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2024年版 中小企業の税制優遇|経営強化税制・投資促進税制・賃上げ促進税制等のポイントを解説

中小企業が新しく設備を入れて生産性をあげる場合や、新規事業開拓のために試験研究をする場合等には様々な税制上の優遇措置があります。
本記事では、中小企業が受けることができる特例税制について、代表的なものをピックアップしポイントを解説しています。

中小企業が受けることができる主な特例税制

次の各ケースに掲げる事由に該当するときは、対応する税制の適用が可能であるかどうかをチェックする必要があります。

各ケース 対応する税制
設備投資計画がある場合
(設備投資の予定がある場合)
設備投資を行った場合
中小企業経営強化税制(措法42条の12の4)
または
中小企業投資促進税制(措法42条の6)(防災・減災設備に対する投資である場合)
中小企業防災・減災投資促進税制(措法44条の2)
給料を増額した場合
人員を増やした場合
賃上げ促進税制(措法42条の12の5)
研究開発を行っている場合
産学連携等を行う場合
試験研究費に係る税額控除(措法42条の4)
(中小企業技術基盤強化税制)
M&Aを行う計画がある場合 中小企業事業再編投資損失準備金(措法56条)
中小企業経営強化税制のD類型
ベンチャー企業への出資がある場合 オープンイノベーション促進税制(措法66条の13)
欠損金が生じた場合
(繰越控除を適用しない場合)
欠損金の繰戻し還付請求(法法80条1項)
固定資産の買換えがある場合 固定資産の買換えに係る圧縮記帳(措法65条の7)
収用等に伴い代替資産の取得の予定がある場合 収用等に伴い取得した代替資産の圧縮記帳(措法64条)
保険金等により資産を取得する計画がある場合 保険金等により取得した資産の圧縮記帳(法法47条)
国庫補助金等により資産を取得する
計画がある場合
国庫補助金等により取得した資産の圧縮記帳(法法42条)

中小企業者向け設備投資に係る特例税制

1.中小企業経営強化税制

(1)税制の内容

青色申告書を提出する中小企業者または農業協同組合等もしくは商店街振興組合(以下、「中小企業者等」という)で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から令和7年3月31日までの間に、生産等設備※1を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備およびソフトウエアで、特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等(取得または製作もしくは建設)をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度および清算中の各事業年度を除く)において、その特定経営力向上設備等の普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却(即時償却)とその取得価額の7%(特定中小企業者等※2の場合は10%)の税額控除との選択適用ができる。

新品が対象であり、貸付けの用に供するものは対象になりません。

また、税制措置の適用を受けるためには、その特定経営力向上設備等が、主務大臣の認定を受けた経営力向上計画(中小企業等経営強化法18条1項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの)に記載されたものに限られます。

税額控除における控除税額は、中小企業投資促進税制における控除税額との合計額で当期の法人税額の20%を上限※3とし、控除限度超過額は1年間の繰越ができます。また、特別償却は、償却限度額まで償却費を計上しなかった場合には、その償却不足額を翌事業年度に繰り越すことができます。

ポイント
・ 中小企業等経営強化法上の経営力向上計画の認定(主務大臣による認定)を受けた中小企業者等(かつ中小企業等経営強化法2条6項に規定する特定事業者等※4)であること
・ 生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備およびソフトウエアで一定のもの
・ 特定経営力向上設備等に該当するものであること(後で説明する生産性向上設備、収益力強化設備、デジタル化設備または経営資源集約化設備のいずれかであること)
・ 特定経営力向上設備等が、経営力向上計画(中小企業等経営強化法18条1項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの)に記載されたものであること
・ 一定の規模以上のものであること(最低取得価額要件を満たすものであること)
・ 指定事業の用に供するものであること
・ 即時償却または税額控除のいずれかを選択適用できる(設備ごとに選択できる)
・ 令和3年度税制改正により、経営資源集約化設備(D類型)が対象に追加された。

