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【弁護士向け】建設アスベスト給付金とは?対象者や認定基準、申請フロー

顧客が「建設アスベスト給付金を申請したい」という場合、弁護士としてどのようなフローを踏んでいけば良いのでしょうか。申請代理業務について、弁護士としての実務や注意点を詳しく解説します。

建設アスベスト給付金とは

建設アスベスト給付金とは、『建設アスベスト被害救済法(正式名称:特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律。以下「法」といいます。)』によって創設された、建設アスベスト被害者に対する給付金です。
同法の特徴やポイントは、次のとおりです。

  • 最判令3.5.17民集75.5.1359が元になっている。
  • アスベスト関連疾患を発症した建設アスベスト被害者に対し、上記判決と同様の水準で肉体的・精神的苦痛に対する慰謝料に相当する給付金を、厚労省が給付する制度。
  • 病態区分や存命・死亡の別ごとに550万円~1300万円の給付金。ただし、一定事由による減額有り。
  • 石綿ばく露作業の対象期間や対象作業の限定がある。ザックリ言えば、1972年10月1日~2004年9月30日に建設業務で石綿ばく露作業に従事した労働者・一人親方・中小事業主(詳細は、後述)。

建設アスベスト給付金の対象疾患

建設アスベスト給付金が支給されるには、法2条2項所定の「石綿(アスベスト)関連疾病」に罹っていることが必要です。同項所定の「石綿関連疾病」とは、
(1)中皮腫
(2)原発性肺がん
(3)石綿肺
(4)びまん性胸膜肥厚
(5)良性石綿胸水
です。以下では、それぞれの疾病について、簡単に解説いたします。

(1)中皮腫

中皮腫とは、医学用語的には「肺、心臓、消化管などの臓器の表面と体壁の内側を覆う漿膜の表面にある中皮細胞に由来する悪性腫瘍」(独立行政法人労働者健康安全機構『アスベスト関連疾患日常診療ガイド[改訂第3版]』21頁(労働調査会、2018年)」です。

もう少し噛み砕いて理解するためには、「胸膜」「腹膜」「心膜」を理解して頂く必要があります。つまり、ヒトの臓器は、薄い膜(漿膜)に覆われています。例えば、肺を覆う膜を「胸膜」、肝臓・胃・腸などを覆う膜を「腹膜」、心臓を覆う膜を「心膜」といいます。そして、中皮腫は、これら「胸膜」「腹膜」「心膜」などにできるガンです。中皮腫は、希少ガンであり、胸膜中皮腫が90%弱を占め、腹膜中皮腫が10%程度、心膜中皮腫や精巣鞘膜中皮腫が1%程度の割合とされています。

アスベスト給付金との関連で重要なことは、中皮腫は、アスベスト起因性が非常に高く、「そのほとんどが石綿に起因するものと考えられる」とされていることです。そのため、病理組織診断などを経て、中皮腫の確定診断がされていれば、給付金の審査において「アスベスト起因性」が問題になることはほとんどありません。

(2)原発性肺がん

肺がん自体は皆さんご存知でしょう。注意点としては「原発性」でして、反対用語は「転移性(続発性)」です。つまり、他臓器から肺に転移して肺がんになったものは、給付金の対象にはなりません。
アスベスト給付金との関連で重要なことは、「肺がんは、アスベスト以外の様々な要因で発症する」ということです。つまり、肺がんは、「アスベスト起因性」が類型的に問題になる疾病ということであり、そこが中皮腫と対照的な点です。そのため、肺がんの場合には、「アスベスト起因性」を立証するための身体所見があるかどうか重要になります。

身体所見には様々ありますが、「胸部CT画像による胸膜プラーク所見」が特に重要です。胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)は、それだけでは健康被害は生じない良性のものとされていますが、アスベストばく露以外では生じ難いため、「アスベスト起因性」を示す重要な身体所見として捉えられており、認定基準にも用いられています。

出典:
厚生労働省『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について』
厚生労働省『石綿による疾病の労災認定』
環境省『石綿健康被害判定小委員会「医学的判定に関する留意事項』

(3)石綿肺

石綿肺は、びまん性間質性肺炎の一種です。通常の肺炎は肺胞内部が炎症を起こしますが、間質性肺炎では肺胞同士を隔てて固定している壁のような組織(間質)が炎症を起こしています。「びまん性」とは、「限局性」の反対概念であり、「(悪いものが)全体に広くはびこっている」ということです。間質が炎症を繰り返すことにより、肺が線維化(柔軟性の消失)・瘢痕化して、呼吸機能障害を引き起こします。
石綿肺は、塵肺(じん肺)の一種でもあり、高濃度の石綿ばく露を比較的長期間(通常は10年以上)吸入しないと発症しないとされています。

