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会計事務所に最適な人事評価制度(等級制度・賃金制度・評価制度)とは

人事評価制度において最も重要な要素とは何でしょうか?本記事では会計事務所における適切な人事評価制制度について、その本質と、各制度(等級制度・賃金制度・評価制度)では何が適しているのかについて解説しています。

人事評価制度で一番大事なこと

気をつけなくてはいけない「手段が目的化」

「人事評価制度で一番大事なことは?」
と聞かれて思いつくことは何でしょうか。「公正・公平」「納得性」「透明性」「明確な賃金表」「手間がかからない」などいうことが一般的に思いつくかもしれません。もちろんこれらが大事なのは間違いありません。ただもっと大事なことがあるといつも伝えています。
人事評価制度で一番大事なことは『目的』

「制度」はあくまでツールに過ぎず、このツールを事務所にインストールして使っていくことで、事務所の何を良くしていくのか、何を実現したいのか。これが一番大事なのではないでしょうか。今回のテーマであれば「職員が成長する」が大事なのです。

上記に掲げた「公正・公平」などのいくつかのことも大事ですが、これらもその目的のための手段にすぎず、一番大事なところにおいてしまうと、いわゆる「手段が目的化」ということに陥ってしまいます。

事務所が求める期待人材になるように成長してもらいたい。なのに、職員から公平ではないという不満が出るからまんべんなく公平にしよう、納得しない職員がいるから別の面も評価してあげよう、手間がかからないように面談はやめよう・・・などとしていくと、職員からの不満などは確かに少なくなるかもしれませんが、その結果、目的からどんどん遠ざかってしまい、職員は期待人材に成長していない、となってしまいます。

いわゆる「ただやっているだけ」の形骸化に進んでいきます。
しかし、一般的に上記のようなことが大事だ、と言われることが多いため、そちらが最終的に目指すものになってしまうことが多いのです。

事務所はチームであり、所長は監督である

少し極端な言い方にはなりますが、評価をするということは、良い評価の職員からそうではない職員まで序列ができます。評価がどんなに正しくできていても、評価が低い職員からは「不公平だ」「納得いかない」という声は上がってくるのです。ここで人事評価は公平性だ、納得性だとなると前述の形骸化にまっしぐらです。

例えば、スポーツのチームで考えてみましょう。そのチームは予選を通過して決勝に進むという大きなビジョン、目指すものがあります。今のチームの状況から、なんとか勝ち点を多く取るために攻撃を強くして、勝ち進んでいこうという方針が出ます。そのために攻撃の練習をしたり、その作戦のための行動をしてもらうことを期待します。期待人材です。

それなのに、私は守るのが得意だ、他の誰よりもその練習をして、試合でもそれを徹底した。
それを評価されないなんて納得いかない。不公平だ。という人が出ました。ここでこの言い分を聞いていくようになっていくと、チームの目的からどんどん遠ざかっていくのです。チームを組織に置き換えて考えてみましょう。人事評価をやっているのに効果が出ない、形骸化しているというのは、実はこれと同様なことが起きていることが多いのです。たとえは少し極端かもしれませんが、大事なのは期待人材に社員が成長しているという「目的」。こちらを常に見据えて制度というツールを構築、運用で使っていきましょう。

どのような職員であっても、多少の不満はあるものです。それをどんなになくしていったとしても、この事務所は良い将来が見えない、ここでは自分は成長ができないと思われたら、職員の離職、特に良い人材の離職は起きてしまうのではないでしょうか。多少の不満はありつつも、この事務所は今後も業績があがっていく、ここなら自分は成長できると感じられたら、離職は少なくなってきます。目指すべきはこちらなのです。

会計事務所におすすめの人事制度

等級制度は「役割等級制度」

さて、前段で考え方を中心にお伝えしましたが、ここからは具体的にどのような制度を作ったらよいかをご説明していきます。人事制度は大きく「等級制度」「賃金制度」「評価制度」で構成されます。さて、会計事務所にはどのようなそれぞれ制度が適しているのでしょうか。
見ていきたいと思います。