※1生産等設備とは、例えば、製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗または自動車整備業を営む法人の作業場のように、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を獲得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産で構成されるものをいう。したがって、例えば、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等は対象外となる。一棟の建物が本店用と店舗用に供されている場合など、減価償却資産の一部が法人の生産等活動の用に直接供されているものについては、そのすべてが生産等設備となる。
※2資本金または出資金が3,000万円以下の法人、農業協同組合等、商店街振興組合および個人事業者をいう。
※3税額控除を適用する場合は、①中小企業投資促進税制および②中小企業経営強化税制、以上2つの税制の控除税額の合計で、当期の法人税額の20%が上限とされる点に留意する必要がある。
※4中小企業等経営強化法2条5項に特定事業者の定義が定められている。製造業、建設業、運輸業等については常時使用する従業員の数が500人以下の会社および個人、卸売業については常時使用する従業員の数が400人以下の会社および個人、小売業またはサービス業常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人というように、業種ごとに従業員数の基準が設けられている。ただし、中小企業等経営強化法改正前の同法の中小企業者等で改正後の同法の特定事業者等に該当しないものについては、経過措置として、令和 5 年 3 月31日までの間は、同法の特定事業者等とみなして、同法の経営力向上に関する規定を適用することとされている(産競法等改正法附則9条2項)。
もっとも税制措置の適用を受けることができるのは、租税特別措置法上の中小企業者等であるため、資本金または出資金の額が1億円以下の法人、従業員数1,000人以下の個人事業者、組合等に限られる。

(2)特定経営力向上設備とは
この税制の適用を受けることができる「特定経営力向上設備等」とは、経営力向上設備等のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の主務大臣による認定を受けた経営力向上計画に記載されたものをいいます。中小企業経営強化税制の適用対象となる経営力向上設備等とは、中小企業等経営強化法に規定する次の設備をいいます。

経営力向上設備等
生産性向上設備
(A類型)
収益力強化設備
(B類型)
デジタル化設備
(C類型)
経営資源集約化設備
(D類型)
最低取得価額要件
販売開始時期 生産性向上要件
機械装置 10年以内 旧モデル比で年平均1%以上生産性が向上 年平均5%以上の投資利益率が見込まれるものであることにつき経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載されたもの 遠隔操作、可視化、自動制御化のいずれかを可能にする設備 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る)を実施するために必要不可欠な設備 一台または一基当たり取得価額160万円以上
工具(A類型のみ測定工具および検査工具に限る) 5年以内 一台または一基当たり取得価額30万円以上
器具備品(注1) 6年以内 一台または一基当たり取得価額30万円以上
建物附属設備(注2) 14年以内 一の取得価額60万円以上
ソフトウエア(注3) 5年以内 不要 一の取得価額70万円以上

(注1) 器具備品から医療保健業を行う事業者が取得等する医療機器は除外され、建物附属設備から医療保健業を行う事業者が取得等するものは除外されている。
(注2)発電の用に供する設備にあっては、主として電気の販売を行うために取得または製作をするもの(経営力向上計画の実施時期のうちで発電した電気の販売を行う期間中の発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量
(注3)A類型のソフトウエアで対象となるのは、設備の稼働状況等に係る情報収集機能および分析・指示機能を有するものに限られる。すなわち、すでに適用期限を経過した旧生産性向上設備投資促進税制におけるA類型の対象となるソフトウエアと同じである。(一般社団法人)情報サービス産業協会の対象リストが参考になる。また、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものは対象外である。

それぞれの類型によって手続が異なります。
また、申告書に明細書および認定書の写し等を添付することが要件であるため、記載方法も含めて、十分に理解・整理しておく必要があります。

2.中小企業投資促進税制

1. 制度の内容
(1)対象法人
対象となる法人は、租税特別措置法42条の4第19項7号に規定する中小企業者または農業協同組合等もしくは商店街振興組合で、青色申告書を提出するもの(以下、「中小企業者等」)です(措法42条の6第1項)。なお、個人事業者も対象です(措法10条の3)。

(2)制度の内容

中小企業者等が、平成10年6月1日から令和7年3月31日までの期間(以下、「指定期間」という)内に、一定の減価償却資産でその製作の後事業の用に供されたことのないもの(以下、「特定機械装置等」)を取得、または製作して、これを国内にあるその中小企業者等の営む指定事業の用(貸付けの用を除く)に供した場合には、その指定事業の用に供した日を含む事業年度(解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度および清算中の各事業年度を除く。以下、「供用年度」)において、特別償却(取得価額の30%)または税額控除(特定中小企業者等に限り、取得価額の7%)のいずれかを選択適用できる(措法42条の6第1項、2項)。

