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紹介が増える 保険代理店・保険会社との関係構築法

弁護士として案件をもっと増やしていきたいと思う先生は多いことでしょう。本記事では保険代理店・保険会社との関係性構築を通して、案件紹介から契約を増やしていくノウハウを西村先生に解説していただきました。

保険代理店・保険会社との関係構築の意義

保険代理店は、自身もたくさんのお客様を抱えています。交通事故に対応するための保険を中心に取り扱っている代理店との関係構築ができれば、交通事故が発生した場合にご紹介をいただけることが見込まれます。
代理店は、保険会社のサービスセンターの職員とも密接にやり取りしていることが多いです。こちら側からは誘いにくいサービスセンターの方との食事会などを企画してくれる、貴重な存在の代理店もいます。

代理店は、さまざまな保険を扱っており、顧問先開拓においてハブになる存在と出会うことができれば、一気に市場が広がる可能性があります。

例えば、
死亡保険・・・相続に密接に関係
施設賠償責任保険・・・医療事故、介護事故などに密接に関係
瑕疵保険・・・請負関係紛争等に密接に関係
労災上乗せ保険・・・労災に密接に関係
ハラスメント保険・・・人事労務に密接に関係
など、といったところです。

保険会社、特に示談代行の担当者、弁特社の担当者などとは、交通事故事件において頻回に連絡を取りあうことになると思われます。
そうしたやりとりのなかで「この弁護士は頼りになる」と感じていただければ、次なる案件の紹介も見込めるようになりますし(もちろん、いい加減な処理はしませんが)、別の事件でもある程度の信頼関係ができた状態で、柔軟な対応ができるようになります。

地方の可能性

「保険会社には、だいたい顧問の事務所があるからなあ…」と諦めるのはまだ早いです。
私の経験でも「顧問の弁護士はいるけど、遠くて相談しにくい。近くの先生に相談・依頼したい」という保険会社の担当者は結構いるものです。

そういう意味で地方の実情を踏まえれば、地方ではまだまだ交通事故に積極的に取り組んでいくことで、積極的にお客様のお役に立てる余地が残っていると思います。
ぜひ、その一歩として保険代理店・保険会社との関係性構築に取り組んでみていただきたいと思います。

関係性構築のポイント

関係性構築のポイントとしては、主に以下の5つです。

  1. 人となりを知ってもらう
  2. 事務所のストーリーを語る
  3. 本音で話す
  4. 小道具(話のネタ)を使う
  5. 自分からお客さんになる

 

1.人となりを知ってもらう

弁護士としての「ウデ」はもちろん重要です。それは前提として、特に地方においては「何でこの地域に来たのか」「どんな先生なんだろう」といった点にフォーカスして興味を持っていただけることが多いです。ほぼ必ず「出身はこちらですか」と聞かれますが、私からも地方に赴任した想い(骨をうずめる覚悟)や、この地に弁護士がいることの存在意義などをお話しています。

一方で、想いは行動で示すものです。「目の前のこの人のために」と最善を尽くして関わっていきます。特に「聴く」姿勢は重要だと思います。弁護士が話す前にまず聴く。弁護士が話すのは、ここで働く想いに絡めた「あなたのためにどうお役に立てるのか」です。

日々のアクションの1つ1つ、例えば以下のようなことに気を付けています。

  • クイックレスポンス
  • 約束があるときは当日の朝イチで「よろしくお願いいします」とLINEをする
  • 何かあるたびにお礼状を出す
  • 書籍出版の際にはお客様や見込み客にプレゼントをする
  • プライベートも交えたSNSの発信
  • 比較的個人的なことも多く書いているニュースレターを送付する
  • セミナーのご案内を出す

など、こうした1つ1つの積み重ねから私の「お客様のために」「地域のために」という想いと人となりが伝わり、信頼関係の構築につながっていったように思います。

2.事務所のストーリーを語る

今たくさんの良い事務所が存在し、お客様にもたくさんの選択肢があります。
そんな中、自所を選んでもらおうと思ったら「ここはこんな事務所です」「私はこんな人間です」「こういう想いで事務所を運営しており、皆さまのためにこのようにお役に立ちたいのです」といったメッセージを、明確に伝えていく必要があるのではないかと感じます。

これは「ストーリー」で構成して語るというのがおすすめです。人間は単発の情報をたくさん得ても、なかなか理解したり覚えたり共感を持ったりすることができにくいと言われています。これに対しストーリー、つまり物語であれば、すっと頭に入ってきやすく、しかも覚えておいていただきやすいようです。こちらが話していることに共感していただきやすいようにも思いますし、そうすればお客様がファン化して、お客様自身が紹介を生んでくれることもあります。

ただ、あまり長い話は逆に集中力をそいでしまいますし、塩梅が難しいです。私なりに試行錯誤して、当初は事務所案内パンフレットなどをお配りしていましたが、あまり読んでいただけているような感触も得られず、どうしようか悩んでいました。

そんな中、あるセミナーで講師が利用していた「蛇腹式の名刺」がすごく新鮮で、「モノは試しだ、やってみよう!」と取り組んでみたところ、これが大ヒット。名刺をお渡しして、相談開始時にもネタになりやすいですし、弁護士が委任契約書作成などでいったん執務スペースに戻っている間など、ちょっとした空き時間に眺めていただくことも多いようです。

所属団体(ロータリークラブ、商工会議所青年部などの外部団体)に反応して「あの人知っていますか?」という話が出てくることもしばしばです。下手なパンフレットを配るよりも、よほど目を通していただきやすいアイテムになりました。
私が作成したものは比較的文字が多いものですが、結構みなさま隅々まで読んでくださいます。事務所のストーリー、この地で活動するにあたっての想いなどを広めるために、非常に有益な媒体になっているのではないかと感じています。

