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自社株の評価方法と異動提案書作成の留意点

自社株の異動の提案については、同族株主等のうち支配権を有する株主か、それとも支配権を有しない同族株主等への異動のいずれによるか、贈与か譲渡か、分散された株式はどのように集約するのかなどについても言及しておくことが望ましいと考えます。
そこで、自社株の異動を伴う提案を行う場合の留意点などについて解説することとします。

1.  取引相場のない株式等の評価方法

まず、取引相場のない株式等(以下「自社株」といいます。)の評価方法の概要を確認します。自社株の評価額は、その株主が有する評価会社の議決権割合に応じて、評価方法が異なります。

1.  取引相場のない株式等の評価方法

*同族株主等とは、「同族株主」と同族株主のいない会社における「議決権割合の合計が15%以上の株主グループに属する株主」をいいます。

2. 同族株主のいる会社の場合の評価方式

株 主 の 態 様 評価方式
同族株主 取得後の議決権割合が5%以上の株主 原則的評価方式
(類似業種比準方式又は純資産価額方式、若しくはそれらの併用方式)
取得後の議決権割合が5%未満の株主 中心的な同族株主がいない場合
中心的な同族株主がいる場合 中心的な同族株主
役員又は役員予定者
その他の株主
同族株主以外の株主 特例的評価方式
(配当還元方式)

※ 同族株主とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権割合の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいいます。
(同族関係者とは、親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)、特殊関係のある個人(内縁関係にある者等)及び特殊関係にある会社(子会社、孫会社等)をいいます。以下同じ。)

なお、この場合において、その評価会社の株主のうち、株主の1人及びその同族関係者の有する議決権割合の合計数のうち最も多いグループの有する議決権割合の合計数が、その会社の議決権総数の50%超である会社にあっては、50%超のその株主及び同族関係者をいいます。

※ 中心的な同族株主とは、課税時期において、同族株主の一人並びにその株主の配偶者・直系血族・兄弟姉妹及び一親等の姻族の有する株式の合計数が、その会社の議決権数の25%以上である場合におけるその株主をいいます。

3. 株式移動パターン別課税関係

自社株の評価額が最も低いタイミングで移転を図る場合に、贈与と譲渡の二つの選択肢があります。
その場合、自社株を譲り受ける者が、個人か法人か、又は同族株主等で支配権を有する者か否か、によって譲渡等をする自社株の時価が異なります。
そこで、株式移動パターン別の課税関係について簡潔に確認します。

(1)贈与・相続による自社株の移転

自社株の評価方法の判定は、相続税が遺産取得者課税方式によっていることから、贈与・相続の場合には、贈与(相続)を受ける者が誰か、また取得後の議決権などの状況において原則的評価方式か特例的評価方式によって判定するかが決まります。

そのため、贈与者が同族株主以外の株主であっても、取得者(受贈者)が支配権を有する同族株主等である場合には、原則的評価方式によって自社株を評価することになります。

【株式の取得者ごとの評価方法】
所有者
(贈与者又は被相続人)
移動 取得者(受贈者又は相続人等) 評価方法
同族株主等 支配権を有する同族株主等 原則的評価方式(類似業種比準価額又は純資産価額)
同族株主等以外の株主
同族株主等 上記以外の株主
(同族株主等以外の株主)
特例的評価方式(配当還元価額)
同族株主等以外の株主

しかし、取得者(受贈者)が同族株主でも支配権を有しない株主への贈与又は相続であれば、特例的評価方式によって自社株を評価することができます。
相続対策にかけることのできる時間が短い場合には、親族の中から特例的評価方式によって贈与できる対象者を緊急避難先として選定し、贈与を検討することになると思います。

また、分散された株式等を集約するための受け皿として「一般社団法人」を設立してその法人が株式を買い取ることも検討に値すると思います。株式を譲渡する人が「配当還元方式」によって株式を評価することができる場合には、一般社団法人も同族株主等以外の株主に該当することから、配当還元価額がその株式の時価と判定されるため、10%配当であれば株式の譲渡に係る課税関係は生じないものと考えられます。

