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後遺障害等級14級9号とは?認定基準や慰謝料の相場・計算方法
交通事故の後遺症において最も多い「後遺障害等級14級9号」。弁護士事務所の弁護士・職員向けに「後遺障害等級14級9号」とはどのようなものなのかを解説します。
後遺障害等級14級9号とは
交通事故で負傷した後、一定期間通院治療をしたにもかかわらず、症状が残存した場合、後遺障害の申請手続きをします。後遺障害は1級から14級まで準備されています(1級が重度)。
交通事故で最も受傷する頻度の高い頚椎捻挫・むちうち症の後遺障害は、「局部の神経症状」として14級9号または12級13号が用意されています。
大半は14級9号ですので、交通事故の後遺障害で最も多く目にする等級だと言えます。
12級13号との違い
14級9号と12級13号の違いは、直接的には賠償内容の違いとして表れます。
後遺障害慰謝料は、14級は110万円、12級は290万円とされていますし、逸失利益の計算における労働能力喪失期間も、頚椎捻挫による14級9号は5年、12級13号は10年とされています。
どのような場合が14級で、あるいは12級なのかというのは認定基準が定められています。赤い本(公益財団法人 日弁連交通事故相談センター出版『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』)の「後遺障害別等級表」には、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」、12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされていますので、「頑固かどうか」が分岐点かと思いがちですが、実際はそうではありません。
12級13号は、症状の残存が画像所見や検査結果から証明できる場合であり、そこに至らずとも事故態様、治療状況、症状の推移などから症状の残存が説明しうるような場合に14級9号が認定されます。
後遺障害等級14級9号における慰謝料の相場
後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料が追加で損害賠償として認められています。
交通事故損害賠償の実務上は、慰謝料も基準が設定されており、「自賠責基準」「任意保険会社の基準」「裁判所の基準」と3つの基準があります。
自賠責の基準が最も安く、裁判所の基準が最も高くなります。
具体的には、14級9号の後遺障害慰謝料の場合、自賠責基準では32万円、裁判所の基準の場合は110万円となります。任意保険会社の基準はその間に位置します。
後遺障害等級14級9号における慰謝料の計算方法
後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料のほかに、後遺障害逸失利益という損害が追加されます。これは、後遺障害によって今後の労働能力の低下してしまう点について賠償しようとするものになります。
損害の計算方法としては、【逸失利益 = 基礎収入(年収) × 労働能力喪失率 × 年数(ライプニッツ係数)】となります。
頚椎捻挫による14級9号の場合、労働能力喪失率は5%、年数は5年間(ライプニッツ係数3%の場合、4.5797)となります。
基礎収入は、会社員の場合、原則としては事故前年の年収を用います。
後遺障害等級14級9号の認定基準・要件
それでは、14級9号の認定基準について具体的に検討していきましょう。
14級9号は、12級13号と異なり、画像所見や検査結果から医学的に証明できない場合に、様々な事情を総合考慮して認定されています。
以下、ポイントをみていきましょう。
1. 事故でどのような衝撃が人体に加わったのか
まずは、受傷機転として、どのような事故で、どのような衝撃が人体に加わったのかという視点は、出発点としてとても重要なポイントです。どのような角度でぶつかり、車体のどの部分がどの程度損傷し、人体はどのような方向から衝撃を受けたのか。
自動車の修理見積もりや刑事記録、車体の損傷写真、ドライブレコーダーなどの資料が必要となります。
般に軽微な事故の場合、後遺障害は認められにくい傾向にあります。
2. どのような症状がいつ発生したのか
次に、本件事故によって、どのような症状が、いつ発生したのかもポイントとなります。
一般に、事故による人体の損傷の場合、事故からそれほど間をおかずに症状が発生します。事故後数日以内に症状が発生していれば、この点は問題にはなりません。
事故から時間が経過した後に症状を訴えた場合は、因果関係を否定される可能性が高くなります。
初診がいつか、初診でどのような症状を訴えているのか、どのような傷病名が付されているのかなどは、診断書などに記載されています。
3. その症状がどのように推移したのか
次に、発生した症状が、その後どのように推移したのか、という視点です。
一般に、外傷による症状は、事故直後が強く、その後、波はあれども、時間の経過とともに徐々に良くなっていきます。
それ以外の経過、たとえば一度症状が消失して、しばらくして再度発症したとか、徐々に悪化していっているとか、そういった場合は、通常の頚椎捻挫とは異なる症状の推移を辿っていますから、別原因を疑われることになります。
4. どのような治療を行っていたのか
頚椎捻挫の治療方法は、対症療法が基本です。
痛みを訴えれば、痛みを緩和する処置をします。また、上肢にしびれが生じていたり、治りが遅かったりする場合には、MRIなどの精密検査を行うこともあります。
どのような治療を行っていたかは、診療報酬明細書でわかりますから、医師が行った治療内容も重要なポイントとなります。
5. 画像や検査結果はどうなのか
頚椎捻挫の場合、画像としてはレントゲンやMRIを撮影します。検査としては、神経学的検査、例えば徒手筋力検査、腱反射の検査、ジャクソン・スパーリング検査などが行われます。
12級13号と異なり、これらの検査で異常が証明される必要はないのですが、それでも異常所見がでているならば、14級9号は認められやすくなります。
6. どの程度の期間、どれくらい通院したのか
次に、通院の期間や頻度も重要です。ある程度の治療をうけてもなお、症状が一貫して残存している場合に後遺障害の対象となるためです。
保険会社が治療費を打ち切ったため、その後通院しなくなった場合や、仕事が忙しくて土曜日しか通院できなかった場合など、通院期間・頻度が足りないために後遺障害が認定されないということもあります。
7. どのような症状が残存したのか
一定期間の治療の結果、どの程度の症状が残存したのか、ということです。
後遺障害の対象となるのは「常時」と評価できるような神経症状が残存した場合になります。例えば、「寒いと痛む」や「激しい運動をすると痛む」などですと、常時とは言い難いところがあります。
これは、後遺障害診断書に医師が記載するものですが、注意したい大切なポイントとなります。
8. 現在は(事故前と異なり)どのような生活を送っているのか
この点は、事故によって残存した症状によって、どのように生活が変化したかという視点となります。特に大切なのは、症状固定後も通院を継続している事情があれば、後遺障害が認定されやすくなります。
おわりに
後遺障害14級9号は、最も数が多い後遺障害ですが、症状の残存を証明する直接的な医療証拠がないため、間接事実からの推認という構造で事実認定がなされる、比較的難しい類型の事件です。
しかし、弁護士にとっては、推認による証明は得意分野だと思いますから、ポイントをしっかり抑えていただければ、十分な弁護活動ができるものと思います。私たちのノウハウを詰め込みましたので、是非、スキルを身に着けてください。
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