 相続人等への生前贈与を毎年実行することです。
ハ 非課税財産へ組み換える
 生命保険金など相続税の非課税財産に組み換えることや、贈与税が課税されない贈与(住宅取得等資金の贈与や特定障害者扶養信託契約など)を実行することです。

フローの所得は源泉分離課税とされる所得を残し、他の収入は極力減らし、ストックリッチな状態を目指します。この場合に、ストックについては、「支配すれども所有せず」の持ち方とするために、資産管理会社で所有し、株式の議決権については、会社法109条2項による属人的定めによって、持株は最小限とし、議決権は過半数を有するように定款に定めておくようにします。

② 節税重視の対策から家族の幸せ対策へ
相続対策は優良な資産を残すことを目的に行うべきと考えます。そのため、一等地は有効に活用し、より多くの収益をあげることでそれらの収益を相続税の納税原資とするようにします。一方、資産価値の乏しい不動産は売却か物納により処分を行います。生前に権利関係が錯綜している不動産の整理も積極的に行うようにします。それらを通じて所有する不動産の資産価値の向上を図らなければなりません。

相続人にとって、相続財産に多額の負債がなく、かつ、相続税が別腹で用意されている(例えば、納税に必要な額以上に生命保険金が確保してある)ことが望ましいと思います。

また、相続争いの防止のための「遺言書の作成」や、相続税の納税資金対策など実行すべきことはたくさんあります。

Ⅱ. 具体的提案ケーススタディ

1. 生前贈与

贈与税は、法定相続人以外の者に対しても贈与することができます。その場合、贈与税の基礎控除額を超える贈与があった場合には、贈与があった年の翌年3月15日までに贈与税の申告と納税が必要となります。

一方、相続税の基礎控除額を超える財産がある場合に、相続人等に対して相続税が課されます。
いずれにしても財産を承継する場合に課税されますが、そのタイミングが異なるだけです。そうであれば、税負担の少ない方を選択することが賢明な対応と考えられます。

2. 訳アリ資産の整理

相続対策では、優良な資産を次の世代に残すことが肝要です。そのため、訳アリ資産については、事前に整理しておかなければなりません。

(1)同族法人への貸付金
回収が困難と思われる貸付金債権等のうち、同族法人へ代表取締役などが貸し付けている事例も多く、その場合には、生前に債権放棄やDESなどの対応を実行しておくことで、課税庁との不必要な争いを防止することに役立つと考えられます。

(2)普通借地権が設定されている貸宅地
貸宅地の相続税評価額は、自用地評価額から借地権の評価額を控除した借地権価額控除方式によって求められることから、市場価値の減退部分は考慮されないため、正常価格を基本に算定される鑑定評価額と比較すると高く評価されます。
そこで、被相続人が所有する底地を、同族法人が時価(この場合の時価は、不動産鑑定評価における正常価格)で譲渡するようにします。

(3)老朽化した賃貸建物への対応
老朽化した賃貸住宅で定期的な修理や改修をしていないと、入居者も少なくなっている事例が多くあります。相続税評価額は、土地建物ともに、賃貸割合を考慮して求めることとされているので、空室の多い賃貸住宅ほど相続税評価額が高く評価されてしまいます。
また、そのような賃貸住宅を残された相続人にとっては、その財産は、「不動産」ではなく、「不動“損”」又は「“負”動産」になってしまいます。

優良な資産を次の世代に残すために、所有関係が錯綜している不動産や、収益性が著しく劣る不動産など、現所有者がそれらの問題を解決しておくことが本来の相続対策です。

3. 生命保険を活用して納税資金を確保する

(1)課税される財産から非課税財産へ
相続税が課される生命保険金等を相続人が受取った場合に、相続税の非課税規定の適用を受けることができます。

(2)外貨建て生命保険の加入によって手残り残高を増やす
国外の金利が高い状況にある昨今では、外貨建ての終身保険を選択すると、一時払保険料よりも大きく保障が増える保険金額が約束された商品があります。

4. 資産管理会社の活用

個人が所有する高収益な不動産は資産管理会社へ譲渡すれば、毎年の税金が軽減され、かつ、収入が法人に移転することによって将来の相続税が軽減されます。また、法人が取得した貸付用不動産について、純資産価額で評価する場合には、取得後3年間は通常の取引価額によって評価することとされています。

一方、個人が貸付用不動産を対価をもって取得した場合には、相続開始前5年以内は通常の取引価額によって評価されます。残された時間が短い場合には、法人で貸付用不動産を取得することで、時価と相続税評価額を活用した対策の効果を挙げることが期待されます。

5. みなし相続財産を活用して遺産分割協議を避ける

本来は相続財産ではないが、被相続人の死亡を原因として、相続人のもとに入ってきた財産を税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象としています。例えば、生命保険金は受取人固有の財産であり、受取人が単独で保険請求権に基づき行うことができます。

6. 総則6項への対応

令和9年1月1日以後に開始した相続等から、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築した一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引金額に相当する金額によって評価することとされたため、総則6項による課税処分は減少するものと予想されます。

しかし、自社株対策については、相続開始直前における特定の評価会社はずしについては、今後も総則6項の適用については注意をしておかなければなりません。
比準要素数1の会社や株式等保有特定会社などに該当しているか否か、常に自社株評価をして判定し、該当している、又は該当しそうな状況にある場合には、早急な対策の実行が求められます。

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