税額控除の適用が受けられるのは、特定中小企業者等、すなわち中小企業者のうち資本金の額もしくは出資金の額が3,000万円以下の法人または農業協同組合等に限られます。

税額控除は、中小企業投資促進税制および中小企業経営強化税制の2つの控除税額の合計額で、当期の法人税額の20%が上限です。20%を超えて控除しきれなかった額があるときは、1年間に限り繰越が認められます。

2. 適用要件等
(1) 適用対象資産
適用対象資産(特定機械装置等)は、次のもので、かつ、新品であるものです。

中小企業等投資促進税制の適用対象資産
中小企業等投資促進税制の対象設備 最低取得価額等
機械装置 単品160万円以上
測定工具および検査工具 単品120万円以上
(複数合計120万円以上を含む※)
一定のソフトウエア(注1) 単品70万円以上
(複数合計70万円以上を含む)
普通貨物自動車 車両総重量3.5トン以上
内航船舶 対象は取得価額の75%

※複数合計120万円以上取得で、単品30万円以上であることが必要。
(注1)対象となるソフトウエアは、次のようなものをいいます。業務用に使用されるワープロソフト・表計算ソフト・経理ソフト・給与ソフトの他、イラストソフト・画像ソフト・CADソフト。

(2) 指定事業
指定事業は、中小企業経営強化税制における指定事業と同じです。
なお、令和5年度税制改正により、一部の設備が対象外とされた点に留意する必要があります。
申告書に明細書を添付することが要件であるため、記載方法も含めて、十分に理解・整理しておく必要があります。

賃上げ促進税制(所得拡大促進税制)

1.賃上げ促進税制の適用要件

(1) 中小企業者等以外の法人および中小企業者等対象の賃上げ促進税制

中小企業者等以外の法人および中小企業者等対象の賃上げ促進税制の内容は次の通りです。

適用要件および税額控除限度額
適用要件 税額控除限度額
上乗せなし (継続雇用者給与等支給額-継続雇用者比較給与等支給額) / 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 3% 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額
上乗せ措置 (継続雇用者給与等支給額-継続雇用者比較給与等支給額) / 継続雇用者比較給与等支給額 ≧ 4% 控除対象雇用者給与等支給増加額の10%相当額を上乗せ
(教育訓練費の額-比較教育訓練費) / 比較教育訓練費 ≧ 20%
(注)比較教育訓練費は、前事業年度の教育訓練費
控除対象雇用者給与等支給増加額の5%相当額を上乗せ

※税額控除額は、当期の所得に対する法人税額の20%相当額を上限とする。
※控除対象雇用者給与等支給増加額は、調整雇用者給与等支給増加額を上限とする。

適用要件の判定結果に応じて、税額控除率は次のようになります。
適用要件の判定結果 税額控除限度額
継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して3%以上4%未満増加し、かつ、教育訓練費の要件を満たさなかった場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額
継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して4%以上増加し、かつ、教育訓練費の要件を満たさなかった場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の25%(15%+10%)相当額
継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して3%以上4%未満増加し、かつ、教育訓練費の額が比較教育訓練費の額に対して20%以上増加した場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の20%(15%+5%)相当額
継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額に対して4%以上増加し、かつ、教育訓練費の額が比較教育訓練費の額に対して20%以上増加した場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の30%(15%+10%+5%)相当額

(2) 中小企業者等のみ対象の賃上げ促進税制

① 適用要件

適用要件および税額控除制度
適用要件 税額控除限度額
上乗せなし (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)/ 比較雇用者給与等支給額 ≧ 1.5% 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額
上乗せ措置 (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額) / 比較雇用者給与等支給額 ≧ 2.5% 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額を上乗せ
教育訓練費の額-比較教育訓練費) / 比較教育訓練費 ≧ 10%
(注)比較教育訓練費は、前事業年度の教育訓練費
控除対象雇用者給与等支給増加額の10%相当額を上乗せ