まずは等級制度ですが、結論からいえば、会計事務所には「役割等級制度」が断然おススメになります。
では、この役割等級制度とはどのようなものでしょうか。英語では「ミッショングレード」といいます。等級制度にはその他、「職能等級制度(アビリティグレード)」と「職務等級制度(ジョブグレード)」があります。

名称 役割等級制度
(ミッショングレード)
職能等級制度
(アビリティグレード)
職務等級制度
(ジョブグレード)
給与を決める基準 その「役割」 その「人」 その「仕事」
どんな
制度か
会社の中のいくつかの職種に応じて基本の給与があり、その中での役割の違い(部を見る役割か、作業をする役割かなど))により、差がついている その人の成長(能力向上)に対して、給与が上がっていき、会社内で職種が変わっても、給与は変更せず、人としての能力向上の速さの違いで、差がついている その仕事に対しての給与が決まっていて、人物に関わらず、同じ給与となる。仕事の難易度や職務内容によって、誰でもその給与となる
タイプ 職能と職務の折衷型 日本(終身雇用)型 欧米(雇用流動)型

簡単にまとめましたが、もちろん、ここに書ききれないほどの、それぞれの良い点、悪い点があり、突き詰めていくとこれだけで一冊の本ができるぐらい奥の深いものが等級制度ですがここでは割愛します。なぜ役割等級が会計事務所におススメなのかは、下記の5つの特長からです。

①中途採用中心の会社に合わせやすい
②今現在の貢献の評価をしやすい
③人材育成につなげやすい
④職員に将来をみせていきやすい
⑤同一労働・同一賃金に対応できる

会計事務所に入ろうと思う方は、おそらく「職種」「地域」「給与」などを条件に仕事を探している人が多いかと思われます。年功ではない役割等級制度であれば、職種ごとの賃金水準にも対応でき、年功序列型でもないので、いま現在の貢献をしてくれる職員への賃金配分ができるようになります。その中でも、将来の等級になったらどのような役割があり、どのような処遇になるかも分かりやすく将来を見せていくことができる制度なのです。そして同一労働同一賃金にも対応が可能です。厚生労働省の同一労働同一賃金に関する法制定において、もし正規・非正規で処遇が異なる場合は、その「働き方」と「役割」に合理的な違いがあるかという説明責任が義務化されています。まさしく「役割」の違い役割等級制度では作ることができますので、説明も問題なくできるようになります。

賃金制度は「範囲給制度」

次に賃金制度です。賃金制度もやはり奥が深く、制度の説明をしていくと長くなってしまうので、同様におススメをご紹介いたします。それは「範囲給」制度です。「範囲」なので「レンジレート」と呼ばれます。一般的には下記のようないわゆる「号棒表」をつくることが多いかもしれません。

賃金制度は「範囲給制度」の画像1

ただ、これがあるためにうまくいかないケースが多いのです。この表が最初にありきで、去年何号棒の昇給だったから、今年はどれくらいにしよう、からスタートするようになってしまいます。その金額にするためには評価は何点ぐらいだ、という形で評価の調整をやることが当たり前で、これも評価の形骸化へのまっしぐらとなります。職員からは頑張ってもどうせ調整される、と動機が下がっていってしまうのです。なので、おススメは次のような範囲給制度です。しっかりと評価することが先にあって、その結果で範囲の中で事務所の出せる金額を設定できます。評価自体は変えずに昇級設定ができるようになる制度です。

賃金制度は「範囲給制度」の画像2

役割等級制度とあわせることで、例えば営業職のL1という等級であれば、その役割を担ってもらう金額として、35万から40万は約束します。その間でどれくらい上がっていくかは、評価と業績によって決めます、とする制度です。ある程度融通を聞かせて、毎年運用の継続が可能になります。前述の号棒表の方が明確で透明性があるではないか、というご意見もありますが、会計事務所の場合は、人数が多い大企業のように毎年のベースアップや定期昇給ができない場合があります。明確に提示したために、それ通りに行かない場合の働く人へのマイナス効果がとても大きく出てしまうのです。あいまいさ、融通が聞くような余地を残して、それでも毎年しっかりと運用していくために、範囲給制度が適しているのです。

評価制度は「A4一枚評価制度」

「A4一枚評価制度」とは一般的な名称ではないですが、要はシンプルですぐに事務所の目標や個人目標、目指すスキル向上アクセスできるようになる、というような分かりやすい評価を行っていきましょう、というものです。