アスベスト給付金との関連では、石綿肺は単に「(びまん性)間質性肺炎」と診断されていたり、「特発性(原因不明の)間質性肺炎」と診断されていたりすることがしばしばあります。
石綿肺と特発性間質性肺炎との鑑別は、医学的に非常に難しいのですが、診断書を作ってもらう際には、

また、石綿肺には軽重があり、主に胸部X線画像の所見によってじん肺管理1・2・3・4に区分されます。管理2以上が「胸部X線上じん肺所見有り」の区分であり、管理4は最も重いじん肺の程度です。建設アスベスト給付金においては、管理2以上が支給対象であり、管理区分が給付金の額にも影響します。

(4)びまん性胸膜肥厚

びまん性胸膜肥厚は、上記で解説した用語を当てはめていけばある程度予想が付きますね。つまり、「肺を覆う膜」(胸膜)が「分厚くなってしまった状態」(肥厚)が「全体にひろくはびこってしまった」(びまん性)疾病です。
病態としては、慢性胸膜炎です。胸膜の炎症を繰り返すことにより、肥厚が進み、臓側胸膜と壁側胸膜が癒着して、呼吸機能障害を引き起こします。カルテなどにはしばしば「慢性胸膜炎」とか、「胸膜の炎症」などと記載されていることがあります。

アスベスト給付金との関連で重要なことは、単なる「びまん性胸膜肥厚」では、支給対象にはならず、「著しい呼吸機能障害」を伴っていることが必要なことです。「著しい呼吸機能障害」については、特に「%VCが60%未満」という指標が重要です。%VC(パーセント肺活量)とは、年齢や身長などから予想される平均的な肺活量(100%)に対し相対的にどの程度なのかを表す数値です。「%VCが60%未満」とは、平均より4割も下回る数値ということになります。

詳しくは、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について」の21頁を参照してください。

【参考】厚生労働省『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について』

(5)良性石綿胸水

胸水は、中皮腫や肺がんなどでも生ずることがあります。中皮腫や肺がんに基づく胸水は、悪性腫瘍によるものですので、いわば「悪性石綿胸水」です。良性石綿胸水は、「悪性(がん)ではない」ことに過ぎず、症状や予後が良好であることは意味しません。
石綿胸水が生ずる原因としては、胸膜炎であり、これを繰り返すことにより、慢性胸膜炎=びまん性胸膜肥厚に発展してしまうことがあります。

建設アスベスト給付金の対象被害者

建設アスベスト給付金の対象となる被害者は、法の規定に従って説明しますと、Ⅰ「特定石綿ばく露建設業務」(法2条1項)に従事することにより、Ⅱ「石綿関連疾病」(法2条2項)に罹患した、Ⅲ「特定石綿建設業務労働者等」(法2条3項)をいいます。

上記Ⅱ「石綿関連疾病の要件」は、前章の解説および後述している「建設アスベスト給付金の認定基準」を参照して頂ければと思います。
ここでは、上記Ⅰ「従事した業種・作業」とⅢ「対象作業に従事した被害者の属性」の要件に焦点を当てて解説いたします。

Ⅰ:特定石綿ばく露建設業務(従事した業種・作業)の要件

法2条1項所定の要件のことです。この要件は、(1)従事した業種、(2)従事した作業の要件に分けることができます。

(1)従事した業種(法2条1項柱書)
まず「日本国内において行われた石綿にさらされる建設業務」に従事していた必要があります。「建設業務」は、法2条1項柱書括弧書で「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業若しくはこれらの作業の準備の作業に係る業務又はこれに付随する業務をいう」と定義されています。「建設アスベスト被害救済法」の名のとおり、土木業、建築業に従事した被害者が救済対象であることは明らかですが、それ以外にも、上記下線部に該当する限りでは、救済対象になり得ます。まだスタートしたばかりの制度なので、限界は未だ明らかではありませんが、「工作物」がどの程度のものまで解釈されるかが今後注目すべきところといえるでしょう。

