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【士業向け】不動産管理会社設立の留意点

個人は、毎年の所得に対し累進税率で所得税が課されます。そのため、所得の高い人の最高税率は所得税45%に住民税10%で合計税率は55%となり、いくら稼いでも税金の方が多くなってしまいかねません。

一方、法人は、比例税率で所得の多寡によって法人税が重くなることはありません。中小法人で所得金額が800万円以下の場合には、軽減税率が適用され実効税率は約23%、所得金額が800万円超の部分の実効税率は約35%であることから、所得税と比較して税負担が少なくなることも珍しくありません。

そこで、不動産管理会社のうち、不動産所有方式によって収益性の高い不動産を法人へ移転するなどの対策をコンサルティングする際に、聞き取りしなければならない事項をヒヤリングシートにまとめて確認することが肝要です。

1. 会社の形態

(1)株式会社

株式会社は、構成員の地位が細分化された株式という形式をとり、株式の自由譲渡性、及び構成員たる株主の有限責任などを特色とする企業形態(三省堂:大辞林)です。

株主は、会社債権者に対して直接には何ら責任を負うことはなく一定額の出資義務を負うのみです(有限責任)。そのため、株主は既に出資義務を完了していますので、債権者に対してそれ以上の責任を負うことはない、ということになります。

(2)合同会社

合同会社は、株式会社と異なり、「所有と経営が一致」する(会社法590①、会社法591)ことが特長です。

合同会社は、
① 定款の認証が不要のため手数料5万円がかからない
② 登録免許税の下限が6万円(株式会社は15万円)
③ 取締役会の設置が不要
④ 業務執行社員や代表社員には任期の定めがない(会社法607)ことから社員に変更がない限り変更登記が不要
⑤ 株主総会も必置機関ではないため株主総会が不要
⑥ 出資比率に関わらず自由に利益配分を定めることができる
⑦ 出資者である社員が経営の意志決定を行う(会社法590②、会社法591)
⑧ 決算公告義務もありません。
そのため、会社規模が小さな会社では、合同会社によって設立されている事例が多くあります。

(3)既存の会社の活用

過去に設立し、休眠になっている会社を活用する場合には、株主は誰か、休眠会社の活用の場合には青色申告によることができるかなどを確認し、不動産管理会社として活用することに適しているかなどを確認する必要があります。

2. 不動産管理会社(株式会社の場合)設立について

不動産管理会社(不動産所有方式)設立に当たって、上記のヒヤリングシートに基づき、質問することで漏れなく必要な事項について確認することができます。
確認すべき事項の主なものは、以下のような内容になります。

(1)株主

① 会社が取得する不動産の評価差額が大きい場合には、推定被相続人が出資する。
② 評価差額が小さく高収益な不動産を取得する場合は、推定相続人が出資する。
③ 15歳未満の者を株主とする場合には、印鑑証明書が取得できないため、設立後に株式の贈与による方法が考えられる。

(2)株式の種類

① 会社の意思決定は株主総会で決まる。
② 普通株式のみの場合には、発行済株式数の過半数を所有する必要がある。
③ 所有する株式数を最小限としつつ、議決権を確保する方法として種類株式(無議決権株式又は黄金株)を発行することが必要。

(3)役員

① 公務員などは原則として役員になれない。
② 取締役が2人以上する場合に代表取締役を決めておく。
③ 代表取締役は社会保険加入が不可欠

(4)議決権確保のために

無議決権株式を発行しない場合、属人的定めによる場合には、定款に規定を設ける必要がある。

● 3つの株式についての議決権等の比較一覧は、以下のとおりです
属人的株式 拒否権付株式(黄金株) 無議決株式
会社法の根拠条文 109条② 108条①八 108条①三
会社の制限 非公開会社に限る 公開会社も可 公開会社も可
権利の内容 剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会における議決権について異なる取扱いを行うことができる 株主総会において決議すべき事項のうち、種類株主総会の決議があることを必要とする事項を定めることができる 株主総会において議決権を行使することができる事項を制限できる
権利の帰属 株主に帰属 株式に帰属 株式に帰属
登記の有無 不要
定款の定め
定款の変更(※) 株主総会で特殊決議 株主総会で特別決議 株主総会で特別決議
相続税評価 普通株式と同じ 普通株式と同じ 原則、普通株式と同じ。(ただし、5%を控除した「調整計算」の選択も可)

(※)「特別決議」とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議(会社法309②)が、「特殊決議」とは、総株主の半数以上(頭数要件)、総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数の決議(会社法309④)が必要。

(5)不動産管理会社の形態

以下のいずれの方式による。

① 管理料徴収方式
不動産オーナーが、その所有する不動産を直接第三者に賃貸する一方、当該不動産の管理のみを不動産管理会社に委託し、その対価として管理料を支払う方式です。この方式では、不動産の所有者はそのままで、不動産管理会社は不動産オーナーの所有物件の管理(多くは賃料の集金代行など)を行います。そのため、不動産管理会社が得るのは「管理料収入」のみとなります。
その場合、税務調査において、過大管理料と判定されると個人の不動産オーナーの所得税の修正申告が求められます。

