レガシィクラウド ナレッジ
【税理士向け】暗号資産税制の実務と確定申告:2026年包囲網と2028年申告分離課税へのロードマップ
2026年1月、ビットコインをはじめとする暗号資産市場は、米トランプ政権の政策期待を背景に未曾有の熱狂の中にあります 。価格の乱高下に一喜一憂する投資家を横目に、我々実務家が今、冷静に直視すべきは市場の動向ではありません。「2026年1月1日」を境に、日本の暗号資産税制が完全に「全方位監視」のフェーズへ突入したという厳然たる事実です。
2026年度の税制改正案の成立、そしてその先にある2028年の「申告分離課税」導入に向けたロードマップが見え始めた今、実務の現場では「移行期の混乱」と「当局の圧倒的な捕捉能力」への対応が急務となっています。本稿では、動画『暗号資産の税務 確定申告の要所から2026年度税制改正まで』の導入として、今、専門家が絶対に外せない「実務の急所」を詳説します。
1. 2026年1月、国際的包囲網「CARF」が始動。もはや「情報の空白地帯」は存在しない
多くの納税者が抱く「海外取引所なら捕捉されない」「個人ウォレットなら匿名性が守られる」という幻想は、2026年1月1日をもって完全に打ち砕かれました。
すでに動き出している情報の自動収集
OECDが策定した国際的な報告枠組み「CARF(暗号資産等報告枠組み)」は、日本国内において2026年1月より施行されています。
・現在進行形の蓄積
2026年1月1日以降のすべての取引情報は、すでに当局への報告対象として収集・蓄積が始まっています。
・2027年の自動交換
収集された情報は2027年以降、世界各国の当局間で自動的にシェアされます。海外取引所の利用履歴、さらにはそこから派生する利益は、かつてない精度で日本の税務当局に把握されることになります。
「ブロックチェーンの透明性」という当局の武器
当局は取引所からの報告を待つまでもなく、独自の解析ツールを用いてブロックチェーン上の資金移動を追跡する能力を備えています。
「銀行口座からの入金履歴」という一点を起点に、そこから派生するウォレットアドレスを特定し、芋づる式に過去のすべての取引履歴を炙り出す――。この「デジタル上の足跡」を消すことは不可能です。
具体的には、パブリック・ブロックチェーン上のデータはすべて公開されており、当局は高度な解析ソフトを用いて、分散型取引所(DEX)を経由した資金移動でさえも、高い確率で「同一人物の管理下にあるウォレット」として紐付けることが可能です。
「隠せる時代」は2026年1月のカウントダウンとともに終了し、現在は「すべてが見られている」前提での実務が、専門家に突きつけられています。
2. 法人税務の深淵:「渡辺創太問題」の現在地と、仕掛けられた「罠」
法人の暗号資産税務は、個人の改正を待たずして、すでに多くのスタートアップや投資法人を苦しめる形となっています。
期末時価評価という殺人的な壁
原則として、法人は暗号資産を保有しているだけで、期末に「含み益」に対して課税されます 。売却して現金化していないにもかかわらず、巨額の納税義務が発生する。この「キャッシュフローの乖離」こそが、Web3事業者の海外流出を招いた「渡辺創太問題」の本質です 。
改正の救済措置と、そこに潜む「みなし譲渡」の恐怖
2023年度および2024年度の改正により、自社発行分や第三者発行の譲渡制限付銘柄については、一定の要件下で時価評価の対象外とする道が開かれました 。しかし、ここには専門家でも見落としがちな「適用の落とし穴」があります。
・技術的措置の難度
ロックアップ等の技術的措置に加え、交換業者への通知など、手続きは極めて煩雑です 。
・設定時の課税リスク
移転制限を設定して要件を満たそうとしたその瞬間、それまでの「含み益」に対して即座に利益計上が求められる(みなし譲渡課税)可能性があります 。 この「出口」と「入り口」の設計を一つでも見誤れば、顧問先に数億円単位の不測の損害を与えかねません。
一度要件を満たして評価除外の適用を受けると、今度は『1年以上のロック期間』が必要になるなど、資金拘束が非常に厳しくなる点も看過できません。この『出口』と『入り口』の設計を一つでも見誤れば、顧問先に不測の損害を与えかねないのです。
3. 相続税務の地獄:資産を消失させかねない「4つの壁」
暗号資産の相続は、他の資産とは比較にならないほど難解であり、かつ残酷な側面を持ちます。
最大税負担率「110%」と相続税評価の理不尽
相続時の時価に対して相続税がかかり(最大55%)、さらに納税のために売却すれば、取得費加算の特例がない暗号資産には多額の所得税がかかります(最大55%) 。計算上、「資産の110%が税金」となり、相続したがゆえに家計が破綻するという極限状態さえ起こり得るのです 。
また、上場株式などは4つの時価から最低値を選べる柔軟な評価ルールがありますが 、暗号資産は原則として「死亡日の最終価格(一本値)」で評価しなければなりません 。価格変動が極めて激しい資産であるにもかかわらず、一時点の価格で評価が決まってしまうため、納税者にとっては非常に酷な制度と言わざるを得ません 。
実務家が直面する「手続きの壁」
1. 取引把握の困難性
物理的実体がないため、スマホのメール履歴や銀行口座の入出金から執念深く追跡しなければ、資産は「消失」したも同然となります 。
2. 海外取引所の壁
英語での問い合わせ、相続人であることの立証――。アカウント凍結解除に数年を要することも珍しくありません 。
3. ウォレットの壁
秘密鍵やリカバリーフレーズが不明な場合、誰も助けてはくれません。数億円の資産が目の前にありながらアクセスできないという絶望的な状況が生まれます 。
4. 換金の壁
納税期限(10ヶ月)までに、これらすべてのハードルを越えて現金化する必要があります 。
4. 現場で「必ず聞かれる」6つの問い:あなたは顧問先に即答できますか?