(2)従事した作業(法2条1項各号)
法2条1項柱書に定める業務のうち、以下の①②どちらかの作業に従事していたことが必要です。

①石綿吹付作業
1972年(昭和47年)10月1日~1975年(昭和50年)9月30日の間に、石綿吹付作業に従事した者

石綿吹付作業のイメージは、厚労省HP「石綿にさらされる作業に従事していたことはありますか?」の「石綿や石綿含有岩綿等の吹きつけ・張りつけ等作業」の図を見るとよいでしょう。

【参考】厚生労働省『石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ』

②屋内石綿ばく露作業
1975年(昭和50年)10月1日~2004年(平成16年)9月30日の期間に、屋内作業場(屋根があって、かつ、側面の面積の半分以上が外壁などで囲まれているもの)で石綿ばく露作業に従事した者

これには、様々な作業が該当し得ますが、具体的なイメージとして、厚労省HP「石綿にさらされる作業に従事していたことはありますか?」(「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ)の諸作業例を見るとよいでしょう。また、第1回特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会資料4「特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会における審査方針」によりますと、次のような職種については「屋内作業に従事していたと判断できるものとする。」とされています。

屋内作業に従事していたと判断できる職種

大工(墨出し、型枠を含む。)、左官、鉄骨工(建築鉄工)、溶接工、ブロック工、軽天工、タイル工、内装工、塗装工、吹付工、はつり、解体工、配管設備工、ダクト工、空調設備工、空調設備撤去工、電工・電気保安工、保温工、エレベーター設置工、自動ドア工、畳工、ガラス工、サッシ工、建具工、清掃・ハウスクリーニング、現場監督、機械工、防災設備工、築炉工

出典:厚生労働省『第1回 特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会』

Ⅲ:特定石綿建設業務労働者等(被害者の属性)の要件

労災保険が労働者(+特別加入者)のみを救済対象としていたことの反省及び建設アスベスト被害救済法の元となった最判令3.5.17民集75.5.1359が一人親方なども救済対象に含めたことから、法は、救済対象を労働者のみではなく、一人親方などにも広範に認めました。

現実的には、上記業種・作業の要件を満たす方は、法2条3項の要件も満たすことが多いと思いますが、念のため、この要件も押さえておきましょう。

①労基法上の労働者(同居親族のみを使用する事業者に使用される者及び家事使用人は除く。)
②一定の数以下(※)の労働者を使用する事業主or同様の法人の代表者(=中小事業主)
※中小事業主の範囲を画することとなる労働者の数は、被害者が特定石綿ばく露建設業務に従事していた際に施行されていた労働者災害補償保険法施行規則46条の16によって異なります。詳しくは、基発0119第1号令和4年1月19日「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について」表1を参照
③労働者以外で上記②の事業に従事する者
④労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする者(=一人親方)
⑤労働者以外で上記④の事業に従事する者

建設アスベスト給付金の給付金額

建設アスベスト給付金は、病態や存命/死亡の別ごとに、次のように給付額が異なります(法4条1項)。

病態ごとの給付額

病態 給付額
①石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症(※)無し 550万円
②石綿肺管理2でじん肺法所定の合併症有り 700万円
③石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症無し 800万円
④石綿肺管理3でじん肺法所定の合併症有り 950万円
⑤中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4、良性石綿胸水である者 1150万円
⑥上記①③により死亡した者 1200万円
⑦上記②④⑤により死亡した者 1300万円

※じん肺法所定の合併症とは、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸(法4条1項1項1号ロ括弧書、法施行規則3条、じん肺法施行規則1条1~5号)をいいます。

給付金の減額事由

(1)一定の従事期間未満による減額
特定石綿ばく露建設業務に従事した期間が、次の表に定められた期間未満の場合には、上記【病態ごとの給付額】で定める金額の1割減額(90%を乗じた金額)されます(法4条2項)。

対象疾病 特定石綿ばく露建設業務に従事した期間
肺がん又は石綿肺 10年
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚 3年
中皮腫又は良性石綿胸水 1年

これはなぜかというと、石綿関連疾患は、石綿ばく露期間が長ければ長いほど発症する可能性が高くなるとされているため、一定期間未満の従事しかない場合には、「アスベストによる発症の寄与度が低い」ということで、減額事由にされているのです。

