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ミスは許されない!地積規模の大きな宅地の評価を徹底解説
「地積規模の大きな宅地」の評価について税制が改正されたため、土地評価をより一層厳しく実施しなければならなくなりました。この記事では、改正に関する不安が解消されるように、改正の概要や具体的な計算例、該当しない要件などについて解説していきます。
地積規模の大きな宅地の評価とは
平成30年1月1日以降に取得した宅地は、「広大地評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」へと税制が改正されました。
改正の背景
このような改正が実施されることになった理由は、これまで使用されてきた広大地評価に問題点があったためです。
広大地評価では、その土地の形状にかかわらず、面積の大きさによって金額が決定する仕組みでした。これに加えて、広大地に該当するかどうかを決める適用条件は、周辺の利用状況を確認する必要もありました。非常に煩雑で定性的な評価方法であり、多くの批判が集まっていたのが実情です。これでは実務上の取り扱いが難しいと判断されたため、改正されることになりました。
広大地との違い
広大地と地籍規模の大きな宅地の違いは次の2点です。
まず、従来の広大地の評価に係る広大地補正率は、土地の個別的要因に係る補正がすべて考慮されたものとなっているため、個別の土地の形状等とは関係なく面積に応じて比例的に減額する評価方法でした。
一方、地積規模の大きな宅地の評価における規模格差補正率は、主に地積に依拠する次の①から③のみの減価が反映されるもので、土地の形状、道路等の位置関係等に基づく個別的要因に係る補正は、評価通達15⦅奥行価格補正⦆から20⦅不整形地の評価⦆まで及び20-3⦅無道路地の評価⦆から20-7⦅容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価⦆を適用することとされたものです。
➀戸建住宅用地としての分割分譲に伴う潰れ地(公共施設建築の際に残った土地のこと)の負担
➁戸建住宅用地としての分割分譲に伴う工事・整備費用等による負担
③開発分譲業者による事業収益・リスク等の負担
2点目は、従来の広大地評価の適用要件は、次の①から③のとおり「定性的(相対的)」であったところ、地積規模の大きな宅地の評価の適用要件は、後述するように、地区区分や都市計画法の区域区分等を基にすることにより「定量的(絶対的)」なものとされ、明確化が図られました。
広大地の評価の適用要件
①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること
②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地(道路、公園等)の負担が必要(潰れ地が生じる)と認められるものであること
③大規模工場用地に該当するものでないこと及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるもの)ではないこと
地積規模の大きな宅地の評価方法
「地積規模の大きな宅地」を評価する際は、いったいどのようなプロセスを経て実施しなければならないのでしょうか。評価方法は「路線価地域」か「倍率地域」かという、所在地域によって異なります。
路線価地域に所在する場合
路線価地域に所在する場合は、以下の計算式で評価額を出します。
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(m²)
この評価対象に入るためには、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在している必要があります。地区区分は、路線価図を確認して把握しましょう。
倍率地域に所在する場合
倍率地域に所在する場合は、下記2つの場合において、価額の低い方で評価します。
➀「宅地の固定資産税評価額 × 倍率」によって算出した価額
➁その宅地が標準的な間口距離および奥行距離を有する宅地であるとした場合の1m²あたりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率、規模格差補正率をかけ、その値に対象宅地の地積を乗じて算出した価額
倍率地域に所在する宅地であっても、要件を満たせば地籍規模の大きな宅地の対象になります。
規模格差補正率とは
これまで使われてきた広大地評価の問題点を改善するために導入された規模格差補正率とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。実際に使用される計算式は、以下のとおりです。
規模格差補正率=〔{(A)×(B)+(C)}÷ 地積規模の大きな宅地の地積(A)〕× 0.8
(A)…地積規模の大きな宅地の地積
(B)…以下の数値を使用する
(C)…以下の数値を使用する
(B)及び(C)の数値は、宅地の所在地が三大都市圏(※)に含まれているかどうかによって変わってきます。以下を参考にして、該当する宅地の数値を把握しておきましょう。
三大都市圏に所在する宅地
500m²以上~1,000m²未満:(B)0.95 /(C)25
1,000m²以上~3,000m²未満:(B)0.90 /(C)75
3,000m²以上~5,000m²未満:(B)0.85 /(C)225
5,000m²以上:(B)0.80 /(C)475
三大都市圏以外の地域に所在する宅地
1,000m²以上~3,000m²未満:(B)0.90 /(C)100
3,000m²以上~5,000m²未満:(B)0.85 /(C)250
5,000m²以上:(B)0.80 /(C)500
※三大都市圏とは、首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・茨城県)、近畿圏(京都府・大阪府・兵庫県・奈良県)、中部圏(愛知県・三重県)における一部の地域を指します。市町村ごとに細かな区分が決められているため、詳しくは国税庁が公開しているデータを参考にしてください。
参照元:国税局・税務署「「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました」