② 転貸方式
不動産オーナーが、その所有する不動産を不動産管理会社に賃貸し、不動産管理会社が当該不動産を更に第三者に賃貸する方式で、サブリース方式とも呼ばれています。転貸方式による場合、不動産管理会社が得る転貸料と賃借料との差額は、管理委託方式における管理料と経済的に同視することができ、形式的には転貸方式が採られている場合であっても、適正な管理料割合に基づいて算定した適正な管理料相当額を転貸料収入から控除して適正な賃貸料を算定する方法によって、適正な賃貸料を算定することが可能であると考えられます。

そのため、賃料差額が大きい場合には、税務調査において適正管理料の範囲内であるか判定され、過大と判定されると管理料は過大部分について不動産オーナーの所得について修正申告が求められます。

③ 不動産所有方式
不動産管理会社が不動産オーナーから賃貸不動産を取得し、自ら管理・運営を行います。この場合、不動産管理会社が賃貸不動産を所有していますので、賃料収入は「100%」不動産管理会社に帰属します。不動産オーナーに帰属していた賃料収入が不動産管理会社の収入に置き換えられるので、収入の分散効果はこの不動産所有方式が最も大きいといえます。

この方式の場合、適正管理料について課税庁との争いは生じません。しかし、不動産オーナーが所有する賃貸不動産を譲渡する際の「時価」について、著しく低い金額による場合などにおいては不動産オーナー及び不動産管理会社ともに課税関係が生じることになることから、適正な時価によって譲渡するようにしなければなりません。

④ 上記の方式の組み合わせ
空室が多く発生している物件については、管理料徴収方式を選択し、満室経営が期待できる物件は転貸方式を、収益性の高い物件については不動産所有方式を選択することが基本です。

(6)不動産所有方式による場合

① 個人が所有する不動産を取得する場合、どの不動産を譲渡するのか、建物のみか、土地建物も譲渡するのか
・譲渡する際の時価に注意
・譲渡所得税の試算が必要
・建物の譲渡については消費税の負担の有無も要確認

土地・建物の時価(国税不服審判所:平成18年12月15日)
 評価上の安全性に配慮した路線価方式による相続税評価額等をそのまま適用することは適切でないと解されるから、土地及び建物の価額は、土地については公示価格に基づいて算出する方法により、建物については再建築価格を基準とした価額から、建物の建築時からその経過年数に応じた減価又は償却費の額を控除して算出する方法によるのが相当である。

② 建物のみの譲渡の場合
土地と建物の所有者が異なることになることから、借地権の課税関係が問題となります。
その場合に、法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合でも、その借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められているときに、法人とその借地人の連名により、「土地の無償返還に関する届出書」を遅滞なく届け出ることとされています。

この届出を行っている場合には、権利金の認定課税は行われないこととなります(法基通13-1-7)。

なお、土地の無償返還方式を採用する際に、「賃貸借型」か「使用貸借型」のいずれの方式を採用するのか慎重に検討が必要です。
・無償返還は、賃貸借型か使用貸借型のいずれによるのか
・地代の額の設定も要検討
・土地貸借の契約書作成が必要

● 建物の所有を目的とする土地の賃貸借による「土地の無償返還に関する届出書」(賃貸借型)が提出されている場合
借地借家法 相続税法
借地人(法人) 借地権 あり (株価評価)自用地評価額×20%(加算)
※ 建物が貸家の場合には14%を加算
地主(個人) 貸宅地(底地) 貸宅地(自用地×(1-0.2))

③ 債務の引継ぎ
・賃貸借契約書から敷金の有無を確認
敷金については、「所有権移転とともに、賃貸借の賃貸人たる地位を承継するのであるから、旧賃貸人に差入れられた敷金に関する法律関係は、旧賃貸人に対する賃料の延滞のないかぎり、賃貸人たる地位の承継とともに、当然、旧賃貸人から移転すると解するのが相当である」としている(最高裁:昭和39年6月19日判決)。

・銀行借入の金利選択は「固定金利」か「変動金利」か
固定金利で借入している場合には、債務者が個人から法人へ変更になることで繰上返済に該当しペナルティ(目安は残債の1%から2%程度)が課されることがある。

・担保余力はあるか
・抵当権の変更について「債務者変更」によることができるか

④ 個人から取得する場合の取得資金の検討
・銀行から新たに調達する
・少人数私募債による
・売主からの借入金(未払金)

⑤ 個人が所有する賃貸不動産を譲渡する場合、賃貸契約書などの変更手続が必要
貸主の変更に伴う賃貸契約書の巻き直しが必要

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