(2)喫煙習慣による減額
肺がんによる建設アスベスト被害者が喫煙の習慣を有していた場合には、上記【病態ごとの給付額】⑤又は⑦の金額の1割減額(90%を乗じた金額)されます(法4条3項)。
これはなぜかというと、一般に喫煙は肺がんの発症要因として有力なものとされているため、喫煙習慣がある場合には、「アスベストによる発症の寄与度が相対的に低い」又は「喫煙によって発症の可能性を高めた」ということで、減額事由にされているのです。
また、上記⑴の一定の従事期間未満による減額事由と重複することもあり(法4条3項第2括弧書)、例えば、肺がんで死亡した建設アスベスト被害者の「特定石綿ばく露建設業務の従事期間が10年未満」及び「喫煙の習慣を有していた」という場合、
1,300万円×(一定の従事機関未満による減額割合90%)×(喫煙習慣による減額割合90%)=1,053万円の給付金となります。

建設アスベスト給付金の認定基準

建設アスベスト給付金の対象疾病に関する認定基準は、基本的にはアスベストによる労災保険と同様の基準です。労災保険との比較で重要な点は、「支給対象となる石綿肺が拡張されている」という点です。

労災保険

①じん肺管理区分管理4の石綿肺
②じん肺管理区分管理2・3・4の石綿肺+指定疾病(肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支炎拡張症、続発性気胸)が合併した場合に、認定されます。

建設アスベスト給付金制度

「じん肺管理区分管理2以上の石綿肺」というだけで支給対象になります(管理2・3でも指定疾病の合併は不要)。指定疾病を合併しているか否かや管理区分の高低は、給付金の額を高低する事由として整理されたのです(法4条1項)。
詳細は以下のサイトも参考にご覧ください。

厚生労働省『特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について』
厚生労働省『石綿による疾病の労災認定』
厚生労働省『石綿による疾病の認定基準について』

建設アスベスト給付金の申請フロー

さて、実際に建設アスベスト被害者から建設アスベスト給付金の申請代理を受任したとして、どのように申請までこぎ着けるのでしょうか。以下では、申請までのフローを見てみましょう。

1. 医療記録の収集

建設アスベスト給付金の請求においては、「どの対象疾病にかかったのか」を特定しなければなりません(法施行規則5条1項4号)。「被害者又は被害者遺族であれば罹っている疾病を分かるのでは?」と疑問に思われるかもしれません。しかし、診断された疾病をきちんと説明できる被害者はむしろ少数であるばかりでなく、そもそも主治医が確定診断をなさずに疾病名が曖昧なまま治療がなされていることはしばしばあることです。

特に、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水では、その傾向が顕著であり、「間質性肺炎」「胸膜炎」「じん肺」「肺気腫」などと記載された医療記録の裏側には、これらの対象疾病が隠れていることがあるので、要注意です。
いずれにしても、「どの対象疾病にかかったのか」「どの対象疾病に関する診断書を作成してもらうのか」を特定するため、また、いずれの対象疾病にも共通して胸部のX線画像・CT画像の提出が求められているため、以下の情報を病院へ開示申請しましょう。

  • 対象期間:呼吸器系診療科に入通院し始めた以降、全期間
  • 医療記録:画像、診療録(カルテ)、看護記録、リハビリテーション記録、各種検査結果等(検査記録用紙も含む)、他医へ又は他医からの紹介状・診療情報提供書
    などの工夫が必要です。

2. 提出の必要な医学的資料の作成依頼

医療記録の収集によって請求すべき対象疾病が判明したら、対象疾病ごとに診断(意見)書の様式(建設アスベスト給付金請求書等の様式集≪通常請求用≫○共-様式1~5)が用意されていますので、適切な様式を選んで、主治医に作成を依頼しましょう。

参考:厚生労働省『建設アスベスト給付金 請求書等の様式集』

主治医への依頼の際、制度や書式は異なりますが、石綿健康被害救済制度に関する「医師、医療機関等の皆様へ石綿健康被害者の救済へのご協力のお願い」(独立行政法人環境再生保全機構(ERCA))の診断書記載例が参考になりますので、参考資料として同書を同封すると、主治医も作成しやすいと思われます。

参考:独立行政法人 環境再生保全機構(ERCA)『石綿健康被害者の救済へのご協力のお願い(中皮腫・肺がん編)』

3. 勤務歴の把握

次に、就業歴等申告書を作成するという観点から、被害者の勤務歴を把握する必要があります。被害者や被害者家族の記憶は非常に曖昧ですので、まずは年金の「被保険者記録照会回答票」を取り寄せましょう。
「被保険者記録照会回答票」の入手方法については、以下もご参照ください。