この場合に、一般社団法人が同族理事の割合が過半数を超える「特定一般社団法人」に該当した場合には、同族株主が亡くなったときは、一般社団法人の純資産を同族理事の数に1を加えた数で除した金額が、一般社団法人が遺贈によって取得したものとみなされて相続税が課されることになります。

(2)自社株の売買による移転

自社株の売買においても、売買の当事者が個人か法人か、譲り受ける者が同族株主等に該当するのか否かなどによって自社株の時価が異なります。
自社株を時価で売買すれば課税上のトラブルは生じませんので、以下の表に掲げる売買当事者の組合せによる時価を確認して、想定外の課税を受けることがないよう注意が必要です。

● 個人甲(同族株主)が自社株を売買する場合の「時価」
売 主 買 主 時 価
個人甲 個人乙(同族株主) 原則的評価(財産評価基本通達)
個人甲 個人丙(同族株主以外の株主) 配当還元価額(財産評価基本通達)
個人甲 法人A(同族法人) 原則的評価(財産評価基本通達準用:所基通59-6)
個人甲 法人B(第三者法人) 配当還元価額(財産評価基本通達)
法人A(同族法人) 個人甲 原則的評価(財産評価基本通達準用:法基通9-1-14)
法人B(第三者法人) 個人甲 純資産価額(所基通23~35共9・財産評価基本通達)
法人A(同族法人) 法人B(第三者法人) 配当還元価額(財産評価基本通達)

自社株の時価が高いうちに、後継予定者でない家族株主が所有する株式を、父が買取り、その後、株価の引下げ対策を実行して後継者へ贈与又は相続させることは相続対策として効果的です。
なぜなら、父は、現預金が自社株に変わり、その自社株の株価が下落すれば父の相続税の負担軽減に役立ちます。また、後継者は将来株式の買戻しなどの苦労も生じません。

4. 譲渡(贈与)の承認申請等

株式譲渡制限会社において、自社株を贈与しようと考えるときは、譲渡承認機関での譲渡の承認などの手続きに瑕疵がないように実行します。

● 譲渡制限会社(株券不発行)の場合における株式の贈与に伴う手続き一覧
贈与者 受贈者 会社
贈与の意思等 贈与の意思表示 受諾の意思表示
譲渡承認申請 贈与による譲渡承認申請 申請受理
承認機関での審議 承認機関で審議
譲渡承認通知 通知書受理 承認通知書発送
贈与契約書 契約書に署名・捺印 契約書に署名・捺印
株券名義変更 会社へ書換申請 申請受理
株主名簿 書換完了通知書受理 株主名簿書換及び通知
贈与税の申告 申告及び納税
法人税申告書 別表第二株主名簿変更
株主総会 株主総会において権利行使 株主総会の通知
配当金 所得税の確定申告(配当所得の申告) 株主へ支払

5. 提案書作成のポイント

自社株の株価が下がることを想定し、後継者への贈与又は譲渡する場合の提案書を作成するときに、盛り込むべき項目としては以下のようなものが考えられます。

① 事業承継をスムーズに実行する場合には、現状の株価の算定が欠かせません。そのため、自社株の相続税評価額の確認を行うことから始めます。
② 自社株の評価明細書から、株価引下げの対策の具体的な手法について提案をします。
③ 自社株の移動について、贈与の場合、暦年贈与、相続時精算課税贈与、又は非上場株式等についての贈与税の納税猶予による贈与などの制度を解説します。
また、譲渡による場合には、適正な時価についての説明も重要です。
④ 贈与又は譲渡の場合には、株式の贈与(売買)契約書の作成だけでなく、株式譲渡制限会社においては、譲渡承認手続きも必須です。怠りなく手続き関係の書類作成が必要です。
⑤ さらに、遺言書の作成も併せて提案しておきたいものです。

遺産分割協議が調わなかったら、その株式は準共有状態となり、株主総会においてその株式の議決権の行使をする人が誰になるかによって会社の意思決定者が異なることもあるかも知れません。

また、相続人のうちの後継予定者に対する生前贈与で、相続開始前10年より前であれば、原則として特別受益に該当しないことから、遺言書が残されていれば、遺留分算定基礎財産に含まれません。

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