※税額控除額は、当期の所得に対する法人税額の20%相当額を上限とする。
※控除対象雇用者給与等支給増加額は、調整雇用者給与等支給増加額を上限とする。

適用要件の判定結果に応じて、税額控除率は次のようになります。
適用要件の判定結果 税額控除限度額
雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額に対して1.5%以上2.5%未満増加し、かつ、教育訓練費の要件を満たさなかった場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額
雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額に対して2.5%以上増加し、かつ、教育訓練費の要件を満たさなかった場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の30%(15%+15%)相当額
雇用者給与等支給額が比較雇用者比較給与等支給額に対して1.5%以上2.5%未満増加し、かつ、教育訓練費の額が比較教育訓練費の額に対して10%以上増加した場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の25%(15%+10%)相当額
雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額に対して2.5%以上増加し、かつ、教育訓練費の額が比較教育訓練費の額に対して10%以上増加した場合 控除対象雇用者給与等支給増加額の40%(15%+15%+10%)相当額

賃上げ促進税制は、申告書に明細書の添付要件が定められているため、明細書の記載方法を十分にマスターしておく必要があります。

試験研究費の税額控除(中小企業技術基盤強化税制)

試験研究費の税額控除制度は、中小企業者等以外の法人および中小企業者等対象の一般試験研究費の額に係る税額控除制度と、中小企業者等のみ対象の中小企業技術基盤強化税制から成ります。中小企業者等は、中小企業技術基盤強化税制の方が有利であるため、通常中小企業技術基盤強化税制を適用します。

中小企業技術基盤強化税制は、中小企業者(適用除外事業者を除く)または農業協同組合等で、青色申告書を提出するものに適用されます。一般試験研究費の額に係る税額控除制度よりも有利性があるため、中小企業者等は通常こちらの制度を適用することになります。

対象となる試験研究とは、事物、機能、現象などについて新たな知見を得るためまたは利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う創造的で体系的な調査、収集、分析その他の活動のうち自然科学に係るものをいいます。

新製品の製造または新技術の改良、考案もしくは発明に係るものに限らず、現に生産中の製品の製造または既存の技術の改良、考案もしくは発明に係るものも含まれます(措通42の4(1)-1)。

また、対象に含まれない活動の例示が、措通42の4(1)-2に示されています。

令和5年度税制改正により、次の改正が行われています。

① 控除率、控除上限額の見直し(研究開発投資を促すためのインセンティブ強化)
② オープンイノベーション型の対象範囲の追加
③ 試験研究費の範囲の見直し(サービス開発型試験研究費等)

改正後の規定は、令和5年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。ただし、②については令和5年4月1日以後に支出した特別試験研究費に適用されます。

試験研究費の税額控除制度は、確定申告書に明細書の添付が必要です。

特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(中小企業防災・減災投資促進税制)

近年、自然災害が頻発し、中小企業・小規模事業者の事業活動の継続に支障をきたす事態が生じています。このような中小企業・小規模事業者をめぐる環境の変化を踏まえ、我が国の経済の活力の源泉である中小企業・小規模事業者の経営の強靱化を図り、事業活動の継続に資するため、地域の経済・雇用を支える中小企業を中心に災害への対応力を高める必要があります。
事前の防災・減災対策の先行事例を踏まえ、中小企業者の事業継続力強化に関する基本方針を策定するとともに、中小企業者が単独でまたは相互に連携して行う事業継続力強化のための計画を認定し、認定を受けた者について、各種の支援措置を講ずることとされました。

税制においても、中小企業者が行う事業継続力強化に資する設備投資を促進する観点から、特別償却制度が創設されました。中小企業が災害への事前対策を強化するための設備投資を後押しするための特例税制として創設されたものです。

認定を受けた事業継続力強化計画等に記載された機械及び装置、器具及び備品ならびに建物附属設備が対象となります(措法44条の2第1項)。対象となる設備は事前対策を強化するために必要な防災・減災設備です。
幅広い設備が対象になるため、内容を押さえておく必要があります。

また、確定申告書に明細書の添付が必要です。

特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例(オープンイノベーション促進税制)

1. 制度の趣旨
第3次産業革命に続き、IoT、ビッグデータおよびAIを核とした技術革新を第4次産業革命というが、日本は海外に比べて、その取組みが遅れているといわれています。そのような状況下で、技術力を持ったベンチャー企業との連携を中心としたオープンイノベーションの進展が必要不可欠であると指摘されています。また、我が国の国際競争力を強化する観点から、既存企業からベンチャー企業への出資により、一層の人材・技術・資本の連携を進め、オープンイノベーションを促進することが重要かつ喫緊の課題であると認識されています。