3.本音で話す

私はいま上述の「想い」をそのままお話しているので、裏表がありません。当初独立したての頃は、仕事が欲しくて焦っていた時期もありました。その頃は内心「仕事を紹介してほしい」「単価の高い事件を」「これだけ時間も使っているのだから」ということを、すごく期待してやり取りしていたように思います。しかし、やはり内心に思っていることが伝わってしまうのでしょう。その頃は、あまり関係性構築がうまくいっていなかったようにも思います。

しかし、がむしゃらに目の前の仕事に取り組む中で、次第にそういう打算的な考えが後退し「目の前のお客様のために」「地域のために」ということを強くお話しするようになってから、関係性構築が上手くいくようになった気がします。
真にお客様のこと、地域のこと、目の前の方のことを考えながらお話すれば、自然とその想いは伝わるし、伝染していくものでもあると思います。そんな正のエネルギーを発信できる存在になりたいと思いながらお話をしています。

私が飛躍するきっかけになった「保険代理店・保険会社向け勉強会(研鑽会)」でも、本音で普段思っていることをぶつけるような内容にしました。「こんな代理店は嫌だ!」みたいな刺激的な内容もお話していますが、思いのほかこれがまた好評を得ました。もちろん、保険代理店の愚痴に終始するのではなく「こういう代理店については、弁護士側はこう見ているので、このようにしてもらったらありがたいし、良い関係が築けると思う」という内容で対応することで、よりお互いの理解と関係性が深まったのではないかと思います。

小道具(話のネタ)を使う

私の相談室には、意図的に法律書的なものはほぼ置いておりません。代わりにお客様との話のネタになりそうな、またはできそうな小道具をたくさん配置しております。
映画(BD/DVD)、漫画、模型、ミニカー、ストリートビュー、ロードメジャー、整形外科マップ、交通事故パンフレット、後遺障害診断書・自賠責認定結果集(ファイル)などです。
人によって反応するモノは違うでしょうが、結構事務所の特定の配置物から話が広がっていくことも多く、蛇腹式名刺と並んで関係性構築に有益な取り組みかと思っています。
保険代理店が相談者に同席することも多いですが、小道具に感心する人も多く、そこから関係性構築につながっていくこともあります。

自分からお客さんになる

関係性構築の手っ取り早い方法としては「自分が自らお客さんになる」というやり方です。
例えば、

  • ディーラーや保険代理店にお願いして、自賠責保険・任意保険に加入させていただく
  • ライフプランを作成していただき、そのなかで必要と思われる医療保険・三大疾病保険・介護保険・就労不能保険・死亡保険等にに加入させていただく
  • 資産形成を考えるのであれば、インターネット経由ではなく代理店を介して検討する

事業経営をしていれば、自らお客さんになって関係性を構築することは容易ではないかと思います。ただし、ここで「俺は客なんだから」と横柄な態度をとるのはNGです。関係性構築の基本は、上述した「人となり」を知っていただくことです。
この人は人によって態度を変える人だと認識されてしまえば、逆に関係性構築は遠のいてしまうでしょう。何かをしてもらったら感謝の言葉を伝える、お礼状・お中元・お歳暮などを上手に利用するなど、お互いにWin-Winの関係を目指して、良い関係性をつくりたいものです。

保険会社との関係性構築の目線

保険会社の、特に示談代行担当者は、相手方となれば対立する関係になります。
しかし私は、少なくとも交渉段階においては「被害者をどのように救済するかを一緒に考えていく」という観点から、同じ方向を向いているものと考えています。私は担当者が決裁権者(上司)に話をしやすいように書面を整えたり、訴訟とそん色ない程度に証拠を揃えたりといった努力をしています。

交渉段階では、とにかく大きく請求して少しでも高くというようなスタンスというよりは、弁護士なりのこのラインであれば妥当と考えるラインを見極め、これに近いような提案を心がけています。その上で、依頼者の意向を尊重して方針を決めています。
和解の見込みがなさそうな事案でも、基本的には1度示談提案し、これがダメであればすみやかな提訴を心がけています。

事件外のやり取りも含めて、このような方針は割とオープンにしています。必要な事案では躊躇なく訴訟提起もしており、技巧的な駆け引きに走ることは少ないです。担当者も私の考えをある程度理解していることが多く、依頼者も最初に説明をしているので、後に方向性が大きく変わってくることは少ないです。
できるだけ早く、金額を高く、それでいて妥当な解決を目指すものの、相手方や依頼者と対立的にやり取りをすることはなく、テクニックに走らずに適切だと思う考えを正面からぶつけて決裁をとってもらうことを意識してやっています。

この点、保険会社との関係性、事件の進め方については、色々と考えが分かれるところだと思います。もちろん個別事件によっても違うでしょう。
だからこそ、実際に現場で頻回にやり取りをする保険会社(担当者)と、ときには事件処理を離れて自由闊達な議論ができる場があれば、関係性が深まるのではないでしょうか。

関係性構築の波及的な効果

冒頭に述べたとおり、保険代理店はバックに多数のお客様を抱えていますので、関係性構築がそのまま顧問先開拓につながっていく可能性もあります。
しかし、私は単発のビジネスの関係を超えて人間的なお付き合いができ、お互いがお互いの力を借りて、個人では成し得ないことを成し遂げることができるようになる関係性をつくれることが理想的だと思っています。そのような関係性が築ければ、意図していなくとも結果的に自然と顧問先開拓が出来ていくのではないかと思います。

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