大事なのは、いつでもどこでもすぐに確認できること。半年や一年間、評価内容などは忘れてしまっていて、最後に思い出したように査定だけしていても、納得性も成果も成長も実現できません。このアクセスがしやすいように、ファイリングしておき(上司は部下のコピーを持っておくなどして)それこそお互いに毎日でも気づいたら確認するように使うことで、大きな効果が出てきます。

もう一点、評価の内容には大きく3つの性質が異なる評価項目があるので、知っておきましょう。

目指すもの 成果 スキル 姿勢
内容 組織目標、個人目標を設定して、それに向かって取り組む その役割を遂行するにあたって求められる知識・技術 その役割に相応しい、振る舞い、言動、姿勢や態度
何につながるか 短期的な組織の業績 中長期的な組織の成長・底力 職場風土の醸成

それぞれ、事務所が何を大事にするかによって、評価項目の数などは変わってくることでしょう。同じ事務所であってもステージによって変わることもあります。
最初の3年は職場風土を良くするために「姿勢」項目を充実させ、その次の3年で職員全員のスキル向上、その後成果を出していく、とすると評価項目が変わってくるのです。
まさしく「目的」のための評価制度という「手段」の活用なのです。

「運用」が大事というけれど

最後に、運用についてお話して終わりにさせていただきます。
人事評価制度は運用が大事だ、という話に異論を唱える人はあまりいません。しかし一方で「運用」が具体的に掴めていないということも、実際に感じることです。
「運用がうまくいっていない」とは具体的に何ができていないのでしょうか。逆に「運用がうまくいっている」というのは具体的に何がどう良い状態になっていることをいうのでしょうか。

・提出日には誰も遅れず、滞りなく進んでいる
・不平不満がほとんど出ず、毎年ちゃんと回せている
・あまり手間がかからず、負担感を感じずにできている

このようなことが「運用」と思いがちですが、実はこれらは手段がうまくいっているだけに過ぎないのです。運用がうまくいっているというのは、本来は次のようなことではないでしょうか。

・「目的」の実現に近づいている

業績向上が目的だったら、本当に業績は上がっているか。
人材育成が目的だったら、職員は成長しているのか。
こちらが大事なのです。

冒頭でも述べましたが、職員の方、誰でも多少なりとも不平不満は持っているものです。それでも、この事務所は将来性があって伸びていくと感じ、この職場なら自身は成長できるという実感があれば、人は辞めません。特に良い人材は、です。

逆に公平感や負担を減らすことばかりに囚われ過ぎていて、前述のように滞りなく皆がやって、不平不満も出なかったとしても、業績は上がらない、成長は出来ないと判断されたら辞めていってしまうのではないでしょうか。「運用」が形骸化するのは、このように手段が目的化するところから陥っていきますので気をつけていましょう。

目的に繋がる運用のポイントは、いかに期中に成果や成長につなげるようなマネジメントの仕組みを作り上げることと、それらを実行するための優先順位の高いスケジューリング、そして「人事評価」という手段、スキルを使いこなす評価者スキルで引き上げていくことが可能です。

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。
人事制度というと、人数がまだあまり多くなく、所長の目が届くうちは必要ない、という考えが以前は多かったかと思われます。

しかし、いまは査定だけが目的ではなく、人事制度の有無による採用への影響、労働力人口減少の中でいかに職員を成長させるかの人事施策としての必要性。また、職員の動機づけやコミュニケーションツールとしての有益性など、導入の目的も大きく変わってきており、こうなると人数に関わらず必要なものと変わってきています。

冒頭の繰り返しにはなりますが、人事制度はあくまでツールであって手段にしか過ぎません。これを導入することにより、貴事務所が何を実現していきたいのか。それによって作り方も使い方も変わってきます。

その目的につながる人事制度を作り上げ、事務所の大きな財産として定着させていきましょう。今回ご紹介しているA4一枚評価制度はシンプルで運用重視、公平性や納得性よりも、「人材育成」と「業績向上」を得意とする制度です。ぜひ貴事務所の職員の成長のためにご参考になる部分、取り入れられる部分がありましたら、大変嬉しい限りです。

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