ベンチャー企業への出資に係る税制措置として、その出資の一定額について所得控除を認める措置を創設することで、我が国企業が、いわゆる自前主義からの発想の転換を図り、いわゆるオープンイノベーションとして、自社にない技術等を持つベンチャー企業と協働することにより、生産性向上につながる事業革新を図ることを最大限支援することを狙いとする税制措置が令和2年度税制において創設されています。

2. 税制の内容
(1) 税制の概要

青色申告書を提出する法人で一定の特定事業活動を行うものが、令和2年4月1日から令和6年3月31日までの期間内に特定株式を取得して、その取得した事業年度終了の日まで引き続き有している場合において、その特定株式の取得価額の25%相当額以下の金額を取得事業年度の確定した決算において特別勘定を設ける方法により経理したときは、その特別勘定の金額を損金の額に算入できる(措法66条の13第1項)。

令和5年度税制改正により、購入による(既発行済)株式の取得でその取得により総株主の議決権の過半数を有することとなるものも対象に追加されました(措法66条13第1項、措令39条の24の2第1項、措規22条の13第3項)。
本改正は、法人が令和 5年 4 月 1 日以後に取得する株式について適用され、法人が同日前に取得した株式については、従前どおりとされます(令和5年改正法附則50条、改正措令附則12条、改正措規附則7条1項)。

現金出資による株式の取得
(従前からの取扱い)
増資特定株式
購入による株式の取得
(新設)
購入特定株式
取得の形態 資本金の増加を伴う場合に限る 既発行株式の購入により取得した株式
投資金額の下限と上限 【下限】
大企業:1億円以上
中小企業者:1,000万円以上
特別新事業開拓事業者が外国法人である場合:5億円以上
【上限】
50億円(改正前:100億円)
【下限】
5億円以上(企業規模を問わず一律)外国法人株式の購入は対象外

【上限】
200億円

損金算入限度額 所得基準額(当該金額が125億円を超える場合には、125億円)※5を限度とする 同左
議決権割合 すでに総株主の議決権の過半数を有するベンチャー企業への出資を対象外とする。 取得後過半数となること
保有見込期間 3年 5年
経済産業大臣の証明の要否 必要 必要
(株式の取得時にベンチャー企業が営んでいた事業を引き続き営んでいること等の要件を追加)
特定事業活動の継続期間 3年 5年

損金の額に算入される金額の計算に関する明細書としては、別表10(6)「特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の特別勘定の金額の損金算入に関する明細書」および別表10(6)付表1「各特定株式の特別勘定の金額に関する明細書」を作成することになります。

確定申告書には、上記の明細書、認定書の写し、確認書の写しを添付する必要があります。

※5.所得基準額とは、この制度による損金算入および益金算入を適用しないで、かつ、取得事業年度において支出した寄附金の額の全額を損金の額に算入して計算した場合におけるその取得事業年度の所得金額をいい、その計算した所得金額が125億円を超える場合には、125億円とする(措法66条の13第1項、措令39条の24の2第3項)。

中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設(中小企業事業再編投資損失準備金)

青色申告書を提出する>中小企業者※6のうち産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律の施行日(令和3年8月2日)から令和6年3月31日までの間に経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る)について認定を受けたものが、各事業年度においてその認定に係る経営力向上計画に従って行う事業承継等(他の特定事業者等の株式または持分の取得で一定のものに限る)として他の法人の株式または出資の取得(購入による取得に限る)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合において、株式または出資の価格の低落による損失に備えるため、その株式または出資の取得価額の70%相当額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額を損金の額に算入することができるとされた(措法55条の2第1項)。

この準備金は、据置期間中(準備金の積立事業年度終了の日の翌日からの5年間)に、その株式等の全部または一部を有しなくなった場合や、その株式等の帳簿価額を減額した場合等の取崩事由が生じた場合において取り崩します。

据置期間中に取崩事由が生じなかった場合であっても、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から5年を経過した日を含む事業年度から5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入するとされます。例えば令和6年3月期に積み立てた場合は、令和12年3月期から令和16年3月期までの5年間で均等に取り崩すことになります。

確定申告書に、別表12(2)「中小企業事業再編投資損失準備金の損金算入に関する明細書」を添付する必要があります。

中小企業者とは、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって、かつ、租税特別措置法の中小企業者に該当するものをいう。

※6.中小企業者とは、中小企業等経営強化法の中小企業者等であって、かつ、租税特別措置法の中小企業者に該当するものをいう。

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