確定申告シーズンや、新たな投資を検討するクライアントから寄せられる質問は、常に本質的かつ鋭いものです。これらに対し、実務家として法規に基づいた明確な「回答」を提示できるかどうかが、信頼の分水嶺となります。
| ① 暗号資産の課税されるタイミングはいつなのか? | 売却時だけではありません。通貨同士の交換、NFTの購入、ステーキング報酬の受取――。すべての瞬間が「課税イベント」となり得ます 。 |
| ② 税率は何パーセントか?(現行と改正後、どう変わるのか?) | 現行の最大55%から、2028年以降の見込みである「一律20%」への移行 。その間に横たわる「移行期の税率」をどう説明するか。 |
| ③ 事業所得にできるのか?(雑所得との境界線は?) | 社会通念上の「事業性」の判断基準、帳簿保存の義務化。会社員の副業レベルでは極めて困難な現状を、いかに論理的に伝えるか 。 |
| ④ 経費の範囲は?(どこまでが直接・間接的に認められるのか?) | PC代の按分、通信費、さらにはセミナー代や書籍代。雑所得(その他)と雑所得(業務)で異なる「経費の認められ方」の境界線 。 |
| ⑤ 暗号資産損益計算はどうやってやるのか?(2か所以上の取引所がある場合は?) | 取引所間の送金、取得価額の引き継ぎ。エクセルでは限界が来る「複雑怪奇な計算」を、いかにツールを用いて効率化するか 。 |
| ⑥ 暗号資産の取引データはどうやって取得するのか?(海外取引所やウォレットの場合は?) | CSV出力の網羅性、ブロックチェーンエクスプローラーからのデータ抽出。当局が求める「証憑」をどう揃えるか 。 |
本編動画では、これらすべての「問い」に対し、実務の第一線で数多くの税務調査を乗り越えてきた私が、具体的かつ実践的な「回答」を提示しています。
5. 消費税実務の落とし穴:見落とされがちな「5%の算入」
暗号資産税務の難しさは、所得税・法人税に留まりません。2026年度税制改正の整理において、消費税計算への影響は実務上の大きな火種となります。
暗号資産の譲渡は引き続き非課税となりますが、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の5%相当額を「資産の譲渡等の対価の額」に算入することになります 。 もし、事業会社が多額の暗号資産を頻繁に売買していた場合、このルールによって課税売上割合が大幅に下落し、結果として消費税の納税額が跳ね上がるリスクがあります 。
この「消費税の連鎖」までアドバイスできてこそ、真のプロフェッショナルと言えるでしょう。
6. 実務家が果たすべき「ゲートキーパー」としての役割
暗号資産という新しい資産クラスに対し、税務当局のスタンスは明確です。「適正な申告には便宜を払うが、意図的な隠蔽には容赦しない」というものです。2026年から始まったCARFによる情報共有は、まさにその宣言でもあります。
我々税理士に求められているのは、単なる計算の代行ではありません。
・将来の分離課税移行を見据えた「データの保全」の指導。
・特定暗号資産とそれ以外の銘柄を峻別し、申告漏れを未然に防ぐ「適正化」。
・「金融一体課税」の進展を視野に入れた、中長期的な資産形成の税務アドバイザリー。
これらは、AIや簡易的な計算ツールだけでは決して完結しない、人間による高度な判断を要する領域です。
結びに代えて:2028年の分離課税スタートを見据えて
個人の「特定暗号資産」に係る分離課税(一律20%)は、金商法改正を経て、2028年1月1日以降の取引から適用される見通しです 。しかし、そこに至るまでの「2026年・2027年」という空白の2年間、そしてCARFによる監視が先行して始まった現在の状況は、まさに実務家の真価が問われるタイミングです。
・「特定暗号資産」とそれ以外で所得区分が分かれる複雑な申告 。
・3年間の損失繰越を勝ち取るための適切な申告維持 。
・登録取引所と海外取引所を併用するクライアントへの出口戦略のアドバイス。
「知らなかった」では済まされない、暗号資産税務の激変期。顧問先の資産を守り、そして何より先生ご自身の「実務上のリスク」を回避するために、ぜひこの動画で手に入れてください。
当社は、コンテンツ(第三者から提供されたものも含む。)の正確性・安全性等につきましては細心の注意を払っておりますが、コンテンツに関していかなる保証もするものではありません。当サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、かかる損害については一切の責任を負いません。利用にあたっては、利用者自身の責任において行ってください。
詳細はこちら