参考:シーライト藤沢法律事務所『厚生年金加入記録を用いた確認』

「被保険者記録照会回答票」には、「労働者又は法人役員であった際に」「厚生年金を払っていた期間」は記載がありますが、それ以外の部分は、記載がなかったり、「国民年金」になっていたりします。その期間に関しては、「被害者本人又は家族に聴く」しか基本的には、勤務歴や石綿ばく露作業歴は分かりませんので、「被保険者記録照会回答票」をたたき台にして、丁寧に聴き取るしかありません。また、「被保険者記録照会回答票」以外にも、以下のような資料により、勤務歴や石綿ばく露業務が判明したりするので、依頼者に資料収集をお願いしましょう。

  • 雇用保険加入記録
  • 法人登記簿謄本
  • 契約書・注文書・発注書・領収書等
  • 確定申告書・開廃業届
  • 業務に関わる免許・資格証・表彰状・教育修了証
  • 作業日報・作業指示書・作業報告書等
  • 工事経歴書
  • 施工した現場の設計図書
  • 被災者の勤務状況を示す日誌等
  • 被災者の作業状況を示す写真等

4. 就業歴等申告書の作成

就業歴等申告書(建設アスベスト給付金請求書等の様式集≪通常請求用≫○通-様式3の「石綿ばく露作業従事期間」のある就業歴に関しては、全て就業歴等申告書(○通-様式3別紙)に従って「石綿ばく露作業の職種・種類・頻度」「石綿ばく露の状況(作業の具体的内容・取扱建材等)」を記載し、その内容につき、(元)事業主や(元)同僚などから証明を受ける必要があります。

○通-様式3別紙は、「建設アスベスト給付金請求の手引き②≪労災支給決定等情報提供サービスをご利用でない方へ≫」に記載例があるので、それを参考にするとよいでしょう。

参考:厚生労働省『建設アスベスト給付金 請求の手引き②』

5. 厚労省への申請書提出

以上が準備できたら、概ねの申請書類は揃いますので、住民票や戸籍謄本(遺族の場合)など形式的な書類を集めて、厚生労働省へ申請しましょう。必要な申請書類の一覧は、前述した『建設アスベスト給付金 請求の手引き②』に記載があります。

注意点は、以下の通りです。

  • 厚生労働省労働基準局労災管理課建設アスベスト給付金担当が、集中的に請求窓口を取り扱っていること(労基署や労働局は、請求窓口ではない)
  • レターパックなどの配達状況等が確認できる方法で郵送すべきこと(郵送以外の受付はしていない)
  • 申請後も申請書類について確認がなされたり、追加書類の提出が求められたりするため、申請書類一式をコピーしておくべきことです。

6.建設アスベスト給付金への特急券~労災支給決定等情報提供サービス利用による申請~

以上の申請フローは、アスベスト労災保険やアスベスト特別遺族給付金の認定を受けていない、いわゆる「通常請求」による申請です。アスベスト労災保険やアスベスト特別遺族給付金の認定を受けていた場合には、建設アスベスト給付金の認定に必要な大部分の審査を労基署が済ませているため、これらの情報を得ることにより、建設アスベスト給付金申請の必要書類を大幅に省略でき、審査手続きも簡略・迅速なコースに乗るという恩恵を受けることができます。

アスベスト労災保険やアスベスト特別遺族給付金の認定を既に受けていた被害者の場合には、この「労災支給決定等情報提供サービス利用者用の請求」を行った方が良いでしょう。

労災支給決定等情報サービス申請の手引
労災支給決定等情報サービス利用者用の建設アスベスト給付金の手引

おわりに

建設アスベスト給付金申請は、行政による「簡易迅速な給付金制度」などと謳われていますが、実態は、申請に当たって求められる書類は専門性が高く、申請書類に記載すべき内容も細かいため、専門知識無くしては、到底「簡易・迅速・適切な支給」は望めません。ましてや一般の方では、そもそも「医療画像を集めて提出せよ」というところから途方に暮れてしまうのではないでしょうか。

建設アスベスト給付金申請は、弁護士が交通事故・労災・医療過誤の分野で培った医学的な専門知識や医療記録のノウハウなどを発揮できる分野です。中皮腫などのアスベスト関連疾患は、まだまだ増加していくことが見込まれていますので、専門家として知識を入れた上で、適切かつ迅速な被害者救済を実現することを目指しましょう。

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