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【税理士向け】インボイス制度の特例におけるポイントと導入後のよくある質問
令和5年10月よりついにインボイス制度が開始となりました。制度が開始した今でもインボイス関係の質問を色々と受けており、制度への関心度は依然として高いままです。
また、2割特例による申告も同時に始まっています。初年度である今は2割特例申告の適用ミスはないと思いますが、これから先においては「適用漏れ」や「適用できないのに適用できるものとして申告をしてしまった」ケースが散見されると予測しています。
インボイス関係でのよくある質問への対応
インボイス関係でいくつかよく受ける質問があります。教材内では下記の10項目について解説を行っていますが、本記事ではその一部を抜粋してポイントを解説します。
- 仕入先への立替金支払いについて
- インボイス要件を満たしていない領収書等への対応
- インボイス公表サイトとインボイスに記載された名称が違う
- クレジットカードでの支払い
- インボイス番号の確認は全件行うべき?
- 経過措置の適用要件
- 免税事業者への消費税支払
- 経過措置の会計処理
- 出張旅費特例と公共交通機関特例
- 簡易インボイスの対象事業
仕入先への立替金支払い
支払先への立替金については、非常によく受ける質問です。インボイス制度開始後であっても、立替金部分がインボイス仕様になっていないこともありますので、特に確認を要する部分になります。
対応方法としては、以下の3つが考えられます。
①立替金に係るインボイスのコピーを受領する
②インボイスの記載要件を満たした明細書を受領する
③立替金を売上高に含めて請求してもらう
実務では③の方法によりインボイス対応を行っている事業者が多いです。ただしこの場合、売手側としては課税売上高が立替金分増加することに注意が必要です。課税売上高が増加したが故に、2割特例や簡易課税制度を適用できなくなる可能性があります。
経過措置の適用要件
インボイスを受領できなかった課税取引すべてが経過措置の適用を受けられるのではなく、経過措置の適用を受ける旨の記載をした帳簿及び区分記載請求書の保存が必要になります。区分記載請求書の記載事項は下記の通りです。
①書類の作成者の氏名又は名称
②課税資産の譲渡等を行った年月日
③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
⑤書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
従って、区分記載請求書の保存が出来ない場合には経過措置の適用はなく、仕入税額控除を行うことが出来ません。免税事業者からの仕入等については経過措置が使えるものと勘違いしている方も少なくありませんのでご注意ください。
経過措置の会計処理
経過措置を適用する場合には、次の2通りの会計処理が考えられます。
例)免税事業者である飲食店に110,000円の支払いを行った場合
①その都度処理を行う方法
交際費 /現金預金 102,000円
仮払消費税(※) /現金預金 8,000円
※10,000円×80%
②決算時に処理を行う方法
交際費 /現金預金 110,000円
仮払消費税 /現金預金 10,000円
→決算時に 雑損失/仮払消費税 2,000円の仕訳入力
経過措置により消費税から控除できない控除対象外消費税に相当する金額は、本体価格として取り扱われます。従って交際費に係る部分の金額は、交際費加算の対象となります。また、免税事業者から固定資産を購入した場合には、その控除対象外消費税相当額部分は固定資産の取得価額を構成することになります。
決算時に雑損失で処理している場合は、交際費部分や固定資産を構成する部分の金額の把握が難しくなります。出来れば①の方法で期中から処理されることをお勧めします。
免税事業者への消費税支払
「免税事業者から消費税額を記載した請求書が送られてきたが問題ないか」という質問をよく受けます。答えは、問題ありません。
ただし、実務上においては相手方の心証を悪くする可能性もあります。そのためインボイスを契機に税込価格で請求を行うことをお勧めしております。
また、相手方にインボイス制度により控除できなくなる消費税相当額を値引きする場合は消費税の20%を値引きするのではなく、税込価格から1.96%を値引きした対応が望ましいです。
例1)経過措置のため、本来の消費税額×80%の金額で請求書を作成 → ×
講師セミナー費用 | 100,000円 |
---|---|
消費税 | 8,000円 |
請求額 | 108,000円 |
例2)税込価格に1.96%の値引をしたものとして請求書を作成 → 〇
講師セミナー費用 | 107,844円 |
---|---|
請求額 | 107,844円 |
上記例の場合、経過措置の仕訳としては下記の通りとなり、インボイス制度導入の前後で本体価格に変動がありません。
研修費 /現金預金 100,000円※
仮払消費税 /現金預金 7,844円
※本体価格の算出方法は以下の通りです。
イ.107,844円/1.1=98,040円
ロ.107,844円/1.1×10%×20%=1,960円(控除されない仕入税額控除分)
ハ.イ+ロ=100,000円
2割特例について
2割特例を適用せずに消費税の申告を行った場合には、その後の申告について修正申告や更正の請求により、2割特例を適用することはできません。
2割特例の適用判断ミスについては、税理士賠償に直結することになります。
教材動画内では、2割特例が適用できないパターンや注意点について詳しく解説を行っています。本記事では一部ポイントを解説します。
令和5年度課税売上高集計の注意点
免税事業者である個人事業で、10月1日からインボイス登録を行った場合の令和7年度の判定ですが、下記期間の課税売上高を合計することになります。
①令和5年1月~9月分売上高(税込金額)
②令和5年10月~12月分売上高(税抜金額)
上記①の期間は免税事業者であるために、売上高は税込金額で集計します。
上記②の期間は課税事業者であるために、売上高は税抜金額で集計します。
令和7年度の申告時に、2割特例が適用可能か令和5年度の申告書を確認すると上記②の課税売上高しか記載されていません。申告書のみで判定すると適用誤りが発生する可能性があります。このような誤りが発生しないように、令和5年度の課税売上高については令和5年度の確定申告時に集計しておくようにしましょう。
2割特例が適用できないパターン
以下のいずれかに該当する場合には2割特例を適用できません。
① 基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税期間
② 特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
③ 相続・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
④ 新設法人・特定新規設立法人の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
⑤ 「課税選択届出書」を選択して課税所業者となった後2年以内に本則課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合において、「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出ができないことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
⑥ 新設法人及び特定新規設立法人の特例の適用を受けた課税期間中に、本則課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行ったことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
⑦ 本則課税で高額特定資産の仕入れ等を行った場合において事業者免税点制度の適用が制限される課税期間
⑧ 課税期間の特例の適用を受ける課税期間
教材動画の方では、前半部分でインボイス関係の良く受ける質問を解説し、後半部分では2割特例の適用誤りがないように注意点を解説しています。
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