地積規模の大きな宅地における評価の計算例
地積規模の大きな宅地に関する評価は、その宅地が三大都市圏に含まれるかどうかによって数値に違いが出ます。
三大都市圏
三大都市圏に含まれる場合は、規模格差補正率を算出する際に、三大都市圏に所在する宅地の数値を使用します。ここで例に出す宅地の詳細と計算例は、以下のとおりです。
- 普通住宅地区
- 宅地の地積…750m²(縦30m×横25m)
- 地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしている
➀規模格差補正率
{(750m²×0.95+25)÷750m²}×0.8 = 0.78
➁評価額
300,000円(路線価)×0.95(奥行価格補正率)×0.78(規模格差補正率)×750m² = 166,725,000円
出典:国税庁『地積規模の大きな宅地の評価-計算例①(一般的な宅地の場合)』
三大都市圏以外
三大都市圏に含まれない場合は、規模格差補正率を算出する際に、三大都市圏以外の地域に所在する宅地の数値を使用します。宅地の詳細および計算例は、以下のとおりです。
- 普通住宅地区
- 宅地の地積…3,000m²(縦60m×横50m)
- 固定資産税評価額…105,000,000円
- 近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1m²当たりの価額…50,000円
- 倍率…1.1倍
- 地積規模の大きな宅地の評価における要件は満たしている
➀標準的な1m²あたりの価額
50,000円×1.1倍=55,000円
➁規模格差補正率
{(3,000m²×0.85+250)÷3000m²}×0.8 = 0.74
➀、➁の計算から評価額を計算すると、
55,000円×0.86(普通住宅地区の奥行価格補正率)×0.74(規模格差補正率)×3,000m² = 105,006,000円
出典:国税庁『地積規模の大きな宅地の評価-計算例⑤(倍率地域に所在する宅地の場合)』
地積規模の大きな宅地に該当する要件
土地評価を行うには、地積規模の大きな宅地に該当するかどうかを見極めなければなりません。地積規模の大きな宅地に当てはまるのは、以下のような条件です。
地区区分要件
地積規模の大きな宅地に該当するためには、宅地が普通住宅地区あるいは普通商業・併用住宅地区に所在している必要があります。ビル街地区・高度商業地区・繁華街地区・中小工場地区・大工場地区に所在している場合は、地積規模の大きな宅地に該当しません。これらの地区区分は、➀土地利用の現況、➁都市計画の用途地域(※)、③画地規模等の要素から総合的に考えて決定されます。
※➁都市計画の用途地域は、明確に土地利用の役割を指定することで、都市環境の維持と機能向上をはかるために指定されます。
面積要件
三大都市圏に含まれる場合、地積規模の大きな宅地に該当するには、500m²以上の地積が必要です。三大都市圏以外の地域においては、1,000m²以上の地積を有していなければなりません。これまでの広大地評価では、規定となる面積基準をあいまいにする申告が続出していたため、このように明確な要件が指定されました。あいまいな基準を改正するのではなく、以前の項目を廃止したうえで新しい項目を設定したので、これまで利用されてきたあいまいな解釈そのものが排除されたということです。
地積規模の大きな宅地に該当しない要件
宅地の状態によっては、地積規模の大きな宅地に該当しないことも多々あります。具体的にどのような場合に、地積規模の大きな宅地だと認められないのでしょうか。
市街化調整区域に所在する宅地でないこと
市街化調整区域に所在している宅地は、地積規模の大きな宅地に該当しません。市街化調整区域とは、無計画に都市化を進めることがないように、宅地開発が制限されている地域のことです。このような地域では市街化を抑制しているので、原則として、住宅の建設などができません。しかし、市街化調整区域のなかには条例に基づいて開発できる区域も存在します。そういった区域は、例外として地積規模の大きな宅地として認められることもあります。
工業専用地域に所在する宅地でないこと
都市計画法上の用途地域である工業専用地域に所在していないことが、地積規模の大きな宅地だと認められる条件です。工業専用地域では、原則としてどのような種類の工場でも建設できますが、住宅をはじめとした工場以外の建築物は建てられません。なぜなら、工業専用地域は工業の促進を図るために指定された用途地域であるため、戸建住宅の分割分譲を想定することができないからです。
容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域に所在する宅地でないこと
指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域に所在していると、地積規模の大きな宅地だと認められません。指定容積率とは、宅地の敷地面積に対する建物の延べ面積の割合のことで、建築基準法第52条1項の規定により、用途地域ごとに、都市計画によって指定されるものです。指定された容積率を超えて建物を建築することはできません。指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の宅地は、一般的に高層建築物の建設のために使用されることが多いため、地積規模の大きな宅地から除かれます。
倍率地域に所在する評価通達22-2((大規模工場用地))に定める大規模工場用地でないこと
大規模工場用地と指定されている宅地は、地積規模の大きな宅地に入りません。大規模工場用地とは、工場・研究所・物流拠点などに使われている土地であり、工場用地の地積が50,000m²以上のものを指します。大規模工場用地は、住宅用地の分譲開発が実施される可能性が低く、そのため地積規模の大きな宅地に入らないとされています。
このように、地積規模の大きな宅地の評価は、細かな規定が数多く決められています。該当する宅地をしっかりと把握・分析しなければ、間違った判断を下してしまう可能性も高いでしょう。
もっと詳しい情報や注意点について興味がある場合は、動画で解説していますのでご覧ください。
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